原子力学会春の年会仮想参加その5-発表内容の説明等
2020年原子力学会・春の年会は中止になった。
春の年会は新型コロナウイルスの影響で大規模な集会は控えるように、との国の要請を忖度した結果である。
その4に続いて、春の年会に参加したと仮想して、予稿集から学会で興味があった内容についての内容等の説明をしてみる。
期間は2020年の3/16(月)~3/18(水)の3日間で、福島大学で開催される予定であった。
今回は福島事故関連がデブリとか原発内のものが多く、環境に関連したものが少なかったように思う。
今回もプログラムや予稿集を見て、仮想聴講計画を立てた。
聴講スケジュールは以下の通りとした。
3/16(月) AM1 AM2 PM1 PM2 PM3
F医学応用 G福島農業 F医学応用 F環境放射能
N放射線の医学利用 J社会調査 Jコミュニケーション
3/17(火)
F環境放射能 K学会倫理 N光子計測 E福島県教育
I福島若者* F環境安全*
B汚染土壌* H核変換**
C新検査制度* (*は追加した項目、**:再追加)
3/18(水)
N医療応用 I福島復興 F放射能測定 -
F放射能測定 J核セキュリティ
AM1は9:30-10:45くらいにある発表、AM2は10:45-12:00くらいにある発表、PM1は13:00-14:30にある特別セッション、PM2は14:45-16:00くらいにある発表、PM3は16:00-17:30 くらいにある発表時間帯である。
各テーマについて整理してみる。
第一には、福島事故関連の情報収集である。
第二には、私が研究している核変換技術の情報収集と共同研究グループとの連携の検討である。
第三には、教育、といっても私の研究の後継者探しという面が強い。
第四に興味があるものの聴講、今回の場合は放射線治療である。
その他として、トピックス的なものもミーハー的に仮想聴講した。
以下に仮想聴講順にメモ程度に書き留めていく。
長々と見たくない人は各ブログの末尾にまとめを書いておくので、それだけみればいいかもしれない。
今は新型コロナウイルスの影響でシンポジウム関係がほぼ中止なので、このブログもあまり詰め込まずにシリーズ的に順番に書いていく。
思いつくままに書いていくので、いつこのシリーズが終わるかは不明である。
第1日目の午前の聴講内容は(その1)に書いた。
第1日目の午後の聴講内容は(その2)に書いた。
第2日目の午前と午後の一部の聴講内容は(その3)に書いた。
第2日目の午後の一部の聴講内容は(その4)に書いた。
今回(その5)は第2日午後の一部からである。
第2日の午後はN会場で「光子計測」のテーマで、講演が行われた。
2N08では「ピンホール型ガンマカメラによる福島第一2号機オペフロのCs-137汚染密度の測定」というタイトルで、原子力規制庁の平山氏が発表した。
平山氏等が考案したピンホール型ガンマカメラを用いたCs-137放射能測定法を福島第一原発2号機オペレーションフロア(オペフロ)に適用し、壁・床面のCs-137 汚染密度を測定した結果を、東電から公表されているスミア測定による汚染密度データと比較検討して報告する。
オペフロ内部は周辺線量当量率が高いので、西側構台部内に設けられた建屋外壁の開口部及び開口部端面から10 m 西側の前室中央部にガンマカメラを設置して測定を実施し、スミアデータと比較した。
開口部近辺の汚染密度は、0.2 – 0.3 MBq/cm2 で、東電がロボットを使って実施したスミアによるデータとほぼ対応した値であった。
一方、東側立面壁のCs-137 の汚染密度は、1 MBq/cm2 前後で床面よりも高い値が得られ、スミアによるデータと異なる結果が得られた。
スミア測定の誤差が大きいのではないか、と説明した。
この汚染密度についての原子力での常識では、放射線施設内の人が常時立ち入る場所における物の表面密度限度が、α線を放出する核種について4Bq/cm2、α線を放出しない核種(β、γ、X線等)について40Bq/cm2と定められている。
だからこの場合に参照すべきCs-137のβ線やγ線なので、データは40Bq/cm2をバックグラウンド(BG)として考える。
そうすると、開口部でBGの約1万倍の汚染密度となる。
東側立面壁はBGの約3万倍の汚染密度となっている。
2N09では「コンプトンカメラを基盤とした放射線イメージング技術の廃炉作業環境への適用に向けた課題」というタイトルで、JAEAの佐藤氏が発表した。
JAEAはコンプトンカメラを基盤とした放射性物質可視化システムを開発している。
ここでは、福島第一原発や帰還困難区域へシステムを導入するうえで課題となる事項について議論する。
佐藤氏らはこれまでに1Fの3号機タービン建屋および1号機原子炉建屋の内部において、コンプトンカメラおよびこれとクローラーロボットを組合せることによるホットスポットの可視化に成功している。

図1 放射性物質可視化システムの測定例
しかしながら、高線量率環境におけるコンプトンカメラを用いた画像再構成や効率的な作業環境の3次元モデリングなどにおいて、複数の課題が見つかっている。
例えば、Cs-137の線源の他にもう一つ別の線源(ここではユーロピウムEu-152)を置くと(図1)、信号と雑音の比率S/N比が低下する、等である、と説明した。
2N10では「小角コンプトン散乱を利用した遮蔽体を必要としない新しいガンマ線イメージャーの検討」というタイトルで、JAEAの北山氏が発表した。
福島第一原発の廃止措置における作業員の安全確保という観点から、ホットスポットの位置を事前に把握可能なガンマ線イメージャーの研究が積極的に行われている。
ここでは、小角コンプトン散乱を利用し検出器に指向性を出すという新しいアイデアの原理検証を行った、と説明した。
あまりよくわからなかったが、要するに、軽量のコンプトンカメラを使って、ホットスポットを特定したいが、雑音が多い。
この雑音回避にはピンホールカメラのように遮へいを持ったコンプトンカメラが必要だが、これは鉛遮へい等がくっついて重くなる。
それを回避するために、検出器の近くに散乱物質を置いて、そこの散乱から来るγ線を検出して可視化する。
こうすることで、コンプトンカメラの軽量化が可能になるものらしい。
2N11では「多光子を用いた局所情報イメージング手法の研究」というタイトルで、東大の島添氏が発表した。
これまでの研究において、カスケード放出ガンマ線を用いた同時計測コンプトンイメージングを行うことで、コンプトンカメラのイメージング性能の高精度化が可能であることを示してきた、と説明した。
今回はインジウムIn-111 は171 keV と245 keV のガンマ線を連続的に放出する(カスケード)核種を使って、より高精度化への予備試験を行ったようであるが、よくわからなかった。
2N12では「二光子同時計測法を用いたコンプトンイメージングの検討」というタイトルで、東大の上ノ町氏が発表した。
これは2N11、2N13ともにシリーズ発表のようであり、In-111を使った試験であるが、よくわからなかった。
2N13では「Simulation on the Time-of-Flight double-photon imaging with Compton camera」(コンプトンカメラでの2つの光子の飛行時間のイメージングのシミュレーション)というタイトルで、東大のZHONG氏が発表した。
これも上記と同じなので説明は省略する。
第2日の午後(その2)はH会場で「LLFP核変換システム」のテーマで、発表が行われた。
このタイトルのLLFPは長寿命核分裂生成物:Long Life FP)のことである。
ただ内容は「もんじゅ」のような高速炉でのLLFPの核変換なので、筆者が目指すものとは違う。
ただ核変換とついているので、まあさらっと見る程度にする。
この発表はシリーズ発表で8件あり、(1)全体概要、(2)核変換特性、(3)高速炉特性、(4)ターゲット候補材、(5)ターゲットの熱的健全性、(6)FPの断面積推定、(7)反応率の推定、(8)社会の受容性というタイトルである。
(1)は研究全体の概要で主にここだけを見る。
(2)は核変換特性で、LLFPの性質であるからちょっと見る。
(3)は「もんじゅ」のような高速炉で核変換する炉の特性を見ている。
(4)はLLFPの物理的な性質、ペレットにして核変換、というようなものである。
(5)ペレットの耐熱性のことである。
(6)のFPの断面積は中性子との反応のしやすさを見る目安の断面積の推定に関することである。
(7)は(6)で推定した断面積の誤差で実際の反応率はどう変わるかを見ている。
(8)は核変換技術を社会がどのように考えているかの調査である。
2H10では「高速炉を活用したLLFP 核変換システムの研究開発 (1)全体計画」というタイトルで、東工大の千葉氏が発表した。
「もんじゅ」クラスの小型高速炉を活用する6 種類の長寿命核分裂生成物(LLFP:Se-79、 Zr-93、Tc-99、Pd-107、I-129、Cs-135)を新規減速材(水素化イットリウムYH2, YD2)と混合し、ブランケット領域に配置することにより、高核変換率を実現する核変換システムの研究を行った。
ここで6個のLLFPが出てくる。
LLFP に関しては、2H11において環境負荷の低減観点から重要な6 核種(セレンSe-79: 半減期327,000年、 ジルコニウムZr-93: 1,570,000年、テクネチウムTc-99:211,000年、パラジウムPd-107:6,500,000年、ヨウ素I-129: 15,700,000年、セシウムCs-135: 2,300,000年)を対象とした核変換研究が行われている、と説明した。
LLFPの6核種はそれぞれ32万年、157万年、21万年、650万年、1570万年、230万年の半減期という長さであり、これだけ長い間放射能を出し続けるわけで、環境負荷も相当なものであろう。
このLLFPを軽水炉燃料と同じようなペレットにして、それを高速炉のブランケット(新たな燃料を作る領域)中で中性子と反応(核変換)させて、無害なもの、または半減期の短いものに変えてしまう研究である。
今は「もんじゅ」も廃炉となり、仏と共同開発しようとしている高速実証炉ASTRIDも先行き不透明で、八方塞がりのようである。
しかし、高速炉を研究してきた人はまだあきらめていないようである。
というより、今までやってきたことを捨て去る勇気はなかなかないのかもしれない。
筆者の場合は、研究者からスタートし、途中で設計技術者にさせられ、また研究者、また事務作業というように様々な業種に無理やり配置転換させられたので、この辺りの考え方は柔軟性ができたかもしれない。
そうでなくて、高速炉一本で研究してきた人たちにとっては、「もんじゅ」はなくなったからこれから別の人生を歩め、と言われても、なかなか踏ん切りはつかないのかもしれない。
これで第2日目は終了とする。
第3日目の午前はN会場「医療応用と新計測技術」のテーマで仮想聴講した。
3N01は「レーザー共鳴イオン化を用いた迅速同位体分析法の開発」というタイトルで、名大の富田氏が発表した。
福島第一原発の廃炉作業などにおいて、多種多様な放射性核種の分析が求められる。
しかし、従来の放射線計測では分析が困難な核種(長半減期放射性核種、純α線放出核種など)に対しては、核種の原子数を直接計数する質量分析やレーザー分光に基づく手法が有用である。
質量分析により同位体分析を行う場合、質量スペクトル上の同重体干渉を防ぐために元素分離などが必要であるが、その由来や元素・核種組成が不明な物質・微粒子のような微量試料などに対しては、適切な化学的前処理を適用することが難しい。
そこで、元素選択的な共鳴イオン化を用いて同位体分析における同重体干渉を抑制できるレーザー共鳴イオン化質量分析法の開発を進めている、と説明した。

図2 質量分析にレーザーを導入したシステム概要
筆者は質量スペクトル分析等をしたことがないので、内容はよくわからない。
ただ、同位体で、例えば天然の窒素N-14と炭素同位体C-14が1価にイオン化した場合に、同じ挙動を示し、分析しにくい。
これに対して、どちらか一方だけイオン化するようにレーザー照射してやればよい、という手法のようである。
3N02は「自動電離準位を用いたストロンチウム共鳴イオン化における外部電場の影響」というタイトルで、東大の岩田氏が発表した。
海洋試料中のストロンチウムSr-90を対象として、自動電離準位を用いた同位体選択的共鳴イオン化手法の開発を行っている、と説明した。
3N01はストロンチウムSr、バリウムBa、ジルコニウムZrに関する共鳴イオン化であったが、3N02では、Srのみに絞った研究で、応用性は3N01の方が高いと考えられる。
3N03は「加速器中性子源で製造したCs-132 のオートラジオグラフィへの適用」というタイトルで、九大の山口氏が発表した。
福島第一原発事故後、大量の放射性物質が環境中に放出された。
その中でも特に半減期の長いCs-137 は、現在でも環境への影響が懸念されており、植物、動物などの生態に対する研究が盛んに行われている。
それらの研究では、Cs-137の長い半減期による、使用後の保管・管理などが問題視されている。
これらの問題を解決するために、先行研究ではCs-137(半減期30.1年)の代替環境トレーサーとして、半減期が短いCs-132(半減期6.43日)が提案されている。
特にセシウムの土壌への吸着や、植物への移行は短い時間スケールで反応が進むため、代替トレーサーは有効となる。
そこで今回は、Cs-132を用いた植物中の短期的な動態をオートラジオグラフィで観測し、代替トレーサーとしての検証実験を行った。
Cs-137の代替環境トレーサーとして提案されているCs-132を加速器中性子法により製造し、その水溶液を植物に吸収させた後、セシウムの植物内の動態をオートラジオグラフィで観測した、と説明した。
植物内のCs-137の移行状況を調べるために、代替核種として半減期6日のCs-132を使っていることで、実験後のRI管理が楽になるので、優れた実験である。
この手法を使い、植物の生長過程でのCs-137の移行や葉や茎等のどこにCs-137が蓄積されるか、等が明らかになれば、福島での植物生産に貢献できる。
この手法はかなり応用範囲が広いと思う。
3N04は「ミューオン対生成のPHITS への組み込み」というタイトルで、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の坂木氏が発表した。
高エネルギー電子加速器施設で問題となるミューオンの生成モデルをPHITSに組み込み、ミューオンによる線量や放射化の計算を可能にした。
また、SLAC(米国立加速器研究所)におけるミューオン遮蔽実験のデータを用いて検証した、と説明した。
PHITSはあらゆる物質中での様々な放射線挙動を核反応モデルや核データなどを用いて模擬するモンテカルロ計算コードのことである。
ミューオンは最近では原子炉を宇宙から飛来するミューオンでX線写真のように透過して撮影、等が話題となった素粒子である。
ここでは自然のミューオンではなく、加速器の中で発生する人工的なミューオンのことなので、説明は省略する。
3N05は「炭素線治療の安全評価を目的とした光刺激蛍光体を用いた光ファイバー型小型線量計の開発」というタイトルで、名大の平田氏が発表した。
炭素線治療はスキャニング照射法などの技術を用いて、腫瘍のみを選択的に損傷させることが可能である。
安全に治療を行うためには、体内での線量評価が求められている。
そこで平田氏らは光ファイバーの先端に光刺激蛍光体を配した小型線量計の開発を行っている。
ここでは、小型線量計の治療場での応用に向けて、炭素線照射実験を行った。
炭素線治療で多くの適用例のある症例に前立腺がんがあるが、前立腺の内部には尿道が通っている。
前立腺がんの治療で炭素線照射を行う際には間に位置する尿道の線量を下げることが望ましく、尿道のみを避けて行う照射法も検討されている。
尿道の内部に線量計を挿入することで、炭素線照射位置のずれや尿道への過剰な線量付与をモニターすることができる尿道の内部に線量計を挿入することで、炭素線照射位置のずれや尿道への過剰な線量付与をモニターすることができる。
患者への負担なく人体に挿入するためには、使用する線量計を小型にする必要がある。
そこで平田氏の研究グループでは、光ファイバーの先端に光刺激蛍光体を配した小型線量計の開発を進めている。
今回は小型線量計を用いた前立腺治療時の尿道内線量評価の模擬試験を行い、良好な結果を得た、と説明した。
がんの放射線治療の一つに炭素線治療がある。
α線による放射線治療と同じく、ピンポイントで照射できれば大きな効果が出るが、少し外れると正常細胞に与えるダメージも大きくなる。
今回行ったのは、前立腺がんという筆者も罹った病気なので興味はあるが、小型線量計の模擬試験だったので、良い結果といっても喜べないものがある。
3N06は「OSL 線量計のBNCT 場での運用に向けた検討」というタイトルで、名大の中村氏が発表した。
OSL線量計は光刺激ルミネセンス線量計のことで、簡単に言えば光を利用した線量計である。
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)はホウ素を含む薬剤を飲んだり注射したりしてがん患部に集めて、そこに中性子を照射して発生するα線でがんを死滅させる放射線治療の一つである。
BNCT で患者に与えられる線量は、B-10(n,α)Li-7 反応起因のホウ素線量、高速中性子起因の水素線量、N-14(n,p)C-14 反応起因の窒素線量とガンマ線量に分けて評価される。
BNCT 照射場のような中性子が支配的で、実測困難なエネルギースペクトル場のガンマ線量を正確に把握するために、組成が人体に近く中性子感度が低いとされる酸化ベリリウムBeOに注目し、OSLの測定体系や測定方法に対する検討を行った、と説明した。
BNCT法は、がんの放射線治療の中でもよく出てくる治療法である。
以前の別の講演会で、ホウ素Bだけでなく、水素Hや窒素Nも中性子と反応する、ということで問題があると思っていた。
身体の中に妨害元素がいっぱいあるのである。
反応の確率は低いのだが、いかんせん量がホウ素に比べて圧倒的に多い。
これを解決しないと、BNCT法は被ばく線量が多くなって、正常細胞へのダメージが大きくなるのではないかと思う。
またベリリウムは身体に毒性があるので、取扱い注意である。
3N07は「ダイヤモンド検出器によるホウ素中性子捕捉反応の直接定量手法の開発」というタイトルで、名大の吉橋女史氏が発表した。
BNCTホウ素中性子捕捉反応の評価のため、単結晶CVD ダイヤモンド検出器とホウ素化合物とを組合せた高エネルギー荷電粒子の直接測定手法の評価を行っている、と説明した。
やはりBNCT法の評価に関するものなので、説明は省略する。
次はF会場で「放射線(能)測定・線量計測」というテーマで発表が行われた。
3F05では「走行サーベイ測定における速度条件の検討」というタイトルで、原子力安全技術センターの堀越氏が発表した。
可搬型測定器を車両に搭載して行う走行サーベイは、広範囲の測定を簡易かつ迅速に行えるという利点から、広く普及している測定手法である。
しかし、自動車を利用した高速移動中での測定であるため、走行速度による取得値の変動等が課題である。
ここではセンターで実施する走行サーベイ測定について測定手法の効率化を図り、測定時の速度条件について検討を行った。
20、 40、60km/hでの走行結果から各速度条件で有為な空間線量率の差異は見られず、60km/h程度の一般的な走行速度でも20km/h 低速走行時の取得値に比肩する測定値を得られることがわかった、と説明した。
3F06では「遠隔で空気中α汚染を測定するための遠隔αダストモニタリングシステムの開発」というタイトルで、JAEAの宇佐美氏が発表した。
福島第一原発の廃止措置に向けた技術開発として、遠隔αダストモニタリングシステムの開発を行った。
このシステムは今後、作業者が容易に立ち入ることができない高γ線環境または汚染場におけるαダストモニターとしての適用が期待される。
ここではポータブルダストサンプラーと遠隔操作ロボットを組合せることで遠隔αダストモニタリングシステムを構築し、その成立性を確認するためラドン環境中で遠隔モニタリング性能試験を実施した。

図3 遠隔αダストモニタリングシステム例
システムのラドン環境中での実証試験は、JAEA 東海の研究所と岐阜県の瑞浪超深地層研究所にて実施した。
エアモニターのγ線照射に対する影響を確認するため100mSv/h の条件でγ線照射も行った。
瑞浪超深地層研究所では地下300m の坑道で測定を行い、相対湿度が100%の環境において遠隔操作でラドンRn-222の子孫核種を測定することができた。
得られたαスペクトルは、ポロニウムPo-218(6.0 MeVα線)およびPo-214(7.7 MeVα線)のピークを明瞭に弁別することができた、と説明した。
廃炉の作業での安全性確認のために必要な技術と思う。
3F07では「連続捕集方式による降水中放射性核種濃度モニタリングの検討」というタイトルで、名大の森泉氏が発表した。
数min の時間分解能での降水中放射性核種の濃度変動観測の手法について検討した。
天然放射性核種の鉛Pb-214のγ線(352 keV)、ビスマスBi-214のγ線(609 keV)を対象として、降水期間中の10min 毎の雨水中濃度時間変動の観測に適用した。
捕集材に水試料の流通速度の速いキレートディスクを選定して実験を行った結果、濃度測定値の不確かさが抑制され、有意な濃度変動が得られた、と説明した。
福島原発事故後に降水があったところの汚染が大きい等のデータはあったが、変動幅が大きかったように記憶している。
その変動幅を抑制する実験だったようで、多少の成果はあったと思う。
次はJ会場で「核セキュリティ技術」と言うテーマで発表が行われた。
3J05では「深層学習による物体認識を用いた危険行為自動判定技術の開発」というタイトルで、東大の出町氏が発表した。
原発の核セキュリティにとって重要な脅威の一つが、内部脅威者による妨害破壊行為であるが、その検知は主に人の眼による監視に頼っている。
人の眼のみによる監視は、見逃しや気づきの遅れなどのヒューマンエラーを十分高い精度で防ぐことは困難である。
その解決のための一つの答えが「技術の眼」による監視の補強であり、技術の候補の一つが、近年急速に発展を遂げる深層学習(Deep Leaning)である。
監視カメラ等で撮影した作業員やその周囲の装置などを、深層学習を用いて物体認識し、認識された物体の名称や行為をあらかじめ定義した禁止行為リストと比較することにより、危険行動を自動で検知し判断する技術の実現が可能である。

図4 深層学習を用いた危険行為判定システムの一例
今回の発表では、安全装具の装備の有無、および工具に関わる複数の危険行為を対象に、本手法による検知結果と精度について報告する、と説明した。
核セキュリティに関してはここ最近急速に世界的な要求が出てきているようである。
その一環として、このような研究が出てきたものと思う。
まだこの分野はこれからというものなので、想定外、と思われる事例がでてくるかもしれないが、できることを少しずつやるしかないのであろう。
3J06では「核不拡散・核セキュリティ測定技術開発のためのMOX 燃料の放射線計測試験」というタイトルで、JAEAの鈴木氏が発表した。
MOX 燃料はウランUとプルトニウムPuの混合酸化物燃料で、核兵器に転用しないために軽水炉に装荷して消費するもので、日本でも数カ所の原発で行われていた。
MOX 燃料からの放射線を簡易測定して試料中の核物質を評価することを目的に、ベルギー原子力研究センター(SCK・CEN)で開催された共同計測実験に参加した。
ここでは、得られた測定データとその解析結果について報告する。
実験では、小型ガンマ線検出器、中性子検出器及びガンマカメラを用いたMOX燃料ピンの実測定を行い、試料中の核物質を評価するための基礎データを取得した、と説明した。
MOX燃料の管理は厳重であるだろうから、盗まれる心配はないであろうが、洪水等の自然災害がある場合に備えてこうした実験をしておくことの意義はあると思う。
3J07では「核・放射線テロ事象の初動対応に資する小型放射線測定資機材の開発 (2)核種判定のための複合型ガンマ線検出システムの性能評価」というタイトルで、JAEAの木村氏が発表した。
核・放射線テロ事象の核鑑識初動対応における核種判定のための小型放射線測定資機材の開発を進めている。
ここでは、比較的安価な小型ガンマ線検出器を複数組み合わせることで検出感度を相互補完的に向上する複合型ガンマ線検出システムに関して、標準線源等の測定試験データをもとにした性能評価の結果について議論する。
複数のガンマ線検出器の組合せで、測定時間が単独の場合より10倍以上短縮されたが、中には組合せのよくない例も見られたので、さらに検討していく、と説明した。
現場では小型・軽量で、放射線の知識が少なくても大丈夫なような測定機器の開発が必要である。
そのための機器開発を地道に行っている様子が窺える。
3J08では「チェレンコフ光検出器を用いた核物質用低コスト非破壊測定装置」というタイトルで、JAEAの米田氏が発表した。
アクティブ中性子法による核物質非破壊測定装置の実用化に資するため、アクティブ中性子法用の低コスト中性子検出器の研究開発に取り組んでいる。
本発表では、主にシミュレーションによる装置設計に関する検討結果について報告する。
(筆者注:ウラン等の核物質の非破壊の測定法として、中性子を外部から照射して、中の核反応を検知するアクティブ法と中の中性子やγ線等が出てくるのを検知するパッシブ法がある。)
アクティブ中性子法は、核物質に対して非常に高感度で確度の高い測定が可能である。
そのため、原子力施設における核物質の計量管理に加えて、空港等における核テロ用核物質探知としての利用が期待されている。
しかしながら、アクティブ中性子法による装置は、パッシブ法に比べて高価であることや重厚な遮蔽材が必要であることなどが、その普及を妨げる要因となっている。
そこで、米田氏らはアクティブ中性子法による核物質非破壊測定装置の実用化に向けて、アクティブ中性子法用の低コスト中性子検出器の研究開発に取り組んでおり、その一環としてチェレンコフ光検出器の開発を進めている。
この検出器は水に中性子が入射して発生するチェレンコフ光を検知することで中性子検出を行う。
水は安価であるうえに遮蔽材としても使えるため、アクティブ中性子法による装置の欠点を一度に補う検出器として有望である、と説明した。

図5 チェレンコフ光の説明例(ハイパーカミオカンデHPより抜粋)
ここはシミュレーションだけなのであまり評価はできないが、チェレンコフ光は原子炉の中で、荷電粒子が光速を超えた時に青白い光を放つので、よく教科書にも載っていたように記憶している。
DDAというアクティブ中性子法で、中性子を物質に照射して出てくる中性子が電子を弾き飛ばし、この電子がチェレンコフ光を発生するのを観察したということのようだが、いまいちピンと来ない。
今回はここで終わりにする。
以下は(仮想聴講その5)のまとめである。
第2日の午後のセッションはN会場では「光子計測」のテーマで発表が行われた。
2N08では今の福島原発内部の汚染状況を測定するもので、バックグラウンド(BG)の1万倍の汚染があるようである。
2N09~2N13では福島原発内部の汚染状況で汚染の大きなホットスポットをコンプトンカメラで可視化する作業を行っているが、多少の問題点がある、とのことである。
第2日の午後(その2)はH会場で「LLFP核変換システム」のテーマで、発表が行われた。
ここでは「もんじゅ」タイプの高速炉で長寿命の核分裂生成物FPを核変換して短寿命のFPにする研究である。
ヨウ素I-129やセシウムCs-135(Cs-137ではない)等の数百万年から数千万年というような半減期の核種の変換の話である。
「もんじゅ」は廃炉、仏の高速炉も先行き不透明である。
これで2日目は終了である。
第3日の午前のセッション(その1)はN会場で「医療応用と新計測技術」のテーマで、発表が行われた。
3N01と3N02は福島原発で分析が困難な核種の迅速な分析方法に関するものである。
分析手法として有力な質量分析の前処理で、核種別にイオン化して区別することを目指しているようである。
3N03は半減期6日のセシウムCs-132を使うものである。
Cs-132は同位体Cs-137と同じ挙動をするので、Cs-137が植物中でどのような移行挙動をするか調査するものである。
実験後のCs-132はすぐに消滅していくので、後始末が楽で、なおかつ植物中のCs-137の挙動が調査できる。
こうした研究は応用範囲が広いので、他の人も活用するべきである。
3N04は加速器の中で発生する人工的なミューオンに関するもので、自然での宇宙から飛来するミューオンの原子炉透過X線写真のようなものとは違う研究である。
3N05はがんの放射線治療の一つの炭素線治療に関するもので、その中で患者の被ばくを測定する線量計に関するものである。
前立腺がんでの模擬試験ということで興味半分、でもまだまだ、という感じである。
3N06はやはりがんの放射線治療の一つであるホウ素中性子捕捉療法BNCTに関するもので、やはり線量計の開発である。
BNCTそのものがちょっと疑問のある放射線治療法である。
また今回着目している酸化ベリリウムBeOは毒性があるので注意が必要な物質等の疑問点が多い。
3N07は上記のBNCTに関して、直接α線が出てくる反応を測定しようとするもので、ダイヤモンド検出器という高価な物質を使う。
おそらく工業用ダイヤモンドでそう高くはないと思うが、BNCT自体の問題があり、あまり注目しない。
次はF会場で「放射線(能)測定・線量計測1」と言うテーマで発表が行われた。
3F05では走行サーベイ測定における速度条件の検討ということで、60㎞/hで走っても20㎞/hと変わらないデータが得られるようである。
3F06では福島原発内での高ガンマ線環境や汚染が大きい場所で、遠隔で空気中のα汚染を測定する必要がある。
そのための機器開発を行っており、廃炉作業に必要なものである。
3F07は福島原発事故後にセシウムCs-137が降雨によって、どのように濃度変化したかを改めて検証しようとするものである。
空気中の天然放射性核種の鉛Pb-214等を使って実験を行い、降雨による変動を抑制できたらしい。
次はJ会場で「核セキュリティ技術」と言うテーマで発表が行われた。
3J05は原発内作業をしている作業員がおかしな挙動をしないか、を、今流行の深層学習によって検知しようとするものである。
流行といってしまえばそれまでだが、これを悪用すると、中国の政治犯取り締まりのようなことも可能になる技術である。
使う側の自制が求められる技術の一つである。
3J06はMOX燃料の検出に関するもので、管理は厳重なので盗難のおそれはないであろうが、洪水等で流出の怖れがあると思うので必要と思う。
3J07はテロの現場での軽量・簡単な放射線測定機器に関するもので、必要なものである。
3J08は核物質の非破壊検査に関する技術で、その技術にチェレンコフ光検知を利用するものである。
以降も同じように、仮想聴講を行っていきたいと思う。
次回は第3日目の午後の仮想聴講(その6)からである。
-以上-
春の年会は新型コロナウイルスの影響で大規模な集会は控えるように、との国の要請を忖度した結果である。
その4に続いて、春の年会に参加したと仮想して、予稿集から学会で興味があった内容についての内容等の説明をしてみる。
期間は2020年の3/16(月)~3/18(水)の3日間で、福島大学で開催される予定であった。
今回は福島事故関連がデブリとか原発内のものが多く、環境に関連したものが少なかったように思う。
今回もプログラムや予稿集を見て、仮想聴講計画を立てた。
聴講スケジュールは以下の通りとした。
3/16(月) AM1 AM2 PM1 PM2 PM3
F医学応用 G福島農業 F医学応用 F環境放射能
N放射線の医学利用 J社会調査 Jコミュニケーション
3/17(火)
F環境放射能 K学会倫理 N光子計測 E福島県教育
I福島若者* F環境安全*
B汚染土壌* H核変換**
C新検査制度* (*は追加した項目、**:再追加)
3/18(水)
N医療応用 I福島復興 F放射能測定 -
F放射能測定 J核セキュリティ
AM1は9:30-10:45くらいにある発表、AM2は10:45-12:00くらいにある発表、PM1は13:00-14:30にある特別セッション、PM2は14:45-16:00くらいにある発表、PM3は16:00-17:30 くらいにある発表時間帯である。
各テーマについて整理してみる。
第一には、福島事故関連の情報収集である。
第二には、私が研究している核変換技術の情報収集と共同研究グループとの連携の検討である。
第三には、教育、といっても私の研究の後継者探しという面が強い。
第四に興味があるものの聴講、今回の場合は放射線治療である。
その他として、トピックス的なものもミーハー的に仮想聴講した。
以下に仮想聴講順にメモ程度に書き留めていく。
長々と見たくない人は各ブログの末尾にまとめを書いておくので、それだけみればいいかもしれない。
今は新型コロナウイルスの影響でシンポジウム関係がほぼ中止なので、このブログもあまり詰め込まずにシリーズ的に順番に書いていく。
思いつくままに書いていくので、いつこのシリーズが終わるかは不明である。
第1日目の午前の聴講内容は(その1)に書いた。
第1日目の午後の聴講内容は(その2)に書いた。
第2日目の午前と午後の一部の聴講内容は(その3)に書いた。
第2日目の午後の一部の聴講内容は(その4)に書いた。
今回(その5)は第2日午後の一部からである。
第2日の午後はN会場で「光子計測」のテーマで、講演が行われた。
2N08では「ピンホール型ガンマカメラによる福島第一2号機オペフロのCs-137汚染密度の測定」というタイトルで、原子力規制庁の平山氏が発表した。
平山氏等が考案したピンホール型ガンマカメラを用いたCs-137放射能測定法を福島第一原発2号機オペレーションフロア(オペフロ)に適用し、壁・床面のCs-137 汚染密度を測定した結果を、東電から公表されているスミア測定による汚染密度データと比較検討して報告する。
オペフロ内部は周辺線量当量率が高いので、西側構台部内に設けられた建屋外壁の開口部及び開口部端面から10 m 西側の前室中央部にガンマカメラを設置して測定を実施し、スミアデータと比較した。
開口部近辺の汚染密度は、0.2 – 0.3 MBq/cm2 で、東電がロボットを使って実施したスミアによるデータとほぼ対応した値であった。
一方、東側立面壁のCs-137 の汚染密度は、1 MBq/cm2 前後で床面よりも高い値が得られ、スミアによるデータと異なる結果が得られた。
スミア測定の誤差が大きいのではないか、と説明した。
この汚染密度についての原子力での常識では、放射線施設内の人が常時立ち入る場所における物の表面密度限度が、α線を放出する核種について4Bq/cm2、α線を放出しない核種(β、γ、X線等)について40Bq/cm2と定められている。
だからこの場合に参照すべきCs-137のβ線やγ線なので、データは40Bq/cm2をバックグラウンド(BG)として考える。
そうすると、開口部でBGの約1万倍の汚染密度となる。
東側立面壁はBGの約3万倍の汚染密度となっている。
2N09では「コンプトンカメラを基盤とした放射線イメージング技術の廃炉作業環境への適用に向けた課題」というタイトルで、JAEAの佐藤氏が発表した。
JAEAはコンプトンカメラを基盤とした放射性物質可視化システムを開発している。
ここでは、福島第一原発や帰還困難区域へシステムを導入するうえで課題となる事項について議論する。
佐藤氏らはこれまでに1Fの3号機タービン建屋および1号機原子炉建屋の内部において、コンプトンカメラおよびこれとクローラーロボットを組合せることによるホットスポットの可視化に成功している。

図1 放射性物質可視化システムの測定例
しかしながら、高線量率環境におけるコンプトンカメラを用いた画像再構成や効率的な作業環境の3次元モデリングなどにおいて、複数の課題が見つかっている。
例えば、Cs-137の線源の他にもう一つ別の線源(ここではユーロピウムEu-152)を置くと(図1)、信号と雑音の比率S/N比が低下する、等である、と説明した。
2N10では「小角コンプトン散乱を利用した遮蔽体を必要としない新しいガンマ線イメージャーの検討」というタイトルで、JAEAの北山氏が発表した。
福島第一原発の廃止措置における作業員の安全確保という観点から、ホットスポットの位置を事前に把握可能なガンマ線イメージャーの研究が積極的に行われている。
ここでは、小角コンプトン散乱を利用し検出器に指向性を出すという新しいアイデアの原理検証を行った、と説明した。
あまりよくわからなかったが、要するに、軽量のコンプトンカメラを使って、ホットスポットを特定したいが、雑音が多い。
この雑音回避にはピンホールカメラのように遮へいを持ったコンプトンカメラが必要だが、これは鉛遮へい等がくっついて重くなる。
それを回避するために、検出器の近くに散乱物質を置いて、そこの散乱から来るγ線を検出して可視化する。
こうすることで、コンプトンカメラの軽量化が可能になるものらしい。
2N11では「多光子を用いた局所情報イメージング手法の研究」というタイトルで、東大の島添氏が発表した。
これまでの研究において、カスケード放出ガンマ線を用いた同時計測コンプトンイメージングを行うことで、コンプトンカメラのイメージング性能の高精度化が可能であることを示してきた、と説明した。
今回はインジウムIn-111 は171 keV と245 keV のガンマ線を連続的に放出する(カスケード)核種を使って、より高精度化への予備試験を行ったようであるが、よくわからなかった。
2N12では「二光子同時計測法を用いたコンプトンイメージングの検討」というタイトルで、東大の上ノ町氏が発表した。
これは2N11、2N13ともにシリーズ発表のようであり、In-111を使った試験であるが、よくわからなかった。
2N13では「Simulation on the Time-of-Flight double-photon imaging with Compton camera」(コンプトンカメラでの2つの光子の飛行時間のイメージングのシミュレーション)というタイトルで、東大のZHONG氏が発表した。
これも上記と同じなので説明は省略する。
第2日の午後(その2)はH会場で「LLFP核変換システム」のテーマで、発表が行われた。
このタイトルのLLFPは長寿命核分裂生成物:Long Life FP)のことである。
ただ内容は「もんじゅ」のような高速炉でのLLFPの核変換なので、筆者が目指すものとは違う。
ただ核変換とついているので、まあさらっと見る程度にする。
この発表はシリーズ発表で8件あり、(1)全体概要、(2)核変換特性、(3)高速炉特性、(4)ターゲット候補材、(5)ターゲットの熱的健全性、(6)FPの断面積推定、(7)反応率の推定、(8)社会の受容性というタイトルである。
(1)は研究全体の概要で主にここだけを見る。
(2)は核変換特性で、LLFPの性質であるからちょっと見る。
(3)は「もんじゅ」のような高速炉で核変換する炉の特性を見ている。
(4)はLLFPの物理的な性質、ペレットにして核変換、というようなものである。
(5)ペレットの耐熱性のことである。
(6)のFPの断面積は中性子との反応のしやすさを見る目安の断面積の推定に関することである。
(7)は(6)で推定した断面積の誤差で実際の反応率はどう変わるかを見ている。
(8)は核変換技術を社会がどのように考えているかの調査である。
2H10では「高速炉を活用したLLFP 核変換システムの研究開発 (1)全体計画」というタイトルで、東工大の千葉氏が発表した。
「もんじゅ」クラスの小型高速炉を活用する6 種類の長寿命核分裂生成物(LLFP:Se-79、 Zr-93、Tc-99、Pd-107、I-129、Cs-135)を新規減速材(水素化イットリウムYH2, YD2)と混合し、ブランケット領域に配置することにより、高核変換率を実現する核変換システムの研究を行った。
ここで6個のLLFPが出てくる。
LLFP に関しては、2H11において環境負荷の低減観点から重要な6 核種(セレンSe-79: 半減期327,000年、 ジルコニウムZr-93: 1,570,000年、テクネチウムTc-99:211,000年、パラジウムPd-107:6,500,000年、ヨウ素I-129: 15,700,000年、セシウムCs-135: 2,300,000年)を対象とした核変換研究が行われている、と説明した。
LLFPの6核種はそれぞれ32万年、157万年、21万年、650万年、1570万年、230万年の半減期という長さであり、これだけ長い間放射能を出し続けるわけで、環境負荷も相当なものであろう。
このLLFPを軽水炉燃料と同じようなペレットにして、それを高速炉のブランケット(新たな燃料を作る領域)中で中性子と反応(核変換)させて、無害なもの、または半減期の短いものに変えてしまう研究である。
今は「もんじゅ」も廃炉となり、仏と共同開発しようとしている高速実証炉ASTRIDも先行き不透明で、八方塞がりのようである。
しかし、高速炉を研究してきた人はまだあきらめていないようである。
というより、今までやってきたことを捨て去る勇気はなかなかないのかもしれない。
筆者の場合は、研究者からスタートし、途中で設計技術者にさせられ、また研究者、また事務作業というように様々な業種に無理やり配置転換させられたので、この辺りの考え方は柔軟性ができたかもしれない。
そうでなくて、高速炉一本で研究してきた人たちにとっては、「もんじゅ」はなくなったからこれから別の人生を歩め、と言われても、なかなか踏ん切りはつかないのかもしれない。
これで第2日目は終了とする。
第3日目の午前はN会場「医療応用と新計測技術」のテーマで仮想聴講した。
3N01は「レーザー共鳴イオン化を用いた迅速同位体分析法の開発」というタイトルで、名大の富田氏が発表した。
福島第一原発の廃炉作業などにおいて、多種多様な放射性核種の分析が求められる。
しかし、従来の放射線計測では分析が困難な核種(長半減期放射性核種、純α線放出核種など)に対しては、核種の原子数を直接計数する質量分析やレーザー分光に基づく手法が有用である。
質量分析により同位体分析を行う場合、質量スペクトル上の同重体干渉を防ぐために元素分離などが必要であるが、その由来や元素・核種組成が不明な物質・微粒子のような微量試料などに対しては、適切な化学的前処理を適用することが難しい。
そこで、元素選択的な共鳴イオン化を用いて同位体分析における同重体干渉を抑制できるレーザー共鳴イオン化質量分析法の開発を進めている、と説明した。

図2 質量分析にレーザーを導入したシステム概要
筆者は質量スペクトル分析等をしたことがないので、内容はよくわからない。
ただ、同位体で、例えば天然の窒素N-14と炭素同位体C-14が1価にイオン化した場合に、同じ挙動を示し、分析しにくい。
これに対して、どちらか一方だけイオン化するようにレーザー照射してやればよい、という手法のようである。
3N02は「自動電離準位を用いたストロンチウム共鳴イオン化における外部電場の影響」というタイトルで、東大の岩田氏が発表した。
海洋試料中のストロンチウムSr-90を対象として、自動電離準位を用いた同位体選択的共鳴イオン化手法の開発を行っている、と説明した。
3N01はストロンチウムSr、バリウムBa、ジルコニウムZrに関する共鳴イオン化であったが、3N02では、Srのみに絞った研究で、応用性は3N01の方が高いと考えられる。
3N03は「加速器中性子源で製造したCs-132 のオートラジオグラフィへの適用」というタイトルで、九大の山口氏が発表した。
福島第一原発事故後、大量の放射性物質が環境中に放出された。
その中でも特に半減期の長いCs-137 は、現在でも環境への影響が懸念されており、植物、動物などの生態に対する研究が盛んに行われている。
それらの研究では、Cs-137の長い半減期による、使用後の保管・管理などが問題視されている。
これらの問題を解決するために、先行研究ではCs-137(半減期30.1年)の代替環境トレーサーとして、半減期が短いCs-132(半減期6.43日)が提案されている。
特にセシウムの土壌への吸着や、植物への移行は短い時間スケールで反応が進むため、代替トレーサーは有効となる。
そこで今回は、Cs-132を用いた植物中の短期的な動態をオートラジオグラフィで観測し、代替トレーサーとしての検証実験を行った。
Cs-137の代替環境トレーサーとして提案されているCs-132を加速器中性子法により製造し、その水溶液を植物に吸収させた後、セシウムの植物内の動態をオートラジオグラフィで観測した、と説明した。
植物内のCs-137の移行状況を調べるために、代替核種として半減期6日のCs-132を使っていることで、実験後のRI管理が楽になるので、優れた実験である。
この手法を使い、植物の生長過程でのCs-137の移行や葉や茎等のどこにCs-137が蓄積されるか、等が明らかになれば、福島での植物生産に貢献できる。
この手法はかなり応用範囲が広いと思う。
3N04は「ミューオン対生成のPHITS への組み込み」というタイトルで、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の坂木氏が発表した。
高エネルギー電子加速器施設で問題となるミューオンの生成モデルをPHITSに組み込み、ミューオンによる線量や放射化の計算を可能にした。
また、SLAC(米国立加速器研究所)におけるミューオン遮蔽実験のデータを用いて検証した、と説明した。
PHITSはあらゆる物質中での様々な放射線挙動を核反応モデルや核データなどを用いて模擬するモンテカルロ計算コードのことである。
ミューオンは最近では原子炉を宇宙から飛来するミューオンでX線写真のように透過して撮影、等が話題となった素粒子である。
ここでは自然のミューオンではなく、加速器の中で発生する人工的なミューオンのことなので、説明は省略する。
3N05は「炭素線治療の安全評価を目的とした光刺激蛍光体を用いた光ファイバー型小型線量計の開発」というタイトルで、名大の平田氏が発表した。
炭素線治療はスキャニング照射法などの技術を用いて、腫瘍のみを選択的に損傷させることが可能である。
安全に治療を行うためには、体内での線量評価が求められている。
そこで平田氏らは光ファイバーの先端に光刺激蛍光体を配した小型線量計の開発を行っている。
ここでは、小型線量計の治療場での応用に向けて、炭素線照射実験を行った。
炭素線治療で多くの適用例のある症例に前立腺がんがあるが、前立腺の内部には尿道が通っている。
前立腺がんの治療で炭素線照射を行う際には間に位置する尿道の線量を下げることが望ましく、尿道のみを避けて行う照射法も検討されている。
尿道の内部に線量計を挿入することで、炭素線照射位置のずれや尿道への過剰な線量付与をモニターすることができる尿道の内部に線量計を挿入することで、炭素線照射位置のずれや尿道への過剰な線量付与をモニターすることができる。
患者への負担なく人体に挿入するためには、使用する線量計を小型にする必要がある。
そこで平田氏の研究グループでは、光ファイバーの先端に光刺激蛍光体を配した小型線量計の開発を進めている。
今回は小型線量計を用いた前立腺治療時の尿道内線量評価の模擬試験を行い、良好な結果を得た、と説明した。
がんの放射線治療の一つに炭素線治療がある。
α線による放射線治療と同じく、ピンポイントで照射できれば大きな効果が出るが、少し外れると正常細胞に与えるダメージも大きくなる。
今回行ったのは、前立腺がんという筆者も罹った病気なので興味はあるが、小型線量計の模擬試験だったので、良い結果といっても喜べないものがある。
3N06は「OSL 線量計のBNCT 場での運用に向けた検討」というタイトルで、名大の中村氏が発表した。
OSL線量計は光刺激ルミネセンス線量計のことで、簡単に言えば光を利用した線量計である。
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)はホウ素を含む薬剤を飲んだり注射したりしてがん患部に集めて、そこに中性子を照射して発生するα線でがんを死滅させる放射線治療の一つである。
BNCT で患者に与えられる線量は、B-10(n,α)Li-7 反応起因のホウ素線量、高速中性子起因の水素線量、N-14(n,p)C-14 反応起因の窒素線量とガンマ線量に分けて評価される。
BNCT 照射場のような中性子が支配的で、実測困難なエネルギースペクトル場のガンマ線量を正確に把握するために、組成が人体に近く中性子感度が低いとされる酸化ベリリウムBeOに注目し、OSLの測定体系や測定方法に対する検討を行った、と説明した。
BNCT法は、がんの放射線治療の中でもよく出てくる治療法である。
以前の別の講演会で、ホウ素Bだけでなく、水素Hや窒素Nも中性子と反応する、ということで問題があると思っていた。
身体の中に妨害元素がいっぱいあるのである。
反応の確率は低いのだが、いかんせん量がホウ素に比べて圧倒的に多い。
これを解決しないと、BNCT法は被ばく線量が多くなって、正常細胞へのダメージが大きくなるのではないかと思う。
またベリリウムは身体に毒性があるので、取扱い注意である。
3N07は「ダイヤモンド検出器によるホウ素中性子捕捉反応の直接定量手法の開発」というタイトルで、名大の吉橋女史氏が発表した。
BNCTホウ素中性子捕捉反応の評価のため、単結晶CVD ダイヤモンド検出器とホウ素化合物とを組合せた高エネルギー荷電粒子の直接測定手法の評価を行っている、と説明した。
やはりBNCT法の評価に関するものなので、説明は省略する。
次はF会場で「放射線(能)測定・線量計測」というテーマで発表が行われた。
3F05では「走行サーベイ測定における速度条件の検討」というタイトルで、原子力安全技術センターの堀越氏が発表した。
可搬型測定器を車両に搭載して行う走行サーベイは、広範囲の測定を簡易かつ迅速に行えるという利点から、広く普及している測定手法である。
しかし、自動車を利用した高速移動中での測定であるため、走行速度による取得値の変動等が課題である。
ここではセンターで実施する走行サーベイ測定について測定手法の効率化を図り、測定時の速度条件について検討を行った。
20、 40、60km/hでの走行結果から各速度条件で有為な空間線量率の差異は見られず、60km/h程度の一般的な走行速度でも20km/h 低速走行時の取得値に比肩する測定値を得られることがわかった、と説明した。
3F06では「遠隔で空気中α汚染を測定するための遠隔αダストモニタリングシステムの開発」というタイトルで、JAEAの宇佐美氏が発表した。
福島第一原発の廃止措置に向けた技術開発として、遠隔αダストモニタリングシステムの開発を行った。
このシステムは今後、作業者が容易に立ち入ることができない高γ線環境または汚染場におけるαダストモニターとしての適用が期待される。
ここではポータブルダストサンプラーと遠隔操作ロボットを組合せることで遠隔αダストモニタリングシステムを構築し、その成立性を確認するためラドン環境中で遠隔モニタリング性能試験を実施した。

図3 遠隔αダストモニタリングシステム例
システムのラドン環境中での実証試験は、JAEA 東海の研究所と岐阜県の瑞浪超深地層研究所にて実施した。
エアモニターのγ線照射に対する影響を確認するため100mSv/h の条件でγ線照射も行った。
瑞浪超深地層研究所では地下300m の坑道で測定を行い、相対湿度が100%の環境において遠隔操作でラドンRn-222の子孫核種を測定することができた。
得られたαスペクトルは、ポロニウムPo-218(6.0 MeVα線)およびPo-214(7.7 MeVα線)のピークを明瞭に弁別することができた、と説明した。
廃炉の作業での安全性確認のために必要な技術と思う。
3F07では「連続捕集方式による降水中放射性核種濃度モニタリングの検討」というタイトルで、名大の森泉氏が発表した。
数min の時間分解能での降水中放射性核種の濃度変動観測の手法について検討した。
天然放射性核種の鉛Pb-214のγ線(352 keV)、ビスマスBi-214のγ線(609 keV)を対象として、降水期間中の10min 毎の雨水中濃度時間変動の観測に適用した。
捕集材に水試料の流通速度の速いキレートディスクを選定して実験を行った結果、濃度測定値の不確かさが抑制され、有意な濃度変動が得られた、と説明した。
福島原発事故後に降水があったところの汚染が大きい等のデータはあったが、変動幅が大きかったように記憶している。
その変動幅を抑制する実験だったようで、多少の成果はあったと思う。
次はJ会場で「核セキュリティ技術」と言うテーマで発表が行われた。
3J05では「深層学習による物体認識を用いた危険行為自動判定技術の開発」というタイトルで、東大の出町氏が発表した。
原発の核セキュリティにとって重要な脅威の一つが、内部脅威者による妨害破壊行為であるが、その検知は主に人の眼による監視に頼っている。
人の眼のみによる監視は、見逃しや気づきの遅れなどのヒューマンエラーを十分高い精度で防ぐことは困難である。
その解決のための一つの答えが「技術の眼」による監視の補強であり、技術の候補の一つが、近年急速に発展を遂げる深層学習(Deep Leaning)である。
監視カメラ等で撮影した作業員やその周囲の装置などを、深層学習を用いて物体認識し、認識された物体の名称や行為をあらかじめ定義した禁止行為リストと比較することにより、危険行動を自動で検知し判断する技術の実現が可能である。

図4 深層学習を用いた危険行為判定システムの一例
今回の発表では、安全装具の装備の有無、および工具に関わる複数の危険行為を対象に、本手法による検知結果と精度について報告する、と説明した。
核セキュリティに関してはここ最近急速に世界的な要求が出てきているようである。
その一環として、このような研究が出てきたものと思う。
まだこの分野はこれからというものなので、想定外、と思われる事例がでてくるかもしれないが、できることを少しずつやるしかないのであろう。
3J06では「核不拡散・核セキュリティ測定技術開発のためのMOX 燃料の放射線計測試験」というタイトルで、JAEAの鈴木氏が発表した。
MOX 燃料はウランUとプルトニウムPuの混合酸化物燃料で、核兵器に転用しないために軽水炉に装荷して消費するもので、日本でも数カ所の原発で行われていた。
MOX 燃料からの放射線を簡易測定して試料中の核物質を評価することを目的に、ベルギー原子力研究センター(SCK・CEN)で開催された共同計測実験に参加した。
ここでは、得られた測定データとその解析結果について報告する。
実験では、小型ガンマ線検出器、中性子検出器及びガンマカメラを用いたMOX燃料ピンの実測定を行い、試料中の核物質を評価するための基礎データを取得した、と説明した。
MOX燃料の管理は厳重であるだろうから、盗まれる心配はないであろうが、洪水等の自然災害がある場合に備えてこうした実験をしておくことの意義はあると思う。
3J07では「核・放射線テロ事象の初動対応に資する小型放射線測定資機材の開発 (2)核種判定のための複合型ガンマ線検出システムの性能評価」というタイトルで、JAEAの木村氏が発表した。
核・放射線テロ事象の核鑑識初動対応における核種判定のための小型放射線測定資機材の開発を進めている。
ここでは、比較的安価な小型ガンマ線検出器を複数組み合わせることで検出感度を相互補完的に向上する複合型ガンマ線検出システムに関して、標準線源等の測定試験データをもとにした性能評価の結果について議論する。
複数のガンマ線検出器の組合せで、測定時間が単独の場合より10倍以上短縮されたが、中には組合せのよくない例も見られたので、さらに検討していく、と説明した。
現場では小型・軽量で、放射線の知識が少なくても大丈夫なような測定機器の開発が必要である。
そのための機器開発を地道に行っている様子が窺える。
3J08では「チェレンコフ光検出器を用いた核物質用低コスト非破壊測定装置」というタイトルで、JAEAの米田氏が発表した。
アクティブ中性子法による核物質非破壊測定装置の実用化に資するため、アクティブ中性子法用の低コスト中性子検出器の研究開発に取り組んでいる。
本発表では、主にシミュレーションによる装置設計に関する検討結果について報告する。
(筆者注:ウラン等の核物質の非破壊の測定法として、中性子を外部から照射して、中の核反応を検知するアクティブ法と中の中性子やγ線等が出てくるのを検知するパッシブ法がある。)
アクティブ中性子法は、核物質に対して非常に高感度で確度の高い測定が可能である。
そのため、原子力施設における核物質の計量管理に加えて、空港等における核テロ用核物質探知としての利用が期待されている。
しかしながら、アクティブ中性子法による装置は、パッシブ法に比べて高価であることや重厚な遮蔽材が必要であることなどが、その普及を妨げる要因となっている。
そこで、米田氏らはアクティブ中性子法による核物質非破壊測定装置の実用化に向けて、アクティブ中性子法用の低コスト中性子検出器の研究開発に取り組んでおり、その一環としてチェレンコフ光検出器の開発を進めている。
この検出器は水に中性子が入射して発生するチェレンコフ光を検知することで中性子検出を行う。
水は安価であるうえに遮蔽材としても使えるため、アクティブ中性子法による装置の欠点を一度に補う検出器として有望である、と説明した。

図5 チェレンコフ光の説明例(ハイパーカミオカンデHPより抜粋)
ここはシミュレーションだけなのであまり評価はできないが、チェレンコフ光は原子炉の中で、荷電粒子が光速を超えた時に青白い光を放つので、よく教科書にも載っていたように記憶している。
DDAというアクティブ中性子法で、中性子を物質に照射して出てくる中性子が電子を弾き飛ばし、この電子がチェレンコフ光を発生するのを観察したということのようだが、いまいちピンと来ない。
今回はここで終わりにする。
以下は(仮想聴講その5)のまとめである。
第2日の午後のセッションはN会場では「光子計測」のテーマで発表が行われた。
2N08では今の福島原発内部の汚染状況を測定するもので、バックグラウンド(BG)の1万倍の汚染があるようである。
2N09~2N13では福島原発内部の汚染状況で汚染の大きなホットスポットをコンプトンカメラで可視化する作業を行っているが、多少の問題点がある、とのことである。
第2日の午後(その2)はH会場で「LLFP核変換システム」のテーマで、発表が行われた。
ここでは「もんじゅ」タイプの高速炉で長寿命の核分裂生成物FPを核変換して短寿命のFPにする研究である。
ヨウ素I-129やセシウムCs-135(Cs-137ではない)等の数百万年から数千万年というような半減期の核種の変換の話である。
「もんじゅ」は廃炉、仏の高速炉も先行き不透明である。
これで2日目は終了である。
第3日の午前のセッション(その1)はN会場で「医療応用と新計測技術」のテーマで、発表が行われた。
3N01と3N02は福島原発で分析が困難な核種の迅速な分析方法に関するものである。
分析手法として有力な質量分析の前処理で、核種別にイオン化して区別することを目指しているようである。
3N03は半減期6日のセシウムCs-132を使うものである。
Cs-132は同位体Cs-137と同じ挙動をするので、Cs-137が植物中でどのような移行挙動をするか調査するものである。
実験後のCs-132はすぐに消滅していくので、後始末が楽で、なおかつ植物中のCs-137の挙動が調査できる。
こうした研究は応用範囲が広いので、他の人も活用するべきである。
3N04は加速器の中で発生する人工的なミューオンに関するもので、自然での宇宙から飛来するミューオンの原子炉透過X線写真のようなものとは違う研究である。
3N05はがんの放射線治療の一つの炭素線治療に関するもので、その中で患者の被ばくを測定する線量計に関するものである。
前立腺がんでの模擬試験ということで興味半分、でもまだまだ、という感じである。
3N06はやはりがんの放射線治療の一つであるホウ素中性子捕捉療法BNCTに関するもので、やはり線量計の開発である。
BNCTそのものがちょっと疑問のある放射線治療法である。
また今回着目している酸化ベリリウムBeOは毒性があるので注意が必要な物質等の疑問点が多い。
3N07は上記のBNCTに関して、直接α線が出てくる反応を測定しようとするもので、ダイヤモンド検出器という高価な物質を使う。
おそらく工業用ダイヤモンドでそう高くはないと思うが、BNCT自体の問題があり、あまり注目しない。
次はF会場で「放射線(能)測定・線量計測1」と言うテーマで発表が行われた。
3F05では走行サーベイ測定における速度条件の検討ということで、60㎞/hで走っても20㎞/hと変わらないデータが得られるようである。
3F06では福島原発内での高ガンマ線環境や汚染が大きい場所で、遠隔で空気中のα汚染を測定する必要がある。
そのための機器開発を行っており、廃炉作業に必要なものである。
3F07は福島原発事故後にセシウムCs-137が降雨によって、どのように濃度変化したかを改めて検証しようとするものである。
空気中の天然放射性核種の鉛Pb-214等を使って実験を行い、降雨による変動を抑制できたらしい。
次はJ会場で「核セキュリティ技術」と言うテーマで発表が行われた。
3J05は原発内作業をしている作業員がおかしな挙動をしないか、を、今流行の深層学習によって検知しようとするものである。
流行といってしまえばそれまでだが、これを悪用すると、中国の政治犯取り締まりのようなことも可能になる技術である。
使う側の自制が求められる技術の一つである。
3J06はMOX燃料の検出に関するもので、管理は厳重なので盗難のおそれはないであろうが、洪水等で流出の怖れがあると思うので必要と思う。
3J07はテロの現場での軽量・簡単な放射線測定機器に関するもので、必要なものである。
3J08は核物質の非破壊検査に関する技術で、その技術にチェレンコフ光検知を利用するものである。
以降も同じように、仮想聴講を行っていきたいと思う。
次回は第3日目の午後の仮想聴講(その6)からである。
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