今年の将棋名人戦を振り返って

 今年の将棋名人戦を振り返ってみたい。

 今年の将棋名人戦は7番勝負の第6局まであり、挑戦者の渡部明王将・棋王が豊島将之名人(以後ここでは豊島名人と書いておく。タイトル奪取で今は渡辺名人であるから本来は前名人、または豊島竜王(今は一冠のみ)とするべきであるが。)に4勝2敗で勝ち、名人位を奪取した。

 この名人戦は通常なら4月に始まるはずだったが、新型コロナウイルスの影響で開幕が2か月遅れとなった。
 結果は以下の通りであった。
  第1局:6/10&6/11 先手豊島名人 144手で渡辺王将の勝ち
  第2局:6/18&6/19 先手渡辺王将 158手で豊島名人の勝ち
  第3局:6/25&6/26 先手豊島名人 145手で豊島名人の勝ち
  第4局:7/27&7/28 先手渡辺王将 101手で渡辺王将の勝ち
  第5局:8/7&8/8  先手豊島名人 128手で渡辺王将の勝ち
  第6局:8/14&8/15 先手渡辺王将  99手で渡辺王将の勝ち

 渡辺王将はこれまで竜王など他のタイトルはかなりの数を獲得しているが、なぜか名人戦には挑戦者にさえならなかった。
 しかも2年前には名人戦A級リーグから陥落した。
 でもそこから確かB1組で全勝で昨年A級に復帰し、A級でも9戦全勝で挑戦者となった。

 ただ今期のこの名人戦の前に藤井聡太七段(当時、今はタイトル二冠により八段に昇段)に1勝3敗で棋聖位を奪われていた。
 しかも豊島名人とは以前の対局ではあまり勝っていない印象があった。
 藤井聡太二冠(王位・棋聖)も豊島名人に5戦全敗らしい。

 私はなぜか渡辺王将が好きである。
 ひょっとしたら、風貌が私の故郷の岡山県倉敷市出身の故大山康晴十五世名人に似ているからかもしれない。
 渡辺王将のブログを以前はよく見ていたが、競馬が好きなようであった。
 奥さんは元女流棋士で渡辺王将の才能を認めて、家事に専念するようになったと記憶している。

 最近の私は将棋自体観戦主体で、毎日新聞の順位戦の記録や他のタイトル戦の結果が小さく出ているのをみて、ネットで棋譜観戦したりする程度である。
 やはりAIによって、囲碁や将棋のプロ棋士が負けるという現実がある。
 また私自身も「激指し」という将棋ソフトとレーティング戦をやると、10級で9勝1敗、8級で五分五分、6級で1勝9敗くらいの棋力の差があるのを実感して、少し将棋に対する興味が薄れたかもしれない。
 将棋は勝てないと楽しくない。
 でもプロ棋士は敗戦の中から学んで強くなっていかないといけないので辛いだろうな、と思うことがある。
 藤井聡太二冠も29連勝した後に負けているから、その時は辛いはずであるが、勝っても反省点がある、というコメントも出しているようで、どこまで伸びていくのか楽しみではある。

 さて名人戦に戻って、各対戦を振り返ってみる。
 ただ、この棋譜は毎日新聞、または朝日新聞で有料となっているので、詳しいことを書くと、著作権に触れるかもしれない。
 だから印象に残った場面の局面(これは9月18日の毎日新聞でこの6局の解説を渡辺名人(以降は名人戦のことなので、渡辺王将と記載する。)が行っている。ここに記載している局面図Aと「激指し」ソフトの解析Bというのがあって、この棋譜の優勢・劣勢の判定を行ったので、この2つくらいの局面と投了図Cのみ。)を載せる。
 もし興味がある人は毎日新聞の会員登録をした後であれば、6局全部の棋譜が掲載されているページにアクセス可能である。
 ただしこの記録がいつまで掲載されているかはわからない。

 第1局は豊島名人先手で角換わり腰掛銀であった。
 最近よく指されている戦型である。
 「激指し」ソフトの解析によれば以下の通りとなっている。

1R2-9-15 R1 名人戦第1局形勢判断.jpg
         図1 名人戦第1局形勢判断

 序盤は後手優勢であったが、100手前後で後手に疑問手が出て、互角となり、後手の再度の疑問手により先手優勢となった。
 最終盤で後手に悪手が出て、先手の勝ちとなった。
 局面図Aでは、40手目の局面を解説している。

2R2-9-15R1  名人戦第1局途中図40手目.jpg
         図2 名人戦第1局の一局面

 端攻めを見せた92香というのが、渡辺王将の工夫らしい。
 確かにこうした局面では22玉と入玉するくらいが通常の手である。
 後手の手待ちはあるらしいのだが、あまり見ていない。
 この後、渡辺王将は4筋に飛車を振る構想を見せて優位に進めたが、疑問手が出て、豊島名人が優勢になった。
 しかし、最終盤に豊島名人に敗着となる手が出て、渡辺王将の勝ちになった。

3R2-9-15 R1名人戦第1局投了図.jpg
         図3 名人戦第1局投了図

 第2局は渡辺王将の先手で相居飛車の戦型となった。
 「激指し」ソフトの解析によれば以下の通りとなっている。

4R2-9-15R1 名人戦第2局形勢判断.jpg
         図4 名人戦第2局形勢判断

 途中で豊島名人が64桂と打ったが、この桂が活躍できるかどうかが焦点となった。
 結局この桂が活きて、後手の豊島名人の勝ちとなった。
 局面図Aでは、140手目の局面を解説している。

5R2-9-15R1  名人戦第2局途中図140手目.jpg
         図5 名人戦第2局の一局面

 ここで76玉と逃げたので負けた、57歩と中合いの手を指していれば勝ちだったかもしれないと解説している。
 この時に「激指し」ソフトの解析では、この47飛は悪手で69飛、55金、67金と打てば後手有利としている。
 結局この後豊島名人が制している。

6R2-9-15R1 名人戦第2局投了図.jpg
         図6 名人戦第2局投了図

 第3局は相居飛車であった。
 「激指し」ソフトの解析によれば以下の通りとなっている。

7R2-9-15R1 名人戦第3局形勢判断.jpg
         図7 名人戦第3局形勢判断

 途中で豊島名人が指した66角というのが、後手の22玉をにらんだ好手であった。
 以後渡辺王将も猛反撃をしたが、豊島名人が入玉を果たして勝った。
 局面図Aでは、101手目の局面を解説している。

8R2-9-15R1  名人戦第3局途中図101手目.jpg
         図8 名人戦第3局の一局面

 ここではひょっとしたら逆転したかも、と思ったが、結局ダメだったとしている。

9R2-9-15R1 名人戦第3局投了図.jpg
         図9 名人戦第3局投了図

 第4局は相矢倉の出だしであった。
 先手の渡辺王将が矢倉崩しで優勢になったかと思ったが、豊島名人が反撃して優劣不明であった。
 「激指し」ソフトの解析によれば以下の通りとなっている。

10R2-9-15R1 名人戦第4局形勢判断.jpg
         図10 名人戦第4局形勢判断

 局面図Aでは、83手目の局面を解説している。

11R2-9-15R1  名人戦第4局途中図83手目.jpg
         図11 名人戦第4局の一局面

 77銀を強く同金と取った局面である。
 通常は同桂であろうが、局面の流れで渡辺王将の勝負勘がこう指したようである。
 この少し後に豊島名人に致命的な悪手が出て、渡辺王将が勝ち、2勝2敗の五分となった。

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         図12 名人戦第4局投了図

 第5局は相居飛車の将棋となった。
 豊島名人は棒銀模様にし、渡辺王将は4筋に飛車を振るというような力戦型となり、よくわけがわからない将棋であった。
 「激指し」ソフトの解析によれば以下の通りとなっている。

13R2-9-15R1 名人戦第5局形勢判断.jpg
         図13 名人戦第5局形勢判断

 局面図Aでは、94手目の局面を解説している。

14R2-9-15R1  名人戦第5局途中図94手目.jpg
         図14 名人戦第5局の一局面

 この後、先手は81飛成か86飛成であろうが、前者を選択したので、82銀と竜の動きを完封して渡辺王将が勝った。

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         図15 名人戦第5局投了図

 これで3勝2敗となり、渡辺王将は名人位に王手がかかった。

 第6局は相矢倉模様であった。
 従来の攻撃パターンと違って、どこが戦場なのかよくわからない状況であった。
 「激指し」ソフトの解析によれば以下の通りとなっている。

16R2-9-15R1 名人戦第6局形勢判断.jpg
         図16 名人戦第6局形勢判断

 ほとんど互角で推移している。
 局面図Aでは、73手目の局面を解説している。

17R2-9-15R1  名人戦第6局途中図73手目.jpg
         図17 名人戦第6局の一局面

 この53歩が焦点の歩で、銀でも金でも取りにくいものであった。
 この歩が52歩成とと金になって、渡辺王将が勝った。

18R2-9-15R1 名人戦第6局投了図.jpg
         図18 名人戦第6局投了図

 これで4勝2敗となり、渡辺王将が名人位を奪取した。

 今はAIを利用した解説やAIの形勢判断等が多く利用され、これを利用しない中高年の棋士がなかなか活躍できない状況にある。

 直近の情報では、叡王戦において、永瀬拓矢叡王と豊島将之竜王が3勝3敗2持将棋で第9局で決着がつく情勢である。
 また竜王戦では決勝トーナメントの決勝3番勝負で、羽生善治九段が丸山忠久九段を2勝1敗で破り、挑戦者となったニュースが出ていた。
 羽生九段はタイトル99期で、100期目のタイトル獲得に向けて、というところである。

 最近は佐藤天彦九段の活躍があまりないようで、名人位にある時にAIに負けたことで有名になってしまったところもある。
 将棋界も藤井聡太二冠の台頭等若手の活躍、羽生九段等AIの苦手な中高年棋士の悪戦苦闘を見ていきたいと思う。
  -以上-

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