原子力システム研究開発事業成果報告会に参加

 原子力システム研究開発事業成果報告会(2020/1/28(火))に参加した。
 前回のセミナーとは時間前後しているが、この報告会はボリュームがすごくて、前回はまとめきれなかったので順序を変更した。

 今年の1月8日(水)に原子力学会から上記の案内メールが届いた。
 実は私はこの成果報告会には縁があった。
 X年に確か発表したような気がする。
 そのためにこの事業の評価の厳しさもある程度知っている。
 また国(文部科学省)の研究の委託事業なので、人件費から何から厳しいチェックを受けるのである。
 また研究内容はかなり先進的でなければならないことも知っている。
 そこでどんな研究成果が出ているのか、興味半分、野次馬根性半分で翌日に申し込みした。

 当日の朝はお茶のティバッグにお湯を注いでマイボトルに入れて、途中のコンビニでお昼のお弁当を買って行った。
 会場はJR秋葉原駅近くのビルであったが、ビル群が多くて、探すのに少し手間取った。
 時間前に着いたので、少しうろうろしていたら、知った顔に何人か会った。
 さすがに既に退職しているので、頭を下げる程度で話はしなかった。
 受付で申込完了のメールをスマホで見せたが、難色を示され、名刺を1枚渡してそれでチェックしてもらった。
 どうも受付完了の印刷物でないといけないらしかった。
 確かに受付完了のメールにはこのメールを印刷して持ってきて欲しい旨の説明があった。
 しかし、面倒なので、パソコンで受けた完了通知をスマホに転送したものを見せたのである。
 ここは2階であるが、大きなビルだったので、一応非常口から1階に降りてみてまた上がった。
 またトイレにも行っておいた。

 資料は報告会のプログラムのみで、タイトルしか書かれていないものである。
 したがって私のノートに書いた範囲内での説明となる。
 若干の誤記、思い違いなどは出る可能性があることをお断りしておく。
 もし私の説明でおかしい点があるので確認したいと思う人がいれば、各発表のタイトルをコピーしてネットで検索すればよい。
 多分全部の発表の概要は発表されている。(何個かは筆者確認済)
 末尾にこのプログラムを添付しておく。
 また、この成果報告会自体、専門家と思っている私でもちょっと理解不能なところもあるので、熱心に読まずに雰囲気くらいを感じ取ってもらえばよいと思う。

 最初に文部科学省の石浦氏が挨拶した。
 3.11から9年が経った。
 経産省と一緒に研究開発の支援を行っている。
 しかしそろそろ変革の時期に来ている。
 事業の進め方も変える予定である、とのことだった。

 続いて、プログラムディレクターの山名氏(原子力損害賠償・廃炉等支援機構長)があいさつした。
 本日は167名が参加している。
 平成30年度に終了したテーマについて、今回は発表してもらう。
 廃炉・原子力技術も潮目である。
 この研究制度はありがたい。
 しかし、システムと英知は両方とも変革の時期である。
 昨年末に中長期ロードマップが公開された。
 福島廃炉はエンジニアリング段階に入っている。
 今組織の変更を申請している。
 英知事業は福島廃炉をサポートする。
 新しいイノベーションを出してもらう。
 基盤技術は絶やさないようにして欲しい、とのことだった。

 (1)では「Multi-physics モデリングによるEx-Vessel 溶融物挙動理解の深化」というタイトルで、早稲田大学の山路氏が発表した。
 福島原発事故時に容器の外で起こる反応(MCCI:炉心と周囲のコンクリートの相互作用)が問題となる。
 溶融物の広がり挙動は溶融物の粘性に関連する。
 溶融物の界面挙動の追跡を行った。
 早大と電中研と阪大の共同研究である。
 流体力学におけるナビエストークス法を基礎に、フランスのVULCANO実験(筆者注:福島炉心溶融の模擬実験の一つとして50㎏程度のウランを含むMCCIの溶融実験を行ったらしい。)の固相率等を比較した。
 この他にもいろいろな溶融実験等と比較していたが、筆者の知見の範囲を超えていたと思う。

 (2)では「原子力エレクトロニクス技術を活用した耐放射線半導体イメージセンサの開発」というタイトルで、産業技術総合研究所の田中氏が発表した。
 この開発は産総研、広大、QST(量研機構)の共同研究である。
 耐放射線イメージセンサーを開発した。
 炉心の溶融デブリを処理する際に、ロボットを使った遠隔計測を行っているが、CCDカメラが放射線で壊れてしまう。
 そこで半導体分野で使っているパワーデバイスSiC(シリコンカーバイド)を活用する。
 この半導体は放射線に強い。
 イメージセンサーとして施設のモニタリングに使える。
 宇宙空間でも使えるし、応用範囲が広い。
 SiCで200Gy程度の放射線量には耐えられる。
 (筆者注:私の放射線治療での放射線量は合計約80Gy)
 目標線量は2MGy(2百万Gy)である。
 作業を1週間として、安全係数を100とする。
 光の検出はフォトダイオード、増幅のスイッチの構成で、スイッチにSiCを使う。
 ダイオードはシリコンのハイブリッド型である。
 最初にJFETで一次製作したが、うまく性能が出なかった。
 そこで二重イオン注入によるJFTで製作したものは高温300℃でも安定して、耐放射線性も4.2MGyでも測定可能であった、と説明した。

 (3)では「高速パルス通電加熱による超高温核燃料物性測定技術の開発」というタイトルで、原子力機構(JAEA)の森本氏が発表した。
 核燃料の物性測定で、酸化イットリウムY2O3を含む酸化ジルコニウムZrO2の測定を行った。
 デブリでの高温での熱物性が問題となる。
 タンタルTaやモリブデンMoで測定した技術を応用した。
 高速パルス通電加熱で行い、試料はペレット状である。
 従来は導電性の材料に限られていた。
 5.5%Y2O3含有のZrO2を使った。
 融点は約2700℃である。
 測定は3秒で約3000Kまで上昇した。
 チューブ内の有限要素法FEMによる解析を行った。
 1000msecではまだ溶融していない。
 予備加熱が必要である。
 Taのみで測定を行ったが、ZrO2ではまだできていない。
 ウランUの酸化物模擬として、セリウムCeを使った焼結体を使った。
 カーボンナノチューブ(CNT)を使うこともある、と説明した。

 (4)では「廃止措置工学高度人材育成と基盤研究の深化」というタイトルで、東京工業大学の小原氏が発表した。
 東工大の人材育成について述べる。
 現場でモノに触れる人材が必要である。
 ロボットを使った遠隔操作は高いモチベーションを必要とするが、他領域でも使える。
 東工大は基礎研究と人材育成の2本柱である。
 各大学との連携も行っている。
 デブリ材料工学等でシビアアクシデント(SA:炉心溶融等の過酷事故)の人材育成を行う。
 キャリアパスとして、廃炉材料工学等は通常炉の廃炉も増える。
 難分析核種、イオン液体、水熱分解法、セシウムCs回収としてのクラウンエーテル使用、SA遠隔計測としてロボット取扱い、メルトダウン等を科目とする。
 人材育成のカリキュラムは5年かけた。

R2-3-8 R1 小原氏東工大人材育成.jpg
         図1 東工大の廃止措置工学人材育成

 デブリ材料工学やデブリ化学等を取扱う。
 ストレスも多いかもしれない、と説明した。

 質問で他の人が外国人の割合を聞いていて、10%程度と答えていた。
 また別の人はこのカリキュラムだと教員の負担が大変ではないか、と聞いていたが、答えは忘れた。

 (5)では「先進的光計測技術を駆使した炉内デブリ組成遠隔その場分析法の高度化研究」というタイトルで、JAEAの若井田氏が発表した。
 炉内デブリの光計測技術について述べる。
 京大とQSTとの共同研究である。
 福島第一(1F)の炉の推定をしようとしても、デブリの観測データは少ない。
 デブリ組成の分析はミューオン(宇宙線)やロボットによる計測がある。
 燃料デブリを炉内で直接測定することを目指した。
 泡を作り、プラズマ発光分析を使う。
 そのために光ファイバーを延長する。
 デブリの別称コリウムを見る。
 より高エネルギーのレーザーが必要で、5mJから50mJに性能を上げて、マイクロチップレーザーを炉内に入れる。
 別のプロジェクトImPACTで開発したユビキタスパワーレーザーを使う。
 直径20㎜で、ロングパルスレーザーとして100mJ/パルスの出力が可能になった。
 新規光ファイバーで石英管にフッ素Fをドープ(不純物添加)、次に水素H吸収を行った。
 マイクロチップレーザーの活用を図った。
 1000Gyまでin-situ実験(現場での実験)を行った。
 燃料デブリ取出し時のスクリーニングに使える、と説明した。

 (6)では「廃炉作業ロボット向け耐放射線組み込みシステムの開発」というタイトルで、静岡大学の渡邊氏が発表した。
 廃炉作業ロボット向けの耐放射線組み込みシステムについて述べる。
 光は放射線に強い。
 1,000Sv/h以上のものにも対応する。
 (筆者注:福島の原発内で高い放射線量のところで数Sv/hである。)
 1GGyの積算線量にも耐えられる。
 (筆者注:10億Gy、ガンマ線ならば1Gy=1Sv、1Sv/hのところに耐放射線機器を持っていくと、1年で約1万Svだから10万年使える)
 普通放射線の高いところに機器を持って行く時は遮へい(シールド)が必要で、鉛ブロックなどを付帯させる例が多い。
 しかし、このシステムはこうしたシールドは不要になる。
 故障があっても使い続けられるか。
 別の論理ブロックで補償するシステムにすればよい。
 62%のゲートアレイが壊れてもいい。
 その代わり、38%の構成回路が故障してはいけない。
 既存のFPGA(購入後自分でプログラムできる集積回路)では無理である。
 13チップの試験を行ってみたら、65krad(6.5MGy)で最初に構成回路が故障した。
 シリアル回路にすると無理と思い、並列構成にした。
 ホログラムメモリを用いて1.15Grad(115GGy)で、集積回路は故障したが、機能は維持した。
 フォトポリマーを使ったホログラムメモリーでは、耐放射線性が高く、600Mrad(0.6GGy)でもOKであった。
 レーザータイプは400Mrad(0.4GGy)が限度であった、と説明した。

 (7)では「凸型炉心形状による再臨界防止固有安全高速炉に関する研究開発」というタイトルで東京都市大学の高木氏が発表した。
 高速炉の固有安全性について述べる。
 固有安全とは、炉心溶融しても再臨界とならないことを言う。
 そのために内部ダクト(FAIDUS)概念を導入した。

R2-3-5 高木氏R2 FAIDUS概念その2 .jpg
         図2 FAIDUSの構造

 この概念は燃料内部にダクト空間を設けて、燃料が溶融した時に内部に留まらず、内部ダクトを通じて溶け出し、再臨界を防止するものである。
 燃料を凸型にして、出力分布の平坦化を図った。
 反応度は正になった。
 内側を細い燃料にし、反応度を下げられた。
 燃料の中に吸収体を封入した。
 (筆者注:制御棒にボロンカーバイドBC4、Hfを使うことがあり、これらは中性子吸収材として、反応度を抑制する制御棒として用いる。また、他に中性子吸収材としてガドリニウムGdもよく使われる。)
 軸芯燃料として中性子吸収材をサマリウムSm、ユーロピウムEu、ガドリニウムGd、ディスプロシウムDy等の中から酸化ガドリニウムGd2O3を採用した、と説明した。

 (8)では「幹細胞のキネティクスから発がんの線量率効果を紐解く」というタイトルで、QSTの今岡氏が発表した。
 (筆者注:がんにおいて、幹細胞の性質を持った少数のがん細胞からがんが発生する説がwikipedelia に載っていた。)
 発がんの線量率について述べる。
 この研究は電中研、長崎大学との共同研究である。
 高線量における発がんはよく知られている。
 低線量ではどうか。
 2つの人間の集団の片方にだけ放射線を当てて実験することは許されない。
 その穴を埋めるのが動物実験である。
 合計4Gyの照射を行った。
 しきい値によるが、細胞の突然変異により、がんになる。
 数十年という長い期間で細胞の増殖と死の競合が起こる。
 ラットの乳腺における発がんの状況を調べた、と説明した。

 (9)では「代理反応によるマイナーアクチノイド核分裂の即発中性子測定技術開発と中性子エネルギースペクトル評価」というタイトルで、JAEAの西尾氏が発表した。
 マイナーアクチノイド(MA)による核変換での即発中性子のことについて話す。
 (筆者注:マイナーアクチノイドMAは原発の使用済燃料を分離した時に発生する超ウラン元素で、アメリシウムAm-241は半減期400年と長いので、廃棄物処分上でやっかいな代物である。)
 15Mevまでの中性子を測定した。
 Am-241に中性子を照射する。
 中性子ビームはコントロールが難しい。
 その代わりに重イオン粒子を入射する。
 ネプツニウムNp-237に酸素O-18をぶつける。
 するとNp-239の複合核ができる。
 それが核分裂して2つの核分裂片と高速中性子ができる。
 Am-243にO-18をぶつけたものと2つの反応で50Mevまでの中性子データを測定できた。
 この実験は東海のタンデム加速器を使って行った。
 カリフォルニウムCfでは中性子が4個出る。
 動力学モデルを使って解析を行った。
 ランジュバン方程式が基礎となる、と説明した。

 私は質問で、なぜ酸素O-18を使ったのか(酸素OはO-16が天然核種で99%、O-18は0.2%で通常はあまり使わない)聞いた。
 O-16は励起状態(基底状態からエネルギーを加えて安定レベルから不安定レベルに変える。もう少しエネルギーを加えるとイオン化する直前の状態にある。)のエネルギーがダメ(おそらく大きなエネルギーを必要とする)だからである、とのことだった。

 ここで午前中のセッションは終わった。

 午後は13時15分から、セッション4として第2 会場(発表会場の2階から4階に移動)で50 課題(原子力システム事業18 件/英知結集事業32 件)の(10)ポスターセッションとなった。
 さすがに50件全部のポスターを1時間で見るのは無理なので、気に入ったポスター2、3件を見て回った。

 最初にプログラムを渡された時に、このポスターセッションのタイトルだけは資料に書かれていたので、それからピックアップしておいた。

 最初に東京大学の上坂氏の「可搬型加速器X 線源・中性子源によるその場燃料デブリ元素分析および地球統計学手法を用いた迅速な燃料デブリ性状分布の推定手法の開発」のところに行った。

R2-3-6 R1 橋の橋梁のX線検査 上坂氏.jpg
         図3 橋梁の劣化診断状況

 上坂氏は遺伝子の損傷の修復の可視化等の実験も行っている。
 今回はそれとは違うX線源の研究であり、このX線源を使って橋梁の劣化診断とかに使うと思っていたが、今回は燃料デブリへの応用としていた。
 私はこの技術をマンション等の耐震診断に使わないのか、と聞いた。
 可搬型X線源であれば手軽に持ち運びできて、X線のエネルギーを低く抑えると、法律的に届け出が必要な機器から除外される。
 簡単に応用が利くはずである。
 しかし上坂氏はおそらく建設大手のゼネコンがいい顔をしないだろう、と言った。
 それ以上は詳しく言わなかったが、おそらく大手のゼネコンがすべての建物に正常な手順で行うことはないかもしれないと思ったのである。
 阪神淡路大震災の時に高速道路の橋脚が横倒しになり、その中から手抜きではないかと思えるような木材片が出てきたように記憶している。
 だから、マンションの柱関係を人間の肺のX線みたいに透視すると、あちこちからボロがいっぱい出てくるのかな、と思った。

 でもこういう話をしていて、遺伝子の損傷の修復の可視化について話すのを忘れていた。

 また「放射線影響モデル動物を利用した生物影響解明のための多元的アプローチ」というタイトルの弘前大学の三浦氏のところに行った。
 生物ということで、何が焦点だったか今思い出せないが、午後発表の鈴木氏のマウスとサルの研究からすると、サルかマウスの研究だったかもしれない。
 また「ガンマ線画像スペクトル分光法による高放射線場環境の画像化による定量的放射能分布解析法」というタイトルの京大の谷森氏のところに行った。
 この研究はコンプトンカメラで放射線の可視化だったと思うが、内容は思い出せなかった。

 それに関心はあまりなかったが、「燃料デブリ取出し時における放射性核種飛散防止技術の開発」という東大の鈴木氏のところに行った。
 これは上記の京大の谷森氏の隣のポスターで、学生らしい人が暇そうにしていたので、つい声をかけてしまった。
 核種飛散というのは、福島原発だけでなく、どこでも使える技術で一般応用も考えた研究であるからしっかり研究して欲しい、と言っておいた。

 ここでポスターセッションは終了して元の席に戻ってしばらくしたら、次のセッションが始まった。

 (11)では「構造健全性評価の信頼性向上に向けた計算科学基盤の構築と破壊挙動の解明」というタイトルで、東京理科大学の高橋氏が発表するはずだったが、所用がある、とのことで、代理の塩谷氏が発表した。
 構造健全性の評価について述べる。
 この研究は構造材の脆化メカニズムを解明するためである。
 そのメカニズムを数値解析によって解析した。
 原子炉圧力容器は低合金鋼であり、照射による応力腐食割れが起きる。
 高経年劣化の問題である。
 この材料の健全性確保のために、延性-脆性の遷移について研究した。
 破壊靭性値を導き出す。
 転位は原子の移動が起こる現象である。
 亀裂先端の転位、転位の運動、転位を阻止する遮へい(放射線遮へいではない)、亀裂先端の応力などを調べた。
 転位の状態のバーガーズベクトル80ケースを調べ、混合転位の動力学モデリングについて検討した。
 キンク(表面欠陥)が伝播する。
 合金や不純物等で、Fe母材のCu等の積層欠陥のエネルギーを調べた。
 照射や熱の影響等について、大規模な解析の可視化が必要になる。
 炉のシステムに有限要素法FEMのミクロ/マクロ版が必要である、と説明した。

 (12)では「放射線誘起表面活性効果を用いた超臨界圧軽水冷却炉の基盤技術研究」というタイトルで、東京海洋大学の波津久氏が発表した。
 超臨界圧軽水冷却炉は第4世代原子炉(炉心損傷等を抑えた次世代原子炉)であるが、3.11後にストップしている。
 一方、RISAと呼ばれる現象があって、放射線によって材料表面が電気的な作用により、防食作用を起こすことが知られている。
 材料の電気特性や濡れ性等は沸騰現象が起きているところで問題となる性質である。
 SUS304を使い、350℃までの槽の中で実験を行った。
 SUS表面の不働態化やガンマ線照射による鋭敏な反応が起こった。
 XPS(X線光電子分光分析)により、クロムCr/Feを調べた。
 Crが高いと反応性が大きいので、亜臨界320℃での条件が必要になる、と説明した。

 (13)では「廃止措置のための格納容器・建屋等信頼性維持と廃棄物処理・処分に関する基盤研究および中核人材育成プログラム」というタイトルで、東北大学の原氏が発表する予定であったが、所用のようで、青木氏が発表した。
 東北大の人材育成について述べる。
 燃料デブリ、廃炉工学のプログラムを作って、全学横断で取り組んでいる。
 原子炉格納容器内部の塗膜下腐食において、Na2WO4等を添加して腐食の抑制が可能となった。
 また腐食モードのマッピングを作成した。
 コンクリート構造物の健全性では、コンクリート材に事前に圧力を加えると、弾性は落ちるがひずみは大丈夫、という結果を得た。
 非破壊検査ではEMATシステム(電磁超音波試験法)を使って、配管減肉モニタリングの手法を開発している。
 レーザー光のテラ領域のものを使って、コンクリートの中のひび割れを調査する方法を研究している。
 補修技術として可搬型コールドスプレーの小型化技術を開発している。
 また摩擦撹拌接合(FSW)技術を開発しており、水中のさび付いた鋼構造物の補修に使える。
 廃止措置(廃炉)リスクの分野では、燃料デブリの研究での模擬デブリを作製し、溶出挙動を研究している。
 市民との対話についても、一般市民との対話の実践を行っている。
 これらの研究プログラムを基に人材育成を図っている、と説明した。

 (14)では「汚染水処理で発生する合成ゼオライトとチタン酸塩のセメント固化体の核種封じ込め性能の理解とモデル化およびその処分システムの提案」というタイトルで、北海道大学の佐藤氏が発表した。
 合成ゼオライトのことについて述べる。
 ゼオライトは汚染水浄化の吸着剤である。
 Cs等が吸着しているので、安定した処分が必要になる。
 ジオポリマーの提案もある。
 (筆者注:セメントを使わないコンクリートで、ケイ酸アルミが主成分であり、世界で研究中。)
 セメント固化体やガラス固化体は米TMIで経験がある。
 ジオポリマーはこの2つの固化体の中間体である。
 ジオポリマーの溶出抑制を研究中である。
 アルミノシリケイトでセメントのCaOの代わりに苛性ソーダNaOHを使い、流動性をコントロールする。
 このジオポリマーの研究はオーストリアとイギリスが先進国である。
 ピット処分を仮定して、表面錯体モデルを考えた。
 ストロンチウムSrとセシウムCsはカリウムKとナトリウムNaと交換できる。
 ジオポリマーはpH13の強アルカリでアモルファス(非結晶)なので、長期間で結晶化して外部に出てくる可能性はないか確認している。
 熱力学データベースを整備して、ジオポリマーからの水素発生量の見積を行っている。
 これらのことから地下水シナリオでの安全評価を行っている、と説明した。

 私は質問で、酸性のところではどうか、と聞いた。
 どう答えられたかは覚えていない。
 しかし後で考えると、地層処分で地下1,000mのところでは地層はほとんどアルカリ性と聞いたことがあったように思うので、意味はなかったかもしれない。

 (15)では「汚染コンクリートの解体およびそこから生じる廃棄物の合理的処理・処分の検討」というタイトルで、北海道大学の小崎氏が発表した。
 汚染コンクリートの解体について述べる。
 コンクリートの汚染は時間と共に変化する。
 福島原発事故後の温度解析、拡散試験、収着試験、特性調査等を行った。
 福島の炉を模擬し、温度分布を測った。
 PCV(格納容器)下部で、200~2,000℃となる。
 コンクリートは350~500℃にさらされる。
 脱水や変質が起きる。
 セメント、モルタルを使い、ピアノ線を入れて、鉄筋コンクリートを模擬した。
 微細構造を評価するために、非破壊CT-XRDで分析した。
 亀裂が貫入して入っていく。
 エトリンカイトからカルサイトに変質する。
 拡散や収着の把握のために、アレニウスプロットを行うと、高温履歴で高い値を示した。
 粒径分布のシフトが起こり、大粒形のものが増える。
 活性化エネルギーでは、37kJであったものが加熱して16kJに下がる。
 自由水の動きも調べた。
 セシウムCs、ストロンチウムSrのセメント中の付着についても調べた。
 XAFs(X線吸収微細構造)分析で、Csのスペクトルは得られていない。
 セメントにCsやSrの含まれた高温水が接触した。
 CaCO3ができている。
 ウランUはよくくっつくが、CsやSrはつかないかもしれない。
 廃棄物管理シナリオを検討した。
 地上部分と地下部分に分けて考える必要がある。
 クリアランス(非汚染と認定される目安)がどんどん少なくなり、汚染が広がる可能性がある、と説明した。

 (16)では「廃棄物長期保管容器内に発生する可燃性ガスの濃度低減技術に関する研究開発」というタイトルで、長岡技術科学大学の高瀬氏が発表した。
 可燃性ガスは燃料デブリの取出しの際に発生する。
 (筆者注:放射線により水の分解で水素ガスが発生する。福島原発事故で1号機と3号機の建屋の爆発も原子炉内で発生した水素が建屋に蓄積したものが原因であり、これを踏まえて、事故時の建屋内の水素蓄積防止対策も考えられている。)
 デブリの貯蔵と保管時に容器内にある水分がデブリの放射線により分解して水素を発生する。
 水素濃度は4%以内に抑えると爆発はしない。
 気中構造アクセス工法で収納管にデブリを入れることが検討されている。
 輸送容器は220㎜径のもので、IRID(廃炉研究機構)の水切り実験ではデブリの10%くらいは水が入る、というのがワーストケースであった。
 容器の中に水素を封入し、無電力、自動稼働で水素再結合触媒(PAR)の性能を試験した。
 PARとして2種類の材料を試験した。
 一つはセラミック製ハニカムPARで、自動車業界で使用されており、コンパクトで空間性がよい。
 もう一つはアルミナ製粒状PARで、表面に水素Hを吸着するものである。
 ハニカムPARは6%H2で実験した。
 触媒の活性温度はハニカムで通常は常温~80℃であるが、今回は0℃である。
 放射光(Spring8)でメカニズムを分析した。
 触媒性能の最適化が必要となる。
 粒状PARは容器に投げ込むタイプである。
 容器内で反応して蒸気が出る。
 直径400×高さ900の模擬容器を作った。
 PARのパラメータを振って試験した。
 ハニカムPARと粒状PARの比較を行った、と説明した。

 私は質問で、PARの水素保持能力について質問したが、どういう答えだったか思い出せない。

 (17)では「福島原発事故による生物影響の解明に向けた学際共同研究」というタイトルで、東北大学の鈴木氏が発表した。
 生物影響という点での低線量初期被ばくについて述べる。
 野生のニホンザルは有害鳥獣ということで、相馬等にいたサルを使った。
 2013年より収集を開始した。
 昨年までに544頭のサルを捕獲した。
 筋肉にセシウムは蓄積していた。
 2,000Bq/kgで推移していたが、昨年は100bq/㎏まで低下した。
 浪江では昨年1万Bq/㎏のサルを捕獲した。
 肝臓は筋肉の4割のCsの蓄積であった。
 歯のESR分析(電子対分光)を行った。
 実物と解析コードPHITSの解析結果との比較を行った。
 PHITSで内部被ばく・外部被ばくの評価を行った。
 被ばく線量として7.9mGy~1.57Gyであった。
 PHITSの評価は実際のものに近いと思われる。
 生物影響の評価は骨髄で行う。
 白血球と血小板は放射線被ばくで減ってくる。
 Csの蓄積は筋肉である。
 被ばくしたサルのDNAを比較した。
 セシウムボール(セシウムCsが高濃度にあると言われる微粒子)は2つのタイプがある。
 タイプAは粒形小でタイプBは粒形大である。
 セシウムボールをサルの細胞に貼り付けた。
 DNAの二重鎖切断が観察された、と説明した。
 (筆者注:この研究は多くの点で誤解を招く可能性がある。まず野生のサルは食物摂取制限をしていないので、当然放射能の高い山菜等の食料を食べている。また、セシウムボールを細胞に貼り付け、というのも、実際にこのセシウムボールがいっぱいあるのではなく、ほんの微量が観察されているにすぎない。それを細胞に貼り付け、というのは、あたかもセシウムボールが福島にたくさんある、との誤解を与えてしまう。いくら科学的実験として考えられても風評被害を助長する研究として納得できないものである。)

 (18)では「ロボット制御技術を用いた廃棄物中放射性核種分析の自動前処理システムの開発」というタイトルで、JAEAの大澤氏が発表した。
 ロボットによる分析の前処理について述べる。
 分析に数百人くらいの多くの人数を必要とする。
 分析の効率化が必要である。
 アルカリ融解やマイクロ酸分解について検討した。
 Se-79(半減期30万年で地層処分での主要核種に一つ)の分析の前処理を検討した。
 自動化の基盤について確立する。
 ハードウェア設置ではレールに2台のロボットを置いた。
 これは多関節ロボットである。

R2-3-8 R1 ロボット前処理の状況.jpg
         図4 前処理ロボットの例

 システムを構成したが、シーケンサは使用していない。
 ラボビューとの親和性が大事である。
 制御プログラムは11個をラボビューで開発した。
 マイクロピペット操作等を考えて、湿式制御プログラム1つに統合した。
 自動アルカリ融解システムの開発も行っている。
 マッフル炉の扉の開閉等が難しい。
 ドアハンドルとマグネットを作った。
 マッフル炉を外部制御できるように改造した。
 パルス幅変調制御できるようにした。
 最初に苛性ソーダは潮解性があるので入れられない。
 自動マイクロ波酸分解システムを開発した。
 上部扉にドアハンドルをつけた。
 温度や圧力の監視を行う。
 自動湿式分離システムを開発した。
 頻繫に必要になるのが分注である。
 外部制御できるマイクロピペットがないので開発した。
 次にやっかいなのが真空ろ過である。
 ティーチングを三層構造にした。
 マシンビジョン(画像認識)も必要になる、と説明した。

 私は質問で分析にかかる時間はどのくらいか聞いたが、あいまいな答えだった気がする。
 他の人の質問で、ロボットの失敗やコスト等があったが、答えは覚えていない。

 (19)では「遠隔操作技術及び核種分析技術を基盤とする俯瞰的廃止措置人材育成」というタイトルで、東京大学の岡本氏が発表した。
 人材育成について述べる。
 他グループ(京大、東北大、福島大等)の連携が必要である。

R2-3-8R1 岡本氏 東大人材育成.jpg
         図5 東大の人材育成プログラム(遠隔操作と核種分析を軸に)

 廃炉のリスク管理や俯瞰的なリスク管理が必要になる。
 遠隔操作や核種分析を融合した人材育成を行う。
 オンサイト・オフサイト分析を行う。
 ガンマ線CT、遠隔操作サンプリング、オフサイト分析というように、ハヤブサ的な分析を行う。
 移動ロボットによるCTを行う。
 どこに汚染源があるか探索してそこにアクセスする。
 サンプリングしてロボットのツメでつかむ。
 それをガンマ線分析する。
 学生の教育は個別のテーマから俯瞰的な教育を行う。
 廃止措置特論講座は40名程度が受講し、英語による講義を行う。
 人材育成セミナーを行う。
 成果報告会を行う。
 国際サマースクールでは仏CEAや英セラフィールド等に行く。
 国内サマースクールではJAEAと協力して行う。
 進路としてはメーカーやJAEA等がある、と説明した。

 私は質問で、他大学との連携が難しそうだが、テレビ会議等はやっているのか聞いた。
 1か月に1回くらいのペースでテレビ会議を行っている、との答えだった。

 以上でこの成果報告会は終了した。

 朝から夕方まで延々9時間に亘っての発表で、さすがに疲れた。
 私も研究者であるから、時にこうした研究の雰囲気の中に身を置く必要性を感じていた。
 その意味では少しアカデミックな環境にいられたのはよかったと思う。

 しかし、この日の疲れはこれだけではなかった。
 帰りに東京駅から東西線に乗ろうとした時に東西線で人身事故が発生した、との放送があった。
 すぐに東京駅から出ているバスに乗ろうとしてバス停に行くと、そこには長蛇の列がすでにできていた。
 しばらく待って乗り込んだ。
 疲れていたので優先席に座ったが、バスはノロノロ運転で進まない。
 1時間以上かかって帰宅した。
 危機管理の面で、会場から自宅までのいろいろなルートを考えておかないといけないと反省した。

 研究という面では、今後もこうした発表会があれば参加したいと思う。

<令和元年度 原子力システム研究開発事業>
 英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業 成果報告会
 1.開催日:2020年(令和2年)1月28日(火) 9:00~18:10
 2.会場:CIVI研修センター秋葉原 D205ホール
 3.主催:公益財団法人 原子力安全研究協会
 4.プログラムのご案内
  9:00 文部科学省挨拶
  9:05 プログラムディレクター挨拶
    プログラムディレクター(PD)山名元(原子力損害賠償・廃炉等支援機構 理事長)

 (セッション1) 口頭発表(15 分発表/5 分質疑応答)
  9:15 (1)Multi-physics モデリングによるEx-Vessel 溶融物挙動理解の深化
     山路 哲史(早稲田大学)
  9:35 (2)原子力エレクトロニクス技術を活用した耐放射線半導体イメージセンサの開発
     田中 保宣(産業技術総合研究所)
  9:55 (3)高速パルス通電加熱による超高温核燃料物性測定技術の開発
     森本 恭一(日本原子力研究開発機構)

 (セッション2) 口頭発表(15 分発表/5 分質疑応答)
  10:20 (4)廃止措置工学高度人材育成と基盤研究の深化
      小原 徹(東京工業大学)
  10:40 (5) 先進的光計測技術を駆使した炉内デブリ組成遠隔その場分析法の高度化研究
      若井田 育夫(日本原子力研究開発機構)
  11:00 (6)廃炉作業ロボット向け耐放射線組み込みシステムの開発
      渡邊 実(静岡大学)

 (セッション3) 口頭発表(15 分発表/5 分質疑応答)
  11:25 (7)凸型炉心形状による再臨界防止固有安全高速炉に関する研究開発
      高木 直行(東京都市大学)
  11:45 (8)幹細胞のキネティクスから発がんの線量率効果を紐解く
      今岡 達也(量子科学技術研究開発機構)
  12:05 (9)代理反応によるマイナーアクチノイド核分裂の即発中性子測定技術開発と中性子エネルギースペクトル評価
      西尾 勝久(日本原子力研究開発機構)

-昼食・休憩-

 (セッション4) 第2 会場(D405)
  13:15 (10)ポスターセッション 50 課題(原シス事業18 件/英知事業32 件)

-休憩-

 (セッション5) 口頭発表(15 分発表/5 分質疑応答)
  14:25 (11)構造健全性評価の信頼性向上に向けた計算科学基盤の構築と破壊挙動の解明
       高橋 昭如(東京理科大学)
  14:45 (12)放射線誘起表面活性効果を用いた超臨界圧軽水冷却炉の基盤技術研究
       波津久 達也(東京海洋大学)
  15:05 (13)廃止措置のための格納容器・建屋等信頼性維持と廃棄物処理・処分に関する基盤研究および中核人材育成プログラム
       原 信義(東北大学)
-休憩-

 (セッション6) 口頭発表(15 分発表/5 分質疑応答)
  15:30 (14)汚染水処理で発生する合成ゼオライトとチタン酸塩のセメント固化体の核種封じ込め性能の理解とモデル化およびその処分システムの提案
      佐藤 努(北海道大学)
  15:50 (15)汚染コンクリートの解体およびそこから生じる廃棄物の合理的処理・処分の検討
      小崎 完(北海道大学)
  16:10 (16)廃棄物長期保管容器内に発生する可燃性ガスの濃度低減技術に関する研究開発
      高瀬 和之(長岡技術科学大学)

-休憩-

 (セッション7) 口頭発表(15 分発表/5 分質疑応答)
  16:35 (17)福島原発事故による生物影響の解明に向けた学際共同研究
       鈴木 正敏(東北大学)
  16:55 (18)ロボット制御技術を用いた廃棄物中放射性核種分析の自動前処理システムの開発
       大澤 崇人(日本原子力研究開発機構)
  17:15 (19)遠隔操作技術及び核種分析技術を基盤とする俯瞰的廃止措置人材育成
       岡本 孝司(東京大学)

-休憩-

  17:40 まとめ・閉会

【注】口頭発表については、原子力システム研究開発事業及び英知を結集した原子力科学技術・人材育成事業の研究課題のうち、平成30 年度に終了した課題が対象となっております。
 -以上-

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