台風19号シンポに参加(後編)

 台風19号シンポ(2019/12/24(火))に参加した。

 このシンポジウムの案内は2019年11月15日(金)の防災学術連携体(土木・建築・原子力等57学会の連合体)のニュースレターにあった。
 このシンポに参加すると、多分台風19号の被害の全貌とまではいかなくても、何が問題だったかくらいはわかるかな、くらいの気持ちで参加した。
 しかし、このシンポジウムは5時間で26件の発表である。
 1件の発表10分で、はたして理解できるか、との思いもあったが、何とか最後まで聞いていた。
 当然質疑応答もなく、とにかく発表者が次から次へと、という感じであった。
 プログラムを末尾に添付する。

 なおこの発表26件は一度にまとめが難しいので、2週に分けて前編13個、後編13個の発表を書く。

 なお、ちょっと頭の整理のつもりで、台風と地震の比較を簡単にしておく。
 大雑把なものであるから、そのつもりで見て欲しい。

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         図19 台風と地震の比較

 また、この台風19号シンポの発表の項目分けとして、以下のようなメモ書きを残しておく。

 台風災害予防:(1)気象予報、(2)ダム、(14)避難、(22)洪水予測、(25)地質学、(26)地理学
 発災時の項目:(5)強風、(6)丸森町被害、(7)長野市被害、(8)多摩川被害、(9)土砂災害、(10)農業被害、(11)住宅被害、(13)堤防決壊
  (15)ツイッター利用、(17)災害医療、(18)災害時看護、(19)在宅看護、(20)災害ボランティア、(21)災害廃棄物

 今回は後編を書く。(NO.14より)

 休憩をはさんで、セッション3の<災害発生時の対応>に入った。

 ここで、スケジュールの都合とかで、急遽(21)の浅利女史が順番を早くして発表した。

 (21)では「災害廃棄物問題の特徴と対応」というタイトルで、廃棄物資源循環学会の浅利女史が発表した。
 災害廃棄物は日頃の廃棄物と質と量でまったく異なるものである。

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         図20 災害廃棄物の概要

 ステークホルダー(利害関係者)との連携が欠かせない。
 また通常の体制とは違う体制となる。
 災害廃棄物は被災家屋から分別・排出され、一次仮置場に運ばれる。
 ここでも再度分別が行われ、再利用されるか、二次仮置場または焼却炉で焼却等行い、最終処分または中間処理施設で破砕や焼却が行われ、埋設等による最終処分がなされる。

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         図21 災害廃棄物の処理概要

 間に自衛隊が入ることもある。
 被災自治体の計画の側面支援を行う。
 災害廃棄物は各々数10万トンレベルである。
 東日本大震災の時は津波廃棄物が多かった。
 仮置場の確保が大変である。
 台風19号は10月12日ピークであった。
 10月下旬までに仮置場を設置し、11月下旬までに撤去を進めた。
 12月下旬までにすべての撤去完了の予定で災害廃棄物の処理を進めている。
 台風19号の特徴として、広域であり、地区ブロックを立ち上げた。
 ただ地域ブロックをまたぐ事例もあった。
 地域ブロックの行動計画がうまくいったりいかなかったりした。
 宮城県の麦わら廃棄物の処理の方針が自治体の取組に温度差があり、また市民が勝手に置いていくこともあったりした。
 環境省からも多くのリエゾン(災害対策現地情報連絡員)が派遣されたりした。
 学会としては、災害廃棄物交流セミナー等で、九州での豪雨被災のノウハウ等経験者が支援を行ったりした。
 しかし全国の自治体の廃棄物担当の人は1、2名と少ない、と説明した。

 (14)では、「台風19号災害における宮城県内の避難行動」というタイトルで、地域安全学会の佐藤氏が発表した。
 宮城県内の避難について話す。
 丸森町で10名が亡くなった。
 避難行動のポジティブな報告もあった。
 吉田川(仙台の北の方、大崎市鹿島台、大郷町)近辺では死者ゼロであった。
 どこに避難したか。
 水平避難で、吉田川近辺では早い段階で自宅ではない安全な場所に避難した。
 吉田川近辺の住民は避難への立ち上がりが早かった。
 避難準備段階で、まだ日が明るいうちに避難した。
 越水までに大半が避難した。
 なぜ早く逃げたか。
 洪水や土砂災害があると思っていたか。
 避難場所を決めていたか。
 昭和のカスリーン台風等あり、大崎の住民はきちんと認識していた。

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         図22 災害リスクの伝承の状況

 中粕川の避難行動を調査した。

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         図23 中粕川の自主防災の取組

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         図24 中粕川の避難行動状況

 区内の責任者を集めた。
 逃げるか、逃げないか。
 役場も消防も全員撤退していた。
 撤退ラインを予め決めていた。
 吉田川はどこかで切れる。
 台風の話をよく聞いていた。
 あっちが切れたら、こっちも切れる。
 河川も基準水位をdボタン(筆者注:テレビの地デジの新サービスで天気等の情報を地域毎に表示)で自分で確認する。
 いい、悪い、を繰り返してきた。
 氾濫リテラシー(合理的な判断)が高い。
 役場は個別に行政無線機をつけている。
 鹿島台の老人福祉施設では当日の昼11時に避難準備している。
 以前岩手の老人福祉施設で水害被災したことを覚えていた。
 トラクターを堤防の上に上げる。
 要配慮者には避難の呼びかけを行った。
 水害慣れしている。
 屋根の上で救助を待つ等災害のリスクをよく知っている、と説明した。

 (15)では「長野県防災Twitterによる救助要請の実態」というタイトルで、日本災害情報学会の秦氏が発表した。
 ツイッターで「必ず助けます」と送った。

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         図25 ツイッターによる呼びかけの例

 先行研究では効果は限定的と言われている。
 2019年1月から毎日1ツイート開始した。
 フォロワー数は当初6,500人だったが、台風19号後に24,000人に増加した。
 その後もフォロワー数は増えている。
 最初は情報提供のみだったが、救助の要請が被災者から入ってきた。

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         図26 ツイッターによる救助要請の例

 救助要請に応じて自衛隊等が救助に向かい、救助された人はアカウントを削除した。(要救助の人と区別するため。)
 ハッシュタグ千曲川(#台風19号長野県被害 #千曲川)と書いておくと、それを長野県の危機管理部の2名が拾っていくスタイルであった。

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         図27 ツイッターによる救助処理フロー

 情報発信の核は2名で、2人は火山担当だった。
 彼らは日々情報発信していた。
 彼らは活動調整担当(自衛隊、警察、消防の総合調整)と情報を共有していた。
 救助内容を確認した。
 事前の想定はしていなかった。
 個別のリプライ(返答)は行わなかった。
 今回だけは特別であった。
 上司の許可を取っていない。
 担当者の判断であった。
 救助要請者への励ましが大きかった。
 未救助の救助要請は残ったので、それを見ていけばよい。
 救助要請は110番か119番が基本であるが、今回のツイッターはその補完である。
 このツイッターが有効に機能した背景には、SNSの担当者のリテラシー(正しい理解・解釈の能力)が高いことがあった。
 組織風土として、上司の現場への判断一任という信頼感が醸成されていた、と説明した。

 (16)では「地図・地理空間情報の活用」というタイトルで、日本地図学会の中島氏が発表した。
 地図情報について説明する。
 防災には地図が重要になる。
 発災時の対応としては、被害範囲の推定がまず肝心である。

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         図28 災害マネージメントのサイクル  

 被災状況を把握するために、空中写真が活用される。
 この空中写真の撮影にはTEC-FORCEの活動がある。

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         図29 TEC-FORCEによる活動

 このTEC-FORCEの活動は測量用航空機とUAV(ドローン)による撮影を行う。
 国土地理院では被災地の被害状況把握に動く。
 ドローンを飛ばす。
 撮影のためには自治体等との協定を結ぶ。
 得た情報は1日くらいで情報公開する。
 速報版は伝達に時間があまりかからないようにする。
 映像には座標をきちんと与える。
 関係機関への情報提供を行う。

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         図30 自治体への情報提供の状況

 Web上にもアップする。
  (筆者注:電子国土Webというものらしい。)
 浸水前後のデータ比較を行って、浸水推定図を作る。

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         図31 都幾川の浸水前後の状況

 千曲川での10/13の状況を示す。
 SNS等も利用して、映像データの活用を行っている、と説明した。

 (17)では「台風19号における災害医療対応」というタイトルで、日本災害医学会の近藤氏が発表した。
 災害医療について話す。
 昨年の豪雨災害(西日本豪雨)、北海道胆振東部地震では優先順位のリスト作りができなかった。
 今年9月の台風15号では、停電対応をまず行った。
 災害派遣医療チーム(DMAT)は関東ブロック管内から千葉県DMAT53隊、千葉県外派遣50隊で活動した。

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         図32 DMATの概要

 また、DMATロジスティックチーム(物資補給等の後方支援)も59名参加した。
 病院避難したのは2病院209名で、通電状況や水の情報把握をまず行った。
 復旧優先順位リストを基に活動した。
 自家発電のあるなし等の電力確保スキームに従った。
 給水スキームに従い、給水車か水タンクが準備された。

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         図33 電力確保のスキーム

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         図34 給水確保のスキーム

 東千葉メディカルセンターは災害拠点病院で、広域災害救急医療システムEMIS(厚生労働省管轄)の情報により、物資支援を行った。
 復電の連絡が遅かった。
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         図35 EMISの概要

 台風19号の時には、東北、関東、中部ブロック管内から260隊が動員された。
 三重県から岩手県までの16県の対応が必要だった。
 長野県では病院施設の搬送支援等を行った。
 県立リハビリテーションセンターは浸水、停電のため避難支援した。
 福島県では谷病院の1階が浸水し、インフラが喪失していたので、ボートで進入し、透析患者等を搬送した。
 自衛隊を呼んで、籠城状態の活動を支援してもらった。
 宮城県では仙南病院の一部避難や丸森病院の避難等に尽力した。
 非常に広範囲な災害であったが、DMAT、DMATロジチームは迅速な活動ができた、と説明した。

 (18)では「災害時の健康リスクと生活支援・看護ニーズ」というタイトルで、日本災害看護学会の小原女史が発表した。
 災害時の看護のことを話す。
 長野県を主に話す。
 看護学会の先遣隊は災害3日後には被災地に入っていた。
 学会は長野、千葉、栃木、福島、宮城の5県に先遣隊を派遣した。
 長野県では現地の大学と連携した。
 避難所の小学校に行った。
 長野市の保健所等と避難後の健康相談を行った。
 豊野西小学校を活動拠点とした。
 昼間は自宅に戻り、夜間は看護が必要であった。
 清泉チームの構成はコーディネーター、リーダー、現地ナースのラインで、急性期の訴えや聾唖(しゃべれないので筆談等)の人の対応を行った。

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         図36 清泉チームの概要

 血圧を測る等で看護者のアセスメントがあった。
 自宅の人は何とか帰ることができるが、アパートの人は仮設住宅を待つような状況であった。
 コミュニティの再編成が行われる。
 浸水により上下水道が使えないことが大きい不便である。
 物資対応にも困難が多かった。
 手洗いができない等の衛生面での心配もあった。
 自宅避難者の困難の訴えが上がってこない。
 医師の常駐は早めに撤退した。
 支援周辺の課題が多かった。
 情報の処理も困難が多かった。
 どれが一番緊急性が高いのか。
 ボランティアが入ってきて、段ボールのベッドの配達や組立が行われた。
 仮設住宅を望むかという聞き取りが行われた。
 被災者の健康状態の一元化が望まれる。
 コンテナ(鍵付き)の活用が必要である。
 人の命、健康を守る。
 最も弱いところをカバーする。
 避難所ベッドマップを作った。

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         図37 避難所ベッドマップ

 他部署との連携が必要、と説明した。

 (19)では「台風15・19号報告-在宅看護と救急看護の取組-」というタイトルで、日本救急看護学会の箱崎女史が発表した。
 在宅看護の話をする。
 在宅医療もある。
 千葉市の在宅医療の仕組がない。
 東京のベッドタウンの緑区や若葉区の被災が多かった。
 倒木で孤立したり、停電が長引いたりした。
 11月の会議では台風15号の報告を行った。
 訪問看護ステーション同士の連携があった。
 在宅介護は3万人いる。
 在宅医療、介護連携センター、訪問ステーション等がある。
 在宅介護では暖房が大事なのだが、停電の影響は大きい。
 ガソリンもない。
 利用者の安否確認ができない。
 夫婦で認知症になった人は本人たちの救護要請ができない。
 市から救急車を出してもらった。
 一人暮らしの利用者は車いすである。
 介護サービス利用者は3万人から4万人に増えている。
 地域包括ケアシステムで老人を閉じ込めないことが必要である。
 QOL(生活の質の改善)が大事だが、台風はそれを困難にする、と説明した。

 (20)では「台風19号における災害ボランティアの活動」というタイトルで、日本災害復興学会の所澤氏と稲垣氏が発表した。
 災害ボランティアの活動について説明する。
 災害で親しい人が亡くなったり、果樹園を失ったりする。
 復興感、喪失感を補うのは人との出会いである。
 第二期まち・ひと・しごと総合戦略の中で、関係人口というのはボランティアに結び付く。
 人は災害疲れしているのかもしれない。
 昨年の西日本豪雨では義援金約200億円、今年の台風19号で約20億円である。
 ボランティアセンターの設置が今年は約100件、昨年の豪雨は約50件であった。
 活動人数では今年の台風15号、19号で約21万人、昨年の豪雨で約18万人でほぼ同数であったが、今年は広域にわたったために、各地でボランティアが少ないと思われた。

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         図38 ボランティアセンターの設置状況

 被災地連携によるボランティア活動を行った。
 ボランティアの裾野を広げないといけない。
 ボランティアバスを出した。
 ボランティアに行った長岡市内で子どもが募金活動を行っていた。
 漂着物の山がある。
 人手が足りないが、募金ならできる。
 何かやりたいと思う人は多くいる。
 そこをサポートする仕組が足りない。
 福島県いわき市に行った。
 ボランティア参加の環境整備を行った。
 自治体による交通費補助があった。
 これは兵庫県の例があり、長野県もこれを見習った。
 大学生が少ないのは休みが取れないこともある。
 特例の出席扱いにしてもらった。
 企業のボランティア休暇制度はまだない。
 NPOは現場の声を拾う。
 膨大な廃棄物が出る。
 自衛隊の出動も必要になる。
 個別の自治体の知恵の統合が必要、と説明した。

 次にセッション4の<災害対応と今後の対策>のセッションになった。

 (21)の災害廃棄物の浅利女史の発表は前述した。

 (22)では「Today's Earthシステムによる台風19号の洪水予測」というタイトルで、水文・水資源学会の芳村氏が発表した。
 各国の災害予測があった。
 降雨の珍しさ(何年に1度)があった。
 Today's Earth(以下TE)システムによる洪水リスク予測を行った。
 気象概況、気象予報より24時間積算降水量分布を解析した。
 箱根は約1,000㎜であった。
 降雨の珍しさの情報は確率年で表した。
 千曲川流域では178㎜/日で、これは確率年でいうと300年であった。
 多摩川は459㎜/日で、860年、阿武隈川は262㎜/日で、530年であった。
 TE-JapanとTE-Globalで、前者は単一流域から日本全国、後者は全地球規模での世界の大河川から市町村サイズの河川までの洪水を予測するシステムである。

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         図39 TE-JAPAN等の構成概要

 目標としては、天気予報の洪水版を目指している。
 2日前から河川はどうなるかを予測していた。
 台風で壊れる河川は血管みたいなものである。
 その河川氾濫のリスクを計算した。
 10月12日23時時点での結果を予測し、実測との比較を行った。
 57地点中54地点で予測と実測が一致していた。
 残る3地点のうち、2地点はデータが不足していた。
 1地点は見逃しであった。
 
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         図40 被害地点での予測と実際の比較

 気象庁のデータを基に計算した結果である。
 水文予測に関する世界的な動向としては、WMO(世界気象機関)がHydroSOSというシステムを2020年6月頃に公開予定である。
 週1回更新、30日予測という形であり、TEシステムも採用される予定、と説明した。

 (23)では「広域水害と台風19号の被害」というタイトルで、土木学会の中村氏が発表した。
 東日本を中心に広域水害が発生した。
 1947年にカスリーン台風があったが、今回の台風19号は長期的な歴史でみてどうだっかか。
 被害の時系列でみると、昨年の西日本豪雨は2か月で被害報告はほぼ100%であったが、今回の台風19号はそれより長い期間での報告になっている。
 過去120年間の水害事例287件のうち、今回の台風19号は建物の被害数で51位である。
 このうち、全半壊の順位は8位であり、昨年の西日本豪雨は18位であった。

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         図41 過去水害被害の大きいもののリスト

 昨年の西日本豪雨の被害額は1兆円に上るが、今回はそれを上回るとみられている。
 千曲川は洪水が繰り返された。
 戦後の開発が進んだ。
 長野県穂保地区と倉敷市真備町の浸水と氾濫は同規模だった。
 倉敷の浸水は2mで1千棟の被害があった。
 市街化区域とハザードマップが重なる。
 ハザードを考慮していなかった。
 浸水ハザードの規模に応じた土地利用の規制を進める必要がある、と説明した。

 (24)では「風水害犠牲者の発生状況調査」というタイトルで、日本自然災害学会の牛山氏が発表した。
 風水害の人的被害について述べる。
 1999年から2018年までの死者・行方不明者の数は1,259人であった。
 このうち半数は土砂災害であった。
 今回の台風19号及び10月25日の大雨による死者・行方不明者は101人であった。
 これは洪水によるものである。
 家屋の損壊の割には犠牲者が少なかった。
 犠牲者は広い範囲にわたった。
 犠牲者のうちでは高齢者が多かった。
 亡くなった場所では今回は屋外が多かった。
 車の移動中の死が多かった。
 洪水での屋内の犠牲者は平屋で10人、2階建てで11人亡くなっている。
 全員が1階で見つかっている。
 浸水深3m未満で15人亡くなっている。
 避難行動は同じようであった。
 犠牲者の数はハザードマップから推定できた。
 例年通りだと土砂災害による犠牲者が多かったが、今回は違う。
 丸森町で起きた災害は地形分類情報を活用できていれば防げた可能性がある、と説明した。

 (25)では「台風19号災害の発生状況についての応用地質学的考察」というタイトルで、日本応用地質学会の向山氏が発表した。
 斜面災害と浸水災害について述べる。
 日本応用地質学会では32名で調査団を組織し、調査した。
 調査地域は福島、宮城、神奈川等である。
 宮城県丸森町は花崗岩地域であり、圧砕花崗岩、玄武岩等がある。
 岩質により被害が異なる。
 宮城県鳴瀬川水系吉田川の浸水調査を行った。
 干拓した農地と言う意味で、この吉田川は倉敷真備での小田川と似ている。
 吉田川は鳴瀬川より勾配が緩い。
 吉田川破堤地点では高さが足りなかった。
 流速が1m/sの水流であった。
 長野県千曲川については遷緩衝点(水面勾配の不連続点)付近で越水が発生していた。
 千曲川堤防の破堤付近の鳥瞰図を作成した。
 浸水災害はインフラ施設の更新過程で取り残された土地環境不適合箇所で発生している、と説明した。

 (26)では「台風19号の経験から何を学ぶか-地理学ならではの視点」というタイトルで、日本地理学会の宇根氏が発表した。
 地理学の点から述べる。
 災害は自然の営みと人間の営みの接点で起きる。
 地域に根差した研究者が調査を迅速に行った。
 空中写真等を使って、緊急調査報告会を数日前に行ったばかりである。
 多摩川は蛇行河川である。
 太子町は多摩川の支流にあり、浸水しやすかった。
 明治23年の大洪水を記録した碑が残っている。
 久慈川は水害防備林が良く機能している。
 千曲川の氾濫は内水氾濫と溢水である。
 埼玉県の都幾川は堤防強化していたが、未完成区間で破堤した。
 同時多発的に災害発生した時に田中氏がドローンを飛ばしてデータ収集し、データを市に渡した。
 栃木県の永野川は本流は浸水想定されていたが、上流側で破堤した。
 丸森町は斜面崩壊が起こった。
 福島県の本宮市はほとんど浸水した。
 再開率は11月調査で37%で、12月調査で61%である。
 郡山工業団地は企業誘致したところであるが、浸水被害が大きかった。
 居住誘導を目指したコンパクトシティが浸水した。
 今後は浸水想定に頼らない地形情報の提供、中小河川の情報整備が課題である、と説明した。

 以上でこの台風19号に関連したシンポジウムは終わった。

 情報が多くありすぎて、頭の中をなかなか整理できていないが、こうした情報を多く集めていく中で、何が重要な情報かを精査していくようになればいいと思う。

 なお、ここで防災学術連携体の構成を示しておく。
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         図42 防災学術連携体の構成

 多くの学会が連携して防災に取り組むのはよいことである。
 しかし、統一した行動を取れるようにするには、綿密な戦略が必要になるが、それができるかにかかっている。
 今後もこのグループの活動を見ていきたいと思う。

<日本学術会議公開シンポジウム>
「令和元年 台風第19号に関する緊急報告会」
1.日時:2019年(令和元年)12月24日(火) 13:00~17:55
2.会場:日本学術会議講堂、常翔ホールにて同時中継(大阪工業大学梅田キャンパスOIT梅田タワー)
3.主催:日本学術会議 防災減災学術連携委員会 土木工学・建築学委員会  防災学術連携体
4.プログラム
 司会  日本学術会議連携会員 依田照彦、永野正行
13:00 開会挨拶 日本学術会議 防災減災学術連携委員長  米田雅子
13:02 来賓挨拶 内閣府 政策統括官(防災担当) 青柳一郎
13:05 趣旨説明 日本学術会議会員、東京大学名誉教授 小池俊雄

13:15-17:50 緊急報告(各発表は10分、交替時間含む)
13:15-14:05 <セッション1:気象と風水害の概要>
 (1)台風19号の特徴と豪雨発生の気象状況 日本気象学会 竹見哲也
 (2)ダムの効果、異常洪水時防災操作と事前放流の課題 ダム工学会 角哲也
 (3)『令和元年台風19号豪雨災害調査団』速報 土木学会 清水義彦
 (4)被災直後の被災状況把握 日本リモートセンシング学会 伊東明彦
 (5)台風15号・19号による強風被害 日本風工学会 松井正宏

14:05-15:25 <セッション2:被害状況と課題>
 (6)台風19号による丸森町の現地調査報告 日本自然災害学会 柴山明寛
 (7)台風19号による長野市における洪水災害と課題 日本自然災害学会 山本晴彦
 (8)多摩川川崎における緊急調査結果 日本第四紀学会 小森次郎
 (9)台風19号等によって発生した土砂災害 砂防学会 執印康裕
 (10)農地・農業用施設被害の状況と課題 農業農村工学会 小泉健
 (11)洪水による住宅被害の実態と学術的課題 日本建築学会 西嶋一欽
 (12)台風19号における河川氾濫と建築物の被災 日本学術会議 田村和夫
 (13)河川堤防の浸食・破堤、斜面災害 地盤工学会 岡村未対

15:25-15:40  休 憩

15:40―17:00 <セッション3:災害発生時の対応>
 (14)台風19号災害における宮城県内の避難行動 地域安全学会 佐藤翔輔
 (15)長野県防災Twitterによる救助要請の実態 日本災害情報学会 秦康範
 (16)地図・地理空間情報の活用 日本地図学会 中島秀敏
 (17)台風19号における災害医療対応 日本災害医学会 近藤久禎
 (18)災害時の健康リスクと生活支援・看護ニーズ 日本災害看護学会 小原真理子
 (19)台風15・19号報告-在宅看護と救急看護の取組- 日本救急看護学会 箱崎恵理
 (20)台風19号における災害ボランティアの活動 日本災害復興学会 所澤信一郎、稲垣文彦
 (21)災害廃棄物問題の特徴と対応 廃棄物資源循環学会 浅利美鈴

17:00-17:50 <セッション4:災害対応と今後の対策>
 (22) Today's Earthシステムによる台風19号の洪水予測 水文・水資源学会 芳村圭
 (23)広域水害と台風19号の被害 土木学会 中村晋一郎
 (24)風水害犠牲者の発生状況調査 日本自然災害学会 牛山素行
 (25)台風19号災害の発生状況についての応用地質学的考察 日本応用地質学会 向山栄
 (26)台風19号の経験から何を学ぶか-地理学ならではの視点 日本地理学会 宇根寛

17:50 閉会挨拶 防災学術連携体代表幹事 日本建築学会前会長 古谷誠章
17:55 閉会

5.趣旨
 10月12日に大型で強い勢力で伊豆半島に上陸した台風第19号 は、広い範囲にわたり記録的な大雨をもたらした。
 静岡県、神奈 川県、東京都、埼玉県、群馬県、山梨県、長野県、茨城県、栃木県、 新潟県、福島県、宮城県、岩手県の13都県に大雨特別警報が発表され、10日からの総雨量は神奈川県箱根で1000ミリに達し、17地点で500ミリを超えた。
 10月16日時点で、68河川125か所で堤防が決壊し、16都県の、 のべ262河川で越水等による氾濫が発生し、2万棟以上の住宅が浸水し、77名の死亡が確認されている。
 なお、被害の全容はまだ把握されておらず、台風後の大雨により、被害はさらに拡大した。
 政府は激甚災害、特定非常災害、大規模災害復興法の非常災害の適用を行った。
 防災学術連携体(57学会)はホームページに台風第19号の ページを開設し、学会の調査情報、国土交通省・気象庁などの最新情報を掲載し、関係者間の情報共有に努めている。
 日本学術会議と防災学術連携体は、被害の拡大を防ぎ、地球 温暖化と共に激化する気象災害の軽減に取り組むため緊急報告会を開催する。
 台風第19号に関する学会の調査結果を共有し、 学会間の情報交流を進め、今後の対策を総合的に検討する。
    -以上-

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