地区防災計画のシンポジウム参加

 地区防災計画のシンポジウム(7/27(土))に参加した。

 最近防災士会では盛んに地区防災計画を防災士で作れ、という。
 今年の防災士会総会でもそうした機運が感じられた。
 一応参考としたい内閣府の地区防災計画マニュアルの抜粋を示しておく。

R1地区防災計画の流れ1 R1-8-18.jpg
         図1地区防災計画の位置付け

 そして、今年の7月8日(月)の日本防災士機構のメルマガに、上記シンポのことが載っていた。
 申し込みが必要なので、申し込みをしたのだが、メモに記録が残っていなかった。

 会場が日本大学法学部とのことで、調べてみると、JR水道橋駅近くであった。
 東京メトロ東西線で飯田橋駅まで行き、そこでJRに乗り換えて一駅である。
 駅からも割とわかりやすい経路であった。
 途中で500mlのペットボトルのお茶を買って行った。

 受付で名前を言うと、資料一式をくれた。
 プログラムを末尾に添付する。
 会場は1階だったので、避難路を確認する必要はなかった。

 講演の(1)では「地区防災計画制度へのソーシャルキャピタルの影響」というタイトルで、内閣官房の西澤氏が講演した。
 昨年の西日本豪雨において、倉敷真備町では夜間の河川氾濫により大きな被害が出た。
 しかし、岡山県内ではそれに次ぐ浸水があった岡山市東区平島学区では、約2,200戸が浸水したが、死者・行方不明者はなかった。(平島の奇跡)
 これは、地域の消防団が地域内を回り、スピーカーで垂直避難(1階から2階に避難)を呼びかけ、住民同士が協力して身体の不自由な高齢者などをおぶって2階に避難させたりした。
 平島学区はかつて一つの村だったことから、地域の結びつきが強く人間関係が密で、誰がどこに住んでいるかを把握しており、住民同士が相互に助け合う共助が日頃から存在したためである。
 地区防災計画を作る上では、地域コミュニティの協力が不可欠である。
 ソーシャルキャピタルの研究において、地域住民のネットワーク、信頼関係、互酬性(お互い様の意識)が高いコミュニティは治安も安定し、地域活動やボランティア活動も盛んで政治的・経済的にも活性化しやすい。
 防災活動が活発な地域はソーシャルキャピタル(社会関係資本)が豊かで、ソーシャルキャピタルが活発な地域は防災活動や地域活動も活発である。
 地区防災計画においては、地域コミュニティ主体のボトムアップ型の計画が必要である。
 都市部での防災活動は否定的な面が多いが、考えさせる例として、福岡市博多の祇園山笠と石川県能登町宇出津(うしつ)のあばれ祭りがある。 前者は地区のお祭りとして住民や企業が共同して山笠神事を実行している。
 河川氾濫のような災害時にはこうした組織が災害支援の仕組みに変化できる。
 後者では地区の少子高齢化が進み、外部からの参加者を入れないと成立しないが、信仰を持たないよそ者との軋轢があり、存続が危惧されている。

 (2)では「自助・共助と地区防災計画」というタイトルで、兵庫県立大学の室﨑氏が講演した。
 自助:共助:公助の比率は阪神淡路大震災では7:2:1だったが、本来は5:∞:5のように、共助の機能を活かせれば大きな力になりえる。
 そういう点で、講演(3)の「津波てんでんこ」の考え方はちょっと抵抗がある。
 「耐震補強と共助」では自助が基本だが、コミュニティすべての世帯が家具の転倒防止に取り組む規範やルールを作る連帯型減災運動があればよい。
 「物資備蓄と共助」では、地域備蓄倉庫を作って、自助と公助の隙間を埋めるのがよい。
 「情報収集と共助」では、鳥の目の情報を公助で集め、虫の目の情報を共助で集め、それを統合整理するコミュニティ情報拠点の構築の考え方があるとよい。
 避難災害が発生する。
 避難せず被災、避難途中で被災、避難場所で被災等がある。
 繰り返し避難を呼びかけても避難しない人が多いのはなぜか。
 避難のタイミングが深夜、平常のバイアス(自分のところで災害が起きるわけがない。今までもそうだった)のために、危機感がない。
 避難所の環境が劣悪なこともあるかもしれない。
 コミュニティぐるみで避難行動を取ったところは災害を免れている。

 (3)では「かんじんなことは目に見えない:『津波てんでんこ』というソーシャルキャピタル」というタイトルで、京都大学の矢守氏が講演した。
『津波てんでんこ』には4つの意味がある。
  1.自助原則(自分の命は自分で守る):通説
  2.他者避難の促進「率先避難者とフォロワー」(助かること=助けること)
  3.相互信頼の事前醸成(自分がてんでんこすること=‘あのひと’がてんでんこすること) 
  4.生存者の自責感の軽減「亡くなった方からのメッセージ(逃げてよかったんだよ)」
という意味があったが、1ばかりが強調されて他の意味が見えなくなってしまったと言う。

 (4)では「地域社会から始める『防災【も】まちづくりと社会関係資本』」というタイトルで、東京大学の加藤氏が講演した。
 地域防災計画で外してはいけないツボが3つある。
 1つ目は災害リスクの自分流の理解、2つ目は自助・共助・公助の相互の役割分担の明確化、3つ目は防災まちづくりではなく、防災【も】まちづくりの一環であり、市民が自発的に行うものである。
 これを実現するためにはキーパーソンの出現が重要である。
 また、それに加えて社会の関心を持つ層を重層化することである、とのことである。

 (5)では「過去の災害経験を踏まえた地域防災計画の今後」というタイトルで、香川大学の磯打女史が講演した。
 2018年の西日本豪雨の時に、愛媛県高浜地区は自分たちで地域を守った。住民たちが以前の防災マップを見直す等災害に備えていた。
 自主防災組織が自主的に見回り、危険を確認した後は行政の指示を待たず避難行動を実施した。
 愛媛県五明地区は3年前の台風11号でも住民がほとんど避難しなかった教訓を踏まえて、西日本豪雨の時には防災士が五明公民館に集まり、避難の準備をし、民生委員と協力して警報が出た時点ですぐ避難所開設できた、という。
 備えあれば、ということらしい。

 (6)では「地区防災計画づくりとコミュニティのソーシャルキャピタル 話題提供」というタイトルで、日本大学の稲葉氏が講演した。
 ソーシャルキャピタル(SC)はネットワーク+規範+信頼をまとめた概念として提唱する。
 個人のコネ、グループ内・間の信頼関係、公共財等を通して、ミクロ(個人)とマクロ(社会全体)をつなぎ、過去・現在・未来の時間軸の提供、文化と価値観の世代間の継承等が有益という。
 SCには結束型と橋渡し型があり、内輪の結束重視と外部の付き合い重視である。
 災害があるとコミュニティが崩壊するが、残された人の間のネットワーク(絆)が強まる。
 だから災害が起きると、結束型がまず現れ、復旧・復興の段階で橋渡し型のSCができるという。

 (7)では「コミュニティ・レジリエンスの向上とソーシャルキャピタル」というタイトルで、関西国際大学の川脇氏が講演した。
 レジリエンスは最近よく出てくる用語である。
 被災した社会が基本的な機能を維持しながら復旧・復興を成し遂げる能力と定義される。
 元通りというのでなく、災害に強い新たな状態へと進むこともあり得る。
 災害事例を見ると、阪神淡路大震災等では被災者の市民性や地域との関わりの程度が生活復興感に影響を与えた。
 住民組織(まちづくり評議会)の復興への関わりが住宅共同建て替え後の人口定着率を高めた。
 地域活動を活発にしておくことが防災活動の活発化や継続性につながる。
 大阪・岸和田のだんじり祭りは市内に住む住民同士の信頼の形成に寄与し、住民の自助意識や災害リスク認知の向上につながる。
 東日本大震災の被災者を3分類した。
 所得が高く被害が少ない住民は近隣との変かがすくないタイプ、所得がやや低く、被害が大きかったが近所付き合いが多くない、支援者・相談者を得たタイプ、所得が低く、被害も大きかったが支援者・相談者を失ったタイプである。
 中間のタイプが好ましいタイプであろう。
 結論的には近所付き合いを多くする努力、それが難しいなら、社会的なネットワーキングを活性化するような方法が必要である。

 (8)では「福島県避難者のソーシャルキャピタルとメンタルヘルス」というタイトルで、ニッセイの岩崎女史が講演した。
 福島県から避難することで、ソーシャルキャピタル(SC:地縁・血縁社会・コミュニティ)の喪失があり、これと連動してメンタルヘルスが悪化した。
 福島原発に近い双葉町のメンタルヘルスのアンケートを取ってみて、その悪化の状況がわかった。

 この後に総合討論の時間があったのだが、講演後も総合討論も共に質疑応答はなく、またアンケートもなかったので、大いに不満であった。
あまりに腹立たしいので、帰宅後以下のコメントを上記の事務局宛に送っておいた。

20190727f.jpg
         図2 総合討論の様子
 でも応答はない。

 ただ、私の住んでいる地域での地区防災計画は立てる必要がある(多分地震主体、副:水害、その他 富士山噴火、テロ等)とは思っているので、これからその素案を、江東区地域防災計画を横目で見ながら検討してみたいと思う。


『地区防災計画学会事務局 御中
 お世話になっております。
 さて早速ですが、掲題の件につき、以下のような6つの質問を考えていましたが、
質問時間がなかったようなので、質問等を送付します。
 ご検討いただければ幸いです。

(1)スプリンクラー防災システム
  高層マンションで使われているスプリンクラーシステムを打ち水に応用して平常時ヒートアイランド対策、災害時火災延焼防止。
  関東大震災の例、阪神淡路大震災の例にもみられるように、大地震の際の 火災が被害を拡大する。
  通電火災等は首都直下地震や南海トラフ地震の際にも可能性が大きい。
  ただし法律的な問題はあるかもしれない。
(2)ドローン利用による災害調査相互連携システム
  太平洋側と日本海側の自治体の相互のドローン等を利用した災害調査援助システム。
  南海トラフ地震の場合は太平洋側は全滅の可能性。これを救えるのは無傷のはずの日本海側。
  東日本大震災の時も西日本は無傷だったから、東西の相互救援システムがあれば迅速な救援ができたはず。
 熊本地震の時に東京ガス・大阪ガス・東邦ガスは西部ガスの救援で迅速な体制を組んでいた。
  また東京23区と全国46道府県で同様の連携を結んで、首都直下地震に備えた方がよい。
(3)ノアの方舟方式による津波・洪水対策
  ノアの方舟であれば洪水を防げた。これに基づき、ノアの方舟型の船舶を開発。
(高知の35m津波ではタワーに逃げ込むより、ノアの方舟を市役所に置いておいた方がいい。)
 また、救命ボート、救命胴衣、シュノーケルを海岸線または水害可能性の自治体で準備。
 避難が間に合えばよいが、そうでない場合は最低限の備えをしておくべき。
(4)外国人の防災組織化対策
  外国人がいざという時に避難所に殺到すると混乱が起きる。
  オリンピックを機会に外国人通訳ボランティアを結成して、防災のノウハウや情報も併せて持って、防災リーダーの役割を持たせる。
  昨日の地区防災計画の中に、外国人参画のことが何もなかったようである。
(5)真空利用のマンションによる火災の消火システム
  マンションに魔法瓶型の方式を取り入れ、通常時は断熱による省エネ、災害時には、その真空を利用して消火を行う。
(6)防災運動会
  担架競争、健常者が車椅子に乗り競争、AED探しとAED操作競争、障害物競争、昼ごはんに倉庫備蓄した非常食を期限切れ前に消費して新たに補給する、等博多祇園山笠等の特別な祭りだけでなく、全国に広まっている運動会を市民参加型の防災運動会に拡大して防災の意識を高める。』


<地区防災計画学会・日本大学ソーシャル・キャピタル研究会主催シンポジウム>
地区防災計画づくりとコミュニティのソーシャル・キャピタル
 ―新潟・山形地震をはじめとする過去の災害経験を踏まえて―

0.はじめに:
 2019年6月に新潟・山形地震が発生し、改めて、地域コミュニティや企業による共助や地区防災計画づくりの重要性が指摘されています。
 本シンポジウムでは、過去の災害経験を踏まえて、コミュニティ防災の効果や問題点について検討するとともに、ソーシャル・キャピタルの研究者である稲葉陽二日本大学法学部教授に議論に加わっていただき、コミュニティのソーシャル・キャピタルとの関係を含めて、地区防災計画づくりの在り方について考察を行う予定です。

1.日時:2019年(令和元年)7月27日(土)13:30~17:00
2.場所:日本大学法学部10号館1011教室(10号館1階)(JR水道橋駅徒歩5分)
3.主催:地区防災計画学会・日本大学ソーシャル・キャピタル研究会
4.共催:情報通信学会災害情報法研究会
5.対象:コミュニティ防災やソーシャル・キャピタルに興味のある方
6.プログラム内容:
 13:30 開会あいさつ 室﨑益輝 地区防災計画学会会長
           稲葉陽二 日本大学法学部教授
 13:40~15:20シンポジスト報告 
  (1)「地区防災計画制度へのソーシャルキャピタルの影響」
    西澤雅道  前福岡大学法学部准教授(内閣官房企画調整官)
  (2)「自助・共助と地区防災計画」
    室﨑益輝 兵庫県立大学減災復興政策研究科長・地区防災計画学会会長
  (3)「かんじんなことは目に見えない:『津波てんでんこ』というソーシャルキャピタル」
    矢守克也 京都大学防災研究所教授
  (4)「地域社会から始める『防災【も】まちづくり』と社会関係資本」
    加藤孝明 東京大学生産技術研究所教授/社会科学研究所特任教授
  (5)「過去の災害経験を踏まえた地域防災計画の今後」
    磯打千雅子 香川大学IECMS地域強靭化研究センター准教授
  (6)「地区防災計画づくりとコミュニティのソーシャルキャピタル 話題提供」
    稲葉陽二 日本大学法学部教授
  (7)「コミュニティ・レジリエンスの向上とソーシャルキャピタル」
    川脇康生 関西国際大学経営学部教授
  (8)「福島県避難者のソーシャルキャピタルとメンタルヘルス」
    岩崎敬子 ニッセイ基礎研究所研究員

 15:20~15:30 休憩

 15:30~16:50 シンポジウム地区防災計画づくりとコミュニティのソーシャル・キャピタル
  【モデレーター】西澤雅道
   パネラー:他の講演者7名 
 16:50 閉会あいさつ
     生田英輔 大阪市立大学都市防災教育研究センター副所長

【総合司会】 
  坊農豊彦  大阪市立大学特別研究員(関西情報センター主任研究員)
  金思穎   専修大学人間科学部研究員(福岡大学非常勤講師)
    -以上-

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