原子力学会誌2009年2月号の私的解説-国際化の波が徐々に

 原子力学会誌の2009年2月号の私的な解説をしてみる。

 一番下に目次を載せておくので興味があれば参照してください。

 まず巻頭言であるが、「手腕と頭脳」 原子力安全委員会委員 中桐滋氏とある。
 ええっと原子力安全委員会というのは原子力委員会から安全規制に関する部分だけ切り離してできた委員会だったっけ。確か中越沖地震等の評価や耐震基準の見直し等をやっていたような気がするが、どうもすっきりと覚えていない。
 内容としては膨大な無味乾燥なデータの羅列の中から背後にある原発の作業を想像するらしいので、よほど想像力にたけた人物なのであろうと思う。また、大学の原子力名を冠した学科の復活を喜んでおられるようだ。
 確かに一時期原子力の名前が消えて「ええっ!」と思ったことがあるから、これに関しては至極ごもっともと素直に納得した。

 時論「DOEの原子力諮問委員会に参画して-原子力技術立国・日本への提言:“時は今だ!急げ!”」 日本原子力産業協会 担当役 植松邦彦氏とある。
 DOEとは言わずとしれた米国エネルギー省のことだから、米国の原発等の総元締めの役所で、日本の経済産業省に相当するであろうか。そこに日本人が参画するのであるから、日本人の実力を喜んだらいいのか、それとも米国の懐の深さに感心すればいいのか迷うところである。
 内容としては高速炉の開発で日本の高速炉実験炉「常陽」や高速炉原型炉「もんじゅ」に期待、とのことであるが、その期待されている「もんじゅ」はいつ動くのか定かではないので、どうも米国の先行き不透明である。

 もうひとつの時論として「生命圏の安全保障-科学・政治の双方を凝視する学問領域開拓を」 朝日新聞論説委員 吉田文彦氏とある。
 筆者は文系の人であるから、抽象的な表現になってしまうのであろうか。科学と政治の双方を凝視って何だろう?地球温暖化が科学と政治双方に絡んだ問題、ということをいいたいのであろう。でもその学問領域って何だろう?
 例えば、炭酸ガス1gにつき、税金○円、その炭酸ガス発生防止のための政策を行うと炭酸ガス1gにつき、税金△円ですむ、というようなものか。
 よく似た例では発電単価□円/KWHというのがあったような気がする。火力や風力や原子力の発電コストを比較する時に使われたが、こういうものの炭酸ガス版と考えればよいであろうか?
 うーん、解釈が難しい。

 解説「核拡散抵抗性と保障措置-次世代核燃料サイクル設計における核不拡散対策の基本的考え方」 原子力機構・東京大学 久野祐輔氏他とある。
 少し言い方は難しくなっているが、基本的には核不拡散のことである。ウランやプルトニウムを核兵器に転用されないようにする考え方が核拡散抵抗性であり、それを実現する手段が保障措置というものである。保障措置は計量管理が主で核兵器に必要な量が転用されないように、例えば再処理の工程のキーポイントで計量管理するものである。計量監視といった方があたっているかもしれない。
 ひらたく言えば、工程の中からウランやプルトニウムが核兵器転用できるkgオーダー以上がなくならないように監視することである。監視にはIAEAがあたる。
 最近は核兵器により大国と対等に渡り合おうとする国も多少あることから、この保障措置は日本にとって平和利用を進めるシンボルとしての価値があるかもしれない。

 連載講座 軽水炉プラントの水化学(1)「軽水炉プラントにおける水の役割と水化学制御」 原子力機構 内田俊介氏とある。
 水化学というのは一般には聞き慣れない言葉かもしれない。
 言うまでもなく、原発は高温になった炉心から熱を水によって取り出し、タービンを回してフレミングの右手の法則による発電を行うわけである。
 この時使う水の管理の話である。温排水となる海水はここでは関係はない。原発の中で炉心とタービンの間を回る水は配管の中の鉄さび等で汚れる。これは一般の水道水でも同じであろう。
 この汚れを取るのに固形分のサビ用にフィルタ、鉄イオン等を取るのにイオン交換樹脂等を用いた脱塩器を使う。さびなら別にいいではないかと思うかもしれないが、これが原子炉の中で中性子を照射されて放射化し、プラントの線量率を増大させるので、これを低く抑えることが必要となる。
 東京電力HPによれば作業員の年間被ばく線量の平均値が1.2mSvであるから、さびが増えればこれらの被ばく線量が増加することになる。(年間平均自然被ばく線量が日本では約1.2mSv らしいので約2倍ということで世界平均の年間被ばく線量とほぼ同じとなっている。) 
 したがって水の管理が重要になる。水の管理としては配管材料によるサビ発生の減少とろ過脱塩によるサビの除去が主である。この他に水の中の酸素を少なくしてやる水化学制御というようなものもある。この水の管理は1970年代の原発運転が本格化して以降ずっと続けられてきたわけだから、約40年の歴史をもっているようである。これから10回にわたり連載されるようなので、多少は見ていきたいと思う。

 報告「放射性廃棄物を考える国際市民フォーラム-処分地問題の解決に向けて-廃棄物処分場立地 フィンランド、韓国、フランス、カナダから報告と日本の今後の進め方を考える」 Win-Japan 末廣利恵氏他とある。
 この間、高知県の東洋町が処分地として立候補した問題についてのフォーラムである。
 他国からのアドバイスではサイト選定の透明性、地元の利益を勘案、等が挙げられているが、日本では道遠し、という感じがする。

 公募記事「グローバル時代-原子力事業統合」 YGN*初代代表 植松眞理マリアンヌ氏とある。
 原子力事業の統合、という言葉は数年前であれば、つまらないとして一笑に付したかもしれない。それを取り上げたのはついこの間のJ-POWER(旧電源開発)への英国ファンドの株買い増し騒動である。
 国から「まった」がかかったので大きい騒動にはならなかったが、ついに原子力業界でもM&Aが始まったか、という衝撃が私の頭の中にあった。
 それでなくても最近の東芝-米・ウェスティングハウス、三菱重工業-仏・アレバ、日立-GEという世界の有力な原子力メーカー同士の連合というような構図があるので、原子力事業統合も現実味を帯びてきたように思う。電力会社の原子力事業部門を統合し、持株会社化する、という考えがあるらしい。
 ここで一番重要な点はエネルギーの安全保障との両立ではないだろうか?
 (* YGN:Young generation Netwokの略で原子力青年ネットワーク連絡会であり、原子力従事の若者の有志の連絡会のこと。学会内組織だったと思う。)

 NEWSでは柏崎刈羽原発6号機も系統試験へ、とあった。 6号機は中越沖地震の時には確か運転していなかったはずであるから、復旧は速かったのかなあ。
 系統機能試験に入るようだ。3号でも変圧器の取り換え中らしい。でも他の号機の様子は不明なので、情報を出すなら、1号から7号まで漏れなく出すべきだろう。

 ジャーナリストの視点「平和への問いを」毎日新聞 山田大輔氏とある。
 素朴な疑問をぶつける人らしい。ヒロシマ、ナガサキの苦しい経験と原爆症第一人者の被爆病理研究資料の闇に葬られる危機の回避等の話が面白い。初めて聞く話である。
 原子力担当になって書店に駆け込んだら技術的な側面をわかりやすく解説する本が少ない、というところはああ、そうかも、と妙に納得した。
 長い間、原発推進と反対の不毛な議論が続いて、本体のわかりやすい解説は二の次になってはいなかったか。反省の多いところである。
 電力会社のホームページ(HP)に原発の各号機がどう並んでいるのさえ満足に図示していない、というところは確かにそうである。
 まさか原発の安全保障に絡む問題ではないと思うので、単に電力会社が怠慢なだけだと思う。
 私もこのブログを書いている関係でよく電力会社のHPを覗くが、HP自体がわかりにくいと思う。
 利用者の利便性を考えずに自分たちの主張だけ盛り込んでいるからそうなる。
 どこかのHPみたいにHPの感想の受付というのをやっていいかも。

 2月号は結構盛りだくさんの解説をしてしまった。原子力もずいぶん国際的になってきたと感じる。DOEの委員会参画、保障措置による核兵器転用防止、高レベル廃棄物フォーラムでの各国の対応、原子力事業の外国企業の株買収等によるエネルギー安全保障というようなものである。
 国際化に備えた何かを蓄えていかないといけない。外国との付き合いのノウハウのようなものか?
 原子力村と揶揄される住民にその覚悟があるかどうか。
 でも好むと好まざるとにかかわらず、国際化の波はすぐそこに来ているような気がする。
 私は何を準備しようか、これから考えていかなくてはならない。さびついた頭で大丈夫かなあ。


<2009年2月号目次>
1.巻頭言「手腕と頭脳」原子力安全委員会委員 中桐滋氏
2.時論①「DOEの原子力諮問委員会に参画して-原子力技術立国・日本への提言:“時は今だ!急げ!”」日本原子力産業協会 担当役 植松邦彦氏
 時論②「生命圏の安全保障-科学・政治の双方を凝視する学問領域開拓を」朝日新聞論説委員 吉田文彦氏
3.シリーズ解説 わが国の最先端原子力研究開発NO.8「量子ビームが切り拓く未来(Ⅳ)光量子・放射光利用技術のフロンティア」原子力機構 水木純一郎氏他
4.解説「核拡散抵抗性と保障措置-次世代核燃料サイクル設計における核不拡散対策の基本的考え方」原子力機構・東京大学 久野祐輔氏他
5.連載講座 軽水炉プラント-その半世紀の進化のあゆみ(17) 最終回「今後の軽水炉開発(3)-超臨界圧水冷却炉と低減速炉」 ㈱東芝 山田勝己氏他
6.連載講座 軽水炉プラントの水化学(1)「軽水炉プラントにおける水の役割と水化学制御」 原子力機構 内田俊介氏
7.報告「放射性廃棄物を考える国際市民フォーラム-処分地問題の解決に向けて-廃棄物処分場立地 フィンランド、韓国、フランス、カナダから報告と日本の今後の進め方を考える」Win-Japan 末廣利恵氏他
8.公募記事「グローバル時代-原子力事業統合」YGN初代代表 植松眞理マリアンヌ氏
9.NEWS 
10.ジャーナリストの視点「平和への問いを」毎日新聞 山田大輔氏
その他

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この記事へのコメント

2009年07月05日 07:57
おはようございます~♪

先日は 腰痛に対する助言を ありがとうございました

食事の管理を以前のように始めたところ
少し体重が減りました すると腰痛もなくなり始めました
痛みが完全になくなったら
骨盤体操を始めようと思っています
ありがとうございました

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