「スポーツと脳科学」シンポに参加

 「スポーツと脳科学」シンポ(11/9(土))に参加した。

 えいたい消防フェス(11/10-11/11)とJAEA報告会(11/12)のブログと前後するが、実はこのシンポに参加したことを忘れていた。
 記録ノートを見返している時に、忘れていることに気づいた。

 11月8日(金)には帰京していたから、このシンポジウムに参加した。

 10月の日本学術会議HPに、このシンポジウムのことが掲載されていたし、事前申込不要、参加費無料を確認していたから、気楽に参加できると考えていた。
 体調不良の場合も欠席でいいと思っていた。

 このシンポで「脳科学の観点からスポーツを見る」という視点は気に入っていた。
 私のボウリングの左右両手投げのことで、右脳の活性化という点を問いかけてみたかった。

 当日は途中でペットボトル500mlのお茶を買って行った。
 会場に着いて名刺を出すと、プログラムのみを渡された。
 他の講演資料は一切なかった。
 プログラムについては末尾に添付する。
 資料がなく、私の記録ノートに書いてあることのみなので、多少の間違いはあるかもしれない。

 まず最初に、日本学術会議の伊佐氏が開会挨拶と本シンポジウムの目的を説明した。
 東京オリンピック2020年が開催される。
 そのためにスポーツを盛り上げていこうということで、脳科学の観点からスポーツを取り上げる。
 アスリートの凄さは普通のアスリートもパラアスリートも同じである。
 でもスポーツのネガティブな面も出ている。
 トレーニングやコーチングの問題もある。
 脳のダメージという点で、ボクシングのパンチドランカーやアメフットの脳等も問題が出ている。
 (筆者が後で調べてみると、アメリカンフットボールNFLの元選手でプレー中の衝突やタックルで99%の人が脳障害を負っていることがわかった。)
 また、子どもの脳、老人の脳等一般の人の脳についても注目していく必要がある、と説明した。

 次に「一流サッカー選手とブラインドサッカー選手の脳から考える 神経系の適応と超適応」というタイトルで、情報通信研究機構の内藤氏が講演した。
 ブラインドサッカーとサッカー選手も一流選手は共にすごい。
 脳内身体表現、という言葉がある。
 脳と身体を別々としない。
 脳を正しく理解することは人を理解することである。
 スポーツの洗練化が起きている。
 パラスポーツも特殊とは言えない。
 加齢による劣化がある。
 けがをした時のリハビリがある。

 今日は、サッカーとブラインドサッカーに絞る。
 発達と共に脳内の運動機能は成熟する。
 加齢で劣化する。
 単純に右手の運動野は左脳が働く。
 その時、右脳は抑制に働く。
 老人の右手の運動は右脳の抑制がみられない。

 ミズノと共研を行っている。
 右手の使い方の改善を行った。
 2か月のトレーニングで改善できる。
 なぜスポーツ選手の脳を研究するのか。
 脳内の身体表現の特徴は「可塑性」である。
 (筆者は、「可塑性」とは粘土をこねて様々な物体を自由に製作できるように、脳の機能は刺激を加え、または刺激を減らす等によって、その機能が大きく変化すること、と理解している。)

 どこまで脳は進化できるか。
 一流サッカー選手のネイマールの脳を調べる機会があった。
 ネイマールの動画を見せられた。
 ネイマールとスペインのサッカー選手の足だけを動かした。
 右足を動かす。
 休み、また動かすという一連の動作を脳内で見た時に、ネイマール選手は少ないシナプスの入力で足の運動ができる。

ネイマールの脳活動  R1-12-8.jpg
         図1 ネイマール選手の脳活動

 少ない脳活動はサッカー選手に限らない。
 ピアニストもそうである。

 ネイマールのフェイントの多様性も調べた。
 脳のフェイントのイメージが毎回違う。
 スペインの選手もフェイントはあるがパターンが2、3種類であり、ネイマール選手は7、8種類もできる。
 脳内は広範囲の脳活動が行われている。

 脳の中では、ネットワークで複数の運動の切替ができる。
 オリンピックの代表選手は演技のイメージができている。
 高次運動領野で具体的なイメージができている。
 運動プログラムができている。
 スポーツの動作は専門的な動作で、これは特殊な技能である。
 日常的な動作ではない。

 ブラインドサッカー選手の脳の視覚野は萎縮している。

R1-12-8 R1ブラインドサッカー.jpg
         図2 ブラインドサッカーの様子

 逆に海馬は拡大している。
 これは音源に優れていることを示している。
 (ブラインドサッカーのボールは中に鈴の音のようなものがあり、その音で選手はボールのある場所を知る。そのため、会場は声援等はしないことが求められている。筆者注)
 海馬に負担がかかる。
 全盲のストライカーとしてリカルド・アウベスがいる。
 ブラインドの空間移動する運動イメージに優れている。
 心的運動空間を持っているのかもしれない。

 私は質問で、右脳は抑制、とのことだったが、左手を鍛えてみるとどうなのか、と聞いた。
 はっきりした回答はなかったと思う。

 次に「脳科学と情報技術はスポーツのトレーニング/コーチングをどう変えるか?」というタイトルでNTTの柏野氏が講演した。
 柏野氏は野球が好きで毎日練習している。
 草野球の試合で登板したりしている。
 野球部に入ったことはない。
 昔の野球部はスキルが欠如していた。
 センスもなかったかもしれない。
 精神論が横行していた。
 でもそれに代わるものがわからなかった。
 科学的トレーニングやコーチングが必要になる。
 でも科学的トレーニングとは何か。
 データを計測することも一法である。
 変化球をどう投げるか。
 元巨人の桑田氏に聞いてみた。

R1-12-6 sc_k2_1_img2 桑田氏と柏野氏の対談.jpg
         図3 元巨人の桑田氏との会話

 カーブをどう投げるか。
 右手をはねあげるようにすると言う。
 でもビデオを見ると違う。

R1-12-6 sc_k2_1_img3 桑田の投球フォーム.jpg
         図4 桑田氏の投球フォーム

 桑田氏の覚えている方法が間違っていた。
 イメージと実際に起きていることが違う。
 あの手の動きをすればカーブが投げられるか。
 変化球はなぜ曲がるか。
 変化球の錯覚がある。
 変化球には目と脳が関係している。
 身体計測だけでは捉えきれない。
 あいつのフォークは消える、といわれるプロ投手がいる。
 潜在的な脳の働きがある。
 無自覚で自動的で高速で大容量のデータが必要になる。

 NTTのスポーツ脳科学プロジェクトが立ち上がった。
 トップアスリートの脳機能を調べる。
 女子ソフト、メジャーリーグの選手を測定したりした。
 実験用の試合をしたり、スマートブルペンを作ったりした。
 いかに脳機能にアプローチするか。
 解読と調整を行った。
 ウェアラブルセンサーを使った。
 何が本質か。
 心拍数は運動で変動する。
 眼が動く。
 逆推定法を使い、一流選手はこうしている。
 でも普通の人はできない。
 VR(バーチャルリアリティー)をうまく使う。
 少年野球でよく、ボールを見て打て、と言われる。
 プロが打っている時の眼球運動を測定する。
 ゴーグルカメラと頭にカメラをセットする。
 スロー分析してみると、ボールの先回りをしている。
 未来を打っている。
 プロはほぼ全員そうなっている。
 一軍と二軍で違う。
 スキルレベルの違いがある。
 これは0.1秒の違いである。
 ダルビッシュの5種の変化球がある。
 一流ピッチャーは打者に早く情報を与えない。
 0.1秒はボールを追いかけられない限界である。
 スイングは一級品なのに、プロで通用しない人もいる。
 ヤクルトの山田はよく当たる。
 投手の投球フォームの予測をしている。
 投球フォームの情報を得ている。
 オーバーコーチングはイップスの元凶である。
 (イップス=投球障害:ボールが投げられなくなること、阪神の藤波投手がこれになったのではないかと言われている。筆者注)
 メンタルの解明と調整を行いたい、ということであった。

 私は質問で、イップスは催眠術で治療できないか、またマラソンのような長時間持久力を必要とするスポーツの科学はあるかと聞いたが、どちらもはっきりした回答はなかったように思う。

 3番目には「ボクサーの脳イメージング」というタイトルで東大の阿部氏が講演した。
 プロボクサーの22名の脳画像を撮った。
 63㎏から59㎏に減量しても1か月で元に戻る。
 頭蓋内容積をVBMという方法で解析する。
 このVBMという手法で、ボクサーの脳の減量前後の脳内イメージをプロとボランティアで測ったらしいが、詳しい内容は聞いていてもよくわからなかった。
 脳のMRI画像がいっぱい出てきたくらいのイメージであった。

 最後は「パラリンピックブレイン-パラアスリートの脳にみる人間の脳の再編可能性-」というタイトルで、東大の中澤氏が講演した。
 脳の損傷後の脳の回復はリハビリの最高のモデルになる。
 パラ水泳の選手で左腕がマヒしている。
 出生時に脳卒中で広範な脳の損傷が起きた。
 右の脳に障害が起きた。
 でも水中で左腕が動く。
 リハビリによる脳の回復があった。
 潜在的な恐怖感で脊髄反射が強くなった。
 3歳から水泳を始めた。
 水の中では動かせる。
 水中でポールウォーキングを行う。
 片麻痺である。
 温水プールで歩く。
 2本のポールを持っている。

 走り幅跳びでマーカス・レームという片足義足の選手がいる。
 8m40㎝跳べる。

R1-12-8R1  マーカス・レーム義足ジャンパー(首藤正徳のスポーツ百景より抜粋).jpg
         図4 マーカス・レーム・義足のジャンパー(首藤正徳のスポーツ百景より抜粋)

 健常者とほぼ同等の記録を出している。
 義足の身体化で性能がアップしている。
 筋肉を各部位で動かす。
 膝関節で義足を動かす。
 両方の脳が活動していた。
 義足をスポーツの中で高度に使っている。

 走り高跳びでS選手がいる。
 義足でない足で踏み切る。
 切れてない方は普通の反応をする。
 右の足の部分が右脳で動く。
 同じ側の機能が使われている。
 (通常は右足は左脳、左足は右脳で動かすように脳と身体の部位の動きは交差する。筆者注)

 義足アスリートの脳は通常の人と違うようである。
 脊髄損傷の重量挙げのパラアスリートの場合はどうか。
 健常者は300㎏を超えられない。
 グリッピングという20秒間握力を同じように出すということでは、パラアスリートは健常者より優れた能力を示した。
 義足アスリートはボルトを超えるかもしれない。

 この後、パネル討論が行われた。
 新たに加わった積山女史は脳の可塑性の研究で、高齢者の認知予防で楽器を習わせている、とのことだった。
 また逆さメガネを研究していたとのことだった。
 (ちょっとこの言葉に興味を持って調べてみたら、下記のようなものだった。筆者注)

R1-12-7R1 逆さメガネ概要.jpg
         図5 逆さメガネをかけた状況

 川人氏は運動制御が専門で、ロボットに運動学習をさせている。
 西田氏は人間の視野に関する研究を行っている。
 パラアスリートの脳の可塑性に興味がある。
 脳のどこかを損傷しないと可塑性は出ないのか。
 ネイマールのように通常の機能を持って高等なことができないものか。

 今日のトピックの一つは脳の可塑性である。
 脳の抑制が外れる。
 もう一つのトピックは情動(エモーション)である。
 モチベーションを高める。
 脊髄の可塑性がある。
 感覚のない人の能力が最も大きい。
 いい可塑性と悪い可塑性がある。
 イップスは練習のし過ぎである。
 PTSDもそうかもしれない。
 キャッチャーがピッチャーに返球できなくなる。
 小脳のシナプスも大変なのかもしれない。
 両手がなくて足を使っている人は、手の領域の脳を使っている。
 情動についてはどうか。
 イップスの緊張感はどうか。
 リラックスしろという。
 初日は180~190の心拍数があり、2、3日で徐々に落ちてくる。
 ブルペンとの差もある。
 自律神経系の調節の問題かもしれない。

 脳卒中の後遺症の一つとして痙縮(けいしゅく:手のつっぱり)がある。
 痙縮のMRI画像があるが、fMRIは部位と部位のつながりがよくわからない。
 リンゴは赤いというクオリアの世界がある。
 脳刺激を与える。
 ノイジ―な環境で学習させた方がAIは正しい解を出す。

 私は質問で、VR(バーチャルリアリティー)で身体障害者のリハビリはできないか、催眠術でメンタルトレーニング(蚤の心臓の克服)等はできないか、と聞いたが、はっきりした回答はなかったと思う。
 これらのことは催眠術ドーピングとかの疑惑にも通じる。
 自分の血液を貯蓄して、試合前に注射して運動能力を上げる血液ドーピング等の問題もある。
 
 なお、今日の講演者やパネリストのフルネームで検索してみると、スポーツと脳科学の色々な研究をしていることがわかるし、認知症やリハビリに関連することもあるようである。
 興味がある人は検索してみるといいかもしれない。

 最近はAIやロボット等人工物の急速な発展があるが、その分人間の知能・機能が低下するのではないかと思っている。
 人間の能力の機能維持や新たな能力の開発には、右脳を使うことが必要と考えている。
 そのために左手を意識的に使い、結果として右脳を使い、中間にある脳梁(左右の脳の情報をつなぐブリッジの役目)の機能を向上させる。
 そうすることで人間の基本的な能力をアップさせ、また、こうすることが認知症予防等につながるのではないかと思っている。

 今後もこうしたシンポジウムに参加して、右脳の活性化、認知症予防等に関する情報を収集していきたいと思う。

<日本学術会議 公開シンポジウム>
「スポーツと脳科学」
 1.日時:2019年(令和元年)11月9日(土) 13:00–17:00
 2.会場:日本学術会議 講堂
 3.主催:日本学術会議 基礎医学委員会:神経科学分科会
           臨床医学委員会:脳と心の分科会
 4.後援:日本脳科学関連学会連合、日本生命科学アカデミー
 5.参加費:無料、事前登録不要
 6.プログラム:
  13:00 開会挨拶/本シンポジウムの目的 伊佐 正(日本学術会議 神経科学分科会委員長)
  13:10 「一流サッカー選手とブラインドサッカー選手の脳から考える 神経系の適応と超適応」内藤栄一(情報通信研究機構)
  13:40 「脳科学と情報技術はスポーツのトレーニング/コーチングをどう変えるか?」柏野牧夫(日本電信電話株式会社<NTT>)
  14:10 休 憩
  14:30 「ボクサーの脳イメージング」阿部修(東京大学)
  15:00 「パラリンピックブレイン-パラアスリートの脳にみる人間の脳の再編可能性-」 中澤公孝(東京大学)
  15:30 休 憩
  15:50 パネル討論 コーディネーター: 伊佐 正(京都大学)
                    山脇成人(広島大学)
    パネリスト:中澤公孝(東京大学)
         柏野牧夫(NTT)
         阿部 修(東京大学)
          内藤栄一(情報通信研究機構)
          積山 薫(京都大学)
         川人光男(脳情報通信総合研究所)
         西田眞也(京都大学)
  17:00 閉会挨拶 山脇成人(日本学術会議 脳と心の分科会委員長)

 -以上-

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