原子力学会秋の大会オンライン参加-発表内容の説明等(その2)

 2020年原子力学会・秋の大会はオンライン開催となった。

 今回は(その2)として、第1日目午後の残りの部分について書く。
 (その1)を見た人は初めの部分を飛ばして見てください。

 新型コロナウイルスの影響で大規模な集会は控えるように、との国の要請を忖度し、最近流行のテレワークの一環としてのオンライン開催となった。

 プログラムから学会で興味があった内容についての内容等の説明をしてみる。
 
 期間は2020年の9/16(水)~9/18(金)の3日間であった。
 今回も福島事故関連を主として聴講した。
 聴講スケジュールは以下の通りとした。

 9/16(水) AM1  AM2    PM1    PM2      PM3    
   J核セキュリティ    D新検査制度 A放射線測定  J 安全文化 
 9/17((木))
   A環境放射能      Bコロナ対応 A環境放射能  A環境放射能
 9/18(金)
   A環境放射能      Bグランドチャレンジ A 環境安全   

 AM1は10:30-11:00くらいにある発表、AM2は11:00-12:00くらいにある発表、PM1は13:00-14:30にある特別セッション、PM2は14:45-16:00くらいにある発表、PM3は16:00-17:30 くらいにある発表時間帯である。

 各テーマについて整理してみる。

 第一には、福島事故関連の情報収集である。
 第二には、私が研究している核変換技術の情報収集と共同研究グループとの連携の検討であるが、今回はそれに該当するものはなかった。
 第三には、教育、といっても私の研究の後継者探しという面が強い。
 これはオンラインでは難しいものがある。
 第四に興味があるものの聴講、今回の場合はグランドチャレンジ(原子力委員会の岡委員長の原子力界に望むこと)である。
 その他として、トピックス的なもの(コロナ対応)もミーハー的に仮想聴講した。

  以下にオンライン聴講順にメモ程度に書き留めていく。

 長々と見たくない人は末尾にまとめを書いておくので、それだけみればいいかもしれない。
 今回は9月11日に予稿集ダウンロード、9月16日に開催、と検討のための期間が短くほとんどプログラム自体もエイヤーと決めたこともあって、あまり考えもせずに、A会場が福島事故関連だったので、これを多く聴講した。

 1日目の午後2番目はA会場の「放射線(能)測定・線量計測1」をオンライン視聴した。

 1A071では「PVA-KIゲル線量計による中性子線量測定」というタイトルで、福井工大の青木氏が発表した。

R2-10-18R1 1A07 熱中性子とPVA-KIゲルの反応 2019年秋の大会図.jpg
         図1 PVA-KIゲル線量計の過去の例(2019年秋の大会)

 PVA (ポリビニルアルコール)のヨード反応を利用したゲル状化学線量計としてのPVA-KI ゲルに関する発表である。
 PVA とホウ砂による架橋反応を利用しているため中性子感度があり、がん治療での中性子捕捉療法(BNCT)へ利用可能である。
 (筆者注:BNCTは炉からの中性子を減速してホウ素Bの中のB-10に照射して、B(n,α)Liという反応で放出されるα線をがん患部に照射し、がん細胞を壊す利用法である。)
 今まで中性子源としては原子炉を利用していたが、最近は加速器を使った治療方法も開発されてきている。
 頭頚部への薬剤は販売が開始されている。
 BNCTの照射場においては、中性子とγ線が混在している。
 だから正確な中性子計測技術が必要になる。
 PVA-KIゲル線量計は可視化した測定が可能である。
 PVA-KIを放医研の加速器(NASBEE)を用いて、ポリエチレン減速による中性子照射を行った。
 この時に変色した時の吸光度測定を行い、その中性子における検量線を作成した。

R2-10-12R1 1A07 青木氏 PVA-KI.jpg
         図2 PVA-KIゲル線量計の熱中性子における検量線

 この結果から、吸光度は熱中性子と比例関係にあり、ある中性子束の範囲内で中性子測定の可能性が示された、と説明した。

 1A08では「PVA-KI ゲル線量計の反応メカニズム研究」というタイトルで、福井工大の砂川氏が発表した。
 これは1A07との関連発表である。
 PVA-KI ゲルは、放射線照射により赤色に呈色した後、加温することにより透明化する特徴を持つ。
 本研究では、放射線照射により赤色に呈色したPVA-KI ゲルを加温し、透明化する反応機構の解明を試みた。
 PVAにホウ砂と果糖を混合した溶液にヨウ化カリウムKIを添加し、PVA-KIゲルにX線8Gyを20℃で照射後、36℃に加温し、反応を調べた。
 その結果、I3-、またはI2+I-のようなヨウ化イオンの存在が確認できた、と説明した。

 1A09では「ドローン線量測定結果を用いた空間線量率マッピング (1)ドローンに搭載した視野制限付き検出器による空間線量測定」というタイトルで、未来技研の大槻氏が発表した。
 ドローンを使った線量測定で、福島原発付近のクリーンセンターふたばで測定を行った。

R2-10-13R1 1A09 ドローンの概要.jpg
         図3 ドローンを使った空間線量率計測機器の例

 ヘキサ型のドローンに7㎏の積載物を搭載できる。
 これにコリメータ付きのCsIシンチレータとCCDカメラを搭載し、写真と線量測定を同時に行った。
 予備試験として、30mメッシュでドローン計測を行い、データはUSBメモリーに保管した。
 2ケースの計測高度において、手動でホバリングし、1mの高さの空間線量率を求めた。
 荒れ放題の土地や歩行困難な地域での測定が可能となる。
 線量の低いところで2μSv/h、高いところで6~8μSv/hであった。
 歩行計測と比較してよい一致がみられたが、部分的に30%くらいの誤差が見られた。
 またホットスポットの計測は難しいことがわかった、と説明した。

 1A10では「ドローン線量測定結果を用いた空間線量率マッピング (2)ドローン線量測定の特性」というタイトルで、大林組の神徳氏が発表した。
 これは1A09との関連である。
 シンチレーターを用いたドローン線量測定は、測定時間の削減、および、歩行調査では測定位置付近の狭所的な結果に対して面的に把握することができる特徴を有している。
 こうした特徴は中間貯蔵施設や将来の県外処分場など規模が大きな土地の線量管理において有用な測定技術と考えられる。
 また台風等の異常が発生した場合にも有用である。
 クリーンセンターふたばの周辺での東西3㎞にわたって測定を行った。

R2-10-13R1 1A10 ドローン測定機器.jpg
         図4 ドローンを使った空間線量率計測例

 ドローンは測定エリアが広いが、送電線や飛行禁止区域などの制限がある。
 測定結果を歩行調査と比較して概ね同じ傾向を示した。
 またホットスポットにおいても高度を下げることで位置の特定が可能である、と説明した。

 私は天候の影響を受けるのではないか、と聞くと、雨のような場合、ドローン計測は無理、との答えであった。

 午後3番目はJ会場の「安全文化・リスク認知」をオンライン視聴した。
 1J12では「原子力発電所の安全文化評価の方策検討 データ収集のための質問紙の試作」というタイトルで、原子力安全システム研の高城女史が発表した。
 原子力の安全文化の自己評価を現場の職員が省みるものを検討した。
 A社の協力を得た。
 A 社の事業所における安全文化評価は、まず各部署の役職者が自部署の評価を行い、その評価結果等の情報を基に、同事業所に所属する評価担当者が事業所全体の評価を行うという手順で行われている。
 課長が自部署の評価を行うための質問票を作成した。
 これによって、安全評価のための情報収集を行った。
 INPO(米原発運転協会、TMI事故後に設立)の健全な安全文化の特性10個がある。
 個人の役割、マネジメントの役割、マネジメントの仕組等である。
 抽出された課題は人が足りない、忙しい、等であった。
 INPO評価指標に当てはまらないものがある。
 健全な職場の姿と自分の職場のギャップを18項目にまとめた。
 2019年にA社の役職者に対して実施し、5人中4人から回答を得た。
 安全やルールについての回答を得て、現象の背景を求めた。
 業務が輻輳(ダブり)していることが窺えた、と説明した。

 1J13は「高レベル放射性廃棄物の地層処分についての情報呈示がリスク認知に与える効果の検討:リスクの多義性に着目して」というタイトルで、関西大学の浦山女史が発表した。
 高レベル廃棄物のリスクコミュニケーションに関するものである。
 高レベル廃棄物のリスクコミュニケーションに関しては専門家の間でも様々な意見がある。
 特に不確実性や多義性のあるものについては、市民にとって判断が難しいとされる。
 そこで、インターネットで情報開示実験を行った。
 2019年12月の3日間に被験者1000人に対して、情報開示4種を行った。
 単純情報、複雑情報、不確実情報、多義性情報である。
 事前準備として、知識や概要説明を行った。
 事後には便益や多義性に着目した。
 地層処分は危険ゼロではないことは理解された、と説明した。

 今高レベル廃棄物処分場については北海道の寿都町と神恵内村が文献調査に応じる、との報道で大騒ぎしている。
 (筆者注:下の図で、寿都町と神恵内村は札幌のほぼ西の海岸辺りで、近くに北電泊原発がある。)

R2-10-18R1 1J10 科学的特性マップの例 all.jpg
         図5 高レベル廃棄物処分場に関する科学的特性マップ

 以前高知の東洋町が立候補したが、町長がリコールされたと記憶している。
 私は日本国内での処分場は無理で、南極(今は南極条約で利用制限)かサハラ砂漠のような人口の少ない地域(今は自国で出た廃棄物は自国で処理、が国際的な原則)に保管し、G7の国での国際共同管理にすべき、と思っている。
 日本国内は地震、津波、火山噴火、台風、ゲリラ豪雨、土砂崩れ、洪水が気候変動で被害が大規模化しているような状態で、100年以上の安全な保管ができる訳がないと思う。

 1J14では「ICRP『Publications 109』および『Publications 111』の改訂草案に関するパブリックコメントの内容分析」というタイトルで、市民科学研の糸永氏が発表した。
 (筆者注:『ICRP『Publications 109』は緊急時被ばく状況における 人々の防護のための専門的助言、というもので、放射線防護の世界的な権威のICRPが2007年に発行したもの、『Publications 111』は原子力事故または放射線緊急事態後の長期汚染地域に居住する人々の防護に対する委員会勧告でICRPが2009年に発行した。)
 ICRPが両方とも2019年にパブコメを募集したら、ほとんど日本からで約300件であった。
 日本のコメント227件で読むと時間がかかるので、要点を抜粋した。
 緊急時被ばく管理に関するもので、長期間住む人は1-20mSvの幅の範囲であり、年間では被ばく1mSv程度である。
 緊急時や復興過程で対応者は100mSv以下となっている。
 パブコメとしては、被ばく線量と基準に関するコメントが多かった。
 全体の309件中176件であった。
 年1mSvは厳守すべき、二重基準は問題、10mSvの説明がない、等のコメントがあった。
 このICRP勧告の撤廃、原発そのものの廃止、ICRPへの疑義等もあった、と説明した。

 他の人から、この発表の意図は何か、と聞かれたようだが、回答は覚えていない。

 これで1日目午後の発表は終わった。

 今回(その2)を以下に簡単にまとめる。
 午後2番目はA会場の「放射線(能)測定・線量計測1」をオンライン視聴した。
 1A07ではPVA-KIゲル線量計を用いて、放射線がん治療の一種のBNCTの際の中性子線量測定に関するものであった。
 1A08はこの線量計の反応メカニズムの研究に関するものであった。
 1A09と1A10は共にドローンを使って原発近傍の空間線量率を測定する研究であり、ちょっとずつでも進歩しているようであった。

 午後3番目はJ会場の「安全文化・リスク認知」をオンライン視聴した。
 1J12では原発の安全文化評価の質問紙の試作に関するものである。
 管理職5人にアンケートして4人の回答ではあまり成果は見られなかったのではないか。
 1J13は今北海道の寿都町等で話題になっている高レベル放射性廃棄物の地層処分についての情報の出し方の問題であったが、ネットで興味ある人に対しての調査なので、集団としての任意性が少し疑問である。
 1J14では放射線の国際的な権威ICRPの出した報告書2件に関するコメントの分析であった。
 これも反原発の偏りが最初から想像され、後の質疑で、この発表に何の意味があるのか聞いた人がいたが、全く同感である。
 単に反原発のグループが原子力学会秋の大会を利用していただけ、ととられても仕方ないような疑問の多い発表であった。

 以降も同じように、順に書いていきたいと思う。
  -以上-

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