原子力学会春の年会オンライン参加(その2)-発表内容の説明等

 2021年原子力学会・春の年会もオンライン開催となった。

 今年は3月17日(水)~19日(金)の3日であった。

 プログラムから学会で興味があった内容についての内容等の説明をしてみる。

 聴講スケジュールは以下の通りとした。

 3/17(水) AM1  AM2    PM1    PM2      PM3      
   
   I廃棄物管理      G倫理規程  D検出器   学生ポスターセッション 
 3/18((木)
   G原子力政策 Fベント A事故後10年 G核セキュリティ D環境測定
 3/19(金)
   M環境修復 D医療応用   -

 AM1は10:30-11:00くらいにある発表、
 AM2は11:00-12:00くらいにある発表、
 PM1は13:00-14:30にある特別セッション、
 PM2は14:45-16:00くらいにある発表、
 PM3は16:00-17:30 くらいにある発表時間帯である。

 各テーマについて整理してみる。

 第一には、福島事故関連の情報収集である。
 第二には、私が研究している核変換技術の情報収集と共同研究グループとの連携の検討であるが、今回はそれに該当するものはなかった。
 第三には、教育、といっても私の研究の後継者探しという面が強い。
  これはオンラインでは難しいものがあるが、今回は学生のポスターセッションがあったので覗いてみた。
 第四に興味があるものの聴講、今回の場合は原子炉ニュートリノモニタである。
 その他として、トピックス的なものもミーハー的に聴講するつもりであったが、それらしいものはなかった。

 今回の春の年会のブログは
 (その1)原子力学会の流行というか動向の検討と第1日目の午後の一部まで
 (その2) 第1日目の残りと第2日目の午前(+午後最初のセッション:変更)まで
 (その3)第2日午後残りと第3日目の午前まで
として書いていく。
 第3日目の午後は以前に書いた鼠径ヘルニア手術の術後経過観察の予約をしていたので、午後の学会発表は聴いていない。

  以下に(その2)についてメモ程度に書き留めていく。

 長々と見たくない人は末尾にまとめを書いておくので、それだけみればいいかもしれない。

 午後の2番目の視聴はD会場の「原子炉関連検出器開発」である。
 1D07では「原子炉ニュートリノモニターのための Li含有液体シンチレータの開発」というタイトルで、福井大学の川端氏が発表した。
 原子炉ニュートリノモニターは、核燃料の安全利用の観点から原子炉内の運転状況、出力レベル、核分裂性同位体、ウラン、プルトニウム比の監視を目的とした技術である。
 この技術はリアルタイムで遠隔から原子炉を監視することができるため、国際的に広く開発が進められている。
 原子炉内核分裂生成物のβ崩壊によって生じる反電子ニュートリノνeは逆β崩壊反応の際に陽電子e(+)と中性子nを発生する。
 (筆者注:νe + p → e(+) + n )
 この2つの信号の時間差を利用することにより検出を行う。
 そのため陽電子が電子対消滅した際に放出する2本のγ線の信号と中性子捕獲による信号が異なった信号であることが好ましい。
 本研究ではニュートリノ検出器として、Gd含有液体シンチレータに替わり、中性子捕獲により放出されるα線とトリチウムの信号を取得できるLi含有液体シンチレータの開発を行った。

R3-3-30R1 1D07 ニュートリノの検出原理 福井大学.jpg
         図1 ニュートリノの検出原理

 Li化合物としてLiCl、LiBrが透明であり、使用可能であった。
 界面活性剤、溶媒LAB、発光助剤にPPOやBis-MSBとLiClを混合した液体シンチレータを作成し、実験した。
 発光量と透過率との間の相関性は観測されなかった、と説明した。

 この原子炉ニュートリノモニタは面白い実験として注目している。
 なぜ面白いか。
 量子力学には不確定性原理なるものが存在する。
 位置と運動量を同時に決めることはできずに、ある不確定性を持つと言われる。
 なぜそうなるか。
 光を粒子に当てて運動量や位置を測定しようとすると、光が粒子に当たった瞬間に粒子が光のエネルギーの影響を受けて、位置や運動量が変化している、ということである。
 この時の光はガンマ線、X線、電磁波としての可視光等である。
 これらはエネルギーとして粒子に影響を与えるレベルのものを持っている。
 しかし、ニュートリノはせいぜい数eV程度の弱いエネルギーしか持たない。
 だから、ニュートリノを使ってもし顕微鏡が作れるなら、原子核の世界を覗けるかもしれない。
 ただ小柴先生がノーベル賞を取った装置の上をいくスーパーカミオカンデは5万トンの純水、直径40m×高さ40mの装置、光電子増倍管1万本より大きさ装置が必要になる。
 これを考えると、ニュートリノ顕微鏡のようなものを考えると、東京スカイツリーくらいの装置は必要になるであろう。
 EUのCERNで素粒子研究の電子・陽電子衝突型加速器LEPがあるが、周長27㎞の巨大円形型である。
 だから、もしニュートリノ顕微鏡を作ろうとすれば、今の核融合実験装置ITERと同じように、世界中の国が全部協力しないとできないかもしれない。

 1D08では「低コスト中性子検出器バンクを用いた非破壊測定装置の開発」というタイトルで、JAEA の米田氏が発表した。
 テロの脅威等に備えるためにDDA法などのアクティブ中性子法は、測定対象物に外部から中性子を照射し、発生する核分裂中性子を直接計測するので、核物質検出に有効である。
 それで、原子力施設における核物質の計量管理に加えて、空港等における核セキュリティ用核物質探知としての利用が期待される。
 しかし、アクティブ中性子法装置は、多数のHe-3検出器、D-T中性子発生管使用のため、非常に高価である。
 そこで、アクティブ中性子法による装置の低コスト化開発に取り組んでおり、その一環として水チェレンコフ光検出器の開発と、D-T管を用いない中性子線源(Cf-252)による測定法(回転照射法)の開発を進めている。
 水チェレンコフ光検出器は、中性子が水に入射した際に発生するチェレンコフ光を検知することで中性子の検出を行う。

R3-3-30R1 1D08 チェレンコフ光 東芝レビュー.jpg
         図2 チェレンコフ光の様子(東芝レビューより抜粋)

 He-3 検出器は、核分裂中性子を効率的に検出するため、ポリエチレン等の減速材が必要であるが、水チェレンコフ光検出器では水自体が減速材の役割を果たすため、他の減速材は不要である。
 U-235を100g使って実験を行った結果、有用なデータが得られた。
 またこれらのシステムは従来法に比べて10分の1以下のコストに抑えられる、と説明した。

 1D09では「原子力プラント内で利用可能なポータブル高分解能ガンマ線スペクトロメータ―の開発 (1)研究計画」というタイトルで、JAEA の前田氏が発表した。
 JAEA 大洗研の高速実験炉「常陽」の燃料破損検出設備であるオンラインガンマ線モニタは、従来、Ge 検出器を用いてArカバーガス中の希ガスFP(放射性Xe,Kr)を測定することで、燃料破損やクリープ破断試験の破断検知を行っている。
 しかし、液体窒素での冷却が必要であり、また、検出器が設置されている雰囲気が約40~50℃のため供給頻度が多く、簡便な冷却で作動する検出器が望まれている。
 エネルギー分解能としては、最も近接したピーク(キセノンの同位体Xe-135:249.8keV、Xe-138:258.5keV)を分離する必要がある。
 また、「常陽」の定格運転日数は60日であり、長期安定性が必須である。
 HP-Ge 検出器の代替を目的として、検出器仕様を策定した。
 臭化タリウムTlBr 検出器は検出効率としては、Ge 検出器の製品ラインナップに並ぶレベルで最低でも10%以上として、25 mm 径×20 mm 以上の結晶を目指した。
 高品質化については、評価指標の一つとなる不純物評価をレーザー励起型ICP質量分析器LA-ICP-MS を用いて行った。
 ポータブルかつ高エネルギー分解能を利点として、「常陽」への適用を考え、TlBr 検出器ベースのポータブルのガンマ線スペクトロメータを開発し、エネルギー分解能1%以下、相対効率10%程度を実現することとした。
 本研究により、Ge 検出器に代わるガンマ線スペクトロメータとしてTlBr 検出器を目指す、と説明した。

 1D10では「原子力プラント内で利用可能なポータブル高分解能ガンマ線スペクトロメータの開発 (2)室温でのTlBr検出器の長期安定性」というタイトルで、東北大の野上氏が発表した。
 これは1D09とのシリーズである。
 1D09で検出器仕様を検討し、この1D10ではそのTlBr検出器の性能としての長期安定性の評価を行った。
 TlBr は高原子番号元素(Tl:81, Br:35)と高密度(7.56 g /cm3)に起因する高いガンマ線吸収効率を有するため、ガンマ線検出器材料として長年研究されてきた。
 しかし、TlBr 検出器関連の研究の多くは、エネルギー分解能の向上や検出器の大体積化に関してであり、長期安定性に関する研究はほとんど行われてこなかった。
 そこで、本研究では「常陽」の定格運転日数60日よりも長時間である約2000 時間連続動作させた際のTlBr 検出器の長期安定性の評価を行った。
 実験に使用したTlBr 検出器のサイズは5mm× 5mm× 2.119mm である。
 バイアス電圧は-200V を印加し、Cs-137の662 keVのガンマ線の計測を行った。
 適用想定の「常陽」のモニタ設置箇所では50℃程度の環境が想定されるが、ペルチェ素子等で検出器を冷却することも考慮に入れ、実験は室温(約20℃)で行った。
長期安定性試験の結果は662 keVの全吸収ピーク位置は徐々に下がっていき、約600時間後に安定した。

R3-4-1R1 1D10 TlBr検出器のCs-137測定.jpg
         図3 TlBr検出器の長期安定性試験

 ピーク位置の減少率は約5%であり、長時間連続でTlBr検出器が安定動作することが確認できた、と説明した。

 1D11では「原子力プラント内で利用可能なポータブル高分解能ガンマ線スペクトロメータ―の開発 (3)中性子ブラッグディップイメージングによる結晶性評価」というタイトルで、名大の渡辺氏が発表した。
 これはTlBr検出器の研究では1D09等と同じだが、1D09は連続性能の試験であり、この1D11はT
結晶の特性評価に関するものである。
 検出器性能の向上に向けた検討の一環として、中性子回折法のひとつである中性子ブラッグディップイメージング法を用いて、TlBr 結晶の結晶性評価を行った。
 中性子ブラッグディップイメージングに必要なパルス中性子イメージング実験はISIS(英国の中性子パルス装置)のビームラインおよびJ-PARCのRADEN(世界で初のパルス中性子イメージング専用)ビームラインで実施した。
 時間分解二次元イメージング検出器には中性子用MCP検出器を使用した。
 サンプルは直径約20 mm のTlBr結晶のインゴットを切り出し、厚さ3mm程度のディスク状としたものを使用した。

R3-4-1R1 1D11 TlBr検出器の中性子透過測定.jpg
         図4 TlBr結晶の構造

 作製した結晶の方位分布は面内で一様ではなく、僅かではあるが歪みを生じていることや、結晶上部ではいくつかの粒界に分かれていることが観察できた、と説明した。

 これで1日目の発表は終了した。

 本来なら1日目はこれで終わりであるが、学生のポスターセッションがあると、メールで何度も見てください、との要請があった。
 若手の様子も見ておきたいと思い、ポスターセッションのZoomに入場した。

R3-4-1R1 1D12 学生ポスターセッションZoom状況.jpg
         図5 学生のポスターセッション入場の画面の様子

 開催時間は16:30~18:30となっており、1日目と2日目に分かれて発表という形式で、1日目が22件、2日目が23件の発表となっていた。
結局1日目しか覗かなかった。
 世論調査あり、デブリ解析、除染あり、核分裂検討、核融合ブランケットあり、であるが、どれもあまり私の興味を引きそうなものはなかった。
 強いて挙げるなら、金属鏡がいいかと思い、入ってみた。
 東京工大の村上氏が「形状制御性に優れた低融点金属鏡に関する研究」というタイトルで、発表していた。
 発表時間2時間の間に数回説明、ということで、後はポスターを眺めている、というスタイルである。
 反射望遠鏡の主鏡として一般に用いられている固体金属鏡は、製作や維持管理に研磨作業が必要であり、輸送などの問題も併せて、大型化が困難である。
 一方、これを克服するために考案された液体金属鏡は、原理が単純であること、 輸送による制限を受けないことなどから大型化が容易であるが、原理上天頂方向しか観測できない。
 そこで、原子力分野を中心に開発されてきた液体金属技術を応用し、鏡面を形成した高純度液体金属を固化させた状態で観測を行う”低融点金属鏡”を考案した。
 具体的には融点が30℃のガリウム金属Gaを使うことであった。
 原理は単純だけど面白い着想だと思った。
 後は、東京工大の三嶋女史のウラニルイオンセンサーについても覗いてみた気がするが、フォトニック結晶という聞きなれない用語にチンプンカンプンですぐに退出した気がする。
 他には高レベル廃液からの核種分離ということで、東京工大の改正氏がポリマーブラシなるものを作製したようであるが、説明もなく、ポスターを見て終わった。
 本当は2日目の方が、積雪ハザード(防災)、燃料デブリ関連、臨界、核分裂関連というテーマのポスターセッションがあったのだが、2日目は昼間で力尽きて見る元気がなかった。

 第2日目はまずG会場の「原子力政策」に参加した。
 2G01では「Study of Multiple Criteria based Decision-Making Approach for Nuclear Power」(原発での意志決定アプローチに基づく複数の基準の研究)というタイトルで、東京工大のSharma氏が発表した。
 英語での発表のため、ほとんどわからなかったが、インドと日本の提携、原発での意思決定プロセスはnuclear power-economics, nuclear waste management, social acceptance, proliferation risk, nuclear safety, security & safeguards and climate change(経済、廃棄物処理、核不拡散、核セキュイティ、保障措置、気候変動)というMulti-Attribute Utility Analysis(多くの属性要因分析)により行うことらしかった。

 2G02では「福島第一原子力発電所事故後10 年における国際社会の視点と国際機関の取り組み」というタイトルで、経産省の舟木氏が発表した。
 1F事故以降、国内外の関係機関は事故教訓から多くを学び、原子力安全向上に向けた各自の取り組みへの反映に努めてきている。
 事故後5年報告書を振り返った上で、その後に進められてきたIAEA、OECD/NEA における注目すべき国際的な議論や活動を概観することにより、事故後10 年に際して事故教訓を踏まえた国際社会の取り組みを国際機関が総括するにあたって重視すべき事項を示唆する。
 IAEAが5年報告書を出している。
 IAEAが行ったピアレビュー(専門家の評価)の評価を日本は受けた。
 自己満足に陥るな、という指摘があった。
 春の年会の昨日の倫理基準のセッションに参加していた。
 OECD/NEAでも報告書が出ている。
 フォローアップもあり、バックエンドのこと、深層防護等にも言及している。
 ステークホルダーのチェック&バランス、産業界のレビューも必要となる。
 更なる安全性向上が求められている、と説明した。

 2G03では「核燃料サイクル施設のハザードマップ重要度について」というタイトルで、元原子力規制庁の関女史が発表した。
 核燃料サイクル施設の品質マネジメントシステムに係る活動において、保安活動の重要度の視点として用いることができる、ハザードマップ重要度を提案する。
 2020 年4 月から開始された国の新検査制度においては、設置者自らがリスクを捉え事故を未然に防ぐ活動が要求されており、リスクの重要度を評価するにあたっては、実用炉ではPRA を用いているが、核燃料サイクル施設については、米国でも例がなく明確な評価手法がない状況にある。
 核燃料サイクル施設は、再処理施設、ウラン燃料加工施設、ウラン濃縮施設、使用済燃料貯蔵施設等、多種多様であり、また工程毎に核燃料物質の性状が変化することから、核燃料物質の潜在的な危険性(ハザード)に着目した評価手法を考案した。
 ハザードレベルに応じたパフォーマンスが要求される。
 要求レベルとしてはセル>グローブボックス(GB)>フードの順になる。
 プルトニウムPuはレベル5で、ウランUはレベル4であるのは規制庁HPに載っている。

R3-4-3R1 2G02 関女史 核燃ハザードマップ.jpg
         図6 核燃料サイクル施設のハザードマップの状況

 また燃料加工施設におけるハザードマップも作成した、と説明した。

 確かに核燃施設においてはリスクを評価する基準はないかもしれない。
 それに一石を投じた、という点で面白い提案かもしれない。
 ただこれが正しい、というのではなく、一例、たたき台と考えればよいのだろう。

 ここで会場を移動(Zoomアウトし、学会Zoomテーブルに戻り、再度別のZoom室に入室)し、F会場の「安全対策」に参加した。

 2F05では「事故時に強制循環炉心冷却を停止することによる日本のPWRプラントのリスク-安全注入信号発信時における原子炉冷却材ポンプ停止方法の日米欧比較-」というタイトルで、福井大学の吉田氏が発表した。
 PWRのプラントリスクの研究をしている。
 小破断LOCA(冷却水喪失)事象において、RCP(一次冷却水ポンプ)の操作が日本と外国で違っている。

R3-4-4R1 1F05 RCPの構造.jpg
         図7 PWRのRCP周辺のシステム概要(ATOMICAより抜粋)

 日本はRCPを停止、米国NRCではRCP運転持続、となっている。
 米国の場合はNRCが要求したことを事業者とメーカーが反論した。
 NRCはこのことで実験を行い、要求を撤回したとのことである。
 日本はこの状況でいいのか、と説明した。

 2F06では「放射性希ガスによる被ばくを防止するフィルタベントシステムの開発 (1)全体概要」というタイトルで、日立の木藤氏が発表した。
 2F06~2F08まではフィルターベントのシリーズ発表である。
 原子力発電所で過酷事故(SA)が発生した時に、PCV の過圧破損および過温破損を防止するアクシデントマネジメント策の一つとして、PCV 内の気体を外部に放出するPCV ベントがある。
 水によるスクラビングやフィルタ等によりベントガスから放射性物質を除去するフィルターベントシステム(FCVS)が用いられる。
 現行のFCVS は、ベントガス中のほとんどの放射性物質を除去できるが、希ガスは化学反応性に乏しく、水への溶解度も小さいため、放射性希ガスを含む希ガスの除去は困難である。
 放射性希ガスの同位体の大部分は半減期が短いため、現在は放射性希ガスの放射能をある程度減衰させてからベント操作を実施することで、放射性希ガスによる被ばくを低減している。
 本開発では、ベントガスから希ガスを除去してPCV 内に閉じ込める新たなシステムの開発を目的とする。
 過酷事故時にFCVS を作動させた場合、FCVS を通過したベントガスは主に、蒸気、水素、窒素、希ガスから構成される。
 ここで、①放出すべき蒸気と水素、②閉じ込めるべき窒素と希ガスの2 種類にガスを分類する。
 ①と②は分子サイズや極性が異なるため、ガス分離膜を利用して①を選択的に通過させることが可能であることが分かった。
 このガス分離膜を希ガスフィルタとして用いることで、蒸気と水素を大気に放出し、放射性希ガスを含む希ガスをPCV 内に戻して閉じ込めるシステムを検討した。

R3-4-4R1 2F06 木藤氏 フィルターベント概要.jpg
         図8 PCVのフィルターベントの概要

 希ガスフィルタは、エアロゾル状の放射性物質やセシウムも閉じ込め可能と考えている。
 将来的には、PCV 内に希ガスフィルタを設置し、FCVS を簡素化することも検討している、と説明した。

 2F07では「放射性希ガスによる被ばくを防止するフィルタベントシステムの開発 (2)フィルタの選定と被ばく量低減効果の評価」というタイトルで、日立の松崎氏が発表した。
 フィルタの候補材として宇宙でも利用されているので耐放射線性が高いと思われるポリイミド膜を選定し、試験にて水蒸気と窒素(模擬希ガス)で1000 倍以上の透過量の差が得られ、希ガスを分離できることを確認した。

R3-4-4R1 2F07 松崎氏 フィルターベント ポリイミド膜.jpg
         図9 ポリイミド膜による希ガス分離の状況

 また、過酷事故解析コードMAAP および被ばく量評価コードMAAP-Dose を用いた解析で、本システムにより被ばく量を1/10に低減できることを確認した、と説明した。

 2F08では「放射性希ガスによる被ばくを防止するフィルタベントシステムの開発 (3)分子シミュレーションによるフィルタ材料の寿命予測」というタイトルで、日立の矢野氏が発表した。
 水蒸気と水素を選択的に透過する希ガスフィルタの候補材料の一つであるポリイミドに対し,試験と分子シミュレーションを用いて、フィルタ寿命に影響する主反応はOH-を触媒とする加水分解反応であることを解明した。
 また、公開文献の実験値と分子シミュレーションの結果からフィルタの寿命を予測可能とした、と説明した。

R3-4-4R1 2F08 矢野氏 フィルターベント 長期安定性.jpg
         図10 ポリイミド膜の寿命予測のための反応速度定数

 私はこのポリイミド膜に官能基を付加して性能向上するような計画はないか尋ねたが、それはまだ考えていないようであった。
 他の人で、放射線耐久性の試験はしていないか、と聞いた人がいた。
 私も宇宙で利用、という説明だけだったので、同じ疑問は持っていたが、これから試験する、というような回答だったと思う。

 以上で午前の発表は終了した。

 午後にはA会場の「1F事故後10年シンポジウムを振り返り今後について考える」というテーマで発表が行われた。

 2A_PL01~04では「1F 事故後10 年シンポジウムを振り返り今後について考える」というセッションと同じタイトルで、原子力学会理事のメンバーが発表した。

1. 目的(中島会長)
 原子力学会の主催で3 月11 日、12 日に開催された1F事故から10年シンポジウム「VISION2050-事故を振り返り未来を見据える」について、当日の講演やパネル討論の概要を紹介した。
 1F事故の反省と提言のフォローアップを行い、5分類50項目を挙げて検討した。
 また津波対策や過酷事故対策が不十分だった、とした。

2. 1F 事故後10年シンポジウムのプログラム概要(中島会長)
 一日目(3 月11 日)の福島フォーカス編と、二日目(3 月12 日)の原子力の未来像編の二部構成とした。
 前者は主として学会外部に向けた発信を意識し、後者は学会員(主として若手)間の議論の喚起と問題意識の高揚を念頭に置いた内容とした。

2-1. 福島フォーカス編(越塚氏)
 はじめに、1F事故調提言フォローWGが今年度実施した当学会事故調提言への各機関の取組状況調査と評価の結果を報告した。
 続いて、1F 廃炉検討委員会及び福島特別プロジェクトから廃炉及び周辺地域の復興・再生支援の取り組み状況と今後の展望について報告した。
 最後に主として当学会外部の有識者をパネリストとしたパネル討論を実施し、学会の今後のあり方等についての意見や示唆をいただいた。

2.2廃炉検討委員会の活動(宮野氏)
 廃炉の検討について、NDF(原子力損害賠償・廃炉等支援機構)、IRID(国際廃炉研究開発機構)、NRA(原子力規制委員会)等と連携して研究を行ってきた。
 東電の中長期ロードマップに従い、1F廃炉の俯瞰的な検討を行ってきた。
 廃炉のシナリオ等の検討を行い、廃炉の国際会議等も開催した。

2.3福島特別プロジェクト活動(藤田女史)
 同プロジェクトでは9項目の作業を行った。
 このプロジェクトは1F事故翌年の2012年に立ち上げた。
 福島と国の間のインターフェースの役割を担うことを目的とした。
 学会員でも知らないことが多かった。
 最初にEUでチェルノブイリ原発事故での教訓を活かして除染ハンドブックEURONASを発行していたので、これを翻訳したものを出した。
 線量データ整理等も行った。
 シンポジウムは13回開いた。

R3-4-4R1 福島特別プロジェクト概要.jpg
         図11 福島特別プロジェクトの概要

 女性のみのシンポジウムも開いた。
 JR福島駅の環境再生プラザ(以前は除染情報プラザ)への人の派遣も行った。
 稲作試験でCs-137の移行挙動をH24年から始めた。
 イノベーションコースト構想等への協力も行う。

2-4. 原子力の未来像編
 前会長の発案で部会等から推薦された学会員で組織され、昨年8月から活動を開始した「原子力の未来像検討」WGにおける議論を中間報告した。
 30歳前後の委員で構成した。
 事故の反省、社会を意識して集まったのは8月だった。
 自由で率直な意見を妨げていなかったか。
 能力を過信していなかったか。
 自分たちでターゲットを設定した。
 専門分野の枠を超えて、原子力エネルギーの役割の再定義、気候変動問題への貢献、原子力・放射線領域の学術的な魅力、等の論点を整理した。(14:25 視聴114名)

3. 総合討論
 活動組織の代表者である、越塚氏(事故調提言フォローWG)、宮野氏(廃炉検討委員会)、藤田女史(福島特別PJ)、村上氏(原子力の未来像検討WG)で、シンポジウムでの講演内容のサマリーを紹介した。
 その後の総合討論では、外部有識者の意見をいただいたことを紹介した。
 原子力は未完の技術、世界最高水準は思考の停止を招く、黙殺のメカニズムがあること、原子力の将来像が見えない、自ら狭くしていないか、「結論ありき」ではない、学会誌でも取上げられた安全目標が重要、社会との対話、自由な議論が必要、説明はコミュニケーションではない、学会自体も自分の組織の代表者みたいになっている、IRIDM(継続的な安全性向上のための統合的意志決定指針、原子力学会で策定)の頭にコミュニケーションの重要性が書いてある、等の説明があった。

 上記ではでも原子力の未来像が見えない。
 若手のテーマ選定も物足りない気がした。

 ちょっと余談だが、今年の1月の原子力学会誌のアンケートの回答の一部を列記する。
・放射線治療における患者の確定的影響と確率的影響
・ミクロラジオオートグラフィ、原子力委員の中西氏(植物内の水等をRIで挙動把握)
・医療従事者、患者の放射線被ばくと患者被ばくの青手帳
・核鑑識と核ライブラリーの日本での状況
・核セキュリティの世界の動向と日本の動向
・大学のRIと核物質の統合管理としてJAEAに移管、また学生の実験旅行としての東海村ツアー等
・レンタル放射線取扱主任者(病院等)
・コロナ対策としての静電気式、オゾン式空気清浄機や紫外線222nm(人間に無害)照明による殺菌効果の検証

また以下のようなものも思いついていたので、書いておく。
・ウランUの核分裂でなぜ不均等核分裂(Cs-137とSr-90のように原子番号130前後と原子番号90前後の2つに核分裂することが多い)するのか。
・トリチウムの中のパイ中間子のキャッチボール(強い核力の相互作用)はどのように行われるか。
・核融合におけるクォーク(陽子や中性子は3つのクォークで構成されているとする説)の挙動はどうなのか。
・雷の中でのガンマ線発生や電子対生成
・中性子ビームと陽子ビームで重水素やトリチウムは作れるか。
・電子スピントロニクスなる分野がある。磁気メモリ等に応用が期待されている。では中性子スピントロニクス、陽子スピントロニクスはないか。
・陽子の崩壊の測定
・中性子の崩壊(約8分で陽子と電子と反電子ニュートリノに崩壊)の逆反応はあるか。
・ニュートリノ顕微鏡は作れるか。もし作れれば、不確定性原理(粒子の位置と運動量は常に不確定、測定しようとするとすでに変化してしまう)を打ち破れるかもしれない。
・宇宙線から発生する中性子で電子機器のソフトエラーが発生するらしい。もしこれがエラーの伝播・エラーカスケードを起こせば世の中は大混乱する。一度飛行機での運行ソフトに異常が生じたことがあるらしい。どうやって防げばいいか。
・クーロンの法則で距離をゼロに近づけると無限大に反発してくっつかないはずだが、実際は反発力以上の力を加えればくっつくはず。ではクーロンの法則は不完全ではないか。
・デブリの構造をヒントにして新しい材料は作れるか。
・原子炉に海水注入した経験を活かして、海水揚水発電所を作り、太陽光発電とセットで再エネシステムを作る。

 (その2)はここで終わりにする。

 (その2)のまとめを以下に簡単に示す。

 1日目の2番目はD会場の「原子炉関連検出器開発」である。
 最初の1D07は原子炉ニュートリノモニタの開発であり、このモニタで原子炉の運転状態を遠くから監視できるシステムの開発であるが、今回はあまりいい成果は出なかった。
 1D08はテロ対策としての低コスト中性子検出器の開発で、水チェレンコフ光を検出して、核物質の検知をするもので、U-235を使った結果有用なデータが得られた。
 1D09と1D10はJAEA大洗の高速実験炉「常陽」の燃料破損検出設備のガンマ線モニタを液体窒素を使うGe検出器から簡便な冷却をする候補として臭化タリウムTlBr検出器を選んで試験した。
 長期安定性として常陽の運転日数60日(1440時間)より長い約2000時間の連続動作で安定性を確認できた。
 1D11は1D09と同じTlBr検出器の研究だが、1D09は応用研究であったが、こちらは基礎研究であり、TlBr結晶の構造を中性子回折法の一種で分析し、わずかな歪み等を観察できた。

 学生のポスターセッションでは、低融点金属鏡としてガリウム金属Gaを使ったポスター等を見た。

 第2日目はまずG会場の「原子力政策」に参加した。
 2G01はインドの原子力の意思決定に関するもので、経済、廃棄物処理、核セキュリティ等の多くの要因を踏まえたプロセスが重要とした。
 2G02は経産省の舟木氏が国内外の国際機関の3.11後の原子力の10年の活動を紹介していた。
 2G03は核燃料サイクル施設でのハザードマップに関する検討であり、原発ではリスク評価にPRA(確率論的リスク評価)を使って評価できるが、核燃料サイクル施設ではこれに該当するものがないので、ハザードマップを用いた評価法を提案している。
 粗削りな構想ではあるが、元原子力規制庁の人らしい着眼点と思った。

 次にF会場の「安全対策」に参加した。
 2F05はPWRの小破断LOCA(冷却水喪失)でのRCP(一次冷却水ポンプ)の操作が日本と米国等と違う点を指摘していた。
 2F06~2F08は原子炉の過酷事故(SA)時に格納容器(PCV)内のガスを外部放出する際のフィルターベントに関するもので、希ガス除去できるシステムを検討した。
 宇宙で利用されているポリイミド膜を用いて、有用な結果が得られた。

 午後にはA会場の「1F事故後10年シンポジウムを振り返り今後について考える」というテーマで発表が行われた。
 3月11日と12日の2日間に福島事故10年のオンラインシンポを開いた結果を説明した。
 一日目の福島フォーカス編と、二日目の原子力の未来像編の二部構成とした。
 前者は主として学会外部に向けた発信を意識し、後者は学会員(主として若手)間の議論の喚起と問題意識の高揚を念頭に置いた内容とした。

 (その3)も同じように、順に書いていきたいと思う。

-以上-

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