放射線安全講習会にオンライン参加

 放射線安全講習会(2021/2/22(月))にオンライン参加した。

 昨年12月25日(金)に放射線障害防止中央評議会より放射線安全管理講習会(2021/2/22(月)開催)の案内メールが届いた。
 でもつい4日前に前回の講習会が終わったばかりである。
 もう次があるのか、とびっくりしたが、講習会特設サイトを覗いてみると、放射線治療関係の講演もあるらしかったので、この日のうちに申込し、参加費をコンビニで払い込んだ。
 一般人は1万円、会員は8千円とのことだった。
 今回は会場とオンラインのハイブリッド型だったらしい。
 今年1月15日(金)には原子力学会のメールでも同じ内容のものが来た。
 プログラムは末尾に添付する。

 当日はトイレに行き、マイボトルにお茶を用意してパソコンの前に座った。
 開会の挨拶を協議会の畑澤会長が行ったが、最初は聞き取りにくかった。
 どうも音声の調整がまずかったらしく、しばらくして聞こえるようになった。
 今回は文京区のシビックホールとオンラインのハイブリッド方式で行うことと、会場は22名参加、オンラインは122名参加している、とのことだった。

 講演(1)では「電離放射線障害防止規則改正のポイント」というタイトルで、 厚生労働省の夏井氏が講演した。
 今年4月より放射線障害防止規則が改正されたものが実施される。
 ラジエーションハウス(2年前くらいのフジテレビの月曜9時でドラマ化された)の絵を見せる。
 著作権の関係で資料には入れていない。
 眼の水晶体の被ばく限度が下がることになる。
 まず法令の概要を述べる。
 労働安全衛生法は工場法から労働基準法へと変わり、その中の一部として昭和47年にできた。

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         図1 労働安全衛生法の概要

 その中の電離放射線障害予防規則(電離則)として、労働者の安全と健康管理を行う。
 改正前の電離則は眼の水晶体は150mSv/年であったが、改正後は100mSv/5年、50mSv/年となった。

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         図2 改訂後の電離則

 これを守るには線量測定を正しく行う必要がある。
 線量測定では、3㎜線量当量、70μ線量当量、1㎝線量当量が使われるが、後の2つは以前からあった。
 これら3種のうちのいずれかを使えばよい。
 放射線業務を行う事業所・労働者は医療関係が多い。
 眼の水晶体に関してはICRP(国際放射線防護委員会:国際的な被ばく管理の権威団体)の2011年のソウル声明を受けて、国の放射線審議会が検討してまとめたものである。
 年間被ばく実効線量を示すと、眼の水晶体被ばくでは医療関係が多い。

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         図3 眼の水晶体被ばくの実効線量の表

 医療関係の中では循環器内科、消化器内科が多い。
 看護師に関しては内視鏡作業に関わる人が多い。

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         図4 看護師の作業イメージ

 労働衛生管理の側面から見ると、防護メガネや防護板等のマネジメント対応が必要になる。
 看護師の被ばく状況のファントム再現実験を行った。
 被写体(水ファントム)からの散乱線はベッドから40-50㎝離れたところで最大であった。
 防護板の遮へい率は血管撮影装置での透視時約42%、撮影時約33%であった。透支持
 十分な防護措置を取ってもなお高いひばく線量を眼の水晶体に受ける可能性のある労働者を日本循環器学会等で調査した。
 防護メガネを使用すると遮へい効果がある。
 厚労省の取組としては改正電離則リーフレットを作って事業者への配布を行ったりしている。
 ただすぐに改善できない可能性もあるので、経過措置として2段階の経過措置を認め、最終的には令和8年4月1日以降に上記の基準をクリアできればいい、と説明した。

 (2)では「福島事故で海洋に放出された放射性物質の長期広域挙動」-10年間追いかけてわかったこと-というタイトルで、筑波大学の青山氏が講演した。
 福島原発事故(1F事故と略)の海洋放射能汚染について述べる。
 話すことは3つある。
 1F事故前から行ってきた大気核実験やチェルノブイリ原発事故の放射能分布、1F事故での海洋放射能挙動、1F事故での放射能総量のことについて、である。
 大気中核実験でのCs-137の放射能総量は1970年での北半球のみで765PBqである。
 (筆者注:単位の接頭語P:ペタ、1千兆、1E15 )
 H-3(トリチウム)は240EBqである。
 (筆者注:単位の接頭語E:エクサ、1E18)
 大西洋への放出量はCs-137が40PBq、H-3が276PBqである。
 これは原子力施設の事故、英国ウィンズケール再処理工場等のものである。
 放射能輸送の模式図としては、大気中に放出されると、くるくる回り、雨で落ちてくる。

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         図5 放射性物質の輸送の模式図

 地上に留まるものと、海中に入ると海水と一緒に動く。
 表層の混合層で撹拌される。
 関東平野でのCs-137の1970年では6,000Bq/m2であった。
 その後、1970年から1980年の中国の核実験、チェルノブイリ原発事故等を経て、2011年暮れには30,000Bq/m2となった。
 東京の月間降下量のグラフで雨が降ると落ちてきて、土の中では動かない。

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         図6 東京での放射能の変化

 何かのかく乱があるとデータを読み間違うこともある。
 核実験で地球上に降下したCs-137は、1970年の北半球で765PBqである。
 1970年の北太平洋で290PBqである。
 2011年に北太平洋で69PBqである。

 以前気象庁にいて、海の上で暮らしていた。
 2003年から2004年にかけて世界中の海の中のCs-137を調査した。
 総量22トン、800試料の分析を行った。
 分析に2年かかった。
 海洋のCs-137の3次元分布を知りたかった。
 深さ450mのところで極大になった。
 総量を計算すると85PBqとなった。
 事故前の推定量は69PBqである。
 日本周辺に落ちたものは運ばれて潜って1周する。
 今はモデル計算できるようになった。

 1F事故はどうだったか。
 地震、続いて津波が来て、冷却喪失となった。
 研究者としては1F事故が起きる前からCs-137のことには興味があった。
 英米ロで事故が起きた。
 次に事故が起きるとしたら、仏日中のいずれかだろう。
 1F事故前に原子力安全委員会にCs-137の海洋観測研究の提案をしていた。
 でも採用されなかった。
 海水のサンプリングをしていた。
 エリアは1.3E7 km2で、深さ100m、体積として1.3E15m3である。
 船の水は海水から取っている。
 Cs-137はNaと同じ族だから取りにくい。
 2011年4月にCs-137は1000Bq/m3だった。
 1F事故前は1Bq/m3であった。
 Cs-134も同じように測定した。
 1F事故のモデル計算ができるようになった。
 Cs-137は冷却されて海に入る。
 日本から離れていくと、深さ200mくらいで最大濃度となる。
 太平洋を9つのブロックに分けた。
 太平洋の真ん中は事故後1年くらいで濃度が上がる。
 南の方は横ばいである。
 日本海のCs-137についても見てみた。

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         図7 日本海でのCs-137放射能濃度変化

 1F事故後にゆっくり上がっている。
 福島の海から時計回りで日本海に行った。
 2015年から2016年に濃度が上がっている。
 日本海はだんだん減っているが、東シナ海南部は減少しない。
 南極周辺には届いていない。
 Cs-137の輸送経路は黒潮に乗り、アメリカ西海岸にぶつかり、そこから南北に分かれる。

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         図8 Cs-137の世界の広域輸送状況

 北はベーリング海に行き、南は亜熱帯循環に乗り、東シナ海へ、東シナ海から日本海に輸送されることが推定される。
 1F近傍では、6,800万Bq/m3であり、遮水壁ができて以後は100~150Bq/m3である。

 総量の問題について述べる。
 観測における濃度データから総量の推定を行い、北太平洋のCs-137は15PBq程度であり、大気放出は20PBq程度であった。
 このうち土地に残った量は5PBq程度、海に流れ込んだのは15PBq程度と計算できた。
 マスバランスはなぜ重要か。
 報告された値と理論値が一致しない場合は報告された値が全体を見ていない可能性がある。
 1F事故の数値でエリアの一部しか測定していないものを全体を測定したような不適切な数値が出回っていた。
 プロセスの全体像を見ないと、真実を理解することはできない、と説明した。

 ここで昼休みとなった。

 午後からは、(3)で「診療用放射線の安全管理の法制化:医療被ばくの適正化に向けて」というタイトルで、 北里大学の井上氏が講演した。
 医療における放射線は大切である。
 被ばく線量については胸部CTや骨盤CTなどが多い。

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         図9 医療における検査被ばくの例

 日本の自然放射線は2.1Sv/年である。
 医療関係はそれに上乗せされて、3.87mSv/年である。

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         図10 日本と世界の自然放射線被ばくと医療被ばくの比較

 世界では医療で0.6mSv/年であるから、日本は多い。
 このうち半分以上はCTによるものである。
 日本のCT保有は人口100万人あたり100台で世界最多の保有数である。
 懸念されるのは検査放射線による発がんリスクである。
 LNT(線形)モデルでは100mSv以上で発がんが増えるとされる。
 100mSv未満でも修復機能が働いているかもしれないが、安全側に考えてLNTモデルが適用されている。
 米で年間60万人の小児に頭部/腹部CTを実施しているが、1200人に1人の割合でCTが原因でがん死する、とのレポートがあった。

 医療被ばくの低減に向けて、”Image Gently”(患者に優しい医療)、”Image Wisely”(目の前の診療だけでなく患者の人生を考える)という考え方が出てきた。
 医療被ばく低減のキャンペーンが行われ始めた。
 診断被ばくが原因でのがんは3.2%というレポートがある。
 CT被ばくと発がんの疫学研究で、CTを受けた約18万人の疫学調査で、白血病と脳腫瘍が増えた結果が出た。

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         図11 CT被ばくと発がんとの関係

 ただ基礎疾患があったかもしれないが、このデータの中に入っていない。
 医療被ばくの適正化が必要である。
 放射線防護の基本原則は、行為の正当化(診療による被ばくという不利益より、疾患発見・治療による利益が大きいとするもの)、防護の最適化 (ALARAの原則:合理的に達成可能な範囲で被ばく量低減)、個人の線量低減である。
 個人線量低減は医療従事者、公衆被ばくには適用されるが、医療被ばくは例外とされている現状がある。
 正当化については、海外の検査適応基準として米ACRがある。
 中リスクの前立腺がんに関するガイドであるが、わが国にはない。
 検査における最適化では、診療上の価値が保たれる範囲内で線量を減らすことである。
 CTの最適化では、X線照射量は各医療機関が決める。
 被ばくと画質のバランスが考慮される。
 撮影条件の最適化においてはDRL(診断参考レベル:Diagnostic Reference Level)を使用するのがよい。
 使用線量が高い施設はそれを自覚する目安となる。
 線量分布の75パーセンタイル値をDRLとする。
 CTの線量指標として、CTDvol、DLPが使われる。
 CTDvol(mGy)は撮影部位の吸収線量である。
 DLP(mGy・㎝)は1回の撮影全体の線量の指標であり、DLP=CTDvol×撮影長である。
 CT線量の実効線量への換算が頭頚部や胸部などについてICRPで定められている。
 CTの最適化では検査内容の最適化が必要になる。
 撮影範囲が広ければ被ばくは多くなる。
 CTの被ばく低減技術が開発されている。
 自動露出制御、患者の体の減弱に応じた自動補正などである。
 画像再構成等でAIを使った技術も発達している。

 日本学術会議が2014年に医学教育における放射線健康リスク教育について、1F事故を踏まえて提言を行った。
 これにより放射線リスク教育がスタートした。
 2017年にはCT検査における医療被ばくの低減に関する提言を行った。
 ここでCTにおけるDRL(診断参考レベル)利用に言及した。
 医療被ばく教育の充実を促した。
 検査適応基準(ACR)の充実も指摘した。
 H30年に診療報酬も改訂され、適切な被ばく線量管理を行っていることが施設の基準に入れられた。
 厚労省の検討会でも、医療放射線の適正管理に関する検討会がCT検査の被ばく低減を取り上げている。
 診療用放射線に係る安全管理体制の中で、医療放射線に係る安全管理が法制化された。

 北里大学での医療放射線安全組織を紹介する。
 血管造影、CT管理、核医学管理、一般/造影管理の4つのチームがあり、これを医療放射線管理委員会が統括する。
 指針の策定を行った。
 基本的な考え方は厚労省指針策定ガイドラインに基づく。
 安全利用のための研修会を行った。
 2019年には全医師、全診療放射線技師、全看護師を対象とした院内研修を行った。
 線量管理、線量記録について、CT、血管造影、核医学診療は必須とした。
 診断参考レベルDRLを使用して線量を評価することとした。
 線量指標としてのCTDvol、DLPも使用することとした。
 DRLと比較して線量低減を検討した。 
 過剰被ばくの発生時の対応も検討した。
 患者の不利益になる場合、紅斑等の有害事象が出た場合等の検討を行った。
 医療従事者と患者間の情報共有についても指針に記載した。
 患者に対する説明の対応者は口頭で説明する。
 検査説明文書の雛形を用意している。
 線量参考表も医療情報システムに掲示している。
 患者への被ばく説明の参考資料も掲示している。

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         図12 検査オーダー画面の例

 検査オーダー画面も色別に示している。
 患者向けパンフレットも用意している。

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         図13 患者用パンフレットの例

 説明されても患者側に知識がないと困ることになり、それは課題である、と説明した。

 (4)では「核医学診療の動向-腫瘍核医学を主に-」というタイトルで、香川大学の山本女史がオンラインで講演した。
 核医学診療の実態を核医学診療実態調査報告書より抜粋して説明する。
 核医学施設は全国で1,249ある。
 このうちシングルフォトン検査関係が1,156である。
 PET検査は389ある。
 シングルフォトン検査は年間100万件あるが、減少気味である。
 PETは71万件あるが、増加気味である。

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         図14 シングルフォトン検査の状況
 
 シングルフォトン検査で多いのは、骨シンチグラフィで約3万件、心筋シンチグラフィが2万件、脳血流シンチグラフィが1万6千件で、これがベスト3である。
 PET検査の保険適用は2002年に肺がん、乳がん等12項目になっている。
 悪性腫瘍への保険適用が2020年に始まっている。

 以下は実際の診療例である。
 心臓サルコイドーシスにF-18-FDG PETでの例を示す。
 (筆者注F-18:フッ素の同位体、0.633Mev陽電子放出、半減期110分)
 高安動脈炎でのF-18-FDG PETの例を示す。
 主な薬剤別PET検査件数では11-Cメチオニン、13-Nアンモニア、15-O酸素ガスが多い。(F-18-FDGを除く)

R3-2-22R1 4山本女史 2薬剤別PET検査.jpg
         図15 薬剤別PET検査の状況

 (筆者注11-C:炭素の同位体、0.96Mev陽電子放出、半減期20分、13-N:窒素の同位体、1.198Mev陽電子放出、半減期10分、15-O:酸素の同位体、1.73Mev陽電子放出、半減期2分)
 15-O標識ガスでの脳循環代謝測定の図を示す。
 11-CメチオニンPETでは、正常細胞への集積が少ない。
 腫瘍細胞ではたんぱく合成が盛んで発現するので、腫瘍範囲を適切に描出できる。
 アルツハイマー病にはF-18-FDG PETを用いる。
 非密封RIを用いた甲状腺がんの治療ではヨウ素I-131を使う。
 核医学の今後では、撮像機器のハイブリッド化が進む。
 ガンマカメラではSPECT対応、PET-CTが91%も使用されている。
 PET―MRIの導入も始まっている。
 ホールボディPETもある、と説明した。
 (以下に多くの事例紹介があったが、ほとんどわからなかったので省略する。)

 (5)では特別講演として「原爆被爆禍とCOVID-19パンデミック-その意外な共通点-」というタイトルで、広島大学の大瀧氏がリモートで講演した。
 今から45年前の1975年に広島大学に就職し、ずっと研究活動を続けてきた。
 原爆ドームと平和記念公園の写真を示す。

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         図16 原爆ドームの写真

 原爆被爆を表す2つのキーワードはピカ&ドーンである。
 ピカはガンマ線と中性子である。
 ドーンは衝撃波、爆風である。
 原爆の死者は広島で14万人、長崎で7万人である。
 広島に投下された原爆はウラン、長崎はプルトニウムである。
 前者はリトル・ボーイ、後者はファット・マンと呼ばれていた。
 東京大空襲で10万人の死者が出たが、これは2,000トンの焼夷弾によるものである。
 原爆の被災は爆心地から2.5㎞圏内が大きい。
 爆心地から半径3㎞では建物の90%が破壊・焼失した。
 原爆被害は熱線、爆風、放射線によるものである。
 上空600mで爆発し、火球の最大直径は280mである。
 爆発点の温度は100万℃で、地表面では3,000~4,000℃に達した。
 3.5㎞離れても素肌はやけどした。
 爆風による被害は爆心地から2.5㎞では木造家屋のほとんどが倒壊した。
 放射線による被害は600m離れて6Gy、2㎞で0.07Gyである。
 人体の影響としては、2週間後までに急性障害(下痢、下血、血尿、全身脱力、嘔吐等)が多発した。
 それから第2期の亜急性症状で上記の症状が同じように出た。
 1945年の終りまでに被爆距離別死亡者のヒストグラムを示す。

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         図17 被爆での距離別死亡者の分布

 中心地は軍の施設があったので、人は少なかった。
 S21年以降に後障害が出た。
 特に白血病が多かった。
 今も発症率が高い。
 固形がん、甲状腺がん、乳がんも出てきた。
 放射性微粒子による広範囲放射能汚染があった。
 キノコ雲にも放射能が含まれていた。
 キノコ雲は従来8,000mと言われていたが、最新のイメージ画像解析で実は16,000mだったとわかり、汚染地域が広がったと見られる。
 エノラ・ゲイ(原爆投下飛行機)から撮った写真がある。
 土埃が舞い上がる様子が見える。
 被爆者の被爆所在地と急性症状既往歴の有無を見ると、爆心地から2.5㎞近傍で多いことがわかる。
 直径5㎞圏内に多く、男性より女性の方が多い。
 広島市の内科医の於保氏の急性症状発症実態調査がある。
 約4,500名の聞き取り調査を行った。
 その結果の論文を1957年に発表している。
 被爆後に爆心地に接近したか、しなかったかで差が表れる。
 再接近した人の有症率が高い。
 粉塵被爆の健康影響については陸軍船舶特別幹部候補生のアンケート調査がある。
 当時は15~20歳くらいで今は90歳くらいである。
 20㎞離れたところから爆心地に入った。
 142名中64名から回答を得た。
 彼らは怪我人の搬送や看護を行っていた。
 急性症状の頻度を調べると、粉塵記録のあるグループは急性症状が多かった。
 がん発症も多かった。
 放射線影響研究所でのコホート研究は世界的に信頼度が高い。
 2017年にレポートを出し、1958年から2009年までの300万人の追跡調査を行った結果を発表した。
 大腸の被爆とがんのグラフが示された。
 広島と長崎のグラフも合わせて示され、男性より女性の方ががんり患が多かった。
 この原因はわかっていない。
 放射線被爆線量推定に使われた染色体異常に着目した。
 広島と長崎で違う。
 家の中にいた方が染色体異常が多い。
 家の中における線量評価がずれている可能性がある。
 被爆によるイメージでは家の中は遮へいされている、としたが、汚染したエアロゾルがあると家の中も外も同じではないか、というものである。

R3-2-22R1 5大瀧氏 3被ばくの機序 家の中の被爆.jpg
         図18 家の中の被爆のモデル例

 広島大学の被爆者コホート研究がある。
 広島県内の居住者27万人を追跡した。
 初期放射線では説明できない原爆被爆者の健康障害がある。
 1.2㎞圏外では全国のデータと変わらない。
 1Svよりひくいところではよくわからない。
 人は移動する。
 男性はよく動いている。
 最近「黒い雨訴訟」があった。
 放射性微粒子による健康障害とコロナによるサイトカインストームは似ている。
 内部被爆ではSvは定義できていない、と説明した。

 以上で今回の講習会は終わった。

 患者の医療被ばくについて聞いたのは今回が初めてであった。
 その点で今回の講習会も参考になった。
 ただ、放射線治療を医者が患者に説明しても、説明を受ける患者に放射線の知識がないと徒労に終る可能性もあることがわかった。
 また、北里大学の井上氏も医者の立場であり、放射線治療をうけるがん患者の視点をなかなか理解できないのだろうと思う。
 一歩進んで、放射線業務従事者と同じように、がん患者も被ばく線量の中央登録制度(青手帳)を作って欲しい。
 確か厚労省あたりで動いているらしいことは以前に聞いた覚えはあるが、実現したのかどうかはっきりしない。

 このほか、青山氏の海洋の放射能汚染挙動のスケールの大きさに圧倒された。
 船で航海している人にサンプリング頼み、世界中の海の放射能を測定等を考える発想はどこからきているのか知りたいものである。

 また大瀧氏の原爆被爆者の話は概観は知っていても中身の多くを知らないものにとって貴重な機会となった。
 できれば、被爆者の内臓の中のアルファ、ベータ、ガンマ核種の蓄積分布と健康影響の有無の調査を行って欲しい、と思う。

 今後もこの放射線安全講習会は費用は参加費1万円と高いが、それに見合う情報提供をしてくれるので今後も参加していきたいと思う。


<令和2年度(春期)「放射線安全管理研修会」>
 テーマ「放射線安全管理と放射線安全文化の醸成をめざして」
 1.日時:2021年(令和3年)2月22日(月) 10:00 ~ 16:30
 2.場所:文京シビックホール(小ホール)(別図 )
 3.主催:放射線障害防止中央協議会
 4.共催:(公財)原子力安全技術センター
 5.協賛:(公社)日本アイソトープ協会、医療放射線防護連絡協議会
 6.参加費:一般10,000円、会員8,000円(テキスト代含む)

 7.プログラム内容
  開会の挨拶 放射線障害防止中央協議会 会長 畑澤 順 10:00 ~ 10:05
 (1)「電離放射線障害防止規則改正のポイント」 10:05 ~ 10:50
    講師 夏井智毅 先生 厚生労働省労働基準局
 (休憩 10分)
 (2)「福島事故で海洋に放出された放射性物質の長期広域挙動」-10年間追いかけてわかったこと- 11:00 ~ 12:00
    講師 青山 道夫 先生 筑波大学生命環境系

 昼休み (60分) 12:00 ~ 13:00

 (3)「診療用放射線の安全管理の法制化:医療被ばくの適正化に向けて」 13:00 ~ 14:00
    講師 井上 優介 先生 北里大学医学部
(休憩 15分)
 (4)「核医学診療の動向-腫瘍核医学を主に-」 14:15 ~ 15:15
    講師 山本 由佳 先生 香川大学医学部
(休憩 15 分)
 (5)特別講演 「原爆被爆禍とCOVID-19パンデミック-その意外な共通点-」 15:30 ~16:30
        講師 大瀧 慈 先生 広島大学

 8.開催案内
 拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 東日本大震災から間もなく10年になろうとしていますが、被災された方々の心労はまだ癒されたと言えない状況かとご推察いたします。
 あらためて心からお見舞い申し上げるとともに、震災後の復旧、復興に今なおご尽力されておられる皆様には、更に健康・安全に留意されてご活躍されますようお祈りいたします。
 また、新型コロナウイルス感染症治療の最前線で日夜奮闘されておられる医療従事者の皆様へ敬意と感謝を申し上げます。
 さて、当協議会は、放射性同位元素等を取り扱う皆様の認識を高め、安全管理を徹底し、 放射線障害の発生を未然に防止するよう適切な対策の検討・推進をしていくことを目的に、関係機関が集まり、相互協力のもと自主的に活動する機関として昭和49年に設立され、研修会等の諸活動を実施しております。
 本研修会はその活動の一環として、公益財団法人原子力安全技術センターとの共催並びに公益社団法人日本アイソトープ協会及び医療放射線防護連絡協議会の協賛により「会場集合型研修会」+「同時オンライン(ZOOMウエビナー)配信」のハイブリッド形式で開催するものです。
 研修会午前の部は、厚生労働省(労働基準局安全衛生部労働衛生課)電離放射線労働者健 康対策室長から「電離放射線障害防止規則改正のポイント」と題して、次に、海洋における物質循環と環境放射能の専門家から「福島事故で海洋に放出された放射性物質の長期広域挙動-10年間追いかけてわかったこと」と題しての講演を予定しております。
 午後の部は、医療現場で放射線安全管理に長年携わってきた放射線診断専門医から「診 療用放射線の安全管理の法制化:医療被ばくの適正化に向けて」と題して、次は、腫瘍PET イメージングを専門とする臨床医から「核医学診療の動向-腫瘍核医学を主に-」と題し ての講演を予定しております。
 最後は特別講演として、放射線疫学・統計学の専門家から「原爆被爆禍とCOVID-19パンデミック-その意外な共通点-」と題しての講演を予定しております。
 本研修会は、第一線で活躍する様々な分野における専門家を講師に迎え、時宜を得た講演 を受講することができる貴重な機会であり、放射性同位元素や放射線発生装置等取扱事業所の安全管理に携わる皆様並びに放射線にご関心をお持ちの皆様にとって非常に有益な情報を得ることのできる内容になっております。
 関係各位には、本研修会に奮ってご参加頂けますようご案内申し上げます。 敬具
  -以上-

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