防災学術連携体の7月豪雨の緊急集会のネット聴講

 防災学術連携体の「令和2年7月豪雨の緊急集会」(ネット中継)(7/15(水))を聴講した。

 今回の集会は緊急の名の通り、急に決まった印象がある。
 メールを見ると、7月10日(金)に防災学術連携体の事務局から、となっている。
 開催日の5日前に連絡が来るようなことは、過去にもあまり例がない。
 ただスピード感とか、現状把握という意味では大事なことかもしれない。
 でも開催時間が中途半端な時間だとは思う。
 11時20分から13時20分とはちょうど昼飯時である。
 でも、きっとこの時間しか講演者の都合がつかなかったのかもしれない。
 プログラムは末尾に添付する。

 マイボトルを準備し、トイレに行ってパソコンの前に座った。
 アクセスしてしばらくはつながらなかった。
 つながっても、司会進行でがやがやしていた。
 (後で防災学術連携体のHPにこの集会のビデオが載せられていたので、それを参照しながら書いていく。)

 「開会の挨拶」として防災学術連携体の代表幹事の米田女史が行った。
 今回の豪雨は7月3日から降り始め、7月15日までの長い雨となり、すでに2018年の西日本豪雨を超えている。
 この間に74名の方が亡くなられ、哀悼の意を表する。
 今回のプログラムの事前のものの1つ前に、DMATの近藤氏から参加の申し込みがあり、一番最初に5分くらい話していただくこととした。

 (1)では「令和2年7月豪雨DMATの活動報告」というタイトルで、日本災害医学会の近藤氏が報告した。
 DMATは72チームあり、九州は6チームある。
 人吉、球磨川、八代で活動していた。
 医療ニーズのスクリーニングを行った。

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         図1 病院の被災状況例

 孤立地域はあったが、今は解消している。
 広域多数の孤立が発生した。
 雨が長引いて、陸路は無理なことが多く、ヘリも難しい状態だった。
 コロナ禍での災害でもあり、避難所の対策が大変だった、と説明した。
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         図2 避難所の状況例
 
 (2)では「梅雨前線に伴う豪雨について」というタイトルで、日本気象学会の竹見氏が報告した。
 梅雨前線等のハザードについて説明する。
 今回の豪雨は「令和2年7月豪雨」と命名された。
 大雨の状況はどうだったか。
 平年の1か月の雨量が3~5日に降った。
 7/3-7/14で総雨量が1,000㎜を超えるところもあった。

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         図3 降雨量の比較

 高知で1,484㎜、長野1,400㎜であった。
 観測史上1位の記録となったのが10カ所くらいあった。
 長時間でみてもやはり多かった。
 昨年の台風19号では箱根で922㎜だった。
 線状降水帯が九州や四国で多く発生した。
 梅雨前線の停滞もあった。
 可降水量(大気中の水蒸気総量)が次々と襲来した。
 大気の不安定さもあった。
 豊富な水蒸気量があった。
 2年前の西日本豪雨や台風19号と比較してみても、2年前と同じようである、と説明した。

 (3)では「九州豪雨災害の状況(速報)」というタイトルで、九州大学の小松氏が報告した。
 球磨川と筑後川のことについて報告する。
 線状降水帯の広域化と大型化が進んでいる。
 球磨川の水害は流域全体の降雨による。

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         図4 球磨川流域の雨量の状況

 球磨川全体にかかる大雨で球磨川流域は2mくらい水位が上がった。
 人吉では堤防破堤が2カ所あり、浸水戸数は6,000戸に上った。

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         図5 球磨川の水位の状況

 筑後川では全体の降雨が観測史上最大となった。
 線状降水帯の大型化、広域化によるものである。
 3年前の九州北部豪雨では狭い範囲に降雨が集中した。
 初期の4時間で400㎜であった。
 2年前の西日本豪雨では瀬戸内海に多くの被害が出た。
 1級河川の氾濫は肱川1カ所だけであった。
 今回は球磨川流域全体に降雨があった。
 インド洋、東シナ海から水蒸気の供給がある。
 今後、九州は線状降水帯と流域が重なる恐れがある。

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         図6 九州全体の川の東西への流れの状況

 球磨川の支流に川辺川がある。
 人吉より下流で移送が早まった。
 川辺川からの流入でピークが早まった。
 川辺川は今回降雨がまだ少なかった。
 多かったら、おそらくもっと大変だっただろう。
 九州は西の端だから、線状降水帯に真っ先に出会う。
 今後も大型水害の可能性が高まる、と説明した。

 (4)では「リモートセンシングによる7月豪雨の緊急観測の状況」というタイトルで、日本リモートセンシング学会の伊東氏が報告した。
 リモートセンシング学会ではHPに災害情報を出す。
 気象庁の衛星ひまわり8号が捉えた7月豪雨は幅広い線状降水帯があった。

NO4-R2-7-15 R1 伊東氏 ひまわり8号.jpg
         図8 気象庁の衛星ひまわり8号による観測状況

 16の波長を持つ衛星である。
 豪雨前と豪雨後の鹿児島の状況を見せる。

NO4-R2-7-15 R1 伊東氏 民間企業取組 浸水状況.jpg
         図9 豪雨前後の九州・鹿児島の状況

 JAXAの3次元降水量を見ると、250㎜を超える降水量が見られる。
 これはだいち2号(ALOS-2)という陸域観測技術衛星で、人吉市周辺を拡大して、雲を透過して観測できる。

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         図10 だいち2号(ALOS-2)の概要

 EUの地球観測衛星Sentinel-1を使ったデータは国際災害チャーターの例である。
 (筆者注:国際災害チャーターとは、各国の衛星を利用して、災害があった地域のデータを迅速に当該地域の機関に提供する国際的な枠組のこと。以前どこかの防災シンポで聞いたことがある。)
 SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)のデータを使って、衛星画像を使った被害の把握ができる、と説明した。

 (5)では「地質学的見地からみた熊本県南部における令和2年7月豪雨災害」というタイトルで、日本地質学会の斎藤氏、鳥井氏が報告した。
 地質学の観点から球磨川の水害を報告する。
 川の流れを地質が支配している。
 球磨川流域は地質が複雑な場所である。

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         図11 球磨川流域の地質の概要

 800万年前の火山岩や1億9千万年前の帯状のものがある。
 人吉市の下流には800万年前の土砂が堆積している。
 硬くて急峻である。
 火山噴火で250万年前に球磨川をせき止めた。
 続いて、鳥井氏が報告した。
 芦北町の斜面崩落は砂岩による。

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        図12 芦北町の斜面崩壊

 土石流堆積物は風化した地層が崩壊したものである。
 表面の腐った部分が崩れ落ちた、と説明した。

 (6)では「土砂災害を引き起こす豪雨についての留意点」というタイトルで、砂防学会の執印氏が報告した。
 土砂災害は豪雨が引き起こした。
 芦北町や球磨川について報告する。
 アメダスのデータを使って芦北や人吉市の降雨量等を比較した。
 50㎜/hを超える雨が降った。
 豪雨で表層に近い部分が崩壊した。
 7/3-7/4での最大値が300㎜前後であった。
 (筆者注:通常は100㎜の雨でどしゃ降りという感覚がある。)
 降雨量の多寡は重要ではない。
 発生頻度が重要なのである。

NO6-R2-7-15 R1 執印氏  土砂災害と洪水の区別.jpg
         図13 雨量と発生頻度の関係

 10年間のデータを調べてみると、雨がやんでも安全ではない。
 人の感覚では厳しいものがある、と説明した。

 (7)では「八代市の被災状況」というタイトルで、日本建築学会の柴田氏が報告した。
 八代市の状況を話す。
 坂本町は4つの集落でできている。

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         図14 坂本町の状況

 下鎌瀬では逃げる準備をしていた。
 道路が水に浸かった。
 高台に避難した。
 30戸中20戸が浸水した。
 自分の家が屋根のみ見えるような状況であった。
 高台の住宅へ避難した。
 食料も備蓄していた。
 本流の坂本では二段上にお寺があった。
 お寺の本堂も浸水した。

NO7-R2-7-15 R1 柴田氏 八代市坂本町 陣の内.jpg
         図15 お寺の浸水後の状況

 2階床上まで浸水した。
 7/12には泥かきしていた。
 支流の百済来川の陣の内集落には土石流が起きていた。
 本流の急流や支流の土砂災害も起きやすい、と説明した。

 (8)では「球磨川の氾濫による建築物の被害と課題」というタイトルで、建築都市耐震研究所の田村氏が報告した。
 球磨川流域の建築物被害について話す。
 千寿園のあった地域である。
 人吉市では4,700棟が被害に遭った。
 床上浸水が3,700棟あった。
 市街地の状況は3~4mの浸水深であった。
 室内も浸水している。
 右岸の浸水が多く、左岸は土地が高いので浸水していない。

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         図16 球磨川流域の右岸の被災状況

 非木造住宅は浸水しているが、壊れていない。
 渡地区は浸水が深かった。
 流れも速かった。
 千寿園があったところである。
 木造住宅は流出している。
 被災前後の比較を示す。

NO8-R2-7-15 R1 田村氏 球磨川建築物 渡地区 右岸その2.jpg
         図17 被災前後の状況比較

 建物の立地が重要なことがわかった、と説明した。

 (9)では「九州の豪雨における日本災害看護学会先遣隊活動~被災者の生活に焦点をあてて~」というタイトルで、日本災害看護学会の酒井女史が報告した。
 今回の災害が起きて、日本災害看護学会は先遣隊を組織して、熊本の避難所に派遣した。

NO9-R2-7-15 R1 酒井氏 チーム 1.jpg
         図18 先遣隊の組織

 コロナの問題もあった。
 最初に災害対策本部に行った。
 派遣翌日には、同学会HPに活動報告を行った。
 福岡にも行っている。
 避難所のニーズを把握した。
 避難所サーモグラフィ、パーティションの準備をした。
 避難所は県外の人も受入した。
 分散避難もあり、全容が把握しにくかった。
 認知症対策等もあり、マンパワー不足であった。
 避難所AとBで差がある。

NO9-R2-7-15 R1 酒井氏 チーム 避難所 問題点.jpg
         図19 避難所の問題点

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         図20 避難所の状況

 熱中症や食中毒のリスクもあった。
 被害者の声は厳しいものがあった。
 病気が心配、家がどうなったか、などである。
 自宅に戻れない、子どもが寝られない、などもあった。
 コロナに過敏になっていた。
 個別の健康状態の把握ができていない。
 コロナ対策、支援のギャップ、マンパワー不足、ノロウィルス、エコノミークラス症候群の災害関連死が心配である、と説明した。

 (10)では「豪雨による通信障害の発生と支援措置」というタイトルで、電気通信大学の山本女史が報告した。
 今回の災害での通信障害について話す。
 大手3社はつながりにくかった。
 熊本3市や八代より南で通信障害があった。

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         図21 通信障害の状況

 SOS通報のパニックがあった。
 191件のコールが鳴り続けた、と7/12の西日本新聞は報道している。
 消防本部も被災した。
 水没は想定されていたものの、そのスピードが速かった。
 球磨川流域の通報が多かった。
 千寿園もSOSを出した。
 電話がつながらなかった可能性がある。

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         図22 人吉市における通報の状況

 災害時には電話がつながりにくい。
 回線利用が増えるとわざとつながりにくくする。
 ネットが比較的つながった。
 ソーシャルメディアの利用が勧められる。
 ツイッターの書き方の例を示す。

NO10-R2-7-15 R1 山本女史 通信 人吉通報 ツイッター例.jpg
         図23 ツイッターでの記載の例

 ツイートで助かった場合はその情報を削除しておかないといけない。
 長野県のツイッターの成功例があった。
 特殊なハッシュタグをつけて発信した。
 ツイッターで救助来るまで励ましていたこともあった。
 救助要請があっても受け皿がないと困る。
 国も2016年からICT貸し出しを始めた。
 災害時に誰でも使えるように、ということで、00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)という公衆無線LANというサービスも始まっている。
 災害弱者≒情報弱者とならない対策が必要である、と説明した。

 この後、質疑応答に移ったが、少しのメモがある程度である。
 米田女史は、リモートでリアルタイムで行ったことに意義がある、線状降水帯の広域化、大型化が進んでいるようだが、気候変動での結果はどうなるか、がわかっていないように思う。
 (筆者注:このネットシンポは約1,000人が聴講していたことが、YouTubeの表示でわかった。)
 和田氏は自分の分野だけで考えていては解決できない問題である。
 このオンラインシンポは後ほど防災学術連携体のHPに掲載予定、と伝えた。
 7月20日頃にはもう同HPに今回のシンポの動画がアップされていた。
 関心のある方は参照されたい。

 今回の緊急シンポは速報性ということもあって、ちょっとバラバラの印象もあった。
 しかし、災害とコロナ問題、気候変動による災害の大型化という問題を考える上で有益ではなかったかと思う。
 今後こうした災害の大型化が進むことを考えると、防災省の設立ということも避けて通るわけにはいかない問題ではないかと思う。


<防災学術連携体「令和2年7月豪雨の緊急集会」>

1.日時:2020年(令和2年)7月15日(水) 11時20分から13時20分
2.公開:防災学術連携体 ホームページ  http://janet-dr.com/
3.プログラム:
 11:20 「開会の挨拶」防災学術連携体 代表幹事 米田雅子
 11:22 (1)「令和2年7月豪雨DMATの活動報告」 日本災害医学会 近藤久禎 
 11:27 (2)「梅雨前線に伴う豪雨について」 日本気象学会(京都大学) 竹見哲也
 11:37 (3)「九州豪雨災害の状況(速報)」 九州大学 小松利光
 11:52 (4)「リモートセンシングによる7月豪雨の緊急観測の状況」
      日本リモートセンシング学会(宇宙技術開発株式会社) 伊東明彦
 12:02 (5)「地質学的見地からみた熊本県南部における令和2年7月豪雨災害」
      日本地質学会(産業技術総合研究所) 斎藤 眞、(熊本大学) 鳥井真之 
 12:12 (6)「土砂災害を引き起こす豪雨についての留意点」 砂防学会(宇都宮大学) 執印康裕
 12:22 (7)「八代市の被災状況」日本建築学会(熊本県立大学) 柴田祐 
 12:32 (8)「球磨川の氾濫による建築物の被害と課題」建築都市耐震研究所 田村和夫
 12:42 (9)「九州の豪雨における日本災害看護学会先遣隊活動~被災者の生活に焦点をあてて~」
       日本災害看護学会(福井大学) 酒井明子
 12:52 (10) 「豪雨による通信障害の発生と支援措置」電気通信大学 山本佳代子
 13:02  質疑応答
 13:20  閉会挨拶  東京工業大学 和田 章

4.概要
 九州、岐阜県、長野県などの豪雨は深刻な被害をもたらしつつあり、今後も予断を許さない厳しい状況が続いております。
 防災学術連携体は、専門家の知見を発信し、災害への総合的な対応を検討するために緊急集会を行います。
 当日は緊急集会の様子をホームページからYouTubeで実況中継します。
 ご関心のある方に、広くご案内下さい。
  -以上-

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