新型コロナウイルスとオープンサイエンスのネットシンポに参加

 新型コロナウイルスとオープンサイエンスのネットシンポ(2020/6/3(水))に参加した。

 正式名称は「COVID-19とオープンサイエンス」という。
 COVID-19というWHOが命名した新型コロナウイルスの名が浸透していないから、COVID-19と聞いてもピンと来ない人も多いであろう。
 私もその一人である。
 5月15日の日本学術会議のHPには上記の案内が出ていた。
 オープンサイエンスというのはよくわからないが、とりあえず新型コロナウイルスの情報が何か出てくるかな、と思い、その日のうちに申込した。
 後日ネットの接続を案内するという返事が来たが、なかなかそれが届かない。
 やっと届いたのが6月1日で、開催日の2日前だった。
 今回のネットシステムは『Webex Events』というシステムで、前回の日本学術会議の「安心感」シンポで使用された『Zoom』というシステムとはまた違ったシステムであった。
 ちょっと不安になった。
 うまくつながるだろうか。
 プログラムは末尾に添付する。

 当日の6月3日の朝10時10分には、お茶をマイボトルに用意して、トイレに行った。
 10時20分に6月1日にもらったメールの中の指定されたURLをクリックして、出た画面にメールでの操作手順に従って、いろいろと入力して、やっとつながった。

 最初に国立情報学研究所の喜連川氏が司会進行役も行っていた。
 喜連川氏も使い方に戸惑っていたようであった。

 まず、喜連川氏より(1)では「問題提起および提言」に関して説明した。
 新型コロナウイルスから学ぶことは多くある。
 今日は1,000人を超える人が登録してくれた。
 学術会議講堂は200名くらいの収容だから、はるかに多くの人が参加できたことになる。
 アフターコロナを考えることが重要なことである。
 本日午前に日本学術会議から提言を発出した。
 (筆者もこの日の朝に日本学術会議HPを見ていて、今日の日付でオープンサイエンスの提言が掲示されていたことにびっくりした。同時にこの資料をダウンロードしておいた。)
 オープンサイエンスとは何か、というと、元々は途上国にも学術論文が読めるようにすることだった。
 それから、データをオープンにして欲しい、ということになった。
 論文の前のデータをシェアして欲しい、ということで、2013年のG8で「オープンデータチャーター」ということが議論された。
 統合イノベーション戦略2019にも記載された。
 データ整備については2019年10月に内閣府で行った。
 実は2016年7月にも提言が日本学術会議で出されたが、今回は4年経ったのでリフレッシュしたものである。
 この間STAP細胞等の問題もあった。
 原点は2009年10月のFOURTH PARADIMEが米マイクロソフト研究所で発刊された。
 計算からデータへのシフトである。
 データサイエンスの原点である。
 2012年に米国政府でビッグデータのイチシアチブを取る動きがあった。
 ビッグデータとAIが並走するようであった。
 その時に3つの問題点がリストアップされた。
  ①オープンサイエンスのルール作りの必要性
  ②データプラットフォームの構築
  ③第1次資料の永久保存
 これらは学術情報の基盤となるものである。
 デジタルとノンデジタルの永久保存である。
 今回のコロナ(COVID-19)はその原点に戻ったようなものである。
 論文投稿前に実験データをWHOに提供することが決められた。
 ただこれはコロナに権利制限すべきものである。
 WIPO(国連知的所有機関)が関与している。
 コロナで権利を行使しないことが決められている。
 ここで、東大の奥田氏の動画が提供された。
 コロナの情報の可視化が行われた。
 京産大の学生のクラスター感染で同大が非難された。
 4月末の県外移動も非難された。
 緊急事態宣言が出ているのに営業している飲食店も非難された。
 自粛警察と呼ばれた。
 人の感情の移り変わりは激しいものがある。
 東京のコロナ患者が増えた。
 ツールを共有してみんなで考える機会にしないといけない。
 1日に0.5TBの情報が発生している。
 (筆者注:今はどうか知らないが、一時期はメールで3MB以上は送れない時があった。この1千倍が3GB、そのまた1千倍が3TBである。)
 医療関係者の医療データも膨大にある。
 PCR検査と肺炎画像が必ずしも一致しない、等の問題がある、と説明した。

 (2)では”Open Source is going to be a footstone of information Industry in China”というタイトルで、北京大学の高文氏(Wen Gao)が講演した。
  (筆者注:「オープンサイエンスは中国の情報産業の礎」)
 内容はコロナの武漢での対応を4つの段階(ステージ1~4)に分けて説明したが、全部英語で説明していたので、ほとんど理解できなかった。
 でも画面で資料を表示していたので、その資料から少しは理解できたように思う。
 コロナ問題は2020年最大のブラックスワンである。
 (筆者注:「ブラックスワン」は映画化もされたものらしい。株式の世界ではマーケットにおいて事前に予想できず、起きた時の衝撃が大きい事象のことを示す。)
 中国経済は減少した。
 累積で8万5千人が感染し、死者は4,600人であった。
 中国の武漢における対応をステージ1~4について示す。
 武漢で発生した初期の頃をステージ1とする。
 これを中央政府が管理するようになった段階をステージ2とする。
 ステージ3は封じ込め対策や予防措置に関する段階である。
 ステージ4は封鎖解除後の正常生活復帰である。

 昨年11月末に武漢で招待不明の病気が発生した。
 12月末に何かがおかしいことはわかっていた。(unknown case)
 今年1月8日にコロナと判明した。
 武漢は国際線・国内線のハブ空港である。
 武漢のロックダウンが行われた。
 ステージ2では中央政府が動き、封じ込めが行われた。
 ステージ3では防疫の作業等が行われた。
 ステージ4では通常の生活に戻すことで、仕事や学校等が始まった。
 ただ第2波は必ず来ると思う。
 5月21日段階で2.9人/10万人である。
 (筆者注:東京では1千万人あたりで5月末で5,000人くらいだから、50人/10万人)
 中国でもオープンサイエンスはゲノム研究、抗体薬研究、ワクチン研究等で、データセット等で貢献している、と説明した。

(3)では「教育データの収集と分析-遠隔講義を契機にしてやるべきこと」というタイトルで、九州大学の安浦氏が講演した。
 教育データについて話す。
 今はコロナで、小中高や大学は閉鎖中である。
 日本の歴史ではかつてなかったことである。
 遠隔授業に取り組み始めた。
 10年前では無理だった。
 今はネット社会である。
 いろんなツールが使えるし、スマホも使える。
 教育の根本に返る。
 何らかのデジタル技術を使う。
 教育のログデータがデジタルで蓄えられる。
 世界の国々で試している。
 遠隔はいいね。
 対面もいいけど。
 コロナは世界の教育のデジタルへの転換点になった。
 これはオープンデータとつながる。
 教材、教育システム、学生の反応、教員の教え方、教育データの活用が図られる。

R2-6-14 R1 安浦氏 教育システム.jpg
         図1 教育システムの一例

 教員、学生、教育機関、国のベーシックデータにもなる。
 学年で行われていたことが、学校、社会、国へと広がっていく。
 ただ当面は授業という視点で、生徒の理解度等を探っていく。
 支援システムのためのデータが取れる。
 学習方法の改善につながる。
 九州大学では学生に1人1台のパソコンを購入している。
 教員から学生までの教育システムで、今までは遠隔システムを使っていなかった。
 コロナがあってから使い始めた。
 今の学生は何をしているか。
 ちゃんと説明できているだろうか。
 今はリアルタイムフィードバックが可能である。
 学生の分析を可能とするリアルタイム分析ツールがある。(ちゃんと自分の説明のページを開いているか)
 リアルタイムフィードバックで学生の理解の確認ができる。
 マーカー等の利用率、ブックマークメモ、講義資料の理解のボタンがあって、わかった/わからない、がすぐにわかる。
 オンサイト(2019、キャンパス)とオンライン(2020、ネット講義)の違いの評価ではあまり変わらない結果となった。
 先生の教え方に学生は似る。
 教え方を変えると、学生の能力がアップする。
 学習活動と成績の関係分析を行う。
 カリキュラムをどう作るか。
 そのために教育データが活かせる。
 教員向けの分析レポートもある。
 知識マップの描画ツールもある。
 自分が教えようとしたことが学生に伝わっているかわかる。
 このフィードバックで学生の学び方も変えられる。
 学習データサイエンティストの育成が必要になる。
 Learning repository(学習データ倉庫?)もある。
 アクティブラーナーと指導できる教員も育っている。
 TA(テクニカルアドバイザー)を相談員として配置する。
 コロナのおかげで教育データを多く集められた。

 ただ教育データとプライバシー保護の問題も起こる。
 L0は統計ログ、L1は授業固有のデータ、L2は授業横断データ、L3は広域授業横断データである。
 教育データ利用の方針が必要になる。
 他機関との連携も必要になる。
 日本全体に広がればいい、と説明した。

 教育関係のオープンサイエンスは皮肉なことに今回のコロナ騒動で相当利用が進んだようである。
 ネット教育のデータを積極的に取り込み、それから得られる改善点等が自分たちの大学だけでなく、全国の大学、また小中高の教育システムにまで影響を及ぼすという広範囲な広がりを見せている。
 その一方で、個人情報をどこまで出してよいか、データを取られる学生が自分のデータを使われることを容認しない場合にはどうなるのか。
 こういう今まで見えなかった問題点も浮き上がってきていて、楽しいような、恐ろしいような教育システムが出来上がっているのかな、と思う。

 ここで昼休みとなった。

 午後の(4)では「フィールドワークから見たCOVID-19感染拡大に関して」というタイトルで、日本学術会議会長で京大の総長である山極氏が講演した。
 総長として、というより、フィールドワーカーとしてコロナをどう見るか、という視点で話す。
 マクロ生態学の中には転用されてビジネス用語に使われるものが多くある。
 エコシステムがそうである。
 元々の意味は進化、住み分け、淘汰の意味であったが、今は単純に自然保護の意味合いで使われている。
 エコシステムは自然界の物質とエネルギーの流れの中で成り立つもので、その用語を使い慣れると生態学で誤解を生じる。
 ウィルスは戦う相手ではない。
 共存するものである。
 エイズウイルスは今衰えている。
 エイズウイルスはサルに潜んで共生していた。
 それが人間に移ると、免疫不全を引き起こす。
 長い期間に宿主を滅ぼさないようにしてきた。
 共生して、複雑で長期に亘るシステムとしてきた。
 エコシステムは入口と出口しかわかっていない。
 生態系の流れはわかる。
 どういう生物がどういう働きをするか。
 生態系の一部分を切り取り、その相互作用から全体を推察する。
 世代時間の違う植物や動物がどう共進化したか、どう共生してきたか。
 今回のコロナの仮説では、中国のセンザンコウかもしれない。
 SARSはハクビシンと共生してきた。
 生態系の崩れから他の動物に移ってきた。
 ウィルスは生物ではない。
 細胞に寄生して生きており、細胞がないと生きていけない。
 どういう場所にもウィルスはいる。
 どういう動物にどういうウィルスがいるかよくわかっていない。
 ウィルスは動物を進化させるかもしれない。
 樹木と昆虫の共生がある。
 被子植物は虫に花粉を運んでもらう。
 屋久島の縄文杉は何千年も生きている。
 微生物とウィルスの存在がある。
 地球は微生物の惑星である。
 野生動物には多くのウィルスの遺伝子を組み込んでいる。

 人間の活動や気候変動による生態系の変化がある。
 ヒト76億、ウシ15億、ヒツジ12億、ヤギ16億、ブタ10億、ニワトリ500億に対して、ゾウ62万、チンパンジー30万、ゴリラ20万、ペンギンが300万である。

R2-6-12 R1 山極氏 ヒト76億.jpg
         図2 人類と家畜とその他の動物群

 山極氏はゴリラが専門である。
 ゴリラは熱帯雨林に住む。
 熱帯雨林はどんどん壊れていく。
 細菌が飛び出してくる。
 プラネタリーバウンダリー(地球上の9つの危険を示す指標、生物の多様性等)の3つが限界を超えている。
 地球のメカニズムで、マクロとミクロのデータ交換をしていく。
 まれにしか起こらない現象が関係を決める。
 観察事例をたくさん集める。
 フィールドワークだけでは足りないので、実験による再現も行う。
 山極氏がアフリカでゴリラを観察する。
 チンパンジーが道具を使う。
 植物と昆虫のコミュニケーションの仕組を解明する。
 植物は葉に毒を持つ。
 虫に食べられるとSOSを出す。
 近くの植物が防衛活動を始める。
 科学は再現性、実証性が求められる。
 フィールドワークは実証の積み重ねである。
 現象を定義して同じものを分類する。
 相関関係を因果関係に読み替えする。
 有意性を導き出すために多量のデータ収集が必要になる。
 マクロ分野のデータ収集の道具として、テレメトリー(遠隔計測装置)、GPS、バイオロギング(動物に記録装置を取り付けデータ収集)、カメラトラップ(定点カメラで赤外線を使い、動物の昼夜の行動観察)等がある。
 バイオロギングでは動物にデータロガー装着(ウミガメの行動データ記録等)がある。
 装置の小型化と電池の長寿命等の問題がある。
 カメラトラップでは動物の行動を観察できる。
 地域別の分布がわかる。
 オープンサイエンスの潮流としては、YouTubeを利用する例がある。
 アフリカのゴリラのエコツアーで客とゴリラの映像をアップで載せると、「いいね」がたくさんつく。
 ヒトとゴリラの映像が一番評価されている。
 アプリで動物の種名、名前がわかるものが開発されている。
 世界中の動植物の変化が共有できる。
 「ベトナムの大地にゴングが響く」は映像や音声を利用した民族誌を教えてくれる。
 オープンサイエンスから、アプリ、ネットの利用で、シチズンサイエンスになっていくのではないか、と説明した。

 (5)では「医学領域のデータシェアリング: One for all, all for one」というタイトルで、慶應義塾大学の末松氏が講演した。
 医療におけるデータシェアリングについて話す。
 AMED(日本医療研究開発機構)は5年前に立ちあがった法人である。
 広域連携と分散統合を目指している。
 どの領域から始めるか。
 希少医療や感染症から始める。
 肺のCTから肺炎をどう読むか。
 コロナの診断との関係性はどうか。
 画像兄弟というシステムが立ち上がっている。

R2-6-13 R1 末松氏 画像兄弟.jpg
         図3 画像兄弟システムのイメージ

 AI開発のための「競争と協創」を目指して、臨床画像8,000万枚超を分析する学術情報ネットワーク(SINET)が運用されている。
 内視鏡学会や超音波学会等が関与している。
 弁の機能を動画として撮る。
 動画を用いた診断システムはまだ開発されていない。
 その背景として、医師の高齢化がある。
 また医療診断のダブルチェックをしようとしても、専門家が2人以上いる医療機関は多くはない。
 福島県では病理の専門医が少ない。
 AIがアシストする。
 電子カルテの実施への応用が課題になる。
 ライフデータイニシアティブという組織がある。
 画像はPDFで入っている。
 構造化データにはなっていない。
 このままではAIに入力できない。
 構造化データに持っていく努力をしている。
 IRUD(未診断疾患イニシアチブ)という組織がある。
 珍しい疾患の場合は診断が難しい。
 日本には8千人くらいいる。
 4千人くらいしか診断ができていない。
 どの遺伝子に異常が出てくるか、世界中で努力している。
 グローバルデータシェアリングである。
 一人の医者が未診断のデータに出会うとわからない。
 今はAMEDの基幹プロジェクトになっている。
 他の人に同じ難病の人はいないか。
 生命倫理の問題がある。
 1カ所で得た診断が他の病院でもOKとする。
 セントラルIRB(治験審査委員会)という組織がある。
 データを集めれば、希少疾患が希少でなくなる。
 RAREの理解がCOMMONの治療にもつながる。

 ケースマッチングの症例を述べる。
 東京と大阪の人でどうも同じ症状らしい。
 巨大血小板症として同じ病気かもしれない。
 ゲノム解析をやる。
 両方とも両親は健康体である。
 それで、病気の範囲の絞り込みを行う。
 大人になるまで病気にかかっていない人のゲノムは公表されている。
 それと比べると、数個の遺伝子の変異が見つかる。
 お互いに気がつかないと、診断できない。
 巨核球(血小板の大元)でも発現していたことがわかる。
 こういう事例はIRUDのexchangeによるネットワークデータマッチングの例である。
 世界でデータを共有できればいい。
 データのスタンダード化が進んでいる。

 教科書に書いてない症例が212件あった。
 しかし半年後には未診断がなくなった。
 世界とのデータ共有が進めばよい。

 リトアニアの例を挙げる。
 ビタミンB2の輸送体異常症があった。
 リボフラビンの経口投与でレスピレータが外れた。
 なぜリトアニアは日本(AMED)に助けを求めたのか。
 リトアニアの周りはかつての侵略国が多い。
 だから日本に助けを求めた。
 日本はMRSA(薬剤耐性菌)で痛い目にあっている。
 しかし最近の薬剤耐性にはその効果が出ている。
 JANIS(院内感染対策サーベイランス事業)が役に立っている。
 医療倫理の4条件(Respect of autonomy<自立性尊重>、 Do no harm<害せず>、 Beneficence<慈善>、 Justice<正義>)をベースに考えていくべきである、と説明した。

 実はこの医学の講演を一番期待していた。
 新型コロナウイルス対策での何かを、と思ったが、実際には希少症例の話であった。
 後に質問で電気殺菌の質問も出たが、知らない、との一言で終わったので、がっかりしたのを覚えている。

 (6)では「パンデミクス時代を超えて-地球惑星科学の国際公開連帯」というタイトルで、東京海洋大学の木村氏が講演した。
 日本地球惑星科学連合(JpGU)は30年前に発足した。
 この講演を録音しておいたのだが、録音したものが出てこないので、結局本人が説明した。
 対象は地球全体である。
 5月に会議を予定していたが中止となり、バーチャルで開催して5.4に共同宣言を出した。
 日米のジョイント大会を予定していたが、中止となった。
 JpGUとAGUのバーチャルミーティングを7月に開く。
 発見可、アクセス可、相互運用可、再利用可をキーワードにしている。
 オープンサイエンスの例を挙げる。
 国際深海掘削計画(IODP:International Ocean Discovery Program)で、日米EUが主導する多国間国際共同プロジェクトである。

R2-6-13 R1 木村氏 IODP.jpg
         図4 IODPの概要
 海洋底に穴を開ける。
 2050年までの海洋科学的な掘削である。
 生命は生存には120℃が上限と言われていた。
 それが違っていた。
 生命の世界、特に極限の世界では特別な耐性を持っている生物がいる。
 多くの薬を生み出す。
 ビッグデータの取扱いが重要になる。
 大量の研究者を巻き込む。
 技術開発では50年の歴史を持つが、世代を超えた研究者を育てる。

 モホロビチッチ不連続面は1909年に発見されたが、IODPとしては2013年に終了した。
 新たなIODPが始まった。
 1968年以降に世界の海で多くの掘削を行った。
 IODPフォーラムの枠組がある。

R2-6-13R1 木村氏 IODPの枠組.jpg
        図5 IODPフォーラムの枠組

 日本ではJAMSTEC(海洋研究開発機構)/IODPが主体となる。
 研究はボトムアップ型である。
 船の上に2か月くらい滞在する。
 2交代制であり、サイエンスの関係強化に役立っている。
 共通した記録処理を行う。
 参加研究者は200名/年である。
 データや試料は公開される。
 ただし、その前に1年くらい占有できる。
 試料の永久保存体制はアメリカ・テキサスにおいて管理される。
 他に高知とブレーメンの計3カ所で分担する。
 中国も参加希望がある。

 高知コアセンターの紹介をする。
 サンプルは3カ所のレポジトリーに返す。
 デジタルデータ、画像データも保管する。
 データとサンプルへのアクセスを一元管理している。
 所定の手続きでリクエストすれば、世界中の科学者は5万データにアクセス可能である。

 コロナはサイバー空間コミュニティを急進展させた。
 オープンサイエンスのグローバル展開は全球的問題対応に不可欠である。
 第1次データから統一基準での記述、公開アクセスシステム構築は必須である。
 第1次試料(研究結果の基礎試料)の永久保存は科学的検証に不可欠である。
 第0次試料(背景試料)の選択的永久保存は重要である、と説明した。

 このタイトルを見た時には、何のことを言っているのかさっぱり想像できなかった。
 しかし、内容をみてみると、海洋底の研究であり、世界的に壮大な規模の研究をこれから40年かけてやろうというもので、ちょっと度肝を抜かれた感がある。
 オープンサイエンスの理想的な姿が垣間見える気はする。
 しかし、海洋進出を狙う中国が入ってくると、初期のものとは違う政治的な色合いが心配される。
 多分筆者の中には、WHOのテドロス事務局長がエチオピア出身で、彼の母国が中国から経済的な支援を受けていることで、政治的に中国擁護につながっているイメージがあるのである。
 IODPも同じようなことにならないだろうか。

 (7)では「包摂的なアプローチによる水災害レジリエンスの強化とSDGsへの貢献」というタイトルで、土木研究所の小池氏が講演した。
 河川の答申をしている。
 近年の豪雨や土砂災害が多い。
 命を守るという方針が大事である。
 水防法改正で堤防、ダムに加えて命を守る。
 2015年に定めたら、鬼怒川の洪水が起きた。
 人が災害対応できるように、水防災意識社会を作っていかないといけない。
 中小河川が破堤したので改定した。
 すると九州北部豪雨が起きた。
 社会を強くしていくだけでは無理である。
 住民主体の行動が必要で、それを支えるハード対策が必要である。
 2019年の東日本豪雨では河川破堤142カ所等2年連続で2ケタの人的被害があった。
 水災害対策小委で水災害レジリエンスの強化と持続可能な開発が必要である。
 水防災意識社会と流域治水の考えが必要である。
 気候が変化すると、大雨が降るだろうか。
 IPCCのレポートからもわかる。
 どのように対応するか。
 外力の変化を見る。
 洪水や渇水のリスクは人間の活動にも依存する。
 科学的なアプローチも必要となる。
 DIAS(データ統合・解析システム)を国交省で分析している。
 日本を15の区分で解析する。
 治水計画が大幅に変わる。
 短期間豪雨の降雨量が増加している。
 100年に1回のものが100年に2回に増えている。
 被害が倍になるのは、2倍の投資が必要になるが、それは無理である。

 ハザードだけでなく、社会も変化している。
 高齢化が進んでいる。
 倉敷真備町での死者の9割は65歳以上である。
 支援が必要な人が増えて、支援する人が減っている。
 倉敷市のハザードマップと実際の被害は近かった。
 多くの住民はそれを見ていた。
 でも使ってはいなかった。

 広島の土石流災害はハザードマップのレッドゾーンになっていた。
 住民は認識できていなかった。

 鬼怒川の破堤では事業所の浸水深とその後の再開日数は比例している。
 地域経済はなかなか元に戻らない。
 コロナも起きた。
 水災害とコロナの2つを考えないといけない。
 約4割が避難先を変えた。
 コロナと水害のリスクはどちらが大きいか。
 4割はコロナの方が大きいと答えた。
 市民と国土と統治の三角形を考える。
 Build Back Better のために災害リスクの軽減を図る。
 VR(バーチャルリアリティー)で避難訓練等をやる。
 科学的アプローチ、技術的なアプローチ、社会経済的アプローチが必要になる。
 超大容量、超多様、正確性、信頼性、可視化等のキーワードが必要になる。
 コロナにどう対応するか。
 水害対応ではヒヤリハット事例集を作る。
 岐阜大学のコロナ下での水害対策が参考になる。
 水害対策ハイレベルパネル(HELP)の概念が必要である、と説明した。

R2-6-13 R1 小池氏 HELP 水害対策.jpg
        図6 水災害対策HELPの概要

 水害については、最近の豪雨災害で相当対策の欠陥が見えていたところにコロナ対策まで必要になる。
 つまり、避難所での3密対策が必要な状況で、さらに困難な対策を必要とする事態である。
 筆者自身も、まだこの水害とコロナについての理解と対策の知識不足を痛感している。

 (8)では「災害社会における農業の課題」というタイトルで、東京農工大学の澁澤氏が講演した。
 農業の機械化が進んでいる。
 アフリカブタ熱、コロナについて話す。
 災害社会という言葉がある。
 50人以上の死亡が過去30年で11件もある。
 コロナでパンデミックになった。
 アフリカブタ熱が話題になった。
 水際作戦を取った。
 でも上陸したのはコロナだった。

 アフリカブタ熱の発生状況について話す。
 2007年にグルジアに侵入した。
 2018年に中国で発生した。
 今年1億頭が減る予想がある。
 きわめて重大な局面である。
 2003年に日本への旅行者が500万人だった。
 2018年には3,100万人だった。
 水際作戦は困難が予想される。
 今年の4月16日に日本学術会議で提言を出した。
 強い伝染性と高い致死率に警告を発した。
 渡航者が持ち込むものが感染の例である。

 食料の供給の過不足が発生する。
 コロナ禍で物流が停滞する。
 800万人の食料難民が出る。
 国の輸出規制が出てくる。
 ユーラシアの国が食料禁輸を行っている。
 アメリカ、ブラジル、カナダという食料生産大国は禁輸していない。
 世界の穀物(米、トウモロコシ、小麦、大豆)の在庫は十分にある。
 ならしてみると、どこにあるか。
 誰が管理しているか。
 世界の農地は増えていない。
 コメの備蓄は370万トンある。
 コメの年間需要量は約700万トンだから、半年分の備蓄があることになる。

 輸入穀物では小麦90%、トウモロコシ100%、大豆90%が輸入である。
 長期的には是正の必要がある。
 今コロナ禍で業務用食材の流通停滞が起こっている。
 和牛の例では2,400円/kgが1,665円/kgに低下している。

 農水省のフードバンクがある。
 食材が余るのでフードバンクを利用する。
 日本では2000年以降に活発になった。
 食品ロスの解決に利用される。
 畜産業者のコロナ対応が求められている。
 業務継続のポイントは予防の徹底で、普段から準備することが必要である。
 代替え要員の確保等を行っておく。
 農業用資材の在庫は十分にある。
 施肥と病害虫対策に重点を置いている。
 農水省は3月に調査を行った。
 数量的にはOKだった。
 流通部門の確保が必要である。
 日本農業の課題としては労働者不足、つまり高齢化と若手の参入不足がある。
 急速に大規模化する農業がある。
 環境問題、生産性、経済性、健康生命のトレードオフを解決する精密農業(スマート農業)がある。
 アクティブラーニングの手法を用いて、農業のリスクを見つける必要がある。
 コロナ対策として、リモート農業のコンサルタントがいる。
 1つのアイデアとして、サイバー空間に蓄積されたものから理想像を作り上げるサイバーフィジカル農業ができればいい。

R2-6-14 R1 澁澤氏 サイバーフィジカル農業概要.jpg
         図7 サイバーフィジカル農業の概要

 農と地域の再設計が必要である。
 コミュニティベースの精密農業のモデルが必要である、と説明した。

 基本的に、筆者は農業に関してほとんど知識がない。
 あるのは、小さい頃に母方の実家で、親戚総出の田植え、稲刈りくらいである。
 今は東京に住んでいるので実感はますますなくなった。
 義父宅に行くと、時々近所の人から農作物(トマトやナス等)をいただいたくらいである。
 食品ロスに関して、できるだけ賞味期限切れギリギリのものをわざと買い、廃棄が少なくなるようにはしている。
 高圧殺菌、真空殺菌等の方法を潜水艦内の食料の長期健全性から想定してみたことはあるが、実験はしていない。
 いずれにしても、農業は国の根幹といいながら、どんどんやせ細っていく現状はなんとかしたいが、処方箋は見えない。

 (9)では「新型コロナの打撃とコロナ後の世界-経済学的検討」というタイトルで、京都大学の溝端氏が講演した。
 経済とコロナについて話す。
 コロナによる経済的な打撃がある。
 3密等人間をベースにした感染は経済学を揺さぶる事態である。
 命と経済活動のトレードオフである。
 リスクに関する人間の行動として、2008年のブラックスワンが話題になった。
 「『ありえない』はありえない。」
 歴史に学ぶ方法がある。
 1918年のスペイン風邪の経験がある。
 (筆者注:1918年から1920年にかけて世界的に大流行したH1N1型のA型インフルエンザで世界で2000~4000万人の死者が出たと言われる。当時は第一次世界大戦の最中だったので、中立国だったスペインで大きく報道されたが、他では情報統制されていた。)

 今日の講演では3つのことを説明する。
 ①コロナの打撃、②コロナ後の世界、③経済の提言
 まず①である。
 直接的打撃と間接的な打撃がある。
 前者は保健危機と医療崩壊である。
 後者は古くて新しい問題である。
 3密を避けるために、隔離やソーシャルディスタンシング(2mくらい距離を取る)、都市封鎖や国境封鎖による貿易や往来の喪失がある。
 国際相互依存の低下があり、需要の喪失がある。
 供給が途切れるが、危機は短期的である。
 薬やワクチンの開発は長期化する。
 これまでの経済は見直しを迫られる。
 パンデミック誘発の影響をIMFが経済評価している。

R2-6-14 R1 溝端氏 IMFの経済評価.jpg
         図8 IMFによる経済評価

 いうまでもなく、ドーンと下がっている。
 2008年のリーマンショックよりはるかに大きい。
 感染を抑えることは経済を抑えることになる。
 シナリオは3つある。
 これらの経済停滞は世界恐慌以来である。
 アジア開発銀行の予測は悲観的である。
 3か月で成長率は-6.4%となる。
 8.8兆ドルがなくなる。
 世界のGDPの1割がなくなる。
 日本も-7%である。
 人的コストとしては雇用の崩壊、失業増加、貧富の格差増大、途上国の経済崩壊等である。
 危機は平等に作用した。
 ロックダウン世代と呼ばれることがある。
 日本でも女性がしわ寄せを食うことが多い。
 グローバル化への打撃も大きい。
 グローバル化の停止と脱グローバル化へと進む。
 米中のデカップリングもある。
 日本も国内回帰する。
 GVC(グローバルバリューチェーン)への打撃もある。
 米中、日中関係も低下する。
 対応は各国間で異なる。
 ブラジルはコロナより経済を取った。
 日本はマイルド策を取った。
 共通点は国民の支援が必要なことである。
 国際化から保護主義的な傾向になっている。
 過去のエピデミックの打撃から規模の推定ができる。

 ②のポストコロナの世界はどうなるか。
 新しい生活様式が必要になる。
 エコノミックディスタンシング(米中貿易摩擦等)も必要になる。
 EUも英国のブレグジット(EU離脱)で忙しい。
 分断と統合の狭間にある。
 EU連帯ファンドの見直しがある。
 危機を乗り越えるのには国際的な連帯が必要になる。
 途上国支援が1つのポイントになる。
 シェアードレスポンシビリティである。
 医療や科学の分野でも必要になる。
 統計等国際インフラも重要になる。
 エビデンスベースドポリシーがある。
 これは市場の質を高めるだけではだめで、国家の質、社会の質を高めておかないといけない、と言われる。
 経済学者の挑戦例がある。
 コロナ問題は古くて新しい。
 経済方策をできるだけ早く提示する。
 感染予防の下での経済のグローバルスタンダードがない。
 オープンサイエンスの重要性がここにある。
 新しい文理融合型データの集積が必要になる。
 データをいかに確保するか。
 統計データはすでに劣化している。
 データは命であるが、パンデミックは統計をゆがめる。
 代替データの収集が困難である。
 英国ではオンライン価格指数等を提案している。
 今はオープンサイエンスの試行錯誤が行われている、と説明した。

 筆者もこの新型コロナウイルス対策において、経済との両立ということが大きな課題と思うことでは他の人と同じと思う。
 では、何か有効な手段は、と問われると、現在では思いつかない。
 ただ、プラズマクラスターで新型コロナウイルス対策が有効であるとするなら、3密の場所にプラズマクラスター装置とマスク着用で、従来とそんなに変わらない相当な社会・経済活動が可能ではないかと思っている。

 この後にパネル討論となった。
 実際はネット質問を回答する質疑応答であった。
 最初に私のプラズマクラスターで新型コロナウイルス対策、という質問が末松氏に問われたが、一言知らない、で終わった。
 学生の点描はどうか。
 先生の教え方で学生の変化は大きい。
 水災害の現場の経験はどうか。
 水災害ヒヤリハットが有効と思う。
 病気の家畜の分布の共有性で、農水省と厚労省は連携できるか。
 わからない。
 ただ、人獣共通の感染症の専門家同士は情報共有している。
 我が国のデジタル化の現状はどうか。
 明らかに遅れている。
 データは正しいかどうかどうやって見極めるのか。
 高価な本を買っても、それが正しいかどうかは誰もわからない。
 地震と水害とコロナが同時に起きるとどうなるか。
 複合災害はすでに多く起きている。
 3.11でもそうだったし、北海道地震でブラックアウトが起きている。

 以上でこのネットシンポは終了した。

 この後にすぐ事務局からメールが来て、アンケートに答えて欲しい、とのことだったので、「プラズマクラスター、北里 、コロナ」でグーグル検索すると、シャープと北里研究所のプラズマクラスターによるコロナウィルス殺菌のニュースがあるので参考にして欲しい旨のことを書いておいた。
 オープンサイエンスの重要性が少しわかりかけてきてはいるが、いまいちイメージが湧いてこないので、そこから先の行動に結び付かない自分がいる。
 これからも、この活動には注目していきたいと思う。


<⽇本学術会議 学術フォーラム>
 COVID-19とオープンサイエンス
1.日時:2020年(令和2年)6月3日(水) 10:30〜16:30
2.会場:インターネット公開
3.主催:日本学術会議
4.企画:オープンサイエンスの深化と推進に関する検討委員会
5.参加者:事前に申込のこと
6.プログラム
 10:30 開会
 10:35~11:00 喜連川優(国立情報学研究所所長)
  (1)問題提起および提言
 11:00~11:25 Wen Gao (Peking University)
  (2)”Open Source is going to be a footstone of information Industry in China”
 11:25~11:50 安浦寛人(九州大学)
  (3)「教育データの収集と分析-遠隔講義を契機にしてやるべきこと」

   (昼休み)

 13:00~13:25 山極壽⼀(日本学術会議会長)
  (4)「フィールドワークから見たCOVID-19感染拡大に関して」
 13:25~13:50 末松誠(慶應義塾大学)
  (5)「医学領域のデータシェアリング: One for all, all for one」
 13:50~14:15 木村学(東京海洋大学特任教授・東京大学名誉教授)
  (6)「パンデミクス時代を超えて-地球惑星科学の国際公開連帯」
 14:15~14:40 小池俊雄(国立研究開発法人 土木研究所)
  (7)「包摂的なアプローチによる水災害レジリエンスの強化とSDGsへの貢献」

   (休憩)

 14:50~15:15 澁澤栄(東京農工大学)
  (8)「災害社会における農業の課題」
 15:15~15:40 溝端佐登史(京都大学)
  (9)「新型コロナの打撃とコロナ後の世界-経済学的検討」
 15:40~16:20 パネル討論
 16:20~16:30 渡辺美代子(JST)
  総括
 16:30 引原隆士(京都大学教授)
  閉会挨拶

7.開催趣旨:
 学術の成果をオープン化して広く共有することにより、研究の進展を加速し、学術的知見の導出の拠り所となる研究資料・データと研究成果の再現性を高めることを目的とした「オープンサイエンス」の方向性が世界的に注目されている。
 世界的なウイルス感染の拡大の中、オープンサイエンスの深化と推進の方向性を議論し、新しい科学の推進の在り方を問う。
 -以上-

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント