原子力学会春の年会オンライン参加(その3最終)-発表内容の説明等

 2021年原子力学会・春の年会もオンライン開催となった。

 今年は3月17日(水)~19日(金)の3日であった。

 プログラムから学会で興味があった内容についての内容等の説明をしてみる。

 聴講スケジュールは以下の通りとした。

 3/17(水) AM1  AM2    PM1    PM2      PM3      
   
      I廃棄物管理    G倫理規程  D検出器   学生ポスターセッション 
 3/18((木)
   G原子力政策 Fベント  A事故後10年 G核セキュリティ D環境測定
 3/19(金)
   M環境修復 D医療応用   -

 AM1は10:30-11:00くらいにある発表、
 AM2は11:00-12:00くらいにある発表、
 PM1は13:00-14:30にある特別セッション、
 PM2は14:45-16:00くらいにある発表、
 PM3は16:00-17:30 くらいにある発表時間帯である。

 各テーマについて整理してみる。

 第一には、福島事故関連の情報収集である。
 第二には、私が研究している核変換技術の情報収集と共同研究グループとの連携の検討であるが、今回はそれに該当するものはなかった。
 第三には、教育、といっても私の研究の後継者探しという面が強い。
 これはオンラインでは難しいものがあるが、今回は学生のポスターセッションがあったので覗いてみた。
 第四に興味があるものの聴講、今回の場合は原子炉ニュートリノモニタである。
 その他として、トピックス的なものもミーハー的に仮想聴講するつもりであったが、それらしいものはなかった。

 今回の春の年会のブログは
 (その1)原子力学会の流行というか動向の検討と第1日目の午後の一部まで
 (その2) 第1日目の残りと第2日目の午後最初のセッションまで
 (その3)第2日午後残りと第3日目の午前まで
として書いていく。
 第3日目の午後は以前に書いた鼠径ヘルニア手術の術後経過観察の予約をしていたので、午後の学会発表は聴いていない。

 以下に(その3:最終)についてメモ程度に書き留めていく。

 長々と見たくない人は末尾にまとめを書いておくので、それだけみればいいかもしれない。
 第2日目の午後の2番目の視聴はG会場の「核セキュリティ技術」である。

 2G09では「ウラン標準試料測定による核鑑識のためのウラン年代測定手法の検証」というタイトルで、JAEAの松井氏が発表した。
 JAEA核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)では、核物質及び放射性物質の産地や使用目的等の特定を行うための核鑑識の技術開発を行っており、その一環としてウラン年代測定を実施している。
 ISCN で実施しているウラン年代測定は、ウランの精製時にU-234の壊変生成物であるTh-230が完全に分離されたと仮定して、その後に新たに生成した娘核種Th-230と親核種U-234との比(Th-230/U-234)を求め、その分析値から当該ウランがいつ精製されたものであるかを推定するものである。
 (筆者注:このU-234、Th-230は放射性壊変系列のウラン系列の中間核種である。)

R3-4-5R1 2G09 松井氏 放射線壊変系列ウラン系列.jpg
         図1 ウラン238の壊変系列(ATOMICA百科事典より抜粋)

 ここでは、ウラン標準試料についてウラン年代測定を行い、測定結果の有用性を検証した結果を報告する。
 核鑑識においてはMORC(出所不明の核物質やRI)を特定するシグネチャ(物理的・化学的性状)が重要となる。
 このシグネチャには電子顕微鏡SEMで粒子形状、質量分析ICP-MSで元素を分析する。
 質量分析のTIMSではウランの年代測定を行う。
 ウラン標準試料を使って、Th-230/U-234の比から、年代測定を行った。
 実際の標準試料は1994年製であり、2018年に測定したデータはこれに近い値を示したが、2020年に測定した値は多少のずれが生じた。
 核鑑識におけるウランの精製年代データは重要な情報であるため、この再現性が失われた原因を検討している、と説明した。

 2G10では「核セキュリティ初動対応支援のための深層ニューラルネットワークモデルによる核種判定アルゴリズムの開発」というタイトルで、JAEAの木村氏が発表した。
 核セキュリティにおけるニューラルネットワークを利用した研究を紹介する。
 出所不明の核物質MORCの核種特定が必要になる。
 ORTEC社のRIID装置(Ge検出器を用いたシステム)はエネルギー分解能が悪い。
 小型で安価な測定器、携帯型のRIIDの開発を行っている。
 Geデータを基に核種測定アルゴリズムを作り、深層ニューラルネットワーク(DNN)モデルにより16層と19層において、性能評価指標F-Scoreが90以上の値を示した。
 しかし、ウランU-235については、ユーロピウムEu-152との200keV以下のピークの判別がうまくいかなかった。
 今後この課題を解決して、DNNの利用を図っていきたい、と説明した。

 私は質問で、DNNは繰り返し回数を多くすると精度は上がるのではないかと聞いたが、どう答えたか覚えていない。

 2G11では「画像識別と自然言語処理のAI インターフェイス」というタイトルで、東京大学の出町氏が発表した。
 2016年にブリュッセルで爆破事件が起きた。
 同じ年に同国の原発襲撃計画もあった。
 原発事故の次はテロか。
 IAEAの核セキュイティの脅威は4つある。
 (筆者注:①核兵器盗難、②核物質盗難、③核物質飛散<ダーティボム>、④原発テロ)

R3-4-6R1 2G11 IAEAの核セキュリティ4つ.jpg
         図2 核セキュイティの脅威(IAEA)

 2019年にはサウジアラビアでドローンテロがあった。
 これらの核セキュイティの脅威の対策が必要になる。
 内部脅威者による破壊行為も考えられる。
 防護、検知、2人ルール(一人で活動させない)、監視カメラ等はほとんど内部脅威である。
 ここに画像AIの導入を検討した。
 画像と言語をグラフ構造に変換し、文情報の論理表現化、及びこの組合せを用いて、リアルタイムで判定でき、90%以上の危険判定精度が得られた、と説明した。

 次にD会場の「放射性物質検査・環境測定」に行った。
 2D14では「スペクトル定量法の液体シンチレーションスペクトルへの適用性」というタイトルで、日本分析センターの大島氏が発表した。
 昨年の学会で発表したガンマ線スペクトル定量法(SDM)を液体シンチレータに適用した結果について発表する。
 セシウムCs-137(半減期30年、ベータ線0.514MeV、ガンマ線)と塩素Cl-36(半減期30万年、ベータ線0.709MeV)の数種類の混合溶液の液体シンチレータのスペクトルを測定した。

R3-4-6R1 2D14 液体シンチレータデータ.jpg
         図3 液体シンチレータのスペクトル

 その結果、Cl-36については3%以下の誤差であったが、Cs-137については50%というような大きな誤差のものが出た。
 これから原因究明を進め、誤差の精度向上を図る、と説明した。

 2D15では「収納容器内に偏在したクリアランス対象物の放射能評価に関する検討」というタイトルで、原子力規制庁の吉居氏が発表した。
 収納容器内にクリアランス対象物を収納して放射能を評価する場合、収納容器内は密度均質とみなす場合が多い。
 (筆者注:クリアランスとは放射性汚染物とみなすかそうでないかを判定する尺度で、年間10μSv以下であれば、非汚染物と判定)
 もし非破壊検査等を用いて収納容器内のクリアランス対象物の位置情報が得られれば、放射能の評価において有用な情報となり得る。
 そこで、ケーブル類など偏在しやすいものをクリアランス対象物として収納容器内に偏在して収納する場合と均一に収納する場合とで放射能の評価結果がどの程度変動するか事前検討した。
 汚染は点線源と仮定し、Cs-137の1MBqを用いた。

R3-4-6R1 2D15 クリアランスの実験体系.jpg
         図4 クリアランスの実験でのケーブル類配置

 ケーブル188本をランダム、均質等3ケースについて、NaI検出器で測定した。
 線源の位置も真ん中やその他5か所において測定を行った。
 ケース1で1.4倍のような偏りのあるデータが得られた。
 今後、非破壊検査等とのデータの比較を行っていく、と説明した。

 2D16では「核不拡散・核セキュリティ用アクティブ中性子NDA 装置の開発 (5)NRTA システムの役割と特徴」というタイトルで、JAEAの土屋氏が発表した。
 核セキュリティ分野における核燃料物質測定技術の向上に寄与するため、アクティブ中性子法を利用した非破壊測定装置(NDA)の開発を行っている。
 従来の非破壊測定では対応できない高線量核燃料物質に適用できるNDAとしてアクティブ中性子法(ダイアウェイ時間差分析法:DDA、中性子共鳴透過分析法:NRTA、即発ガンマ線分析法:PGA、遅発ガンマ線分析法:DGA)を高度化し、これらを組合せることにより、高線量核燃料物質のためのNDAの確立を目指した。
 非破壊分析装置Active-NのNRTA 部ではDT 中性子発生管(D-T)で発生させた14 MeV 中性子をポリエチレンのモデレータで減速させて測定試料に照射し、試料を透過する中性子を検出して飛行時間スペクトルを得た。

R3-4-6R1 2D16 新たなNDA法.jpg
         図5 中性子NRTA装置の構成

 酸化プルトニウムPuO2を使った実験で、中性子を20eV程度に減速し、有用な結果が得られた、と説明した。

 2D17では「放射線イメージング技術を基盤とした放射線作業環境のためのミラーワールドシステムの提案」というタイトルで、JAEAの佐藤氏が発表した。
 放射性物質“見える化”のための技術開発は、1Fやその他の放射線作業環境において被ばく線量の低減や作業計画立案のために重要である。
 ここに3次元環境モデリングや仮想現実、拡張現実といったデジタル技術を組合せとして、コンプトンカメラと普通のカメラを使用した。
 フォトグラメトリと言っている。
 パイオニア社の3D-LiDARという仮想空間の上にミラーワールドを作った。

R3-4-6R1 2D17 ミラーワールドの概要.jpg
         図6 放射線の可視化状況(ミラーワールド)

 3D-LiDAR+サーベイメータからコンプトンカメラ+デジタルカメラに変更した。
 1秒の測定で116枚の画像が撮れる。
 これを市販のVRゴーグルで体感できる。
 AR(拡張現実)技術や高線量下でのロボットの利用が求められている、と説明した。

 ここで第2日目を終了した。
 2日目の学生のポスターセッションに行く元気がなかった。

 第3日目は最初にM会場の「環境修復」に行った。

 3M01では「中間貯蔵施設区域内線量低減措置工事への除染効果評価システムの適用」というタイトルで、大林組の神徳氏が発表した。
 (9時半に視聴者27名)
 中間貯蔵施設の除染工事を行っている。
 事前線量測定結果を入力することで除染前後の空間線量率マップを出力する解析ツールCDE を用いて、地図上に5mメッシュで線量率を描写させ、線量低減効果および除染後施設で働く作業員の被ばく線量を確認した。
 高線量が残る箇所について追加の除染メニューの効果もCDE で確認し、工事計画に反映した。

R3-4-7R1 3M01 空間線量率マップ.jpg
         図7 中間貯蔵施設の空間線量率マップ

 工事後の事後線量測定では、解析の通り線量が下がってることを確認し、計画通り工事は完了した、と説明した。

 私は質問で、昨日の2D17での風景と線量の合成画像の発表のことを質問したら、神徳氏は全然予想していなかったようで、回答はよく覚えていない。

 3M02では「レーザー除染機の車載システムの整備と運用」というタイトルで、LDDの峰原氏が発表した。
 (筆者注:このLDDというのは廃止措置用レーザー除染の会社で福井県にある。)
 レーザー除染機について説明する。
 車載レーザー除染機システムは、左から空冷式連続波(CW)平均出力250W高輝度シングルモードファイバーレーザー除染機、15m長の光ファイバー、タッチパネル制御盤、ガルバノスキャナー、空気圧縮機、サイクロン分離器、水スクラバー、HEPA フィルター付き集塵機等から構成される。
 (筆者注:レーザーで除染対象物に照射し、はがれた粉塵等を掃除機の原理で吸引)

R3-4-7R1 3M02 レーザー除染車.jpg
         図8 車載レーザー除染の構成

 レーザーで除染物表面を数万度の温度にして蒸発除去する。
 Co-60を用いた除染実験を行い、有効性を確認した。
 除染結果はガンマカメラで確認した。
 今後はコンプトンカメラと組合せて効果的な除染運用を行う、と説明した。

 私は質問で、汚染ガレキにも適用できるのか聞いたら、可能と回答した。

 この発表は完全に企業のお金のかからない宣伝であり、通常ではきっと学会の質の低下が指摘される部類のものである。
 ただこの除染機は確かに優れた性能を持っているようなので、共同発表の日本遮蔽技研が注目して採用したのであろう。

 しかしこの峰原氏はどこかで聞いた覚えがあると思っていたが、やっと思い出した。
 平成27 年度の若狭湾エネルギー研究センター研究年報(福井県)で「焼却炉を用いた塩化セシウム除染分離技術の開発実用化」というタイトルで、セメント製造工場のロータリーキルン型焼却炉は、セメント原料に含まれるアルカリ金属(Cs-137等)を塩化物(クリンカーダスト)として分留して分離除去することを発表していた。
 日本のセメント工場のロータリーキルン焼却炉を使えば、福島の放射性の塩化セシウムを減容して分離できると発表していた。
 この方法を使えば福島にある1千万トンの汚染土壌を処理できる、ということだったが、あまり注目されなかったようである。
 私も彼が発表から数年後に原子力学会発表していなかったら知らなかった研究であった。
 学会発表後に彼の名前を基に検索したらヒットしたものである。
 今からでもこの方法で福島の汚染土壌をきれいにして欲しいと思う。

 3M03では「アルゴンプラズマを用いた2:1型粘土鉱物からのCs脱離・捕集の研究開発」というタイトルで、福井工業大学の西村氏が発表した。
 Cs-137 を含んだ濃度の高い汚染土壌に対する減容化技術が求められている。
 Cs-137は土壌中の2:1型粘土鉱物に強固に吸着することが知られており、既存技術として熱処理や化学処理などがあるが、環境面で問題がある。

R3-4-7R1 3M03 2vs1型粘土鉱物の構造 YANMARのHPより.jpg
         図9 2:1型粘土の構造(YANMARのHPより抜粋)

 そこでここでは、2:1型粘土鉱物にCsを吸着させS-band高気圧マイクロ波放電法により生成したArプラズマを用いて、2:1型粘土鉱物からの分離捕集を試みた。
 粘土鉱物は1:1型と2:1型がある。
 2:1型がCs-137を吸収しやすいとされる。
 1:1型はCs-137が脱離しやすい。
 Cs-137はフレイドエッジサイドに吸着する。
 化学処理や熱処理は環境の性質を変えるために現実的でない。
 ここではアルゴンArプラズマを用いた。
 Arは15.75eVのイオン化エネルギーを持ち、高いエネルギーである。
 模擬試料の試験として、バミキュライトに硝酸セシウムを添加して試験した。
 オレンジ色の発光を示し、Csは5.8gから0.04gに減少した、と説明した。

 3M04では「除去土壌高度分級(75μm 未満)後の放射能濃度低減方法」というタイトルで、原子力安全技術センターの村上氏が発表した。
 福島事故により発生した汚染土壌は可能な限り分級して放射能濃度を下げ、再生利用する方向で検討が進められている。
 この汚染土壌は分級処理により大粒径で放射能濃度の低いもの(8000Bq/kg以下)から、小粒径で放射能濃度の高いもの(62000Bq/kg 超)まで4種類に分類されており、最も小粒径の75μm未満の土壌はさらに高度処理(化学処理、熱処理、新技術)が想定されているが、具体的な処理方法は見出されていない。
 ここではこの75μm未満の土壌を対象にして、放射能濃度の低減方法について検討した。
 試験土壌として宅地土壌を分級して9㎏から1.3㎏に減らして75μm 未満の土壌を準備した。
 この土壌に、Cs-137 を添加して約25000Bq/kgの土壌を作成した。
 この土壌をシュウ酸水溶液に浸漬して処理した。
試験結果として25000Bq/kgをシュウ酸で除染した結果、5 回の除染で約80%の除去率、10 回の除染で約90%の除去率となり、約300Bq/kgまで除染できた。

R3-4-7R1 3M04 汚染土壌の除染.jpg
         図10 除染でのシュウ酸浸漬試験とその除去試験

 除染後土壌は水洗浄操作をすることにより9回洗浄で88mg シュウ酸/kgまで低減できた。
 これは土壌の再生資源化のためのものである、と説明した。

 私は質問で3M02に挙げたロータリーキルン処理についてはどうか、と聞いた。
 比較してみてよければ、というような回答だったと思う。

 第3日目の午前の2番目はD会場の「医療応用」に行った。

 3D01では「低雑音電流敏感型前置増幅器 VIECを用いた X線コンピュータ断層撮影」というタイトルで、京大の神野氏が発表した。
 X線コンピュータ断層撮影(CT)では、電流敏感型前置増幅器(電流プリアンプPA)を用いてX線を測定する。
 この電流PAはX線由来の電流とともに検出器の暗電流をも電圧変換する雑音レベルが高い。
 有意な測定を行うには、暗電流の影響を低減するために大量のX線を検出器に入射する必要がある。
 電流PAの低雑音化のため、電荷敏感型前置増幅器を応用した電流PAのVIECを開発し、従来の電流PA(IPA-6)の約1/750の電流値が測定可能であることを前回報告した。
 今回は、VIEC を用いたCT画像およびCT 値プロファイルをIPA-6 のそれらと比較し、低線量でCT 測定が可能か確認した。

R3-4-10R1 3D01 実験配置図.jpg
         図11 電流プリアンプのシステム構成

 VIEC およびIPA-6 によるCT 画像について、IPA-6 では管電流1mA の場合に被検体内部を通過したX 線による電流値が暗電流値以下となり、正常な測定ができなかった。

R3-4-10R1 3D01 CT用プリアンプでの測定.jpg
         図12 撮影したCT画像の例

 VIEC では管電流1 及び3 mA でCT 値プロファイルに変化がなく、低線量でCT 測定が可能であることを確認した、と説明した。

 3D02では「電子線形加速器を利用したAc-225製造量の電子線エネルギー依存性」というタイトルで、日立の田所氏が発表した。
 アルファ線内用療法(TAT: Targeted Alpha Therapy)用核種として有望なアクチニウムAc-225に関して、小型高製造効率化が期待される電子線形加速器を利用した製造試験を実施した。
 電子線エネルギーを変えた試験結果と、シミュレーションによるAc-225 製造量の評価結果を比較したので、その結果を報告する。
 現在、TAT に関する研究開発が世界中で進められている。
 TAT 用核種として有望なAc-225は、現在Th-229からの崩壊により製造されているが、製造量の不足が予測されており,加速器による製造が望まれている。
 TATはアルファ線によるがん治療に使われ、前立腺がん等に使われている。
 原材料としてはトリウムTh-229のアルファ崩壊によりできる。
 年間100GBq以下で使用される。
 ここではラジウムRa-226を用いて、Ra-226+γ→Ra-225+n、Ra-225→Ac-225+β+νの反応を用いた基礎試験を行った。
 東北大の電子線加速器を用い、Ra-226の塩化物RaCl2からAc-225を分離する。
 DGAレジン(イオン交換樹脂、ストロンチウムSrやイットリウムYの分析によく使われる)に通して鉛Pb-210やポロニウムPo-210等を除去する。
 電子線エネルギー33.3MeV、38.9MeV 及び44.4MeV の3 ケースで、Ac-225 製造試験を実施した。
 原料には、石英容器内に封入したRa-226(約50kBq)を用いた。
 Ac-225 製造量をAc-225 の子孫核種であるBi-213 からのガンマ線の測定結果から求め、解析コードPHITSを用いた制動放射線の計算結果とAc-225 生成断面積の理論値を用いて評価した製造量と比較した。
 Ac-225 製造量は、電子線エネルギーの増加とともに増加するが、シミュレーションによる評価値に対する測定値は、電子線エネルギーが高いほど小さくなっていることがわかった、と説明した。

 私は質問で不純物はどうなのか聞いたが、どう回答してくれたか覚えていない。
 不純物があると、放射能のある副産物ができたりして、やっかいな処理が必要になったりするのである。

 3D03では「電子線形加速器とRa-226を用いたAc-225放射性医薬品生成の検討 (1)単離Ra-226ターゲット設計とAc-225収量評価」というタイトルで、東大の三好氏が発表した。
 これもAc-225の研究で前の発表と同じだが、前の発表は日立、京大、東北大だが、ここでは東大、放医研、東北大の研究である。
 Ac-225は前立腺がんの放射線治療等に使われる。
 Ac-225の臨床報告例があり、ルテチウムLu-177は効果がない。
 Ac-225はU-235の崩壊系列にあり、原子炉や加速器で作られる。
 Ra-226を東北大の加速器30Mevで照射してRa-225を作成した。

R3-4-11R1 3D03 Ra-225生成.jpg
         図13 アクチニウムAc-225の生成状況

 照射後硝酸HNO3で溶解し、DGAで分離した。
 フランシウムFr-221等が見つかった。
 これはRa-226の娘核種になる。
 今後スケールアップを検討していく、と説明した。

 私は質問でAc-225の半減期を聞いた。
 アイソトープ手帳(第10版、H19年発行)には載っていない。
 10日くらい、との答えであった。

 3D04では「電子線形加速器とRa-226 を用いたAc-225 放射性医薬品生成の検討 (2)Ra-226 ハンドリング性と冷却効率を考慮したLINAC専用照射容器設計」というタイトルで、東大の尾関氏が発表した。
 これは3D03と同じシリーズの発表である。
 Ra-226は自然崩壊でRn-222ガスを放出するため, 密封を保持する必要がある。
 また照射中は密封容器に熱的負担があるため、溶融を防ぐ冷却機構を備える必要がある。

R3-4-11R1 3D04 Ra-226ハンドリング1.jpg
         図14 Ra-226の照射体系

 放射化の観点からアルミニウムを使用し、 二重構造の照射容器を作製した。
 実際にはRa-226を使用するが今回の熱耐性試験ではRa-226の代替としてバリウムBaを使用した。
 Baを電着してターゲットとし、LINACによる電子ビームを8時間照射し、良好な結果が得られたが、ネジに熱的な負担がかかることがわかった、と説明した。

 これで今年の春の年会はすべて終了とする。

 今回のまとめを以下に簡単に示す。
 第2日目の2番目はG会場の「核セキュリティ技術」である。
 最初の2G09はウラン標準試料の測定を行った。
 以前の2018年の測定ではうまくいったが、2020年測定ではいい結果が出なかったのでその原因を調査する、とのことである。

 2G10は核セキュリティにAIの深層ニューラルネットワーク(DNN)を導入して試験した。
 U-235のピークに近いユーロピウムEu-152の判別に課題がある。
 2G11は核セキュリティの脅威の1つとして内部脅威者を判別するために、画像AIを導入した。
 音声認識との併用で90%以上の危険判定精度という良い結果が得られた。

 次にD会場の「放射性物質検査・環境測定」に行った。
 2D14はガンマ線のスペクトル分析をベータ線核種の液体シンチレータに適用した。
 塩素Cl-36では良い結果が得られたが、Cs-137で50%の誤差となり、今後原因究明していく。
 2D15は廃炉での放射性廃棄物になるかどうかの判定基準となるクリアランスに関するもので、ケーブル類等の偏在廃棄物の測定を行ったが、1.4倍の偏りのデータがあり、検討する。
 2D16は核セキュリティでの非破壊検査で使われる中性子検査装置の開発に関するものであり、中性子共鳴透過分析NRTA等の組合せで良い結果が得られた。
 2D17は放射線の可視化の研究であり、コンプトンカメラと普通のカメラの組合せで、放射性物質が「見える化」できるミラーワールドを作る、とのことである。

 第2日目はここで終了となる。

 第3日目午前はまずM会場の「環境修復」に参加した。
 3M01は中間貯蔵施設での作業環境改善のために、除染前後の空間線量率マップを作成する解析ツールCDEを用いて、作業員の被ばく線量低減に寄与した、とした。
 3M02はレーザー除染機の車載システムの開発である。
 強力なレーザー照射、除染された粉じんを回収するものであり、汚染ガレキにも適用できるものである。
 3M03はアルゴンプラズマを用いたCs-137吸着性の高い2:1型粘土鉱物からCs-137の分離を試み、良い結果が得られた、とした。
 3M04は汚染土壌を分級して減容し、75μm未満の土壌をシュウ酸に溶解してCs-137を除去した。
 この後水洗によりシュウ酸を取り除き、再生資源利用の道を探った、とのことである。

 第3日目の午前の2番目はD会場の「医療応用」に行った。
 3D01はCTの撮影での電流プリアンプに関するもので、ノイズ低下させて有効な結果が得られた。
 3D02~3D04は放射線治療の一種の内用療法(体内にアルファ線核種の薬剤を入れて、がんの細胞を消滅させる)のアクチニウムAc-225に関するものである。
 共にRa-226の(γ、n)反応を用いて、その後のベータ崩壊でAc-225を得ることは同一の原理であり、加速器のエネルギーの違いや試験容器の開発等が行われた。

 さて3日間のまとめも少し書いてみる。

 第1日目の最初はI会場の廃棄物管理であった。
 塩分の入った廃ゼオライトの処分、コンクリート中のCs-137やストロンチウムSr、無機水和物のガンマ線照射による水素発生の発表であった。
 G会場では倫理規程ということで、柏崎刈羽原発の核セキュリティ問題等が発生した時期にタイムリーな話題となった。
 3.11時福島の夜の森という原発付近にいたゲストの大橋氏の「原発はヘビだ」という言葉が印象的である。
 D会場の検出器ではニュートリノモニタのことが印象に残った。
 核セキュリティ問題については安価なアクティブ中性子装置の開発を行っており、水-チェレンコフ光検出器を開発していた。
 学生ポスターセッションでは、融点30℃の金属鏡開発が単純ではあるが面白かった。

 第2日目のG会場の原子力政策では核燃料サイクル施設でのハザードマップ提案という面白い発表があった。
続くF会場ではフィルターベントのシリーズ発表があり、格納容器内のフィルターベントとして、ポリイミド膜を検討していた。
 午後のA会場では「事故後10年」ということで、3/11&3/12に開催されたシンポジウムの報告であった。
 福島特別プロジェクトで稲作試験等を行ったり、EUのチェルノブイリ原発事故後の除染ハンドブックを翻訳したりしたが、物足りない印象はあった。
 また原子力の将来を30歳代前後の若手に検討させたらしいが、ありきたりな提案だったように思う。

 午後2番目のG会場では核セキュリティのテーマで、核鑑識技術としての機器開発、AIを用いた画像認識による内部脅威の監視等があった。
 午後3番目のD会場では環境測定というテーマで、液体シンチレータにガンマ線スペクトル解析適用、クリアランス基準用に放射性物質の偏りの試験、アクティブ中性子を用いた非破壊測定装置の開発、放射線の可視化を目指したミラーワールドを作る、等の発表があった。

 第3日目では最初にM会場の環境修復に行った。
 中間貯蔵施設の除染での作業員の被ばく低減用のコード開発、レーザー除染車、アルゴンプラズマによる除染、汚染土壌分級後にシュウ酸溶解除染という再生資源化を目指した発表があった。

 次のD会場は医療応用のテーマで、CT用の電流プリアンプの開発、放射線治療の一つの内用療法に使われるアクチニウムAc-225(アルファ線でがん細胞消滅)の加速器による生成の研究の発表があった。

 全体的にやはりオンライン化によるのかわからないが、発表自体が低調である。
 福島の環境修復が一段落した印象ではあるが、まだ森林に関してはほとんど手つかずである。
 一応森林の土壌の中にあるCs-137は強固に捕捉されていて下流に簡単には放出されないが、豪雨や土砂崩れ等で流れていくCs-137がある。
 これらの解決のために何ができるかを考えないといけない。
 また樹木の中のCs-137も取り込んだ後に安定化しているようなので、樹木利用の時に問題が出てくるし、シイタケ栽培等の時にも問題が出てきそうである。
 最近放射線治療と核セキュイティの発表が増えてきている。
 私も前立腺がんの放射線治療を受けたので関心はあるのだが、アイソトープ(RI)手帳に載っていない核種がどんどん出てくる。
 RI手帳も更新しておかないといけないかもしれない。

 上記のように考えても、私は今フリーハンドで研究する術を持たないので、学会の発表で情報を収集して整理していく他はない。
 今後も学会に積極的に参加していきたいと思う。
    -以上-

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