台風19号シンポに参加(前編)

 昨年暮れに台風19号シンポ(2019/12/24(火))に参加した。

 このシンポジウムは2019年11月15日(金)の防災学術連携体(土木・建築・原子力等57学会の連合体)のニュースレターに案内があって、すぐに申込をした。

 台風19号は日本の東北地方を中心に関東や信州方面まで大きな被害を出した。
 でもどういうことがこの台風19号の問題点だったかと考えると、ちょっと理解不足なところがあった。
 そこで、このシンポに参加すると、多分台風19号の被害の全貌とまではいかなくても何が問題だったかくらいはわかるかな、くらいの軽い気持ちで参加した。

 しかし、よく考えてみると、このシンポジウムは5時間で26件の発表である。
 1件10分の発表で、はたして理解できるか、との思いもあったが、何とか最後まで聞いていた。
 当然質疑応答もなく、とにかく発表者が次から次へと、という感じであった。
 プログラムを末尾に添付する。

 なおこの発表26件については、学問的に私にはわからない用語も頻出して、一度にまとめが難しいので、2週に分けて前編13個、後編13個の発表を書く。
 わからない用語はネット検索しながら、ゆっくりまとめるという状況である。
 まず前編である。

 最初に開会挨拶ということで、日本学術会議の防災減災学術連携委員長の米田女史が行った。
 米田女史は防災学術連携体の代表幹事でもある。
 10月12日の台風19号は300の河川が決壊して、土砂災害は900棟となった。
 昨年の西日本豪雨といい、自然災害が身近に感じられだした。
 このシンポは日本学術会議講堂で開催されているが、関西の大阪工大・梅田キャンパスでも同時中継されている。
 東京で500名、大阪で400名の参加申し込みがあった。
 東京の方は満席で、入りきれない時には2階の席も用意している。

 続いて内閣府の青柳氏があいさつするはずだったが、遅れている、とのことで、途中あいさつ(15:25頃)となった。
 台風15号は災害に不慣れな自治体を襲った。
 台風19号は先週ワーキングショップ(WS)を立ち上げた。
 住民主体での改善策について来年3月を目途にまとめたい、と説明した。

 趣旨説明は東京大学名誉教授の小池氏が行った。
 台風19号は広範囲な被害が発生した。
 600~1,000㎜の雨が降り、被害は東日本全体に亘った。
 (筆者注: 1㎞四方に100㎜の降雨が均等に降ったと仮定すると、100㎜×0.1cm/㎜×1㎞×1㎞×10万cm/km×10万cm/km=1千億cm3=1千億cc=10万トン、1,000mmの降雨は100万トンの雨となる。)
 死者102名、住宅は28,000棟が被災した。
 堤防決壊が国管理で14カ所、都道府県管理のものが128カ所に上った。
 土砂災害は1,000カ所に上った。
 昨年の西日本豪雨と比較すると、西日本より短期間での豪雨であった。
 日本全国すべてで豪雨が発生している。
 堤防決壊が多いのも特徴である。
 土砂災害は少なく見える。
 でも元々東日本は土砂災害が少なかった。
 自助・共助の増強が不可欠である。
 内閣府の防災組織がある。
 全国の自治体や住民等でも防災組織がある。
 これらをつなぐファッリテータ(コーディネーター的な人・組織)が今までなかった。
 これからはこのファシリテータが重要な役目を負う。
 ファシリテータが地域と国をつなぐと結果として、国土の強靭化につながる。
 ファシリテータには統合的な知が必要になる。
 国際社会もそれに協力していく。

 本日は22学会26人の発表がある。
 4つのセッション、気象と風水害の概要、被害状況と課題、災害発生時の対応、災害対応と今後の対策、についての調査結果を報告する。
 今日の参加者にはぜひこのファシリテータになって欲しい、と説明した。

 最初のセッション1は<気象と風水害の概要>で、5件の発表があった。

 (1)では「台風19号の特徴と豪雨発生の気象状況」というタイトルで、日本気象学会の竹見氏が発表した。
 台風15号(2019年9月襲来)と台風19号(2019年10月)の研究をしている。
 豪雨が最近頻発している。
 気象学会で特別号の企画を出した。
 台風19号の特徴としては、915hPaという低気圧の大型台風である。

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         図1 台風19号の概要

 12時間雨量と24時間雨量が顕著に増加している。

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         図2 24時間降雨量の分布

 箱根で900㎜/日の全国記録を更新した。
 10/12の24時間雨量が千曲川や荒川等で多く、100年に1度くらいの量となった。
 台風中心で100㎜くらいで、西日本豪雨の時は70㎜くらいであった。
 広域で70~80㎜くらいで、降水雲が活発である。
 海老名レーダーで層状性降水と対流性降水が観測され、層状性が90%を占めた。
 低い雲が継続していることを気象レーダーで観測した。
 エコー頭高度(降水雲)は高度5㎞以下で密集しており、氷ができるよりも降水となる。
 大気と海洋の相互干渉で水蒸気の運ばれ方が決まる。
 可降水量は海上から水を供給する。
 箱根でのグラフは24時間に集中していた。
 水蒸気量をGPS等で測った。
 非対称な降水分布を数値シミュレーションで解析した。
 台風の中心で高温域、台風の北側で降水が大きいことがわかった。
 この他、千葉県市原で竜巻が発生した。

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         図3 千葉県市原市の竜巻被害

 竜巻の発生メカニズムはまだよくわかっていない、と説明した。

 (2)では「ダムの効果、異常洪水時防災操作と事前放流の課題」というタイトルで、ダム工学会の角氏が発表した。
 ダムには降水調節機能がある。
 その効果を西日本豪雨と台風19号と比較した。
 異常洪水時防災操作として事前放流がある。
 改善方策を探っている。
 これはSIP(戦略的イノベーション創造プログラム:内閣府)としても、アンサンブル降水予測、最適事前放流、ダム統合管理として、検討された。

 ダムには治水と利水、発電等の関係がある。
 台風19号におけるダムの洪水調節機能では、洪水調節容量の6割以上を貯留したダムが西日本豪雨に比べて多かったのに、異常洪水時防災操作に移行したダムは少なかった。

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         図4 ダムの洪水調節状況

 相模川直近に城山ダムが位置していた。
 大量の降雨500~700㎜が発生していた。
 このダムは利水の用途が大きい。
 水を溜めないといけない時期がある。
 城山ダムは数10㎜の雨を溜める容量しかないので、予備放流をする。
 支流の宮ケ瀬ダムは容量が多いが、500万トンを事前放流した。
 これらの操作で、下流の相模大橋でピークを4時間遅らせた。
 この日は午前に検討会があった。
 満水になる時間を推定して、防災操作、ピークカットを行う。
 50㎜以下が一つの目安になる。
 草木ダムでは予備放流と事前放流を行った。
 利水リスクの最小化が課題である。
 アンサンブル洪水予測システムがある。
 リードタイムとして、1週間から10日前から議論を始める。
 事前放流はいつからか、どのくらいの量か。
 途中の中断も含めて、利水に努めるように考える。
 統合ダム管理システムとして開発中である。

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         図5 ダム管理システムの概要

 リードタイムを持ってやることと、発電化によってコスト低減ができる、と説明した。

 (3)では「『令和元年台風19号豪雨災害調査団』速報」というタイトルで、 土木学会の清水氏が発表した。
 ダムについて発表した。
 降水量500㎜以上のところが多かった。
 128か所で堤防が決壊した。
 人的被害では93人が死亡した。
 河川の決壊が多発した。
 宮城県の中小河川の決壊が目立った。
 福島県でも23河川49か所で河川が決壊した。
 丸森町では五福谷川が決壊、流木の被害もあった。
 千曲川の越水決壊があった。
 バックウォーターがきいている。
 破堤や氾濫にはカーブの部分が大きい。
 千曲川の浸水深マップがある。
 関東の雨の概要を述べる。
 荒川流域の3つの支流で破堤した。
 上からの氾濫流で窪地等で破堤した。
 氾濫シミュレーションを行った。
 本川ではあまりダメージはなかった。
 埼玉県の入間川では大きな被害があった。
 洪水の水を貯留できるか。
 1971m3の氾濫量があった。
 ダム遊水地に対しては大きい。
 下流で受け取れるか。
 久慈川の氾濫があった。
 川の流れの越水があった。
 流域全体で持たせられるか。
 佐野・秋山川が2か所で決壊した。
 中小河川で全面的に越水していた。
 下流の渡良瀬川に面的にどう制御するか。
 カスリーン台風の再来である。
 (筆者注:昭和22年に襲来し、関東・東北に大きな被害をもたらした。)
 八斗島(利根川上流)では利根川の水位はぎりぎりであった。
 4大河川は本当に大丈夫か。
 中小河川の氾濫をどうやって防ぐかが課題である、と説明した。

 (4)では「被災直後の被災状況把握」というタイトルで、日本リモートセンシング学会の伊東氏が発表した。
 リモートセンシングについて述べる。
 台風19号の被災直後の動画をみた。
 環境衛星でスーパータイフーン(台風19号)の様子を見た。
 JAXAに災害監視webポータルサイトがある。
 日本の衛星は今回の台風についてタイミングが悪かった。(日本の衛星では観測できなかった。)
 5つの事例を紹介する。
 東北大の米沢氏がセンチネル1(EU)の画像で、阿武隈川の支流の流水を見た。
 昼夜の別なく画像が撮れる。
 2つ目は長崎大のどこかは忘れたが航空写真を撮った。
 3つ目は日大の中村氏がやはりセンチネル1で阿武隈川の様子を調査した。
 4つ目は日大の園部氏が分解能6mの工学衛星で浸水の検出ができた。
 5番目は衛星のSAR(合成開口レーダー)のデータを利用して、浸水市街の把握ができた。
 川崎市多摩川沿いで7か所の検出ができた。
 13日朝6時に1か所の検出ができた。
 センチネル1ですべて観測できる。
 13日11時に終了した。
 災害情報のタイムラインが計測可能である。
 これはSIP(内閣府の創造的イノベーションプログラム)のリモートセンシング技術にも使える、と説明した。

 (5)では「台風15号・19号による強風被害」というタイトルで、日本風工学会の松井氏が発表した。
 台風による強風被害について述べる。
 台風15号を主に話す。
 9月9日3時に三浦半島を通過した。
 中心気圧955hPaである。
 千葉県の被害が大きかった。
 最大風速が房総半島に集中した。
 風速最大が43m/sであった。
 建築物は倒壊しそうになったが持ちこたえた。
 房総半島の南西部に集中した。
 千葉市内の古い建物に被害があった。
 市原市のゴルフ場練習場の鉄柱の倒壊があった。

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         図6 台風19号直後の千葉市の状況

 鋸南町に大きな被害があった。
 ドローンやヘリで空撮した。
 屋根のブルーシートの分布を測定した。
 屋根ふき材、外装材、軒天井等に被害が出た。
 ソーラー施設の被害もあった。
 水上メガソーラー等であるが、JIS規格の台風荷重が低い。
 電力の鉄塔被害も多く出た。

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         図7 電力の鉄塔の被害状況

 東電の被害分析では、周辺の地形により特殊な風速になった。
 鉄塔の脚部で限界を超えた。
 電柱の被害も出た。

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         図8 電柱の被害状況

 台風の経路の右側で被害が大きかった。
 仮設構造物でも被害があった。
 台風19号は台風15号より風による被害が少なかった。
 千葉県市原市で竜巻が発生した。
 避難所が竜巻に襲われた。
 一般の建物は自然災害対応となっているが、耐震改修したものは風に対して耐性を持っているか。
 学校等の公共建築物は避難所になっているが風に対して脆弱である、と説明した。

 セッション2は「被害状況と課題」について、である。

 (6)では「台風19号による丸森町の現地調査報告」というタイトルで、日本自然災害学会の柴山氏が発表した。
 この人は東北大なので、台風19号で一番被害の大きかったと思われる丸森町の調査報告であった。
 東北大学と丸森町の関係は宮城県の自主防災育成活性化事業で関わったことによる。
 今回の被害で、全体で死者10名であった。
 丸森町の過去の災害では、昭和61年の豪雨でやはり河川の氾濫等があった。
 役場周辺は何度も水没している。
 今回の住宅の全壊は103件であった。
 内川で10か所が決壊した。
 決壊の2割が丸森町である。
 阿武隈川の支流の内川、新川、五福谷川で決壊した。

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         図9 丸森町の主要河川の雨量と水位

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         図10 丸森町平野部の浸水状況

 これらの川の上流の筆甫で600㎜、大内で612mmであった。
 傾斜はなだらかで被害は少ない。
 阿武隈川は無事であった。
 役場は内水氾濫であった。
 (筆者注:内水氾濫とは川の氾濫でなく、豪雨の排水がうまくいかないために起きたもの。)
 ポンプもあったが、排水しきれなかった。
 内川、五福谷川は外水氾濫である。
 ポンプ停止て排水不可であった。
 役場周辺の主要施設が水没した。
 消防署、病院、携帯基地も水没した。

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         図11 丸森町役場周辺の状況 

 内川、新川等で18か所で破堤した。
 五福谷川では土砂が流れて家屋を流した。
 耕野地区は前回の台風時の洪水より2m上回った。
 土砂災害は子安、阿武隈急行「あぶくま」駅等が被災した。
 筆甫地区では山中にコアストーン(巨石)が多くあり、土石流のエネルギーが大きかったことを示す。
 昭和61年豪雨の時以上の降雨量があり、過去の経験が逆にあだになった。
 地域のコミュニティは活発に活動した、と説明した。

 (7)では「台風19号による長野市における洪水災害と課題」というタイトルで、日本自然災害学会の山本氏が発表した。
 降雨では箱根が一番(約1,000㎜)であった。
 長野県は台風19号の風下で雨が少なく400㎜程度であった。
 軽井沢で300㎜であった。
 これは100~150年に1回の頻度である。
 堤防決壊のピークが10時間ずれた。
 雨がやんで、避難した人が戻ってきた時に決壊した。
 ハザードマップと浸水地域はほぼ一致した。
 2mくらいの浸水であった。
 新幹線は4mくらいの浸水であった。
 千曲川の近くに氾濫が起きた。
 新幹線は盛土をしていた。
 2019年3月に10-20mの浸水予測があった。
 善光寺平も洪水にあった。
 穂保地区では100m流出した家があった。
 現場は1.8mの高さであった。
 長沼体育館等建物の倒壊が多い。
 江戸時代に5.3mの例があった。
 今回は4.9mであった。
 嵩上げしたところもあった。
 しかし今回のようなものは想定外であった。
 豊野地区は千曲川の決壊で4mくらいの浸水になった、と説明した。

 (8)では「多摩川川崎における緊急調査結果」というタイトルで、日本第四紀学会の小森氏が発表した。
 川崎市の状況について述べる。
 武蔵小杉のタワーマンションが浸水した。
 多摩川の蛇行部分の10か所が浸水した。
 本流のバックウォーターがあった。
 多摩川支流の三沢川からオーバーフローした。
 6か所の排水用水路の周辺が浸水した。
 1か所のみが内水氾濫である。
 河川の地形、網状流河川や蛇行河川が問題となった。
 10地点で浸水した。
 5つのタイプがある。
 多摩川から三沢川へのバックウォーター、支流から用水路へのバックウォーター、水門上流を越流、内水氾濫、排水樋門が浸水に関係している。
 河口から20㎞のところでも起きている。
 蛇行河川が多く氾濫している。
 ハザードマップについて局所的にハザードマップと違っているところもある、ソフトハザードマップが必要ではないかと説明した。

 (9)では「台風19号等によって発生した土砂災害」というタイトルで、砂防学会の執印氏が発表した。
 台風19号により962件の土砂災害が発生した。
 群馬県富岡市や宮城県丸森等が被災した。
 平成30年の7月の西日本豪雨で2512件の被害があった。
 このうち広島県で半分の1242件となった。
 今日は台風19号で294件と一番被害の大きかった宮城県について取り上げる。
 昨年の西日本豪雨では広島において10日間で421㎜、今年の台風19号では宮城県においては4日間で608㎜であった。

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         図12 台風19号による全国降水量分布

 群馬県富岡市内匠地域は富岡インターの近くであるが、雨の中でなく少し外れて土砂災害が発生した。
 39年間の変化を見ると、降雨量と土砂災害発生確率の間に関連がある。
 富岡の場合は降雨量222㎜で発生している。
 斜面崩壊について見ると、崖と思えないところでの崩れがある。
 風化テフラの弱層によるものがある。
 (筆者注:テフラは火山灰堆積物等の総称である。)
 丸森町の被害は雨域の強いところで起こっている。

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         図13 斜面崩壊の例(丸森町)

 39年の集積データから見ると、309㎜の降雨量で発生している、と説明した。

 (10)では「農地・農業用施設被害の状況と課題」というタイトルで、農業農村工学会の小泉氏が発表した。
 農業の被害も広範囲で発生した。
 昨年7月の西日本豪雨と比較した。
 昨年7月は1575か所のため池が被害を受け、32か所が決壊した。
 今回は131か所のため池が被害を受け、14か所が決壊した。
 しかし、今回はため池にとって大きな被害となった。
 宮城県白石市の防災重点ため池の3連ため池がすべて決壊した。
 決壊後に避難指示が出た。
 職員に理系の人がいなかったことも一因である。
 長野県のリンゴ園は50㎝の土砂が堆積した。
 土砂を放置するとリンゴが呼吸できなくなって、リンゴ園が死ぬ。
 栃木県足利市、宮城県丸森町では棚田、水田、水路がすべて壊れた。

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         図14 丸森町農地への洪水被害の例

 営農に向けた課題は濁流の農村を襲った。
 土地の中の栄養が流れる。
 手当が遅れると、回復に時間がかかる。
 営農の意志の問題もある。
 来年の田植えに間に合うか。
 昨年の西日本豪雨での愛媛県のミカン園は9月までに1割の復旧である。
 個別施設の強靭化が必要になる。
 ため池の機能を考えないといけない。
 農業には電力が必要になる。
 停電は致命的になる。
 国土利用をどうすればいいか。
 防災人材の育成が必要になる。
 理系人材が村にいない。
 技術開発しても誰に伝えたらいいか、と説明した。

 (11)では「洪水による住宅被害の実態と学術的課題」というタイトルで、日本建築学会の西嶋氏が発表した。
 住宅の洪水対策以上の外乱が作用した。
 断熱設計等の室内環境性能が復旧可能性を低下させた。
 水没した部材の劣化がある。
 対洪水設計、対マルチハザード設計、復旧作業性の工夫が必要になる。
 劣化性状の解明など土木との連携が必要になる。

 初動調査は10月20日で千曲川流域で行った。
 この調査結果の報告は京大防災研究所のHPに載せている。
 調査の目的は氾濫解析及び住宅被害分析調査であり、前者では氾濫流の向き等、後者では住宅の浸水深の記録等を調べた。
 穂保地区の構造部材の被害は限定的であった。
 特徴的なのは土壁の脱落、漂流物の衝突、住宅外壁の剥離等があった。

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         図15 建物の壁の剥離等の状況

 サイディング材(板を張り合わせた外壁材料)の含水率は上昇しているとみられるが、目視観察での色調変化はなかった。
 ラスモルタル外壁は色調変化が明瞭で浸水深が目視で識別できるものがあった。
 破堤近くでは窓ガラスが割れているところがあったし、2階まで浸水しているところもあった。
 ただ屋根材は流出していなかった。
 洪水への対処以上の外乱で、基礎部分の嵩上げをしているがそれ以上に浸水していた。
 家の基礎(土台)はべた基礎(床部分一体型)と布基礎(床部分分散型)があり、前者は耐震の面から導入されたが洪水には排水・乾燥に多大な手間を要するもので、復旧作業性を低下させている。

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         図16 住宅の基礎部の浸水の例

 対マルチハザード設計が必要、と説明した。

 (12)では「台風19号における河川氾濫と建築物の被災」というタイトルで、日本学術会議の田村氏が発表した。
 建築物は河川のインフラにより守られている。
 堤防が決壊した時のことは考えられていない。
 トータルの水害対策が必要である。
 堤防決壊周辺の状況を調査した。

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        図17 台風19号での全国の河川決壊状況

 人的災害防止に加えて、建築物被害低減も考えないといけない。
 雨が降り、河川氾濫、内水氾濫等が起きると、低地に溜まり、浸水被害が出る。
 堤防決壊、高流速の水によって、台風19号では9万棟の浸水被害があった。
 そのうち70%は一部破損、床上・床下浸水のみであった。
 家屋被害で床上1m以内のものが全体の災害廃棄物の多くを占めた。
 埼玉県の都幾川は昔の霞堤(分岐・水路脇の堤防)が決壊した。
 埼玉県の越部川が決壊したが、近傍には住宅が少なかった。
 佐野市秋山川は橋の上流が決壊した。
 宮城県丸森町は阿武隈川の支流が決壊した。
 福島県いわき市の夏井川は橋の上流側が決壊し、付近に住宅地が多くあった。

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         図18 橋の崩落等の状況

 茨城県水戸市の藤井川は川の屈曲部が決壊し、100mくらい下流に住宅地があった。
 長野県千曲川では決壊による氾濫流で、家屋の崩壊・流出があった。
 家屋のくいがないのは流れる。
 氾濫流による建築物の非構造被害として、ガラスの破損、土壁の表面はがれがあった。
 土砂の農耕地流入もあった。
 家屋の浸水による内部被害もあった。
 畳は捨てられる。
 板張りは不明である。
 いわき市で床レベルの違いによって被害に違いがみられた。
 床レベルの低いところは被害が大きく、高いところは内部の浸水被害がほとんどなかった。
 災害廃棄物の量も異なる。
 まとめとしては、建築物の耐水化工法の整備、フェールセーフとして堤防決壊場所を決めておく、等が必要と、説明した。

 (13)では「河川堤防の浸食・破堤、斜面災害」というタイトルで、地盤工学会の岡村氏が発表した。
 河川堤防の侵食について、国管理の一級河川で12カ所の破堤、県管理の河川の破堤128カ所であった。
 住宅浸水は約38,000棟であった。
 破堤原因は越水破堤が多く、これは河川水があふれ出ることである。
 千曲川は夜中の1時に越流した。
 間一髪の事例もあった。
 越水ぎりぎりのところもあった。
 水が浸透して破堤の両側にそういう部分があった。
 河川水の侵食もあった。
 川の中の橋の橋脚が削られたところもあった。
 河川堤防の下に流れ出た。
 浸透対策をしていたところも破堤した。
 河川の国管理の部分はよかったが、県管理との合流部分で破堤した。
 千曲川のハイドログラフでは高い水位の時間が短かった。
 破堤を前に報告が上がってこなかった。
 人工斜面、空き地の造成地(盛り土)の被害も大きかった。
 仙台市泉区等で見られた。
 排水口の劣化もあり、メンテナンスが必要、と説明した。
  (前編終了)



 <日本学術会議公開シンポジウム>
「令和元年台風第19号に関する緊急報告会」
 1.日時:2019年(令和元年)12月24日(火) 13:00~17:55
 2.会場:日本学術会議講堂、常翔ホールにて同時中継(大阪工業大学梅田キャンパスOIT梅田タワー)
 3.主催:日本学術会議 防災減災学術連携委員会 土木工学・建築学委員会  防災学術連携体
 4.プログラム
  司会  日本学術会議連携会員 依田照彦、永野正行
 13:00 開会挨拶 日本学術会議 防災減災学術連携委員長  米田雅子
 13:02 来賓挨拶 内閣府 政策統括官(防災担当) 青柳一郎
 13:05 趣旨説明 日本学術会議会員、東京大学名誉教授 小池俊雄

 13:15-17:50 緊急報告(各発表は10分、交替時間含む)

 13:15-14:05 <セッション1:気象と風水害の概要>
  (1)台風19号の特徴と豪雨発生の気象状況 日本気象学会 竹見哲也
  (2)ダムの効果、異常洪水時防災操作と事前放流の課題 ダム工学会 角 哲也
  (3)『令和元年台風19号豪雨災害調査団』速報 土木学会 清水義彦
  (4)被災直後の被災状況把握 日本リモートセンシング学会 伊東明彦
  (5)台風15号・19号による強風被害 日本風工学会 松井正宏

  14:05-15:25 <セッション2:被害状況と課題>
  (6)台風19号による丸森町の現地調査報告 日本自然災害学会 柴山明寛
  (7)台風19号による長野市における洪水災害と課題 日本自然災害学会 山本晴彦
  (8)多摩川川崎における緊急調査結果 日本第四紀学会 小森次郎
  (9)台風19号等によって発生した土砂災害 砂防学会 執印康裕
  (10)農地・農業用施設被害の状況と課題 農業農村工学会 小泉 健
  (11)洪水による住宅被害の実態と学術的課題 日本建築学会 西嶋一欽
  (12)台風19号における河川氾濫と建築物の被災 日本学術会議 田村和夫
  (13)河川堤防の浸食・破堤、斜面災害 地盤工学会 岡村未対

 15:25-15:40  休 憩

 15:40―17:00 <セッション3:災害発生時の対応>
  (14)台風19号災害における宮城県内の避難行動 地域安全学会 佐藤翔輔
  (15)長野県防災Twitterによる救助要請の実態 日本災害情報学会 秦 康範
  (16)地図・地理空間情報の活用 日本地図学会 中島秀敏
  (17)台風19号における災害医療対応 日本災害医学会 近藤久禎
  (18)災害時の健康リスクと生活支援・看護ニーズ 日本災害看護学会 小原真理子
  (19)台風15・19号報告-在宅看護と救急看護の取組- 日本救急看護学会 箱崎恵理
  (20)台風19号における災害ボランティアの活動 日本災害復興学会 所澤信一郎、稲垣文彦
  (21)災害廃棄物問題の特徴と対応 廃棄物資源循環学会 浅利美鈴

 17:00-17:50 <セッション4:災害対応と今後の対策>
  (22) Today's Earthシステムによる台風19号の洪水予測 水文・水資源学会 芳村 圭
  (23)広域水害と台風19号の被害 土木学会 中村晋一郎
  (24)風水害犠牲者の発生状況調査 日本自然災害学会 牛山素行
  (25)台風19号災害の発生状況についての応用地質学的考察 日本応用地質学会 向山 栄
  (26)台風19号の経験から何を学ぶか-地理学ならではの視点 日本地理学会 宇根 寛   

 17:50 閉会挨拶 防災学術連携体代表幹事 日本建築学会前会長 古谷誠章   
 17:55 閉会

5.趣旨
 10月12日に大型で強い勢力で伊豆半島に上陸した台風第19号 は、広い範囲にわたり記録的な大雨をもたらした。
 静岡県、神奈 川県、東京都、埼玉県、群馬県、山梨県、長野県、茨城県、栃木県、 新潟県、福島県、宮城県、岩手県の13都県に大雨特別警報が発表され、10日からの総雨量は神奈川県箱根で1000ミリに達し、17地点で500ミリを超えた。
 10月16日時点で、68河川125か所で堤防が決壊し、16都県の、 のべ262河川で越水等による氾濫が発生し、2万棟以上の住宅が浸水し、77名の死亡が確認されている。
 なお、被害の全容はまだ把握されておらず、台風後の大雨により、被害はさらに拡大した。
 政府は激甚災害、特定非常災害、大規模災害復興法の非常災害の適用を行った。
 防災学術連携体(57学会)はホームページに台風第19号の ページを開設し、学会の調査情報、国土交通省・気象庁などの最新情報を掲載し、関係者間の情報共有に努めている。
 日本学術会議と防災学術連携体は、被害の拡大を防ぎ、地球 温暖化と共に激化する気象災害の軽減に取り組むため緊急報告会を開催する。
 台風第19号に関する学会の調査結果を共有し、 学会間の情報交流を進め、今後の対策を総合的に検討する。
  -以上-

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