放射線教材コンテスト「発表会」にオンライン参加

 放射線教材コンテスト「発表会」(2020/12/27(日))にオンライン参加した。

 以前に放射線教育フォーラムのシンポジウムに参加したことがあった。
 その関係で、同フォーラムより昨年の12月24日(木)に上記の開催案内メールが届いた。
 でもその開催日が12月27日(日)ということで、開催日直前の案内である。
 放射線教材ということで、放射線にも関係し、私の興味分野である教育にも関連したものであるので、すぐに参加申し込みをした。
 すると、その日のうちに参加用のZoomのURLを記載した資料が届いた。
 しかし、その資料を読んでみると、予め教材を読んでおいて、その結果の発表会がZoomで開催されるという。
 つまり教材を予め読んだ前提で発表会は進めるというので、慌てて主催者の日本科学技術振興財団のradiというHPにアクセスして、一通り読んでおいた。

 当日はこれらの放射線教材の結果発表であるから、内容自体はほとんどない。
 だから、発表会自体は末尾にプログラムのみを載せておく。

 ここでは各教材の内容について簡単に触れておくこととする。
 項目としては、教材のタイトル、代表者、大学である。
 説明するものとしては、(a)対象(小学生、中学生、高校生)、(b)背景(狙い等)、(c)内容の簡単な説明、(d)私の感想、の順である。

(1)「市販試薬の放射線計測による新規放射線教育プログラムについて」嶋津佑弥:兵庫医療大学
 (a)対象:高校生
 (b)背景:
   普通の放射線計測を行おうとすると管理区域内で実験しないといけない。
   それでは時間がかかる。
   天然核種について測定するのであれば、管理区域は不要である。
 (c) 内容:
   線源として、塩化カリウム(KCl)、塩化ルビジウム(RbCl)、酸化ルテチウム(Lu2O3)の3つを測定用サンプルとした。

R3-1-29R1 1-3放射線核種.jpg
         図1 天然放射性核種の例

   3つの核種はK-40(天然存在比0.02%、半減期13億年、β線1.31Mev放出)、Rb-87(天然存在比28%、半減期475億年、β線0.28Mev放出)、Lu-176(天然存在比2.6%、半減期378億年、β線0.596Mevとγ線放出)である。
 これらについて、β線測定にベータちゃん、ガンマ線測定にRadiという放射線計測機器を用いて測定し、アルミ箔を使って遮へいの効果を見る、等の授業になっている。
 (d)私の感想
   私はこの中でK-40しか覚えがなく、Rb-87、Lu-176という天然放射性核種があることを知らなかった。
   この3種のサンプルを使って、遮へい実験をするというのは大したことだと思う。
   これを学生が考えた、というのはちょっと出来すぎで、指導教員の藤野先生の指導が大きいであろう。

(2)「放射線の強さ・大きさを視覚的にとらえる絵本型教材」芦澤胡乃花:帝京大学
 (a)対象:小学校4年生くらい
 (b)背景:
   小学生ではまだ放射線に対する知識等は弱いと思われる。
 (c) 内容:
   絵本で、空から降ってくる宇宙線、食物、地面から放射線が出てくるのを説明している。
   その量を示すために、立体的なグラフ等を用いている。

R3-1-29R1 2-2放射線の強さを絵本で 食物内.jpg
         図2 身の回りの放射線

 (d)私の感想:
   小学生ぐらいであれば、絵本という教材自体がとりつきやすいのかもしれないと思う。

(3)「X線について動画で学ぼう!」藤野大樹:帝京大学
 (a)対象:中学生
 (b)背景:
   中学生にいきなりX線の説明は難しいので、光から説明する。
 (c) 内容:
   光の性質として質量ゼロ、光子としての粒と波動としての二重性、ペットボトル等は透過する。
   光より振動が激しいものがX線である。
   X線は光よりよく透過する。

R3-1-30R1 X線透過.jpg
         図3 X線発生装置の図

R3-1-30R1 X線透過2 ハサミ.jpg
         図4 X線で撮った写真(ハサミ)

   箱の中に入っているものをX線発生装置で見ると、ハサミが入っていることがわかる。
 (d)私の感想:
   X線については、レントゲン写真等があるから比較的説明しやすいであろう。

(4)「外部被ばく低減ゲーム『距離、遮へい、時間』」瀬角唯斗:東海学園大学
 (a)対象:小学校高学年
 (b)背景:
   外部被ばく低減の3原則「距離、遮へい、時間」をゲームで遊びながら学ぶ。
 (c) 内容:
   すごろくのようなゲームシートを作って、中心から離れるにしたがって、被ばくが低くなる、というゲームで遊ぶ。

R3-1-30R1 4被ばく低減ゲーム 瀬角.jpg
         図5 被ばく低減のゲームの概要

 (d)私の感想:
   さいころを使い、シーベルト等の放射線単位も織り込んでいる。
   しかし、小学生でどうなのか、とも思うが、実際のゲームをしていないので、イマイチ理解しにくい。
   外部被ばく低減の3原則を丁寧に言うと、距離を取る、遮へいとなる物を間に置く、被ばくする時間を短くする、ということである。
   放射線作業は放射線から遠く離れて作業、鉛等の遮へい材を置く、作業時間を短くすることが基本となる。

(5)「Comparison Game」眞島杏佳:純真学園大学
 (a)対象:小学生
 (b)背景:
   被ばくを取り扱うのは(4)のゲームと同じである。
 (c) 内容:
   こちらはカードを引いて、そのカード(食べ物、土、宇宙線等)の被ばく線量の大きいものと小さいものを比較してどちらが大きいか、等をクイズのように当てる。
 (d)私の感想:
   (4)のゲームでの中心から離れていく、というようなものとは違うので、分かり易いとは思うが、すぐに飽きてしまいそうである。

(6)「遮蔽と距離について学ぶ放射線サウンドボックス」松林穂乃佳:帝京大学
 (a)対象:小学校高学年
 (b)背景:
   見えない放射線を音に例えることで、遮へいの考え方を学ぶ。
 (c) 内容:
   スピーカーを準備し、伸縮する筒の中のみで聞こえるようにして、スピーカーから離れた位置で聞く。
   間に遮へい物を置くと音が小さくなる。
   耳という感覚だけでなく、サウンドメータで定量値も測定する。
 (d)私の感想:放射線を音で表現する、というのはアイデアとしてはいいのだが、インパクトに欠ける気がする。

(7)「ゼオライトと凝集剤を用いた地下水からの放射性核種の分離」石井颯太:東京学芸大学
 (a)対象:高校生
 (b)背景:
   天然放射性核種であるラドン222の子孫核種である鉛(Pb-214)、ビスマス(Bi-214)などがある。
   これらは湧水や井戸水に代表される身近な地下水にわずかに含まれていることがある。
   これを濃縮して検知する。
 (c)内容:
   増富温泉の温泉水を1L用意して、その中に砕いたゼオライトを入れて混ぜる。
   これをろ過してゼオライトに吸着した鉛やビスマスの放射能をUSBガイガー(測定器)で測定する。

R3-1-31R1 7 地下水 ゼオライト.jpg
         図6 ゼオライトの構造

R3-1-31R1 7 地下水 今回の分析方法.jpg
         図7 今回の分析方法

 (d)私の感想:
   Pb-214、Bi-214は共にウラン系列の放射線壊変系列の核種で、前者は半減期27分でβ線0.67Mev等(γ線も出す)を放出してBi-214になる。
   Bi-214は半減期20分でβ線3.27Mev等(α線、γ線も出す)を放出してポロニウムPo-214になる。
   以下にいろいろ崩壊して最後は鉛Pb-206で安定になる。

   私も実は家族連れで増富温泉(山梨県)に行ったことがある。
   ここの温泉水はラドン等のいろいろ放射性物質を含んでいるので、低温核融合の実験での水として使ってみたのである。
   実験はうまく行かなかったが、温泉に連れて行く口実にはなったと思う。

(8)「造影剤を用いたX 線検査をモデルで考えてみよう」石丸遥香:愛媛大学大学院
 (a)対象:中学生
 (b)背景:
   胃のレントゲン等で造影剤として硫酸バリウム等を使っている。

R3-1-31R1 8 造影剤 X線写真.jpg
         図8 肺のレントゲン写真の例

 (c)内容:
   空のペットボトルに光を当てる。
   その次にこのペットボトルに硫酸バリウムに見立てた絵具の溶液を入れて、これに光を当てると、光が透過しないことで影を作ることが理解できる。
 (d)私の感想:
   私も人間ドックでは2年前までは毎年造影剤の硫酸バリウムを飲んでいた。
   去年はこれをやめて胃カメラにした。
   以前胃カメラは1㎝のくらいの太い導線のようなものを口から飲み込んで何度も吐きそうな経験をしたことがあったので胃カメラは嫌いだった。
   でも最近の胃カメラは0.5㎝くらいと半分くらいの導線となり、鼻から挿入するタイプということで楽に検査できた。
   でも中学生で造影剤といってもピンとこない子がほとんどではないか。

(9)「光るねんどで体験!放射線は人にうつるの?」熊野亜海:帝京大学
 (a)対象:小学校高学年
 (b)背景:
   福島原発事故で県外に避難した人が、放射能がうつる、といわれていじめられた子がいたりしたらしい。
 (c)内容:
   蓄光材の粘土を星形に2つ同じものA,Bを作り、片方Aに光を3分、もう片方Bにカバーをかけて光を当てない。
   その後Aを見ると光る。
   これを被ばくと見立てる。
   AはBにうつるか。
   うつらない。
 (d)私の感想:
   蓄光材という材料を初めて知った。
   夜光テープと同じなのだろうか。
   調べてみたが、アルミナ(酸化アルミニウム)等で、中国産が多いという。

(10)「放射線教材用カードゲーム『この子だぁれ?』」鈴木望友:東海学園大学
 (a)対象:小学校低学年
 (b)背景:
   小さな子どもも楽しみながら放射線のことを知って欲しい。
 (c) 内容:
   ガイコツの絵でレントゲンを、タイヤの絵で放射線で強化されたものを、宇宙人のような絵で宇宙線を現したカードで遊ぶ。
 (d)私の感想:
   小学生に人気の「なんじゃもんじゃ」ゲームに沿ったものらしいが、よくわからない。

(11)「物語を完成させよう!~紙芝居で学ぶ放射線~」髙橋あきほ:帝京大学
 (a)対象:小学校高学年
 (b)背景:
   放射線でダメージを受けた細胞が回復することを紙芝居でわからせる。
 (c)内容:
   たろう君が山の上にいる魔物をやっつける冒険で、魔物をα線、β線、γ線、X線にしている。
   助っ人は紙、アルミニウム、鉛くんである。

R3-1-31R1 11 紙芝居2.jpg
         図9 紙芝居の例

 (d)私の感想:
   放射線照射での細胞のダメージ回復に、SLD回復、PLD回復の2つのことがさりげなく入れられていたが、わかりにくいと思う。
   前者は照射中の条件により回復する可能性があり、後者は照射後の条件で回復することがあることを示している。
   ただ、放射線損傷した細胞やDNAは栄養を十分摂れば回復する。
   これは夏に紫外線で日焼けした肌が秋には皮がむけてきれいに回復することと同じである。

 放射線教材コンテストは以上で終わりである。
 (興味がある人は末尾にradiのHPのURLを載せているので、そこにこの実験全部が載っており、動画もある。)

 この後にアンケートがあったので以下のようなことを書いておいた。

 『やはり日常生活の中でこうした研究材料を見つけるのは難しいと思うし、この教材自体も悪くはないが、生徒に面白いと思わせるためには作る側の学生もわくわくする動機づけが必要になる。
 できれば、宇宙線の二次放射線の中性子(JAEAがソフトノイズとして飛行機の計器誤動作やエラー連鎖等の研究を行っている)、ミューオン(X線のように原子炉透過図やピラミッド)、オーロラ(天然の電子加速器)、半減期はなぜ固定されているのか、変更できるか、ウランの核分裂はなぜ2つの均等なFPに分裂しないのか、鉄以上の元素は太陽系では生成できない(超新星爆発のr過程で生成)、雷でのガンマ線発生(東電が原子力学会で発表)、原子力委員の中西氏のミクロオートラジオグラフィ(植物中の元素移動のRIトレース等)、放射線治療法BNCT、核鑑識技術(テロにおけるダーティボム阻止等)、橋梁のX線・中性子線分析での劣化診断、宇宙飛行士が栄養2倍摂取で放射線ダメージの軽減・細胞修復等の新鮮なトピックを提供する必要があると思う。』

 教育という観点では、中学校の教育実習で「数学」教師として行った経験があるので、今後もこういう催し物があれば参加してみたいと思う。

< 放射線教材コンテスト「発表会」>
 1.日時:2020年12月27日(日)13:30~15:30
 2.対象:教職員、放射線教育に携わっている方であれば誰でも参加いただけます。
 3.視聴方法:Zoomウェビナーを用いたLive形式
 4.スケジュール
  13:15~会議システム接続開始
  13:30~「発表会」開会
  13:30~13:45 財団挨拶、実行委員・来賓紹介、受賞作品・受賞者紹介
          本コンテストの概要紹介 
  13:45~13:55 最優秀賞:受賞者インタビュー
  13:55~14:40 優秀賞:受賞者インタビュー
  14:40~14:55 講評
  14:55~15:25 来賓挨拶
           ディスカバリー・ジャパン合同会社、復興庁、全国小学校理科研究協議会、全国中学校理科教育研究会、日本理化学協会、放射線教育支援サイト“らでぃ”放射線教育推進委員会
  15:25~15:30 「発表会」閉会 

 5.概要
  放射線教材コンテストは、小・中・高校生を対象にした放射線教材を、放射線(教育)を学ぶ大学生等から募集することによって、放射線教育に関するネットワークのさらなる拡大、放射線教育手法の新たな創造・実践等を目指し、当財団の自主事業として実施しています。
  今回、2020年度放射線教材コンテスト「発表会」は、コロナ禍のためオンラインにて開催することを決定いたしました。
  受賞した作品は、新学習指導要領での取扱いをはじめ、教育現場における放射線教育を取り巻く現状を鑑み、大学生等が意欲的に取り組んだ作品ばかりです。
  皆様方におかれましては、年末のお忙しい最中とは存じますが、本コンテスト「発表会」を当日オンラインにて視聴いただき、今後の授業の参考として、さらには熱心に取り組んだ大学生等に応援をいただければ幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。

 6. 2020年度 受賞作品一覧
 (「教材名」応募代表者:学校名) 
 <最優秀賞>
  (1)「市販試薬の放射線計測による新規放射線教育プログラムについて」嶋津佑弥:兵庫医療大学
  (2)「放射線の強さ・大きさを視覚的にとらえる絵本型教材」芦澤胡乃花:帝京大学

 <優秀賞>
  (3)「X線について動画で学ぼう!」藤野大樹:帝京大学
  (4)「外部被ばく低減ゲーム『距離、遮へい、時間』」瀬角唯斗:東海学園大学
  (5)「Comparison Game」眞島杏佳:純真学園大学
  (6)「遮蔽と距離について学ぶ放射線サウンドボックス」松林穂乃佳:帝京大学
  (7)「ゼオライトと凝集剤を用いた地下水からの放射性核種の分離」石井颯太:東京学芸大学
  (8)「造影剤を用いたX 線検査をモデルで考えてみよう」石丸遥香:愛媛大学大学院
  (9)「光るねんどで体験!放射線は人にうつるの?」熊野亜海:帝京大学
  (10)「放射線教材用カードゲーム『この子だぁれ?』」鈴木望友:東海学園大学
  (11)「物語を完成させよう!~紙芝居で学ぶ放射線~」髙橋あきほ:帝京大学

 7.事前にお願いしたいこと
  受賞者のみなさまへのインタビューは、参加者全員が予め動画を視聴いただいていることを前提に実施させていただきます。
  お忙しいところ大変恐縮ですが、受賞作品を事前に視聴いただけますようお願いします。
   https://www.radi-edu.jp/contest/list-of-award
 -以上-

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