地方創生シンポに参加

 地方創生シンポ(R1/12/22(日))に参加した。

 義父宅のある地域は将来の消滅可能性都市としての896自治体の1つに入っている。
 息子や娘の持っている義父宅や貸家4件の資産価値を下げないためにも、義父宅の地域の地方創生に関して、何らかの打開策を考えておかないといけないと思っている。
 この地方創生シンポも日本学術会議のHPに載っており、事前申し込み不要、無料となっていたので、何も他に用事がなければ参加しようと思っていた。
 結局、風邪もひかず、他に用事もないので参加した。

 12月22日(日)には家でマイボトルを用意して麦茶を入れていった。
 会場の受付で所属・氏名を書いて、資料一式と質問票をもらった。
 プログラムは末尾に添付する。

 また、今年1月16日(木)に国立がん研究センターに行って血液検査と面談を受けた。
 結果としてはPSA=3.7であり、さらに経過観察するということで、4月に血液検査と面談を決めたことを記しておく。

 席に荷物を置いて、トイレに行き、休憩室で自販機のコーヒーを買った。
 通常120円か130円だが、ここの自販機は90円と安いのである。

 シンポが始まった最初に宮町氏が、司会の田原女史がインフルエンザに罹ったことを説明した。
 (前日の温暖化シンポでもやはり講演者の一人がインフルエンザに罹って欠席していた。人混みに入っていると、インフルエンザに罹る率が多くなるのだろうと思った。)
 地域をベースとした学問を研究している。
 地方創生が大きな話題となっている。
 最初の玄田氏のいうところの小ネタを集めたいと思う。

 (1)では「地方創生と地域の希望学」というタイトルで、東京大学の玄田氏が講演した。
 地域の希望再生の条件を希望学調査という名称で研究している。
 ローカルアイデンティティの再構築が必要になる。
 地域内外のネットワークの形成が必要になる。
 ウィーク・タイズ(弱いつながり)である。
 希望の共有が必要である。
 この3つの要素を貫くのが「対話」である。
 釜石市は人口が9万人から3万人に減った。
 希望学研究は2006年から2009年まで釜石で行った。
 その後、新潟県十日町市、福島県浪江町等を訪問し、具体的な手がかりを求めた。
 衰退しない地域に共通することは「人口が減っても地域はそう簡単になくならない。だが、小ネタが尽きると、あっという間に地域は衰退していく。」ということである。
 小ネタが豊富にある限り、地域は持続する。
 小ネタこそ、衰退という危機を回避し、未来を創造する要素である。

 では小ネタとは何か。
 ねた(ネタ)とは「たね(種)を逆さ読みした隠語」である。
 ネタは「演芸の題名。根多とも書く」と落語の世界で言われる。
 名人にしか許されない難易度の高い演目は大ネタと呼ばれる。

 小ネタは「ちょっとしたきっかけ(材料・仕掛け)と、そこから生まれつつあるささやかな兆し」と定義する。
 学術からは程遠い用語である。
 誰もが扱おうとすれば扱える小さな話題で、小ネタは人と人とが交わす何気ない日常会話の中にある。
 小ネタはきっかけや兆しであり、完結していないのが普通である。
 明確な「オチ(結論)」がないのが特徴であり、「だからナニ?」というものである。
 一見無謀と思えなくもないことに、どこか理由や確信もあり、懸命に何かに挑み続ける人々の姿が目に浮かぶのは余韻を残す小ネタに共通している。
 「また聞きたい」「先が知りたい」といった気持ちにさせる。
 聞いた人は忘れられず、どこかムズムズした気持ちになる。
 釜石で出会った小ネタの例を話す。
 希望が欲しい、と言う。
 本当に希望か。
 幸福は今という時点、希望は未来という時間軸を持つ。
 棚からぼたもち、ではない。
 動いてもがいて、その中から見つけるのではないか。
 何か持っていく時に何がいいか。
 衣服はいらない。
 食料も十分である。
 カレンダーを持っていったら喜ばれた。

 小ネタを訪ねて行った。
 トリエンナーレに行った。
 芸術家が入って行っても、住民と交流できない。
 作品作りに関わって初めて交流できた。

 小ネタは地域の現在を語る旬であり、「現場感」を得るための有効かつ重要なツールである。
 小ネタから「そういえば」「あそこでも」が飛び出す。
 土地に根差した小ネタは関連する動きや取り組みへとつながる。
 ローカルアイデンティティと小ネタの関係では、小ネタの積み重ねの中にローカルアイデンティティができる。
 アイデンティティは専門家が説明できても、住民に浸透したものでなければ、本当の誇りにならない。
 内外ネットワークと小ネタの関係も、内外ネットワークの形成にも小ネタは関わる。
 ネットワークといっても結局何が語られるか。
 壮大な目標より、実際の話題はもっぱら小ネタである。
 何気ない話題がきっかけとなり、内外の交流は持続する。
 良質な関係とは、ビジネスライクではなく、相手のために無償で時間を使うことが苦にならない関係であり、個人の価値観、文化風習、地元愛といった小さな波動を共有できる関係である。
 この小さな波動こそ小ネタの核心である。
 小ネタが続く限りネットワークは保たれる。
 波動が途絶え、語ることがなくなればネットワークは瞬時に廃れる。
 小ネタはきっかけであり、ささやかな兆しである。
 事実と願望の間を行ったり来たりするもので、虚構の方がむしろリアルかもしれない。

 ユーモアは地域の現実を簡潔に指摘し、人々が何を本気で望み、何を望んでいないかという真実を如実に反映している。
 ネタは事実ではなく、「作り話(ガセネタ)」を意味することもある。
 それが誰かの心に響き、希望の共有は現実になっていく。

 大ネタは豊富な材料が要り、大掛かりな仕掛けが伴う。
 大ネタは経済の活性化や関係人口・定住人口の増加を目指す。
 経済衰退や人口減少の歯止めが利かない地域ほど、一発逆転の大転換には大ネタが必要と信じて疑われない。
 大ネタには「ストーリー」「ビッグピクチャー」が求められる。
 大ネタには目に見える成果も期待される。
 大ネタには人手と時間と経費が相当にかかる。
 活性化を夢見て、永遠に大ネタを求めざるを得ないのは不幸である。

 ブリコラージュというものがある。
 レヴィ・ストロースによると、「ありあわせの道具材料を用いて、自分の手でものを作る」行為という。
 ブリコラージュは素人が日常の何気ない事柄の中から機知に富んだ話を引き出す小ネタに通じる。
 ブリコラージュの対の概念にエンジニアリングがある。
 情報を収集し、設計・計画を慎重に行い、科学的に構造を把握し、実行する。
 エンジニアリングは大ネタ的である。
 エンジニアリングとブリコラージュは人智の発展上両方とも必要、とレヴィ・ストロースは言う。

 これからの地方行政は地域社会の大きな方向性を示し、実現にまい進する大ネタが期待される。
 行政は大ネタを進めるために、小ネタをブリコラージュとして埋め込み、活用する必要がある。
 地元の話題を拾い上げ、大ネタに埋め込んでいくことは、住民の理解と共感、協力を得て政策を推進する力になる。
 どんなことからも小ネタは生まれる。
 クスっとすることがあったなら、とりとめもなく笑いあう。
 それをきっかけに話題は思いもよらずつながっていく。
 小ネタがあるところには人の確かな営みがある。
 小ネタに事欠かない場所には地域特有のたくましさ、潔さ、愛おしさがある。
 そんな地域がこれからも生き残り、地方を創生する、と説明した。

 私はどうも的外れな講演だな、と思って聞いていた。
 小ネタで地方創生なんてできるのかな、と思った。
 唯一これはあるかも、と思ったのは、地元密着という視点かもしれない。
 この視点を離れた地方創生はあり得ないことは確かだろう。

 (2)では「第2期における地方創生に向けた考え方と地域学」というタイトルで、東京大学の松原氏が講演した。
 この松原氏は玄田氏と違って、政府の業務にどっぷり浸った人である。
 第一期の内閣府「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、東京の一極集中是正や地方版総合戦略等の検証を行った。
 2020年からは第二期に入る。
 松原氏の専門は地理学である。
 第二期も東京の一極集中是正が必要で、そのために先進的な技術開発Society5.0と国連の持続的な開発目標SDGsの持続的なまちづくりの複合のようなことを目指す。
 第一期の検証会は2019年3月に行われた。
 結局東京への一極集中是正は未達であった。
 地方大学のあり方が議論になった。
 政府関係機関の移転では文化庁の京都移転のみであった。

 第二期の計画は10月2日から10月10日までに駆け足でまとめた。
 外国人材の活用や、人材サイクル構築、高等教育改革などが挙げられている。

R1 第二期総合戦略政策体系その2 R2-1-19.jpg
         図1 第二期 ひと・まち・しごと・総合戦略の概要

R1 全世代活躍型機能 R2-1-19.jpg
         図2 総合戦略の具体的な内容の例        

 以下は私の感想である。
 東京の一極集中是正のためには、地方に生活の基盤となる経済が移転しないといけない。
 そのためには一部上場企業の本社を全国46都道府県に法律で規定して強制的に移転させ、それに追随する業者群も移転することが必要である。
 これは企業のBCP(災害発生時の事業継続計画)ともなるし、企業の危機管理の上からも必要な視点と思う。
 また、東京の一極集中是正となるし、政府機関を移転させるよりこの企業移転の方が実効性が高いと思う。

 江戸時代の米沢藩の上杉鷹山は、借金だらけの財政を新たな事業を起こすことで改善したようである。
 現在の殖産興業ということはすぐには難しいと思うので、これに代わる策としては企業を無理やり地方移転させるしかないと思う。

 (3)では「地方創生と『新しい野の学問』」というタイトルで、東京大学の菅氏が講演した。
 新しい「野」の学問について説明する。
 民俗学が専門である。
 地方創生戦略は政策のてんこもりである。
 これに対して、地域学は地域の文化や歴史、産業、自然環境等を地域資源と考え、地域の環境保全と振興の調和の下に、住民の視点から生活の質的向上と安全安心な地域の実現を実証的に研究する複合分野であり、地方創生時代の要請により急速に発展してきている。

 「野」は「や」と読んでも「の」と読んでもよい。
 「の」と読めば、「野原」のように、音がやさしく響き、これまで光が当てられていない「民間の」というイメージがある。
 「や」と読めば、「野党」「下野」のように対抗性を強調するとともに、「野生」「粗野」や「野心」のエネルギーを感じる。

 明治時代は欧米の学問の植え付けだった。
 1960年代から対抗の時代に入った。
 1990年からは協働の時代に入り、新しい「野」の学問、すなわち地域学の時代となった。

 社会統治はかつて上意下達のガバメント型だった。
 しかし20世紀末から変革が行われ、市民参加を容認する協働的ガバナンスとなってきた。
 それと連動して学問の分野でも、科学技術ガバナンスとして、社会の多様な人材や集団が協力しながら意思決定を行うようになってきた。
 地域を基盤とする参加型研究としてとして、ローゼンストックは9つの指標を提案した。
 主なものとして、アイデンティティ、コミュニティ、平等な協力関係、持続可能な研究プロセス等である。

 レジデント型研究者とは地域に居住して研究を行う研究者である。
 菅氏は2004年の新潟中越沖地震後に新潟県小千谷市の国指定重要無形文化財「越後の角突き」(闘牛)への参画と協働的な継承の場に入った。

R1 小千谷の角突き風景 R2-1-19.jpg 
         図3 小千谷の角突き・その1

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         図4 小千谷の角突き・その2

 シンポジウムで話をしたり、動物愛護法ができた時には「角突き」(闘牛)は否定されないように、と活動した。
 闘牛場での女人禁制問題では、女性のみを集めて議論した。

 新しい「野」の中の研究者として、定型化しないひとつの地域学を実践している。
 普段は一緒に「角突き」を楽しみ、文化を共有している。
 長く付き合う、小さなことからこつこつと行っている。
 新しい「野」の学問はアカデミックの外側にいる。
 課題としては、外からの価値の押し付け、住民のためという偽装、アカデミックとのずれ等がある、と説明した。

 私は最初に説明を聞いた時には何かわけのわからないことを、と思っていたが、小千谷の「角突き」に参画している、とのことを聞いて、ダイナミックな活動研究家というように感想がコロコロ変わった。

 (4)から(6)は大学の宣伝みたいな気がして、あまり熱心には聞かなかった。

 (4)では「地域創生関係の競争的事業を経験して研究力、教育力、社会貢献力、事務力はどう変貌したか」というタイトルで、大阪市立大学の水内氏が講演した。
 COCやCOC+というシステムを導入した。
 COCは2013年度から2017年度までのもので、大阪の再生・賦活と安全・安心の創生を目指す地域志向教育の実践を目指した。
 COC+は「わかやまの未来を切り拓く若者を育む“紀の国大学”の構築」を目指し、主担当は和歌山大学である。
 副専攻を導入し、一過性に終わらせないように、座学でないフィールドワークに浸り、教員や先輩との距離も近い関係が築ける、等がメリットとしてある。
 事務的には社会連携課の設置等を行った。
 また研究面では、領域横断型教員のつながりが育った。
 学生や院生によるイベント参加等を行ったが、これを一過性でなく社会貢献の制度として作り上げていく必要がある。
 また、大阪市のニーズと大学のニーズをマッチングさせたスタートアップ支援事業として大阪市が制度化した。
 地域課題に関わるシンクタンクの位置を確立させていきたい、と説明した。

 (5)では「地方創生に大学がどう関わるか」というタイトルで、弘前大学の曽我氏が講演した。
 (4)で述べたCOC、COC+(共に文部科学省の主導による制度、知の拠点整備事業、Center of Community、COC+はCOCの発展系)について、弘前大学の取組について述べた。
 COCについては地域志向型科目を増やしたりした。
 この成果として、50%を超える学生が青森県への就職を希望するようになった。
 一方、COC+は複数の大学の連携を求められており、弘前大学では青森県内10の高等教育機関、青森県等の自治体、100余りの企業と連携することで、地域就職率の向上を目指した。
 しかし就職率は横ばいのままであった。
 地元企業は採用戦略を磨かないと、首都圏企業の採用活動に勝てない、と説明した。

 (6)では「鳥取大学における地域学の実践と展開―人材育成と地域貢献を中心に」というタイトルで、鳥取大学の山下氏が講演した。
 地域の持続可能な発展を担うことができるキーパーソン養成のために、多彩な地域系学部の創設を行った。
 研究に関して学際的で原理主義に偏る傾向がある。
 フィールドワークを多くすると、交通費の負担が大きくなる。
 地域貢献としては、教員による地域貢献や学生の地域活動がある。
 地域創造コースを設けて若い先生に新しい分野を開拓してもらう。
 AO入試では25%くらいいる。

 学生の進路として公務員が多い。
 起業する人もいる。
 楽しみながらやることが重要、と説明した。

 この後に総合討論があった。
 私は質問票に、企業の本社を全国にばらまく、ということを書いたら、司会が取り上げてくれた。
 よいこと、と賛同してくれたものの、実現の可能性は低いというようなニュアンスであった。

 他の人では外国人留学生が母国で活躍できているのか、とか、地域に人を残すのは容易でない、とかが話された。

 会場からの質問ということで、私は以下のように述べた。
 東日本大震災の時に、西日本は無傷だった。
 だからこの時に東日本と西日本の間で相互防災連携協定のようなものがあればすぐに活動できたはずである。
 南海トラフ地震に備えて、太平洋側と日本海側の自治体の相互防災連携協定、首都直下地震に備えて、46道府県と東京23区の間で1区当たり2県との相互防災連携協定を結んでおけば、いざという時の備えになる。
 またこうした時の相互防災訓練による人の移動が結果として地方創生にもつながる、と言ってみたが、あまり目立った反応はなかった。

 以上で、このシンポジウムは終了した。

 あまり収穫がなかったシンポジウムではあった。
 しかし、義父宅地域の自治体消滅とならないように、と思うので、今後もこうしたシンポジウムには参加して、自治体消滅に至らない方策を考えていきたいと思う。


<日本学術会議公開シンポジウム>
「第2期を迎えた地方創生と地域学のパースペクティブ」

 1.日時:2019年(令和元年)12月22日(日) 13:00-16:30
 2.場所:日本学術会議講堂
 3.主催:日本学術会議 地域研究委員会・地域学分科会
 4.後援:地理学連携機構、人文・経済地理関連学会協議会
 5.参加費:無料(事前登録は不要)
 6.開催趣旨
 「まち・ひと・しごと創生総合戦略」は2019年度に第1期を終え、2020年度からは第2期を迎えます。
 地理学は、地域の文化や歴史、産業、自然環境などを地域資源と考え、地域の環境保全と振興の調和のもとに、住民の視点から生活の質向上と安全・安心な地域の実現を実証的に研究する複合分野であるため、「地方創生」の要請により急速に発展しつつあります。
 本シンポジウムでは、息の長い取り組みである「地方創生」のあり方について、地域学が有する学際的で幅広い視点から見つめ直すことを目的とします。

 7.プログラム
  13:00-13:05 開会あいさつ・趣旨説明 宮町良広(大分大学)
  13:05-13:55 (1)「地方創生と地域の希望学」玄田有史(東京大学)
  13:55-14:15 (2)「第2期における地方創生に向けた考え方と地域学」松原宏(東京大学)
  14:25-14:40 (3)「地方創生と『新しい野の学問』」菅豊(東京大学)
  14:40-14:55 (4)「地域創生関係の競争的事業を経験して研究力、教育力、社会貢献力、事務力はどう変貌したか」水内俊雄(大阪市立大学)
  14:55-15:10 (5)「地方創生に大学がどう関わるか」曽我亨(弘前大学)
  15:10-15:25 (6)「鳥取大学における地域学の実践と展開―人材育成と地域貢献を中心に」山下博樹(鳥取大学)
  15:35-16:25 総合討論 司会 田原裕子(國學院大学)
  16:25-16:30 閉会あいさつ 中澤高志(明治大学)
   -以上-

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