「大規模災害への備えシンポ」(ネットシンポ)を視聴

 「大規模災害への備え」シンポ(ネットシンポ:2020/5/12)を視聴した。

 最近は新型コロナウイルスの影響でシンポジウムはほとんど開催されていない。
 それに代わるものとして、ネットシンポが登場してきた。
 これからこのスタイルのものが多くなるかもしれない。

 今年5月1日に防災科研より上記のネットシンポのメールが届いた。
 すぐに参加の申し込みをした。
 何せ最近こういうシンポ関係はほとんどないので、たまにこうしたものが来ると、つい飛びついてしまう。
 最初アメリカのハリケーンだから、日本に関係ないな、と思い、やめようかとも思った。
 でも、昨年の台風15号、19号はひょっとしたら同じようなものかもしれないと思い直した。

 当日の天気は自宅にいるので、ほとんど関係ないものとなった。
 午後にマイボトルに麦茶を用意して、トイレに行き、その後ネット回線につないだ。
 プログラムは末尾に添付する。

 はじめに今回の調査団長2人のうちの一人の関西大学の河田氏があいさつした。

 オンラインで成果発表する。
 400名超が参加登録してくれた。
 今回の国交省と防災研究者の合同調査団の団長をやった。
 米国テキサス州ヒューストンを襲ったハリケーンハービーの調査報告書は256ページにもなった。
 (筆者注:この報告書はこの案内のところに添付してあった。この後の図はほとんどこの報告書の引用である。)
 視聴者に新たな方向性を見つけてもらえれば幸いである。
 私が述べることは統一見解ではない。
 昨年の台風15号、19号にも遭遇して、大水害にどう立ち向かうか、である。

 現在新型コロナウイルスが流行している。
 波状攻撃にさらされるおそれがある。
 今まで日本はこのようなパンデミックを経験していない。
 EUはかつてペストの大流行があった。
 わが国はスペイン風邪で45万人が死亡したが、それらを習っていない。

 ハリケーンハービーに話を戻すと、5日間で1千億トンの雨が降った。
 昨年の台風15号と19号で800億トンの雨が降った。
 住民は避難しなかった。
 昔からそうである。
 最悪な状況が起こったことがないからである。
 荒川も氾濫直前で踏みとどまったが、氾濫していたら、大災害となっていたであろう、と説明した。

 Ⅰ部では「ハリケーン・ハービー調査に学ぶ」というテーマで報告する。

 (1)では「現実の直視、ハード~ソフト相乗効果の最大化から、大災害への適応力を高めよ!~より厳しい日本の状況をどう乗り切るか~」というタイトルで、河川総合研究所の藤田氏が講演した。
 藤田氏は国交省側の団長である。
 ハリス郡のヒューストン市の地形は更新世である。

R2-5-18 R1 テキサス州の地図 白地図より抜粋.jpg
         図1 米テキサス州の概要
(筆者注:米国中部で海沿いの州で、西部でメキシコと接する。)

R2-5-18R1 ヒューストン市の地形 報告書より抜粋.jpg

         図2 ヒューストン市と荒川流域の比較図

 ヒューストン市は人口689万人で全米第4の都市である。
 この30年で人口が倍増した。
 バッファロー川は面積2806㎞2でちょうど荒川と同じくらいである。
 ハリケーンハービーの被害は全米第2位で1250億ドル(13兆円)に上る。
 死者は68人でそのうち36人はハリス郡(ヒューストン市のある地域)であった。
 図3に災害俯瞰図を示す。

R2-5-19 図3.1.1 災害俯瞰図 藤田氏.jpg
         図3 災害俯瞰図

 治水インフラと氾濫を受ける地域が示される。
 洪水を少しでも減らそうとする。
 でも最後はやはり堤防に頼る。
 豪雨がこれを突破してしまう。
 被害軽減のバリアがある。
 図4に今回の災害の教訓7個を示す。

R2-5-19R1 図3.1.2 災害の教訓7ケ 藤田氏.jpg
         図4 災害の教訓7個

 1番目は公的機関の役割分担の明確化である。
 2番目は危険事象への耐性を強める方策の拡充である。
 3番目は公的機関と民間の協力による対応者の拡大である。
 4番目は避難が根付いているかどうかである。
 5、6、7番目は危険情報を出すノウハウや能動的な取組等に関する環境整備である。
 地域における氾濫のダメージを減らすことが大事になる。

 この学びを日本に持ってくる。
 でも日本にハリケーンハービー(2017年8月発生)のような大雨が降るか。
 去年の台風19号はほぼハリケーンハービーに匹敵するものだった。
 図5にヒューストン市と荒川の比較を示す。

R2-5-19 図3.1.3 ヒューストン市と荒川の比較 藤田氏.jpg
         図5 ヒューストンと荒川の降雨等比較

 ヒューストン市は洪水を堤防で守るようにはなっていない。
 荒川は堤防頼みである。
 日本の土地利用は氾濫平野も利用する。
 ヒューストン市以上に厳しい状況である。

 ハリケーンハービー級のものがもし日本に来ることはないだろう、と思っていたら、去年の台風19号が来てしまった。
 上流の土砂災害も起きた。
 洪水インフラへの依存度が高い。
 豪雨災害は高潮と違ってトリッキーである。

 ではどうすればいいか。
 答えは簡単には出ない。
 豪雨災害は沖積平野で2~3年に1回はあふれる。
 治水インフラを整備していき、氾濫を減らす。
 河川の水量を減らす。
 土地利用を制限する。
 組織行動を充実させる。
 各方策の特徴を掛け合わせて結集し、効果が出るようにする。
 他国から真摯に学ぶ。
 日本の状況はさらに厳しい。
 米国の取組の進化を世界に向けて推進することが必要、と説明した。

 元国交省のお役人(多分今は民間に天下りした?)の説明はどうもきれいごとが多くて、後でふと考えてみると、何も印象に残っていないことが多いが、藤田氏の説明がまさにこれに当てはまると感じた。

 (2)では「災害の世紀においてハリケーン調査から何を学ぶべきか」というタイトルで、調査団長であり、最初にあいさつした関西大学の河田氏が講演した。
 広域大規模水害の何が心配か。
 ①経験したことがないことは起こらないという『この国の常識』
 ②新たな被害の発生
 ③ロジスティックス(ヒト、モノ、情報、財源)の不足
 ④被害の長期化と生活再建の困難
 今回の財源は赤字国債である。

 まず①からみていく。
 『この国の常識』において、1959年に伊勢湾台風が襲来した。
 1982年に長崎豪雨被害が起きて、299人が亡くなった。
 つじつま合わせの対応になる。
 ②の新たな災害は都市化災害であり、連続滝状災害のネットワーク災害が起きている。
 ③のロジスティックスでは、ライフラインの物理的被害の長期化が起きた。
 熊本地震の時は道路が寸断され、モノが運べなかった。
 水害は道路が使えない。
 ④では貧富の差が大きい。
 情報や知識の格差に出る。
 教育の格差もある。
 これは米国も同じである。
 東日本大震災も同じで、10年経っても復興しない。
 格差も大きくなっている。
 
 被害の真理をみていく。
 ①事前対策で被害を小さくする。
 ②社会は休みなく変化している。
 ③被害は時空で変化する。
 ④事前対策の標準化が必要である。
 ⑤事前と事後のマネージメントの連続性を考慮する。

 これらを基に縮災(減災という言葉は好きではない)で予防力と回復力を考える。
 米国の災害事例から学ぶことは5つある。
 ①想定外の降雨
 ②未曽有の洪水被害(2001年のハリケーン・アリソンの教訓)
 ③初期の治水対策の不徹底、わが国は原型復旧であるが、もっと大きな洪水が起きたらアウト。
  ダムの予定地に住宅ができた(米)。
  八ッ場ダムは上流のため池になる。
  治水は長期対策になる。
 ④わずかな人的被害、100人ちょっとの犠牲であった。
  あふれてもいいように対策を取る。
  堤防を高くしても安全ではない。
  鉄道の橋脚は低いままである。
  ダム操作規定を見直すべきである。
 ⑤制御からマネージメントへ移行する。
  氾濫は起きることを前提として対策を立てる。

 ソフト防災とハード防災がある。
 ダムは作ってからが大事である。
 ハード防災だけでなく、ソフト防災の中にハードを取り込んだものが必要になる、と説明した。

 第Ⅱ部の「 ハリケーン・ハービー調査後の取組を知る」というテーマで、3件の講演があった。

 (3)では「ハリケーン・ハービー復興その後(現地調査結果)」というタイトルで、 国土交通省の古本氏が講演した。
 ハリケーン・ハービーのその後のフォローアップを、今年1月に調査した。
 ①FEMAヒューストン事務所、②大規模災害のための土地利用、③洪水保険、④洪水予測、⑤遊水地
について述べる。
 ①では事務所の聞き取りを行った。
 ハリケーンハービーの予算は159億ドルである。
 この事務所の閉鎖はいつになるかはわからない。
 復興の一つの目安は納税復活である。
 ②の土地利用ではゴルフ場跡地を住宅にしていたが、遊水地として整備した。
 居住地の浸水性をプラス2フィート(約60㎝)かさ上げした。
 ③の保険について、浸水想定をFEMAが行っている。
 ハリス郡は違う。 
 危険地域の立ち退きについてはバイアウト・バイイン・プログラムを用いて、地域コミュニティが維持できるようにしている。
 ④の洪水予測については陸軍工兵隊が計算している。
 気象機関の予測降雨量の2倍の量を用いて予測を行っている。
 ハリス郡は水位計と予測の組合せで危機管理用に利用している。
 ⑤の遊水地では、アディックスダムとバーガー遊水地は降雨が強い。
 NOAA(アメリカ海洋大気庁)のデータを利用している。
 15万4千戸が浸水した。
 訴訟で数百人が提訴した。
 危険予測の公開だけでは十分ではないことを示している、と説明した。

 (4)では「避難計画と避難行動」というタイトルで、 内閣府の菅氏が講演した。
 ハリケーンハービーの教訓について、台風15号、19号を踏まえてどうするか。
 ①として米国の調査の振り返りがある。
 米国では自主避難の時は自分で見つける必要がある。
 強制避難の時はホテル等が用意されている。
 強制避難発令後は避難しないと逮捕される。
 救助費用の支払いを求める郡もある。
 要配慮者については名簿を登録する。
 自ら登録し、更新も自分で行う。
 フロリダのハリケーン・イルマの避難は内陸側が多い。
 ホテル避難が多い。
 自治体がシェルター、教会、学校等を開放した。
 郡は20~30万人分用意した。
 日本もほぼ同じ状況にある。
 避難場所では、赤十字やボランティア等の支援がある。
 日本のメンタリティーに合わないところもある。
 
 ②として、近年の日本の取組を見る。
 豪雨被害が多い。
 平成30年7月豪雨があった。
 公的支援は限界があるから、「自分の命は自分で守る」ことが大事になる。
 自助の認識が必要である。

 政府は何をするか。
 学校等で、避難訓練等を奨励する。
 地域の防災リーダーを育成する。
 高齢者は地域の包括支援センター等と連携して活動を支援する。
 警戒レベル3では高齢者避難、レベル4では全員避難である。
 レベル1~5の5段階の警報レベルがあることを知っておいて欲しい。
 警戒レベルの導入は昨年からである。
 わかりやすいということが大事なことである。
 台風19号を踏まえたワーキンググループ(WG)で、ハザードマップの認知が不足していることが指摘された。
 自宅の災害リスクがわからないと避難しようと思わないものである。
 チラシで避難行動を周知する取組も行われている。
 避難の理解力向上キャンペーンを行っている。
 避難行動判定フローも用意している。
 ハザードマップとこのフローを一緒にみて判断して欲しい。
 親戚や知人宅への避難も考えていい。
 安全な場所にいれば避難は不要である、と説明した。

 (5)では「衛星を活用した大規模水害における状況把握の国際連携」というタイトルで、防災技研の酒井氏が講演した。
 ハリケーンハービーの災害調査を行った。
 4つの絵で教訓を引き出す。
 予測情報を積極的に活用する。
 対策本部で各機関の連携が行われた。
 衛星データも利用された。
 テキサス大学オースティン校(UT Austin)と防災科研の連携も行われた。
 広域な被害状況の把握が行われた。
 2つの大きな取組が行われた。
 衛星データの活用と解析データの共有システムの構築である。
 衛星データの防災利用には必要な3つのプロセスがある。
 衛星情報の集約がある。
 被害状況の分析共有システムの構築がある。
 災害が発生する当日ではなく、1日前にやる。
 国際機関に要求を出す。
 ワンストップ被害状況・分析情報共有システム(仮称)がある。

R2-5-21R1 酒井氏 ワンストップ被害状況システム仮称.jpg
         図6 ワンストップ被害状況・分析情報共有システム(仮称)の例

 衛星はどこの国のものが撮れるか。
 ワンストップの例として、センチネルを取る。
 日本のどこを撮るかの枠がある。
 撮像位置、タイミングを支援決定する。
 台風19号の例では、時系列の可視化を行った。
 国際チャータの利用で、Terra SAR(ドイツ)、Sentinel-1B(EU)、ASNARO(日・NEC)の利用ができる。
 特徴として100年に1回の希少性、甚大性、複数の1級河川が同時決壊した。
 広域性では390の自治体が被災した。
 レーダ衛星センチネル1で観測したものでは被災の1週間前と10月12日、13日という豪雨の時の撮影を行った。
 JAXAの衛星データALOS-2のデータも活用した。
 時系列で被害地域の状況を追跡できる。
 浸水した地域、浸水した建物を抽出する。
 浸水した建物の数を市町村単位で集計し、どこにリソースを投入すればいいかを判断する材料とした。
 今回はこれを手作業で行ったので時間がかかった。
 これを自動化したい。

 令和元年の九州北部豪雨では油の流出があったが、この地域の特定に時間がかかった。
 海外のSARを使って油流出の可視化ができる。
 大規模災害の初動連携対応に向けた国際連携を促進したい、と説明した。

 衛星データを用いた災害対策がもし速やかに実行できれば、広範囲な災害に有効な手段となるであろう。
 これはそれなりに評価すべきだが、一歩進んで予防にまで踏み込めるかが今後の課題であろう。

 Ⅲ部では「我が国が目指すべきレジリエンスを考える」というテーマで講演が行われた。

 (6)では「実効ある防災・危機管理の強化に向け~科学技術の社会実装と専門家の役割に学ぶ~」というタイトルで、京都大学の関氏が講演した。
 災害対策を担う専門家や組織の役割は何か。
 ハリケーンハービーの時に災対本部に専門家もいた。
 テキサス大のゴードン教授は予測だけでは不十分という。
 テキサスのための予測が行われた。
 カウントダウンタイムラインの運用を行った。
 想定外への対応をファーストレスポンダー(消防)は行わないといけない。
 2012年にハリケーン・サンディが襲った。
 その時に大規模な水害調査を行った。
 グラウンドゼロではサウスベリー地下鉄が水没したが、1週間後には動いていた。
 リスクの評価をきちんと行っている。
 それぞれの機関がそれぞれの再評価を行っている。
 ニューヨーク都市交通公社(MTA)は高潮に対して、ある程度の対策を取っていた。
 しかしそれ以上になりそうな場合は高台に列車移動をしていた。

 わが国の対応はどうか。
 同じことの繰り返しになっている。
 「考えてもみなかった」
 「何がおきているかわからない」
 「学問が欲しい」
 「危ない、危ないなら私でも言える」
 大規模災害に向けてリスク評価の強化が必要になる。
 実働部隊の役割分担も大事になる。
 ハザードマップが網羅的になっていて、使いやすくなっていない。
 L2の枠組み(L1津波は頻度大で小規模、L2津波は頻度小で大規模)を再検討するべきである。

R2-5-22R1  L2津波図 関氏.jpg
         図7 L2の津波の概要

 気候変動で新たなリスク評価のステージに入っている。
 施設の安全度が低下している。
 機能分担の強化が必要である。
 ハードとソフトの分担も必要である。
 タイムラインの展開も必要である。
 何が起きるかわかれば、誰が、というのもわかる。
 ハリケーン・ハービーとハリケーン・サンディの教訓は広域的な枠組が必要である、ということと、想定通りに災害は起きないということである。
 テキサスステートガード(エンジニアリンググループ)の存在が不可欠である。
 これは専門的な民間組織である。
 民間版テックフォースである。
 (筆者注:テックフォースは国交省が平成20年に創設した緊急災害対策派遣隊である。)
 また災害時の保険料率に関しても事前に対策を取っておくと優遇されるシステムとなっている、と説明した。

 日本の場合には民間エンジニアリンググループの創設は皆無であろう。
 防災士の中にエンジニア出身の人はいるであろうが、こうしたグループを組織するというのが、アメリカの強みである。
 また、保険支払いでの防災対策を取っている場合の優遇、という点もアメリカらしい。
 日本にはまだこういう視点が欠けている。
 もし日本で行うとしたら、防災士会の中でエンジニアリング出身者を募ってグループを組織する。
 または防災士会で、水害等の担当保険会社に防災対策の優遇性を説明する、等であろうか。

 (7)では「ハリケーン・ハービー調査を踏まえた水害レジリエンスの向上」というタイトルで、東京大学の池内氏が講演した。
 水害レジリエンスについて話す。
 ハリケーン・ハービーが起き、続いて台風19号が起きた。
 今後の大規模水害をどうするか。
 避難しないリスクと避難するリスクの比較を行う。
 移動中の車が水没することがある。
 避難途中で被害に遭うこともある。
 計画避難が重要になる。
 フロリダ州のジャクソンヒルとテキサス州ヒューストンの例をみてみる。

R2-5-18R1 ヒューストン市、マイアミ等の位置関係 報告書より抜粋 .jpg
         図8 ジャクソンヒルとヒューストンの位置関係

 ジャクソンヒルは交通シミュレーションを利用して避難した。
 テキサス州ヒューストンは避難途中の被害を考えて避難指示を出さず、避難しなかった。

 災害時には要援護者の実践的な避難が必要になる。
 日本の施設は多く浸水(385カ所)した。
 世田谷区の病院が浸水して、入院患者は転院が大変だった。

 ジャクソンヒルは州政府のリーダーシップがあった。
 要援護者の登録制度が充実していた。
 登録している人の優先避難を実施した。
 関係者は情報共有していた。
 基幹病院の耐水化が行われていた。
 テキサスは水害時籠城した。
 周辺地域の患者を受け入れた。
 上層階に病床があった。
 電源は確保されていた。
 防水扉の設置が行われていた。
 籠城時のスタッフのローテーションを決めてあった。
 物資の蓄積もあった。
 水陸両用車の備えもあった。
 企業や市役所は水害時のBCP(組織継続計画)を作成していた。

 日本では地震対策はやるが、水害対策は弱い。
 新幹線車両の水没(北陸新幹線)の例がある。
 28カ所のうち、16カ所が浸水想定内にある。
 丸森町役場が浸水して大きな支障が出た。

 米でCSX(貨物業者)、レイオニア(化学メーカー)にヒアリングした。
 BCPを作成していた。
 施設のかさ上げ、耐水化、食料備蓄を行っていた。
 災害が予想される数日前から具体的な行動を起こしていた。
 指定保険会社による対策の見直しもあった。
 災害時の電源を確保した。

 台風15号で千葉県の病院他200カ所以上で停電した。
 電気や水がない厳しい生活を送った。
 熱中症の危険もあった。

 米ではFEMA(米連邦緊急事態管理局)や工兵隊が電源設備の供給を図る。
 全電源喪失すると、人工呼吸の人は危険になる。
 専門家のボランティアも組織として公的な位置付けがなされている。
 テキサス・ステートガード・エンジニアリンググループ(日本の水防団に相当)は身分保証されている。
 予備役の登録制度もある。
 被災家屋の調査や、災害廃棄物の処理、電力復旧等を行う。
 地域の防災関係者が一堂に会する会合の開催が行われるテキサス防災会議のような例もある、と説明した。

 とにかくアメリカのすごいところは、何でもすぐ組織化することであろう。

 私はよく「竹槍の日本、戦車のアメリカ」と思う。

 日本人は個人の能力が優れている人が比較的多いので、何でも一人でさっさとやってしまう。
 アメリカ人は反対に個人は器用ではない。
 ドライバーでネジを回すのが苦手な人も多いという。
 でもそれを笑っているのは日本人である。
 アメリカ人は電動ドライバーを発明した。
 最初にこれをヒューレットパッカードのパソコン修理にきたのを見ておかしかった。
 でもその後で考え直した。
 『必要は発明の母』である。
 アメリカ人は器用ではないので、そのために何が必要かを考える。
 災害が起きてもすぐには対処できない人も多い。
 日本であれば器用な人が多いと、災害での本当の苦労が見えないことが多い。
 アメリカ人はこういうひどい目に遭うとそれを教訓にして、個人で立ち向かえないなら組織で立ち向かうようにしてしまえ、という発想の転換をする。
 日本人がなぜ太平洋戦争でアメリカに負けたかを考えると、少しはわかるかもしれない。
 『鬼畜米英』といって相手を見なかった日本人と、『敵を知り己を知らば百戦危うからず』のアメリカは日本軍の暗号解読で、山本五十六大将を倒す、日本はミッドウェイ海戦で大敗を喫するのである。
 今も日本人は竹槍、アメリカは戦車と思っている。
 この組織化というのは日本人にとって苦手なものであろうか。
 武田信玄の騎馬隊、これを打ち破った織田軍はそれまでの半農半軍の兵隊と違った傭兵軍団であった。
 武田の赤備えを見事に編入して加えた徳川軍の井伊直政の例があるが、概して組織化が下手な人種なのであろう。

 (8)では「日本型避難学の構築」というタイトルで、防災科研の林氏が講演した。
 両団長の話からハードだけでは無理な災害が発生しているので、ハードとソフトの複合が必要であることがわかる。
 わが国はソフトのパフォーマンスが低い。
 避難を例に挙げる。
 日本の専門家は理工系が多い。
 ソフトはよくわからない人が多い。
 先ほどの菅氏のアメリカの避難例を見ると、青い鳥を探しに行っている気がする。
 避難は命令できる。
 シェルターも用意する。
 レジリエンスの向上が必要になる。
 長期的に、包括的に、現実的に対策を考える。
 わが国の「避難」の視座は短期的、断片的、教条的である。
 警戒レベル1~5で避難の混乱が起きる。
 7月の避難指示で鹿児島では避難者は少なかった。
 99万人対象に1,422人避難した。

 10月の避難指示では、多数の住民が避難した。
 今度は逆に収容しきれない事態となった。

 避難という言葉には多義性がある。
「避難」はEvacuationとShelteringの2つの意味がある。
 前者は生存避難であり、後者は生活避難である。
 警戒レベル4で全員避難する。
 「避難」ではなく「安全確保」である。
 避難行動判定フローの精度を上げられないか。
 河川の氾濫の例を取る。
 50㎝以下だと動かない。
 50㎝以上だと避難する。
 3mを超えると逃げる。
 家も流されるからである。
 ISO22322というのがある。
 (筆者注:危機管理-公的警告の指針)
 平時といざという時の2通りの基準を定めている。
 ハザードマップの活用を図らないといけない。
 浸水深の可視化も必要である。
 50㎝浸水と3m浸水の判断を知っておくことも必要になる。
 大雨が降り始めたら警報に注意する。
 レベル3では要援護者は避難、レベル4では全員避難を知っておくことが重要である、と説明した。

 以前から私も少し混乱しているという印象はあった。
 避難場所と避難所が別である。
 避難場所は公園とかが多い。
 避難所は小学校、中学校等の施設である。
 「避難場所は生存避難」、「避難所は生活避難」と考えると、ちょうどうまく理解できる気がする。

 (9)では「大規模水災害を踏まえた国交省の対応」というタイトルで、 国土交通省の森本氏が講演した。
 ハリケーンハービーの調査に行って、国交省はどう対応しようとするか。
 危険なところに一定の規制をかける。
 流域治水への転換が図られている。
 ハリケーンハービーでは流出の減少等にチャレンジしている。
 日本の近年での自然災害はどうか。
 平成27年の鬼怒川氾濫があった。
 それから毎年洪水被害が出ている。
 気候変動による外力の増大がある。
 短時間に降雨量が増大するケースが多い。
 今後影響は拡大していくと予想される。
 台風、局所豪雨、前線、台風19号があった。
 洪水発生頻度の増加がある。
 海水面の上昇もある。
 今後どうするか。
 治水計画の見直しが必要になる。
 気候変動を前提にして考える。
 どのような対策が必要か。
 ハードだけで安全対策は難しい。
 洪水のコントロールと待避の連動が必要になる。
 複合的な対策が求められている。
 流域治水の転換である。
 集水域、利水ダム、溢れた町のまちづくり、リスクの高いところの移転、排水を早くということ、などである。
 利水ダムの洪水調節機能の強化が必要である。
 事前放流、予測精度の向上、利水ダムの放流による損失補償が必要になる。
 流域抑制策の拡大も必要になる。
 河川への流入抑制策も必要である。
 安全なまちづくりのために、ハザードエリアの規制を行う。
 ハザードエリアからの移転促進、鉄道における浸水対策、浸水想定区域の用途の多様化等も必要になる、と説明した。

 お役人の見事な作文力といえば、ちょっと酷だろうか。
 みんなの発表を聞いて、その中で問題になりそうな点をさらっと触れて、でも自分たちの責任になりそうなことは見事に避けたもので、これで何が進展するか、といえば、ほぼ何も得るものはない、ということである。

 この後にフォローアップということで、講演者がディスカッションするというのがあったのだが、画面を更新しないで待っていたため、気がついた時にはかなり講演者が感想を述べ終わっていたので、今回は省略する。

 今回のネットシンポの感想を述べる。
 2017年8月に米国テキサス州ヒューストン地域はハリケーンハービーに襲われた。
 2018年に日本の調査団が調査に行ったのだが、日本でこんな被害が起きるか、と思っていた。
 すると、2019年に台風19号が襲来して、日本の中部・関東・東北に広域災害をもたらした。
 それでこりゃ大変だ、ということで、調査団は本気になったような気がする。

 米国の考え方は、できる対策はできるだけ行って、そのから先は災害の規模を少なくするようにソフト面で考える、という思想のようだ。
 2001年のハリケーン・アリソンで病院の停電等手痛い被害を受けたので、それを教訓に災害に備えていた。
 だから、ハリケーンの規模にしては少ない被害で済んだようである。

 今回の教訓としては、ハードだけではだめで、ソフト面の対策も合せて複合対策としておくことのようである。
 衛星で災害実態の予測、防災の民間エンジニアリンググループの構築、防災の関係団体が一堂に会する、洪水対策で上流の利水ダムの水量調節・放出等の調整、そのための予測手法との連動体制等の組合せが必要になる。
 従来の日本はハコモノを揃えていればいい、というような思想があったが、これを転換しないといけない。
 私も含めて、日本人はこういうソフトの考え方が不得手である。
 こういう教育を受けてこなかった、というのが正しいかもしれない。
 私たちの世代には期待できないので、アクティブラーニングをこれから習う若い世代に期待したいと思う。


<「大規模災害への備え」オンライン シンポジウム>
我が国は広域大規模水害にどう立ち向かうべきか
 ~米国ハリケーン・ハービー現地調査団の成果に学ぶ~

1.日時:2020年(令和2年) 5月12日(火) 14:00~17:30
2.配信方法: https://www.youtube.com/watch?v=bkaLS6sZNZA より配信
  (配信時間以外は何も映らない。)
3.主催:国土交通省
4.プログラム:
14:00 開会
14:00~14:05 はじめに
       調査団長 河田惠昭(関西大学)
14:05~14:45 Ⅰ. ハリケーン・ハービー調査に学ぶ
(1)「現実の直視、ハード~ソフト相乗効果の最大化から、大災害への適応力を高めよ! ~より厳しい日本の状況をどう乗り切るか~」
  調査団長 藤田 光一((公財)河川財団 河川総合研究所 所長)
(2)「災害の世紀においてハリケーン調査から何を学ぶべきか」
  調査団長 河田惠昭(同上)

14:45~15:30 Ⅱ. ハリケーン・ハービー調査後の取組を知る
(3)「ハリケーン・ハービー復興その後(現地調査結果)」
  古本一司  国土交通省
(4)「避難計画と避難行動」
  菅 良一  内閣府
(5)「衛星を活用した大規模水害における状況把握の国際連携」
  酒井直樹  防災科学技術研究所 コーディネーター

15:30~16:45 Ⅲ. 我が国が目指すべきレジリエンスを考える
(6)「実効ある防災・危機管理の強化に向け~科学技術の社会実装と専門家の役割に学ぶ~」
  関 克己 京都大学
(7)「ハリケーン・ハービー調査を踏まえた水害レジリエンスの向上」
  池内幸司 東京大学
(8)「日本型避難学の構築」
  林 春男 防災科学技術研究所
(9)「大規模水災害を踏まえた国交省の対応」
  森本氏 国土交通省 

17:00~17:30 フォローアップ
 登壇者の皆様からご発言を頂き、フリーディスカッション
17:30 閉会
    ー以上-

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