「がんと放射線」公開講座に参加

 「がんと放射線」公開講座(1/25(土))に参加した。

 この講座を何で知ったかはあまり定かでない。
 多分昨年12月7日のブログの「スポーツと脳科学」シンポでの東大・中澤氏のことを調べている時にたまたま知ったのではないか、ということである。
 この講座中に私が放射線治療を受けたIMRT(強度変調放射線治療、厳密にはその改良版のIGRT:画像誘導放射線治療、Image guided radiation therapyを受けた)の講演があったので、受講しようと思ったのである。

 当日はティーバッグのお茶をマイボトルに入れて行った。
 赤門をくぐってすぐのところに案内所があったので、会場の医学部研究棟の場所を聞いた。
 警備員の人はすぐに教えてくれた。
 受付に行くと資料をくれたが、プログラムの資料A4が1枚きりであった。
 会場は14階だったので、非常階段の場所を確認し、そこは利用可能かと受付の人に聞いた。
 利用可能、とのことであった。
 上がる時はさすがにエレベーターを利用したが、帰りは階段を利用した。
 でも途中の階は廊下に入れないようにロックされていて、2階に降りてやっと廊下に入れたのでほっとした。
 閉じ込められる危険性もあるし、だめならもう一度14階まで上がってエレベータ利用になるかも、と思った。
 トイレにも行って、会場に入った。

 最初に宮川氏があいさつした。
 文部科学省のがんプロ14年目(筆者注:文科省でがんプロフェッショナル養成基盤推進プランというのを進めていたらしい。)に当たり、一般の人にも成果を発信するように、とのことである。
 13年間の振り返り、ということもある。
 放射線治療はかなり使われるようになってきた。
 免疫療法との併用もある。
 ただ、日本の放射線治療は世界に比べると遅れている、とのことであった。

 (1)の基調講演では東京大学の中川氏が講演した。
 放射線はおもしろい。
 チェルノブイリ原発事故で小児の甲状腺がんが増えた。
 これはヨウ素131(I-131)によるものだが、その治療でも同じI-131を使っている。
 日本は世界一のがん大国である。
 がんも放射線もきちんと教えてこなかった。
 男性は3人に2人、女性は2人に1人の割合である。
 男性は生活習慣が悪いためである。
 日本のがん対策は遅れている。
 欧米は進んでいる。
 日本では年間38万人ががんで亡くなる。
 なぜ日本人はがんで死ぬのか。
 5年前で欧米の1.6倍、今は2倍の比率である。
 大腸がんは日本人に多い。
 病院の医者の技術が遅れているのではない。

 国民の意識が遅れているのである。
 WHOから日本は前世紀並みと言われた。
 がん検診受診率が他国の半分程度である。
 欧米でがんの放射線治療は6割くらいある。
 日本ではようやく3割である。
 緩和ケアにも問題がある。
 医療用麻薬モルヒネの使用では日本はドイツの20分の1である。

 病気に対する考え方も違う。
 ヘルスリテラシーという考え方がある。
 健康に対する意識の問題で1位はオランダである。
 日本は最下位である。
 保健の授業を日本は受けていない。
 灘高では中高で10回保健の授業がある。
 学校でがん教育を行うべきである。
 保健体育がないがしろにされている。
 昔は教育指導要領に記載されていなかったが、今は記載されている。
 がん教育の教材も不足している。
 文科省のHPに治療法が載っている。
 放射線治療ではがんが残ってしまうという感覚が日本人にはある。
 放射線治療は通院で行う。
 がんの知識の有無で運命が変わる。

 のどのがんを7万mSvで治療した。(筆者注:筆者の前立腺がんで80Gyとほぼ同等)
 白血病は2000mSvを全身に照射する。(筆者注:この辺りの治療はちょっとうろ覚えのところがあって正確ではないかもしれない。)
 CTでは70mSvくらい被ばくする。(筆者注:一般の人で土や宇宙線等で平均2.4mSv/年被ばくする。)

 ここで中川氏は福島原発事故のトリチウム汚染水に関わっているので、その話をする。
 世界の原発はトリチウム汚染水を流している。
 6万Bq/L以下であればOKである。

 中川氏は膀胱がんにかかった。
 Bqは忘れてSvで考える。
 カリウム(K-40:天然放射性元素、カリウム中に0.01%含まれる)では食べ物から1mSv摂取する。
 年間で2.1mSvとなる。
 フィンランドでは8mSv/年である。
 日本の医療被ばくは世界一である。
 平均4mSvである。
 CTスキャナーでの被ばくが多い。
 日本では13.4回/年である。
 しかし、100mSv以下ではがんの増加は観察されていない。
 厳密に言うなら、100mSv以下では影響が少なすぎてよくわからない、ということである。
 喫煙でがんは1.6倍となる。
 これを放射線換算すると、2,000mSvとなる。

 福島とは元々縁はなかった。
 ただ事故後に福島大学附属中で放射能測定に関わった。
 飯館村の村長とも会った。
 村の中で老人ホームの避難が困った。
 被ばくして何年でがんができるか、と問われた。
 1㎝のがん細胞が成長するのに10年かかる。
 福島ではほとんど1mSv以下である。
 コメは全量チェックである。(筆者注:全量検査しても1袋も検出されない実績を基に、近々サンプル検査に切替られるらしい。)
 欧米より厳しい規制値を採っている。
 ホールボディカウンターで測定した。
 避難者の糖尿病が1.6倍である。(筆者注:放射線によるものではない。おそらく運動不足や酒の飲みすぎ。)
 急性肝硬変を初めて見た。(同上)
 子どもの甲状腺がんが増えている。
 WHOは甲状腺がんと放射線は関係がないと結論づけている、と説明した。
 (筆者注:医療の高度化で初期のものが発見しやすくなったこと、及び福島の子どもの全員検査と日本全国の喉の症状が出ている子どもの検査を同等に比較すると結論を間違えてしまう。福島の甲状腺がんは増えているわけではなく、他県で見過ごされていたようなものでも全員検査で見つかるだけのことである。)

 この講演では質疑応答の時間はなかった。
 もしあれば、福島の食物摂取制限とチェルノブイリ原発事故等の制限なし、の影響の差について聞きたかった。

 次は各論である。

 (2)では「強度変調放射線治療(IMRT)」というタイトルで、東京大学の高橋氏が講演した。
 がん治療の3本柱は手術、抗がん剤、放射線治療である。
 このうち、放射線治療は全身どこでも治療可能である。
 形態保存も可能である。
 通院治療で1回の治療は10分以内である。
 放射線治療の初期ではガンマナイフ、ライナック等があった。
 患部に対して2次元計画を立てる。
 正面と側面からラフな照射を行っていた。
 今はCTをベースに3次元計画を立てる。
 強度変調放射線治療(IMRT)というのがある。
 腫瘍に線量を集中して照射する。

imrt10 IMRT 図 強度変調図 国立国際医療研究センター病院HPより.jpg
         図1 IMRTの概要(国立国際医療研究センター病院HPより抜粋)

 前立腺がんは治っても直腸に影響が出たりする。
 IMRTにより直腸出血が減る。
 前立腺がんは直腸炎が心配である。
 合併症が出てくるおそれもある。
 今は照射回数を38回から5回にするような方法もある。(2か月治療が1週間でよい。)
 頭頚部がんがある。
 飲酒、喫煙がリスク因子である。
 声を出すことや食事をすること等が放射線治療後にQOLが低下しやすい。
 副作用として唾液腺障害でのどが渇く等が出る。
 口がネバネバして、夜中に起きたりする。
 IMRTで副作用を軽減できる。

 こういう治療はどこでできるか。 
 マンパワーがいる。
 医学物理士がデータを準備する。
 放射線治療に関わる人として、医師、看護師、放射線技師、医学物理士等が必要、と説明した。

 ここでは質疑応答の時間があったが、既知のことばかりだったので、パスした。
 他に質問があったかは覚えていない。

 ただここで放射線による副作用ということがやはり気になった。
 そもそも前立腺がんというのは、がんそのものの進行は遅いということはわかっているが、他の部位への転移、特にリンパ節や骨への転移というおそれがある。
 また放射線照射による副作用で、膀胱がんや直腸がん等の発生や晩発性のがん発生のおそれがある。

 高校時代の友人がやはり前立腺がんで手術で前立腺を全摘し、今はPSA値もがんの目安の4等ではなく1以下と聞いて、ちょっと選択を間違えたかもしれないと思っている。

 しかし、今まで原子力に籍を置いてきたのだから、放射線の長所・欠点を明確にするのはある意味当然である。
 自分の身体を実験材料にするのはやりすぎという気もするが、私以外にあまりこうした経験をすることもないのであろう。
 日本で最初に麻酔の実験を行った華岡青洲の妻や母親の気持ちと同じようなものかもしれない。

 (3)では「重粒子線治療」というタイトルで、QST病院(旧放射線医学総合研究所病院)の野元氏が講演した。
 重粒子線治療ではパイ中間子、中性子、ヘリウムHe、炭素C、ネオンNe、ケイ素Si、アルゴンAr等を使う。
 粒子が止まる時に大きなエネルギーを放射する。

R2-2-9R1 国立がん研究センター ブラッグピーク.jpg
        図2 粒子線が止まる時のブラッグピークの状況(国立がん研究センターHPより抜粋)

 炭素イオン線等ががん細胞を傷つける効果が大きい。
 DNA損傷としては、鉄イオン1GyとX線1Gyでは前者の方がダメージが大きい。
 しかし、正常細胞も同時に傷つける。
 HIMAC(放医研の重粒子線がん治療装置)は2019年までの25年間で12,000人の患者を治療してきた。
 肉腫や前立腺がん等の一部のがんでは保険適応している。
 日本に6か所の重粒子線治療装置がある。
 回転ガントリーは300トンの重さがある。
 動く肺がんのがん患部を捕捉し、患部が照射エリアに入った時のみ照射できるようになった。
 以前は18回照射だったのが、1回照射でOKになってきた。
 肺がんについて5年生存率86%、3年生存率は93%である。
 膵がんの2年生存率は60%である。
 肝がんの3年生存率は60~70%である。
 骨肉腫の5年生存率は45%である、と説明した。

 私は質疑応答で、放射線についての副作用について聞いた。
 栄養学的な抑制はできないか聞いたが、野元氏は放射線照射時の抑制と勘違いしたようで、ヨウ素剤等と同様なラジカル抑制の薬剤等を飲むことを挙げていた。
 おそらく今の医師はこういう感覚しか持ち合わせていないのだろうと思った。

 他の人の質問で、いろんな粒子線を使っているが、こういう粒子線の中で炭素線がなぜ良いか、というようなことを聞いていた。
 実績による、と答えていたように思う。

 (4)では「中性子捕捉療法(BTCT)」というタイトルで、国立がん研究センターの井垣氏が講演した。
 このBNCTはまだ研究途上である。
 アルファ線の1.47MevがDNAを効率よく切断する。
 (筆者注:BNCT法はがん患部にホウ素の同位体B-10を集積させて、それに熱中性子を照射してアルファ線を放出し、そのアルファ線でがん患部を破壊する。核反応として、B-10 +n→Li-7+αとなる。)

R2-2-9 R1BNCT図 医用原子力技術研究振興財団.jpg
         図3 BNCTの原理(医用原子力技術研究振興財団HPより抜粋)

 がんの浸潤もある。
 他の療法では正常細胞にも当たる。

 このBNCT療法はB-10をがん細胞のみに取り込ませる。
 がん細胞内部のみで反応させる。
 ただ、今有効なホウ素B-10薬剤の有効なものとして、BSHとBPAという2種類しかない。
 この取り込みはBSH、またはBPAをアミノ酸と勘違いさせて取り込ませるのである。

 悪性脳腫瘍に適用する。
 筑波大で行った結果では2年生存率は53%である。
 普通は12-15か月である。

 頭頚部がんでは正常な皮膚へのダメージがない。
 耳下腺がんはBNCT療法の5か月後にがんは消えていた。
 普通の放射線治療では唾液が出ないなどの副作用がある。
 悪性黒肉腫について川崎医大が京大炉で実験した。
 B-10の取り込みが大きかった。
 かかと部分の患部だったから、手術するとQOL(手術後の生活の質)が低下する。

 最近はフッ素F-18をB-10薬剤に付属させて、B-10の患部への集積を評価している。

 しかし、京大炉等原子炉の新規制基準適合等のために研究用原子炉が消滅の危機にあり、加速器へと移行が検討されている段階である、と説明した。

 私は2つの質問を用意していた。
 B-10の患部への集積評価とB-10の周りの妨害物の存在である。
 前者はフッ素F-18(RIで陽電子放出)を付属させることでOKとした。
 後者は細胞には窒素Nや水素Hがある。
 これらはB-10より1000分の1の反応断面積なのだが、NやHの濃度はB-10の1000倍以上の可能性があるので、中性子照射した時に、B-10とNやHは同程度反応するのではないか、と指摘してみた。
 井垣氏はしどろもどろで、PHITS(中性子反応解析コード)で解析してB-10の方が反応しやすい、等と回答していた。
 本当はケチをつけるつもりではなかったのだが、結果としてそうなってしまった。

 この他に、キセノンXe(希ガス)等が中性子の反応断面積が大きいので、患部にXeを注入して中性子照射してみてはどうか、等も聞こうとしたが、あまり質問しすぎても、と思って遠慮した。

 以上で、この講座は終了した。

 今回の講座は公開講座なので、質疑応答では、お前は何者だ、というように所属・名前を名乗らずに皆質問していた。
 おそらく私のようながん患者も多かったのではないかと思う。
 会場には50人前後いたと思う。
 この結果を文部科学省に報告するようである。

 講演者の中川氏は膀胱がんということも言っていた。

 放射線治療に関しては、私の興味である放射線治療時における栄養学的な副作用の抑制等、これからの研究によるところも大きいと思う。
 これからも自分の興味を持ちつつ、放射線によるがん治療の促進に寄与していきたいと思う。

<東京大学がんプロ市民公開講座>
「今知っておきたいがんと放射線」
1.日時:2020年(令和2年)1月25日(土)14:00~16:00
2.場所:東京大学医学部教育研究棟14階 鉄門記念講堂
3.費用:入場無料・事前登録不要
4.開催趣旨
 放射線治療は、手術、薬物療法と並ぶ、がんの主要な治療法の一つです。
 がんの放射線治療は、近年目覚ましく進歩しており、より高精度の治療が可能となってきました。
 比較的低侵襲で身体への負担が少なく、根治を目指す治療から痛みを和らげる緩和療法まで幅広く利用できる事が放射線治療の特徴です。
 このため、がん治療において、放射線治療の果たす役割は近年益々大きくなっています。
 しかしながら、わが国では、放射線治療の重要性や、その最新の動向が十分に知られていないのが現状です。

 そこで今回の東大がんプロ市民公開講座では、最新の放射線治療の知識を現場で働く医師により、広く伝える機会にしたいと考えています。
 基調講演では東大病院放射線科の中川恵一先生より、近年の放射線治療の現状を概観していただきます。
 各論では、「強度変調放射線治療(IMRT)」、「重粒子線治療」、「中性子捕捉療法(BNCT)」といった最新のトピックを放射線治療の第一線で活躍されている先生方よりご紹介します。

5.プログラム
 (1)基調講演 中川恵一(東京大学医学部附属病院)
各論
 (2)強度変調放射線治療(IMRT):高橋渉(東京大学医学部附属病院)
 (3)重粒子線治療:野元昭弘(QST病院(旧放射線医学総合研究所病院))
 (4)中性子捕捉療法(BTCT):井垣浩(国立がん研究センター)
-以上-

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