原子力学会春の年会仮想参加その3-発表内容の説明等

 2020年原子力学会・春の年会は中止になった。

 春の年会は新型コロナウイルスの影響で大規模な集会は控えるように、との国の要請を忖度した結果である。
 その2に続いて、春の年会に参加したと仮想して、予稿集から学会で興味があった内容についての内容等の説明をしてみる。

 期間は2020年の3/16(月)~3/18(水)の3日間で、福島大学で開催される予定であった。
 今回は福島事故関連がデブリとか原発内のものが多く、環境に関連したものが少なかったように思う。
 今回もプログラムや予稿集を見て、仮想聴講計画を立てた。
 聴講スケジュールは以下の通りとした。(その3:2日目午後にテーマを追加)

3/16(月) AM1  AM2    PM1    PM2      PM3      
   F医学応用       G福島農業 F医学応用    F環境放射能  
   N放射線の医学利用         J社会調査    Jコミュニケーション
3/17(火)
   F環境放射能      K学会倫理 N光子計測   E福島県教育
               I福島若者*
               B汚染土壌*
               C新検査制度* (*は追加した項目)
3/18(水)
  N医療応用       I福島復興  F放射能測定  -
  F放射能測定 J核セキュリティ

 AM1は9:30-10:45くらいにある発表、AM2は10:45-12:00くらいにある発表、PM1は13:00-14:30にある特別セッション、PM2は14:45-16:00くらいにある発表、PM3は16:00-17:30 くらいにある発表時間帯である。

 各テーマについて整理してみる。

 第一には、福島事故関連の情報収集である。
 第二には、私が研究している核変換技術の情報収集と共同研究グループとの連携の検討である。
 第三には、教育、といっても私の研究の後継者探しという面が強い。
 第四には、興味があるものの聴講、今回の場合は放射線治療である。
 その他として、トピックス的なものもミーハー的に仮想聴講した。

  以下に仮想聴講順にメモ程度に書き留めていく。

 長々と見たくない人は各ブログの末尾にまとめを書いておくので、それだけみればいいかもしれない。

 今は新型コロナウイルスの影響でシンポジウム関係がほぼ中止なので、このブログもあまり詰め込まずにシリーズ的に順番に書いていく。
 思いつくままに書いていくので、いつこのシリーズが終わるかは不明である。

 第1日目の午前の聴講内容は(その1)に書いた。
 第1日目の午後の聴講内容は(その2)に書いた。
 今回(その3)は第2日午前からである。

 第2日目の午前の最初はF会場「環境放射能・環境修復」のテーマで発表が行われた。

 1F06は「リートベルト解析による人形石の結晶構造評価」というタイトルで、JAEAの鈴木氏が発表した。
 まず最初にリートベルト解析という言葉が引っかかった。
 結晶構造の解析でこういう言葉は聞いたことがなかった。
 調べてみると最近の分析手法らしく、X線回折ピークの最小二乗法のフィッティングを行って構造を解析するものらしい。
 JAEAの人形峠環境技術センターでは、ウラン廃棄物の処理処分技術を確立することを目標にした環境研究を実施している。
 浅い地中に埋設処分されたウラン廃棄物中のウランの挙動を調べるために、化合物として人形峠の主要なウラン鉱物である人形石があるが、生成メカニズムや結晶構造が明確でない。
 そのため、過去何回かこの学会でいろんな解析方法で発表してきた。
 今回はリートベルト解析という最近の手法を使って、固有の人形石の構造を調べた。
 人形石の化学式として、[CaU(PO4)2]3を使って調べ、若干の違いがあった。
 結晶水の存在などを考慮してさらに検討を進める、と説明した。

 昔、岡山県の人形峠でウランが採れると聞いて、ちょっと誇らしい気持ちもあった。
 岡山は桃やブドウの他はあまり地理として出てこない。
 それが、ウランという原子力に関係するものが出てきて、多少の親近感はあった。
 でも今はこのセンターを閉じて、ウラン鉱石である人形石が周囲の環境に悪い影響を与えないようにする、という店じまいの計画で進んでいることに若干の残念さを感じる。

 2F02では「酸化グラフェンにより捕集されたウランの蛍光X 線分析法による定量法 (1) 汚染水分析への利用」というタイトルで、量研機構(QST)の吉井氏が発表した。
 この研究は、福島原発内に溜まっている水がウランU汚染していないかを高精度で分析する技術の開発に関するものである。
 1年前に抽出剤としてUTENAレジンというイオン交換樹脂のようなものを使っていたが、今回はこのレジンと酸化グラフェン(GO)というグラファイトに似た抽出剤と二つの抽出方法を使った。
 2つの抽出剤でUを抽出し、これを濃縮して、全反射蛍光X 線分析法(TXRF)で分析性能を調べた。
 その結果、前者と後者でそれぞれU法令排出基準20mBq/ccの規制値の450分の1の値、1300分の1の値が得られた、と説明した。

 この研究も記憶にあって、全反射蛍光X線分析というのが新しい技術だったように思う。
 この技術でU分析の感度が上がったのであるが、今回はそれを抽出・濃縮して、さらに高感度の技術になったようである。

 2F03では「酸化グラフェンにより捕集されたウランの蛍光X線分析法による定量法 (2)海水分析への利用」というタイトルで、QSTの高村氏が発表した。
 これは2F02とのシリーズ発表で、02では海水なしの分析結果を説明したが、この03では海水を含む溜まった水のウランU分析結果の発表である。
 福島原発事故の際は、冷却水が不足して、止むを得ず海水を使ったので、建屋内に溜まった水も海水なしの汚染水と海水を含む汚染水がある。
 02では海水なしでよい結果が得られたので、今回は海水を含む模擬汚染水を使った。
 02と同じ2つの抽出剤を使った濃縮・分析を行い、UTENAレジンよりGOを使った方がよい結果が得られた、と説明した。

 2F04では「大型再処理施設の試験操業中及び以降の六ヶ所村沿岸海域堆積物中I-129 濃度」というタイトルで、環境科学技術研究所の佐藤氏が発表した。
 この研究所は確か青森県六ヶ所村にちょっと前にできたように記憶している。
 調べてみると、平成2年だったからできてもう30年にもなる。
 六ヶ所再処理施設に関係した環境の影響調査の研究を行うために設立されたらしい。
 青森県六ヶ所村の大型再処理施設近傍海域を対象として、使用済み核燃料を用いた同施設の試験操業期間(2006~2008年)及びそれ以降(2009~2010年)における太平洋沿岸堆積物中のI-129 濃度を測定した。
 I-129は半減期1570万年という長期半減期核種で、厄介なRIである。
 放出量は微量とはいうものの、長い期間にわたって環境に影響を与えるので、無視するわけにはいかない物質である。
 試験操業期間にI-129の増加が観測されたのは、尾駮漁港の堆積物のみであった。
 他のところでは増加は見られない、との説明であった。

 2F05では「福島第一原発港湾及び福島沿岸でのCs-137環境動態:事故後9年間に渡るその変遷」というタイトルで、JAEAの町田氏が発表した。
 福島原発(1F)事故後9年が経過した。
 1F事故により放射性物質が環境中へと放出され、海洋での放射性物質の環境動態を調査研究する必要性が高まった。
 放出された放射性物質の中でもCs-137 に着目し、その海洋環境での環境動態について、得られた知見を報告する、と説明した。
 なお得られた結果については当日会場で発表するつもりだったようで、予稿集の中には何のデータも書かれていない。
 ただ一つの指摘事項は濃度の季節変動等、環境影響を受けている、ということのみである。

 2F06では「Reusable super-paramagnetic metal oxides/SiO2/zeolite nano-composites」(再使用可能な超常磁性の金属酸化物/SiO2/ゼオライトのナノ合成物質)というタイトルで、バーミンガム大学のIto女史が発表した。
 ストロンチウムSrの吸着のために、常磁性のゼオライト性物質に加工して、吸着性能を上げる実験のようであった。

 午後のセッションはI会場で「福島の若者は原子力に何を感じているか~福島の夢と課題~」のテーマで、発表が行われた。
 2I_PL01では「(1)若者に夢を与える教育とは」というタイトルで、福島高専の赤尾氏が発表した。
 福島高専は福島第一原発が位置する福島浜通り地区に位置している。
 この原発の廃炉を担う人材を育てるのが重要な課題の一つである。
 福島高専は平成27 年に文部科学省の原子力科学技術・人材育成推進事業に採択され、全国31高専と連携し、5 年間の基盤研究を通じた人材育成を進め、「廃止措置人材育成高専等連携協議会」を組織している。
 また、福島第一原発の敷地外の放射能汚染された地域の環境の回復を目指して、原子力規制庁の原子力人材育成等推進事業の一環として人材育成を進めている。
 福島第一原発の廃炉について、一人でも多くの若い学生に目を向けてもらうために福島高専が中心となり「廃炉創造ロボコン」を企画し、JAEA楢葉遠隔技術開発センターを会場として毎年開催している。
 この廃炉創造ロボコンには全国の高専だけでなく,海外大学からも参加があり年々盛り上がりを見せ、国内外の注目を集めている。
 また、文科省の「国際原子力人材育成イニシアチブ事業」にも採択されており、毎年カナダやイギリスに学生を送り出している。
さらに、浜通り地域を『イノベーション・コースト』として世界に誇れる「浜通りモデル」とするためにも毎年数多くの学生を海外留学に派遣している、と説明した。

 確かに廃炉創造ロボコンというのが盛り上がりをみせているようで、電気新聞にも載っていたように思う。

R2-4-17R1 廃炉創造ロボコン課題その2.jpg
         図1 廃炉創造ロボコンの状況

 ただ人材育成という面で、海外留学等に限定されているのは多少残念な面がある。
 廃炉に関連した日本国内の企業等にインターンシップ等が多くあってもいいように思う。

 2I_PL02では「(2) 福島高専との対話会を通じて感じること」というタイトルで、原子力学会シニアネットワーク連絡会の坪谷氏が発表した。
 このシニアネットワーク連絡会は確か原子力OBで組織されたものだったと思う。
 福島高専の「廃炉工学」の授業の一環として、学生との対話会が2015 年12 月より始められた。
「対話イン福島高専」は、4 年生以上(高専は5年制)の文系および理系の学生が開催日程の都合で30-50名が参加している。
 高専4 年生は大学1 年生の年齢であるが、理系は「廃炉工学」を受講するなど工学者としての将来を見据えている。
 また、参加学生の半数近くが女子学生であることも特徴である。
 2020年1月の対話会では「トリチウム問題」を取り上げた、との説明であった。
 5年にわたる対話会の感想等を述べるつもりであったのであろうが、予稿集には何も書かれていない。

 2I_PL03では「(3)若者から見た将来の原子力について」というタイトルで、福島高専の嘉齊女史が発表した。
 原子力を専攻していない嘉齊女史が原子力分野に関わるきっかけはカナダに留学にした際に、カナダ人の友人が福島には人が住んでいるのかと聞いてきた。
 当時は情報の格差の大きさに愕然としたことを覚えている。
 それと同時に、確固たる証拠や自信を持って福島が安全であることを説明できなかった自分の無知さに情けなさを感じた。
 この出来事をきっかけに福島県民として原子力について知るべきであると思い、学校の選択授業や課外活動で原子力に関わるようになった。
 福島高専では原子力に関連する授業は多くあるが、一部の学生は目の前に山積している問題が見えていない。
 実際に、学生を対象に行った除去土壌問題についての認知度調査では、一部の学生から「知らない」などの回答があった。
 福島県内の至る所にある黒い袋が日本において大きな問題になっていることを彼らは知らないのである。
 福島から距離が離れるほど、原子力の問題は他人事のように扱われている現状はいまだ払拭されていない。
 学生と共に原子力分野のプロジェクトに参加していく中でわかったことは、原子力分野の抱える問題の複雑さである。
 原子力という言葉を聞けば、物理や化学などの専門を想像する者も多いと考える。
 しかし、原子力の抱える問題は技術だけではなく、社会的・経済的側面における課題もはらんでおり、原子力の問題に関わる全ての分野による包括的なアプローチをかけなければ、建設的な議論が実現しないと考えられる。
 嘉齊女史は、情報格差をなくし、福島の現状や原子力についての理解を醸成するためにコミュニケーションという側面から貢献しようと努めた。
 原子力に関する教育は技術系の学生のみが対象になるべきではなく、経済や経営、社会学、法学、心理学など一見関わりのないような学問からの学生をも巻き込み、学際的なディスカッションを実現することが重要であると考える、と説明した。

 学際的という言葉はよく聞かれる。
 しかし、その方法論という観点で、まだ統一的なものがないようである。
 トリチウム汚染水と風評被害、原発差し止めの裁判、地層処分に係る問題など技術論以外の問題が社会で大きく取り上げられる。
 原子力ムラにいると、なんて社会は不条理なのだろうと思っていた。
 でも退職して、地元有志等と話していると、原子力ムラの人間はなんて世間を知らないのだろうと思うようになった。
 立場が違えば意見も異なることを身をもって感じている。

 2I_PL04では「(4)福島におけるエネルギー政策について思うこと」というタイトルで、日大の重石氏が発表した。
 事故後10年が経過した。
 重石氏は事故後、福島県に暮らし続けている。
 この10年で重石氏は色々なことを思い、感じながら暮らしてきた。
 福島県から県外に転校し戻ってこない同級生がまだいる。
 学校や公園にある放射線量計なども今や当たり前の風景になっている。
 10年がたった今でも原発事故の遺産は街・人々の生活で色濃く残っている。
 小学生だった頃の重石氏は、原子力発電は「必要ない・廃止すべき」と考えていた。
 明確に意見した経験は当時ないが、重石氏はそう思っていた。
 理由は単純で「嫌」であったからである。
 同じ小学校の友達が転校、小学校最後の運動会が中止、半年以上体育が学校の廊下であったことなど2010 年代とはあまりにもイレギュラーな学校生活であったためか、それが非常にストレスとなり「全て原発のせいだ」と考えるようになっていた。
 また、それはいわきに来た原発避難者にも言えていて、最初こそ「避難続きで可哀想」、「急に知らない土地に可哀想に」など思っていた。
 しかし、仮設住宅に並ぶ外車の数々、スーパーでの避難者の店員に対する横暴な態度、非常に豪華な一軒家を建てたなど、原発避難者の様々なエピソードを見たり聞いたりしていくうちに、原発避難者に対する差別的な意識を持つようになった。
 それは自分だけでなく周りの友達も同様に考えていたことから、いかに差別意識が浸透していたかがわかるであろう。
 なお、現在は私を含めほとんどの人々は差別意識を持っていない。
 一方大学生となり、情報、情勢、社会的背景など様々な角度で物事を見るようになった今は、原子力発電は現代日本に「まだ」必要だと私は考えている、と説明した。

 福島県内での様々な風景の一こまを切り取ったように感じている。
 早く通常の生活に戻れるようになればいいと思う。

 2I_PL05では「(5) 討論「これからのエネルギーに対する福島の役割」というタイトルで、原子力学会シニアネットワーク連絡会の三谷氏が発表した。
 実際にはここで討論が行われるはずだったのだが、これは実際にはなかった。

 午後のセッションその2はB会場で「除去土壌等の県外最終処分に向けた技術的検討」のテーマで、発表が行われた。

 2B_PL01では「(1)中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用について」というタイトルで、環境省の金子氏が発表した。
 中間貯蔵施設に搬入される除去土壌等は約1,330万m3と推定されている。
 この除去土壌等については「中間貯蔵開始後30 年以内に福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずる」ことが国の責務として明記されている。
 環境省は、福島県内の除染等で発生した除去土壌等の県外最終処分に向けた取組として、
 ①減容・再生利用技術の開発
 ②再生利用の推進
 ③最終処分の方向性の検討
 ④全国民的な理解の醸成等
の4 本柱を2016 年4 月に中間貯蔵除去土壌等工程表として公表し、2019年3 月に見直しを行った。
 ここでは、福島県内の除染等で発生した除去土壌の県外最終処分に向けた取組方針を解説する。
 ①については省略しているようである。
 ②では盛り土等の部材に限定して利用する。
 ③ではまだこれから検討というスタンスである。
 ④では最終処分のための啓発等を進める、とのお題目のみである。

 まとめてみると、盛り土利用以外何も決まっていないようである。
 まさにお役人の資料の典型例かな、と思う。

 2B_PL02では「(2)除去土壌等の処理・処分技術オプションの検討」というタイトルで、国環研の山田氏が発表した。
 専門性を有しかつ中立的立場にある環境放射能除染学会において、環境省の事業とは独立して、独自の学術的な立場から上記の問題意識に沿った検討を行った。
 県外最終処分に向けた技術開発戦略の在り方を取りまとめるための研究会(2018年10月~)を設置した。
 ここではその活動概要を紹介するとともに、県外最終処分シナリオを多面的に評価する手法を紹介する。

R2-4-17R1 福島汚染土壌の処分シナリオ例.jpg
         図2 汚染土壌の処理の検討

 図2に示すようなシナリオを考えたらしいが、学者の考えそうなシナリオであり、珍しいわけでもない。
 環境省ほどの責任はないから、体裁のみ整えておけばいい、とのように見える。
 あまり参考とすべきではないだろう。

 2B_PL03では「(3)最終処分シナリオの多面的評価」というタイトルで、産総研の保高氏が発表した。
 ここでは、環境影響評価や修復における多面的な評価の概要を紹介するとともに、本研究会で実施しているステークホルダーヒアリングの概要およびヒアリング調査の予備的な結果を示す。
 これらの社会受容性を評価・実装する方法として、近年、複数のオプションに対するステークホルダーの価値観を取り入れやすい評価手法として、多面的な評価の概念が注目されつつある、と説明した。

 そもそもこのような汚染土壌を福島県外で最終処分すること自体に無理がある。
 おそらくこの福島で最終処分することが最も合理的であると筆者は思う。
 また、汚染土壌の処理に関しては以前も述べたが、若狭湾の研究センターの人の話ではセメント業界のロータリーキルンを使えば、1300万m3の処理が可能、との論文もあった。
 JAEAや大学の研究者たちは皆新しい処理方法ばかり開発したいという思いがあって、この提案は顧みられていない。
 では新しい汚染土壌の処理法は開発できたかというと、多分できたとしても膨大なエネルギーを使い、条件も限られたものしかできていないであろうと思う。
 2B_PL04では01-03までの発表を基にパネルディスカッションを予定していたが、実際はなかった。

 午後のセッション(その3)はC会場で「リスク情報活用のための標準に求められるもの-新検査制度への適用」のテーマで、発表が行われた。
 ここで新検査制度について触れておく。
 私は退職して9年になるから、情報収集能力が落ちているので、若干の誤解はしているかもしれない。
 原子力規制委員会は福島原発事故後にできたが、事業者に対して、双方向の意見交換でなく、一方的に規制を押し付けるような感じであった。
 このままではいけないというので、確か米原子力規制委員会NRCの規制を参考にして事業者の自主性を重んじた検査に変える、という趣旨だったと思う。
 具体的にはどうか、というので、原子力学会誌にその解説があったように思うが、はっきりした描像は浮かんでこなかった。

 2C_PL01では「(1)新検査制度におけるリスク情報活用」というタイトルで、東大の関村氏が発表した。
 ここでは原子力学会標準委員会が取組んでいるリスク情報活用の視点から、活用を踏まえた標準整備に加え、新検査制度を俯瞰した課題について述べる。
 以前は決定論的に保守的な条件設定などによる対処を行ってきた。
 しかし、原子力施設の長年の使用経験や他の分野での知見などから不確かさの大きい状態にも適切な対処を行って原子力施設を利用していくことが求められるようになった。
 そこで、リスク情報を得るリスク評価方法の開発、リスク情報を活用した安全性向上の取組が行われてきた。
 リスク評価では確率論的解析を行うが、その利点は以下のようになる。
 ・現実的な事故シナリオの顕在化、それによる脆弱性の明示
 ・優先順位を付けるための定量的な結果の提示
 ・パフォーマンス、柔軟性、および費用対効果の更なる向上
 ・不必要な要求事項を判別と削減
 ・安全状態の監視
 特に PRA(確率論的リスク評価)は、原子力施設のような複雑なシステム系の挙動を不確実さとともに定量化できることから多くの貴重な情報を提供できる。
 ただしリスク情報だけによる判断では、評価手法が確立されていないため、確定論の補完的活用により、有効な情報を得ることができる、と説明した。

 以下に長々と説明文はあるが、要するに確率論を主とし、確定論を補完用に使って審査を進めることらしい。
 地震、津波、火山等は起こる頻度は小さいものの、リスクという観点では無視できない。
 ただ、これをすべて対策を行うことにすると、事業者の経済的な負担が大きくなるから、ある程度の妥協を挟むことになるようである。

 2C_PL02では「(2) 新検査制度の遂行に必要なPRA 標準の品質とその実現」というタイトルで、JAEAの高田氏が発表した。
 確率論的リスク評価(PRA)標準の整備では、リスク情報活用に必要な種類と品質のものを標準委員会で整備を行ってきた。
 ここでは、今後必要となるPRA 標準の体系的な構造や品質ならびその実現について考察する。
 リスク情報を活用するためには、PRA 標準も含めリスク評価の過程で得られるリスク指標とリスク情報活用の対象を明確化することが重要となる。
 リスク指標はプラントライフの様々な場面で活用されるものであり、プラントの設計、安全評価やプラント運用、運用中の変更、監視活動(モニタリング)に加え新検査制度にも関係する安全上の問題の評価が含まれる。
 リスク指標の一例として、プラント状態の監視でのFussell-Vesely(FV)重要度(機器の重要度指標)等を使うらしい。
 新検査制度の遂行に必要なPRA 標準の「品質」とは、PRA が目的に応じた精度となっていることを定性的、定量的な根拠を持って示すものである、と説明した。

 外国の例などを参照しながら手探りで新検査制度が開始されたように感じられる。

 2C_PL02では「(3)新検査制度におけるリスク情報活用のあるべき姿」というタイトルで、長岡技科大の村上氏が発表した。
 原子力学会の当分科会は、「リスク活用の実務への適用が具体化」のための標準の策定を進め、リスク情報を活用した統合的意思決定(IRIDM: integrated risk-informed decision making)のあるべき姿に関する議論を重ねた。
 その成果としてIRIDM 標準が制定された。
 この標準を使ってもらいたい、と説明した。

 このIRIDMがいまいちよくわからないので調べてみた。
 以下にその様子を少し示す。

R2-4-18R1 IRIDM プロセス概要.jpg
         図3 リスク活用標準IRIDMの概要

R2-4-18R1 IRIDM 外的事象分類.jpg
         図4 リスク活用情報の基礎となる外的事象の分類

 2C_PL04では総合討論の予定だったが、実際にはなかった。


 今回はここで終わりにする。

 最初のF会場では「環境放射能・環境修復」のテーマで発表が行われた。

 2F01は岡山・人形峠での事業廃止に向けてのウラン廃棄物の安定処理に向けた研究発表であった。
 2F02・2F03は福島原発内のウラン汚染水の分析法に関するもので目処が立ったようである。
 2F04は六ヶ所再処理施設の以前に行った試験での長半減期RIヨウ素I-129の分布に関する研究で、尾駮漁港に微量検出されるのみであった。
 2F05は福島原発周辺のセシウムCs-137の状況で、季節変動により影響を受けている、とのことだが、基本的には影響はないようである。
 2F06はストロンチウムSrの吸着剤ゼオライトの性能向上に関する実験のようであった。

 午後のセッションではI会場で「福島の若者は原子力に何を感じているか~福島の夢と課題~」のテーマで、発表が行われた。
 2I_PL01では福島高専の原子力教育が紹介されており、廃炉創造ロボコンのことが取り上げられていた。
 2I_PL02では福島高専の対話会を原子力OBが主催してその5年間の成果を述べるようであった。
 2I_PL03では原子力を専攻していない嘉齊女史がカナダ留学していた時に福島のことを聞かれて安全性を説明できなかったのがきっかけであった。
 文系の目からみた原子力の複雑さを感じているようであった。
 2I_PL04では福島原発事故後の避難者の生活の一端が示されていた。
 福島出身の大学生として、感覚的には原発は嫌だが、日本のエネルギーのことを考えると、理性的には必要と考えているらしかった。
 2I_PL05は議論のはずだったが、なかった。

 午後のセッション(その2)はB会場で「除去土壌等の県外最終処分に向けた技術的検討」のテーマで、発表が行われた。

 2B_PL01では、除去土壌は約1,330万m3あり、一部を盛り土等に再生利用を考えているようである。
 2B_PL02では、環境省とは別の視点での処理技術というものであったが、あまり参考にはならない。
 2B_PL03では、ステークホルダー(利害関係者)等の価値観を取り入れやすい評価手法を提案していた。
 筆者は、最終処分を福島県外で行うことには無理があると思う。
 2B_PL04は、パネルディスカッションの予定であったが、なかった。

 午後のセッション(その3)はC会場で「リスク情報活用のための標準に求められるもの-新検査制度への適用」のテーマで、発表が行われた。
 新検査制度は原子力規制委員会が原発審査において、令和2年度より従来と違うやり方で行うということに関するセッションである。

 2C_PL01では確率論的なリスク評価を主に行い、従来の確定的なリスク評価で補完するということのようである。
 2C_PL02ではリスク情報活用のために、リスク指標とリスク情報活用の対象を明確化することとした。
 2C_PL03では、学会のリスク情報活用のIRIDM標準を策定したので使って欲しい、とのことである。
 2C_PL04では総合討論のはずだったが、なかった。

 以降も同じように、仮想聴講を行っていきたいと思う。
 次回は第2日目の午後から仮想聴講(その4)からである。
  -以上-

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