放射線安全管理研修会に参加
放射線安全管理研修会(9/26(木))に参加した。
この研修会の案内は7月初めに封書で届いた。
いつも参加しているので、定期的に案内が届くようである。
でもすぐには申込せず、7月25日((木))にFAXで申込している。
なぜかはわからない。
しかし、この事務局は未だに申し込みはFAXのようで、早くメールかネット申込にして欲しい。
FAXの欄にメールで申込確認希望の人はチェックというのがあって、これにチェックを入れると、ちゃんとメールで申込したことをメールで返信してくれるのである。
ただ、私は申込の質問欄に放射線治療の患者の被ばく管理について聞きたい、と書いておいたが、返信には放射線治療に関する質問をお願いする旨の文章が付け加えられていた。
まあ、これは仕方ないと思っていた。
当日の会場は文京区のシビックセンターの小ホールである。

図1 文京シビックセンターの外観
都営地下鉄三田線の春日駅の真上にある。
当日は駅から会場に着くまで少し迷った。
今回の5人の講演の概要について最初に書いておく。
RI施設の登録機関と検査の話、RIの法規に新たに付け加わった防護に関する話、測定という一般論、医療機器としてのPETの開発、がんの放射線治療の概要を話してくれるものである。
もちろん私は最後の講演を聞きたくて申込したので、後はおまけと思って受けた。
プログラムを末尾に添付する。
また、10月17日(木)に放射線治療6か月後の血液検査と結果の面談を受けた。
このことについても、最後尾に少し書いておく。
(1)では「登録機関としての検査及び定期確認の留意点について」というタイトルで、 原子力安全技術センターの山本氏が講演した。
密封または非密封の放射性同位元素を扱う事業所は放射線障害防止法(RI法)に基づき、原子力規制委員会に届け出して使用許可を得る必要がある。
使用許可を得た後は定期的に正しい使用法で使用しているか、機器が正常に動作しているか等を定期的に検査する必要がある。
原子力安全技術センターはその検査代理機関としての役割がある。

図2 原子力施設の検査の流れ
また、同センターは放射線取扱主任者試験を請け負う機関でもある。

図3 放射線取扱主任者試験の流れ
余分なことを付け加えると、悪名高い放射能拡散予測システム”SPEEDI”の管轄の機関でもある。
RI取扱事業所は約8千あり、そのうち検査・定期確認は約千事業所がある。
密封RIの事業所は5年に1回、非密封RI事業所は3年に1回定期検査がある。
期間の長さから言えば、非密封RIの方が厳しいことになる。
放射線発生装置の遮へい体の施設検査(設置時)の例では、コンクリートの厚さ等の施工図やコンクリート配合データや鋼板の材料証明書(ミルシート)等が必要になる。
放射線施設の定期検査では、技術上の基準に適合していること、となっている。
これは機器の性能が正常に動作しているか、正しい使用目的に沿っているか等を記録、外観、作動及び実測等で検査する。
過去の不適切事例では、扉インターロックのセンサー不良、流しの排水管や排気ダクトの腐食等があった。
放射線業務従事者の教育及び訓練も記録などで確認する。
被ばくの管理も重要な項目で記録でチェックする。
(私が現在放射線治療で被ばく管理をするべき、と考えている根拠がここにある。この放射線業務従事者の被ばく管理と放射線治療の患者も同等に扱うべきと考えているが、現在放射線治療の患者の被ばくは野放しといっては語弊があるが、各病院毎に管理されていて、患者が病院をはしごするともう不明となる。:筆者注)
RIの使用管理も記録等でチェックする。
排気・排水もチェックする。
安全技術センターにおけるデータ管理はISO9001(国際標準化機構の品質管理)に基づいている。
不正アクセス等への対処はリスク分析して脆弱箇所を見つけ改善する。
データにアクセスできる人を限定し、エリア管理・カギ管理等を行っている。
この後、質疑応答になり、私は教育・訓練等に違反があった場合は罰則はあるのか、福島の除染作業の被ばく管理はどうか聞いた。
前者について、罰則はない、とのことだった。
後者については知らないようであった。
(2)では「放射性同位元素等の規制に関する法律における防護措置について」というタイトルで、日本アイソトープ協会 の木村氏が講演した。
放射線障害防止法(RI法)に基づき、RIの取扱いを規制しているが、2017年9月に防護が追加された改正が行われた。
今年の9月1日より施行された。
なぜ防護が必要になったか。
RI事故が国際的にたびたび起きているからである。
1987年にブラジルでCs-137線源の処分においてその危険性を知らずに解体作業をして4人が死亡、300人が被ばくした。
2001年にグルジア(今のジョージア)で多数の放射線源の不法投棄があった。
2001年にアメリカで同時多発テロが起きて、2005年に核テロ防止条約が国連総会で採択された。
日本でも2008年に非破壊検査用のIr-192(イリジウム)の盗難等があった。
これらの核物質やRIの事故等を受けて、国際原子力機関(IAEA)はセキュリティの強化に乗り出した。
この流れに沿って、日本でも対策の必要性が認識され、RI法の防護付加の改定となった。
防護の要点は9個ある。
①防護区域設定と出入管理、②シャッター等の障壁、③施錠、④カメラ等の監視装置、⑤ファイアウォール等の不正アクセス対策、⑥関係機関への連絡手段、⑦防護の情報管理、⑧防護管理者指定等の体制整備、⑨緊急時対応手順書(緊急時マニュアル)
である。

図4 原子力施設における防護措置の一例((株)コンピュータシステム研究所のHPより抜粋)
これらの管理を行うことを特定RI防護規程として定め、これを届け出する。
防護に関する教育訓練も実施する。
RIの使用に関する報告を行う。
線源登録システムを用いたWeb報告となる。
事業所外運搬においても防護措置を取り、事前に原子力規制委員会や都道府県等に届け出を行う。
防護に関する記録も残しておく。
質疑応答では、私は停電の時にはどうするか聞いた。
設備自体はフェールセーフ(安全側に作動、普通はロックがかかる。)になっていると思うが、と歯切れの悪い答えであった。
午後(3)では「測定における不確かさの意味と考え方」というタイトルで、産業技術総合研究所の田中氏が講演した。
正直に言ってあまり興味のあるものではないと思っていた。
しかも午後一番の講演は睡魔が襲ってくる。
ただ、放射線測定においては、3%前後の計測誤差が常に発生するので、その注意喚起くらいの認識であった。
産総研の部署ではkgやメートルの国際的な管理をしている計量標準総合センターの人である。
今まではヤード、ポンド、尺、貫等の様々な単位があったが、SI単位系の導入により、kgや1m等で国際的に貿易などのやり取りができるようになった。
でもその測定値はどのくらい信用できるのか。
10㎝の棒を測定したら、10㎝±1㎝とかの不確かさが必ず出る。
この測定結果の質について国際的に合意しておく、ということで、校正証明書を発行するとかトレーサビリティ制度を構築するとかのシステムが必要になる。
1㎏原器(白金とパラジウムの合金)は国際的な標準であったが、今はプランク定数やシリコン結晶を用いたkg原器のようなものに変わりつつある。
(原子力学会誌2019年10月号にその間の事情が説明されている。)
トレーサビリティとは元々の意味は追跡ということだが、あるデータがあるとその関連する機器、人、体制、国際的な標準との関わり等を追跡できるようにしておくことである。
例えば、普通1㎏の物質を会社のはかりで測定したとする。
このデータの保証はどうなるか。
はかりは社内の標準の分銅を用いて校正している。
この社内の分銅は産総研等の標準分銅で校正している。
この産総研の分銅は国際的な標準となるkg原器で校正、またはプランク定数を用いたkg原器モドキで校正する、等の保証の追跡をしていくことになる。
ここにおいて不確かさ(測定誤差)は重要な意味を持つことになる。
後半は不確かさの実例の話で、その中に正規分布が登場した。
誤差はこの正規分布の中に表されているようであった。
質疑応答では、私はこの測定の中に相対性理論を考慮する必要はないか、と聞いた。
相対性理論では長さが伸び縮みするし、重さも変わってくるのであるが、田中氏が説明した範囲内では影響はないようであった。
(4)では「新世代の PET 装置開発」というタイトルで、量研機構(QST)の山谷氏が講演した。
核医学診断はRIを薬液注入して脳の血流を見る機能画像であり、脳のX線CTで形態画像を見るのと少し違う。
ここでSPECTとPETという2種類の機器が登場してきた。
前者はTc-99m等の単一γ線を放出してそれを画像化するのに対し、PETはF-18の陽電子の対消滅によるダブルγ線を計測する。
PETの長所は高感度で半減期が110分と短いので、不要な被ばくを避けられるという利点がある。
また最近DOI検出器というシンチレータの多段化したものを開発したので、乳がん等の検査に役立つことが期待されている。
ヘルメット型PETで従来のPETの1.5倍の感度上昇が可能となった。
またMRIとPETの複合装置のadd-on PETやWGI(全方位型PET)も新たな機器開発として進めている。
この他、新しい線源としてSc-44(スカンジウム)とコンプトンカメラを組合せた機器も開発しているようである。
(ただこの辺りのことは資料に基づいて書いているものの、知識が不十分なので多少の間違いはあるかもしれない。:筆者注)
質疑応答では、私はF-18の運搬等は半減期110分と短いのでどうするのか、またPETの被ばくはどのくらいか聞いた。
運搬は放医研で直接作成することもあれば業者から買うこともある。
全国に7カ所あり、運搬もそれなりの方法で可能、とのことであった。
後者については数mSv程度とのことであった。
(5)では、特別講演「がんの放射線治療について」というタイトルで、日本アイソトープ協会の山下氏が講演した。
放射線治療の原理としては、放射線は人体を貫通し、人体深部のガンにも到達する。
放射線は細胞のDNAを損傷し、細胞を死滅させる。
正常細胞に比べて、ガン細胞の方がDNA損傷からの回復が弱い。
分割照射により、ガン細胞だけを死滅させ、正常細胞を生き残らせることが可能となる。
適切な使用線量(至適線量)を設定する、ということになる。
至適線量として65Gyなので、設定は70Gyとしている。
(私の場合はホルモン療法をしなかったので80Gyに設定された。:筆者注)
ガンの放射線治療は世界的には手術に代わる治療法になってきている。
外部放射線治療法(前立腺がん治療)のIMRTは固定具作成、計画用CT、MRI、治療計画、検証、放射線治療という流れで計画には約1週間必要となる。
IMRTは強度変調放射線治療で直腸線量の大幅な低減が可能になった。
直腸内ガスの量が多いとトイレに行って出すことになる。
ガスの量で前立腺の位置がずれるためである。
(私も40日の放射線治療期間中に治療直前に一度トイレに行ってウンチを出したことがある。この時は畜尿もできないので、再度1時間畜尿が必要になった。:筆者注)
機器の技術の進歩で、腫瘍部位の特定、照射部位の正確さ等のために、余分な被ばくがなくなり、副作用も減少したきた。
前立腺がんの放射線治療で72Gy以上の放射線治療、72Gy以下の放射線治療、外科手術の5年生存率は90%、50%、80%程度である。
重粒子線治療は1994年から始まり、今一部のガンでは保険適用が可能となっている。
ほぼ全身の部位のガンを治療できる。
放射線治療の副作用はガン細胞を死滅させる時にガンに隣接する正常細胞を損傷することにより起きる。
これは血液も照射するので白血球減少もある。
これらの副作用は照射中に起きるより、照射後3か月以上経過して起きる晩期副作用の方が治りにくいので重要である。
放射線誘発ガンも頻度は低いが発生する。
小線源治療は体内にラジウム線源、コバルト線源等を埋め込む治療法である。
I-125ヨウ素線源を前立腺がんに埋め込む例が示されている。
副作用は比較的少ないが、頻尿、切迫尿がみられる。
このI-125は外科手術のダヴィンチ手術(技術支援ロボットを使った手術)と拮抗している。
この他α粒子線治療(組織内照射:埋込型)も増えている。
α線はLET効果が高いので、ガンへのダメージも大きい。
効果が早く表れる。
放射線誘発ガンは二重ガン、三重ガンの発生頻度は約20%である。
重粒子線治療による発ガンはX線より少ない。
核医学診療推進国民会議は国民目線で核医学診療の環境整備を行っている。
これを推進していきたい、とのことであった。
質疑で私は前立腺がんで放射線治療のIMRTを受けている、副作用が心配なので、栄養を多少多めに摂って副作用を抑えようとしているがどうか、と聞いた。
山下氏は栄養を摂るのはいいことだと、木で鼻を括ったような回答しかしてくれなかった。
司会の人が私を気の毒そうにみているのと合わせて、一気に奈落の底に落ちたようなどんよりした気分になった。
以上で今回の講演は終了した。
期待していた放射線治療の講演には、質問の回答でがっかりしたものの、副作用の事などが整理されていたので、参加した甲斐はあったのかもしれない。
この講習会は刺激的な講演も多いので、今後もできる限り参加したいと思う。
<令和元年度(秋期)放射線安全管理研修会>
1.日時:2019年(令和元年)9月26日(木)10:00~16:30
2.場所:会場 文京シビックホール(小ホール)
3.主催:放射線障害防止中央協議会
4.共催:(公財)原子力安全技術センター
5.協賛:(公社)日本アイソトープ協会、医療放射線防護連絡協議会
6.受講料:10,000円(テキスト代を含む、消費税込み)
7.参加者:約100名(筆者の主観による)
8.プログラム
開会の挨拶 放射線障害防止中央協議会 会長 山下 孝 10:00 ~ 10:05
(1)「登録機関としての検査及び定期確認の留意点について」10:05 ~ 10:50
講師 山本 貢司 先生 原子力安全技術センター
(休憩 10分)
(2)「放射性同位元素等の規制に関する法律における防護措置について」11:00 ~ 11:45
講師 木村 俊夫 先生 日本アイソトープ協会
(昼休み 60分) 11:45 ~ 12:45
(3)「測定における不確かさの意味と考え方」12:45 ~ 13:50
講師 田中 秀幸 先生 産業技術総合研究所
(休憩 15分)
(4)「新世代の PET 装置開発」14:05 ~ 15:10
講師 山谷 泰賀 先生 量子科学技術研究開発機構(QST)
(休憩 15分)
(5)特別講演「がんの放射線治療について」15:25 ~ 16:30
講師 山下 孝 先生 日本アイソトープ協会
<前立腺がんの放射線治療6か月後の血液検査結果>
10月17日(木)に国立がん研究センターに行って、血液検査を受け、その後泌尿器科のM医師、その後に放射線科のK医師に面談を受けた。
検査結果としてはPSA=4.2と前回の3.2より上昇していた。
ただM医師もK医師も共に短期間ではまだわからないからまだ様子をみようということで、来年1月16日(木)に再度血液検査となった。
何か新たな治療を提案されるのでは、と少し怖かったのであるが、まあ現状維持ということなのであろう。
なお、以前放射線科の担当はI医師であったが、留学されたので、M医師が引き継いだ、とのことであった。
-以上-
この研修会の案内は7月初めに封書で届いた。
いつも参加しているので、定期的に案内が届くようである。
でもすぐには申込せず、7月25日((木))にFAXで申込している。
なぜかはわからない。
しかし、この事務局は未だに申し込みはFAXのようで、早くメールかネット申込にして欲しい。
FAXの欄にメールで申込確認希望の人はチェックというのがあって、これにチェックを入れると、ちゃんとメールで申込したことをメールで返信してくれるのである。
ただ、私は申込の質問欄に放射線治療の患者の被ばく管理について聞きたい、と書いておいたが、返信には放射線治療に関する質問をお願いする旨の文章が付け加えられていた。
まあ、これは仕方ないと思っていた。
当日の会場は文京区のシビックセンターの小ホールである。

図1 文京シビックセンターの外観
都営地下鉄三田線の春日駅の真上にある。
当日は駅から会場に着くまで少し迷った。
今回の5人の講演の概要について最初に書いておく。
RI施設の登録機関と検査の話、RIの法規に新たに付け加わった防護に関する話、測定という一般論、医療機器としてのPETの開発、がんの放射線治療の概要を話してくれるものである。
もちろん私は最後の講演を聞きたくて申込したので、後はおまけと思って受けた。
プログラムを末尾に添付する。
また、10月17日(木)に放射線治療6か月後の血液検査と結果の面談を受けた。
このことについても、最後尾に少し書いておく。
(1)では「登録機関としての検査及び定期確認の留意点について」というタイトルで、 原子力安全技術センターの山本氏が講演した。
密封または非密封の放射性同位元素を扱う事業所は放射線障害防止法(RI法)に基づき、原子力規制委員会に届け出して使用許可を得る必要がある。
使用許可を得た後は定期的に正しい使用法で使用しているか、機器が正常に動作しているか等を定期的に検査する必要がある。
原子力安全技術センターはその検査代理機関としての役割がある。

図2 原子力施設の検査の流れ
また、同センターは放射線取扱主任者試験を請け負う機関でもある。

図3 放射線取扱主任者試験の流れ
余分なことを付け加えると、悪名高い放射能拡散予測システム”SPEEDI”の管轄の機関でもある。
RI取扱事業所は約8千あり、そのうち検査・定期確認は約千事業所がある。
密封RIの事業所は5年に1回、非密封RI事業所は3年に1回定期検査がある。
期間の長さから言えば、非密封RIの方が厳しいことになる。
放射線発生装置の遮へい体の施設検査(設置時)の例では、コンクリートの厚さ等の施工図やコンクリート配合データや鋼板の材料証明書(ミルシート)等が必要になる。
放射線施設の定期検査では、技術上の基準に適合していること、となっている。
これは機器の性能が正常に動作しているか、正しい使用目的に沿っているか等を記録、外観、作動及び実測等で検査する。
過去の不適切事例では、扉インターロックのセンサー不良、流しの排水管や排気ダクトの腐食等があった。
放射線業務従事者の教育及び訓練も記録などで確認する。
被ばくの管理も重要な項目で記録でチェックする。
(私が現在放射線治療で被ばく管理をするべき、と考えている根拠がここにある。この放射線業務従事者の被ばく管理と放射線治療の患者も同等に扱うべきと考えているが、現在放射線治療の患者の被ばくは野放しといっては語弊があるが、各病院毎に管理されていて、患者が病院をはしごするともう不明となる。:筆者注)
RIの使用管理も記録等でチェックする。
排気・排水もチェックする。
安全技術センターにおけるデータ管理はISO9001(国際標準化機構の品質管理)に基づいている。
不正アクセス等への対処はリスク分析して脆弱箇所を見つけ改善する。
データにアクセスできる人を限定し、エリア管理・カギ管理等を行っている。
この後、質疑応答になり、私は教育・訓練等に違反があった場合は罰則はあるのか、福島の除染作業の被ばく管理はどうか聞いた。
前者について、罰則はない、とのことだった。
後者については知らないようであった。
(2)では「放射性同位元素等の規制に関する法律における防護措置について」というタイトルで、日本アイソトープ協会 の木村氏が講演した。
放射線障害防止法(RI法)に基づき、RIの取扱いを規制しているが、2017年9月に防護が追加された改正が行われた。
今年の9月1日より施行された。
なぜ防護が必要になったか。
RI事故が国際的にたびたび起きているからである。
1987年にブラジルでCs-137線源の処分においてその危険性を知らずに解体作業をして4人が死亡、300人が被ばくした。
2001年にグルジア(今のジョージア)で多数の放射線源の不法投棄があった。
2001年にアメリカで同時多発テロが起きて、2005年に核テロ防止条約が国連総会で採択された。
日本でも2008年に非破壊検査用のIr-192(イリジウム)の盗難等があった。
これらの核物質やRIの事故等を受けて、国際原子力機関(IAEA)はセキュリティの強化に乗り出した。
この流れに沿って、日本でも対策の必要性が認識され、RI法の防護付加の改定となった。
防護の要点は9個ある。
①防護区域設定と出入管理、②シャッター等の障壁、③施錠、④カメラ等の監視装置、⑤ファイアウォール等の不正アクセス対策、⑥関係機関への連絡手段、⑦防護の情報管理、⑧防護管理者指定等の体制整備、⑨緊急時対応手順書(緊急時マニュアル)
である。

図4 原子力施設における防護措置の一例((株)コンピュータシステム研究所のHPより抜粋)
これらの管理を行うことを特定RI防護規程として定め、これを届け出する。
防護に関する教育訓練も実施する。
RIの使用に関する報告を行う。
線源登録システムを用いたWeb報告となる。
事業所外運搬においても防護措置を取り、事前に原子力規制委員会や都道府県等に届け出を行う。
防護に関する記録も残しておく。
質疑応答では、私は停電の時にはどうするか聞いた。
設備自体はフェールセーフ(安全側に作動、普通はロックがかかる。)になっていると思うが、と歯切れの悪い答えであった。
午後(3)では「測定における不確かさの意味と考え方」というタイトルで、産業技術総合研究所の田中氏が講演した。
正直に言ってあまり興味のあるものではないと思っていた。
しかも午後一番の講演は睡魔が襲ってくる。
ただ、放射線測定においては、3%前後の計測誤差が常に発生するので、その注意喚起くらいの認識であった。
産総研の部署ではkgやメートルの国際的な管理をしている計量標準総合センターの人である。
今まではヤード、ポンド、尺、貫等の様々な単位があったが、SI単位系の導入により、kgや1m等で国際的に貿易などのやり取りができるようになった。
でもその測定値はどのくらい信用できるのか。
10㎝の棒を測定したら、10㎝±1㎝とかの不確かさが必ず出る。
この測定結果の質について国際的に合意しておく、ということで、校正証明書を発行するとかトレーサビリティ制度を構築するとかのシステムが必要になる。
1㎏原器(白金とパラジウムの合金)は国際的な標準であったが、今はプランク定数やシリコン結晶を用いたkg原器のようなものに変わりつつある。
(原子力学会誌2019年10月号にその間の事情が説明されている。)
トレーサビリティとは元々の意味は追跡ということだが、あるデータがあるとその関連する機器、人、体制、国際的な標準との関わり等を追跡できるようにしておくことである。
例えば、普通1㎏の物質を会社のはかりで測定したとする。
このデータの保証はどうなるか。
はかりは社内の標準の分銅を用いて校正している。
この社内の分銅は産総研等の標準分銅で校正している。
この産総研の分銅は国際的な標準となるkg原器で校正、またはプランク定数を用いたkg原器モドキで校正する、等の保証の追跡をしていくことになる。
ここにおいて不確かさ(測定誤差)は重要な意味を持つことになる。
後半は不確かさの実例の話で、その中に正規分布が登場した。
誤差はこの正規分布の中に表されているようであった。
質疑応答では、私はこの測定の中に相対性理論を考慮する必要はないか、と聞いた。
相対性理論では長さが伸び縮みするし、重さも変わってくるのであるが、田中氏が説明した範囲内では影響はないようであった。
(4)では「新世代の PET 装置開発」というタイトルで、量研機構(QST)の山谷氏が講演した。
核医学診断はRIを薬液注入して脳の血流を見る機能画像であり、脳のX線CTで形態画像を見るのと少し違う。
ここでSPECTとPETという2種類の機器が登場してきた。
前者はTc-99m等の単一γ線を放出してそれを画像化するのに対し、PETはF-18の陽電子の対消滅によるダブルγ線を計測する。
PETの長所は高感度で半減期が110分と短いので、不要な被ばくを避けられるという利点がある。
また最近DOI検出器というシンチレータの多段化したものを開発したので、乳がん等の検査に役立つことが期待されている。
ヘルメット型PETで従来のPETの1.5倍の感度上昇が可能となった。
またMRIとPETの複合装置のadd-on PETやWGI(全方位型PET)も新たな機器開発として進めている。
この他、新しい線源としてSc-44(スカンジウム)とコンプトンカメラを組合せた機器も開発しているようである。
(ただこの辺りのことは資料に基づいて書いているものの、知識が不十分なので多少の間違いはあるかもしれない。:筆者注)
質疑応答では、私はF-18の運搬等は半減期110分と短いのでどうするのか、またPETの被ばくはどのくらいか聞いた。
運搬は放医研で直接作成することもあれば業者から買うこともある。
全国に7カ所あり、運搬もそれなりの方法で可能、とのことであった。
後者については数mSv程度とのことであった。
(5)では、特別講演「がんの放射線治療について」というタイトルで、日本アイソトープ協会の山下氏が講演した。
放射線治療の原理としては、放射線は人体を貫通し、人体深部のガンにも到達する。
放射線は細胞のDNAを損傷し、細胞を死滅させる。
正常細胞に比べて、ガン細胞の方がDNA損傷からの回復が弱い。
分割照射により、ガン細胞だけを死滅させ、正常細胞を生き残らせることが可能となる。
適切な使用線量(至適線量)を設定する、ということになる。
至適線量として65Gyなので、設定は70Gyとしている。
(私の場合はホルモン療法をしなかったので80Gyに設定された。:筆者注)
ガンの放射線治療は世界的には手術に代わる治療法になってきている。
外部放射線治療法(前立腺がん治療)のIMRTは固定具作成、計画用CT、MRI、治療計画、検証、放射線治療という流れで計画には約1週間必要となる。
IMRTは強度変調放射線治療で直腸線量の大幅な低減が可能になった。
直腸内ガスの量が多いとトイレに行って出すことになる。
ガスの量で前立腺の位置がずれるためである。
(私も40日の放射線治療期間中に治療直前に一度トイレに行ってウンチを出したことがある。この時は畜尿もできないので、再度1時間畜尿が必要になった。:筆者注)
機器の技術の進歩で、腫瘍部位の特定、照射部位の正確さ等のために、余分な被ばくがなくなり、副作用も減少したきた。
前立腺がんの放射線治療で72Gy以上の放射線治療、72Gy以下の放射線治療、外科手術の5年生存率は90%、50%、80%程度である。
重粒子線治療は1994年から始まり、今一部のガンでは保険適用が可能となっている。
ほぼ全身の部位のガンを治療できる。
放射線治療の副作用はガン細胞を死滅させる時にガンに隣接する正常細胞を損傷することにより起きる。
これは血液も照射するので白血球減少もある。
これらの副作用は照射中に起きるより、照射後3か月以上経過して起きる晩期副作用の方が治りにくいので重要である。
放射線誘発ガンも頻度は低いが発生する。
小線源治療は体内にラジウム線源、コバルト線源等を埋め込む治療法である。
I-125ヨウ素線源を前立腺がんに埋め込む例が示されている。
副作用は比較的少ないが、頻尿、切迫尿がみられる。
このI-125は外科手術のダヴィンチ手術(技術支援ロボットを使った手術)と拮抗している。
この他α粒子線治療(組織内照射:埋込型)も増えている。
α線はLET効果が高いので、ガンへのダメージも大きい。
効果が早く表れる。
放射線誘発ガンは二重ガン、三重ガンの発生頻度は約20%である。
重粒子線治療による発ガンはX線より少ない。
核医学診療推進国民会議は国民目線で核医学診療の環境整備を行っている。
これを推進していきたい、とのことであった。
質疑で私は前立腺がんで放射線治療のIMRTを受けている、副作用が心配なので、栄養を多少多めに摂って副作用を抑えようとしているがどうか、と聞いた。
山下氏は栄養を摂るのはいいことだと、木で鼻を括ったような回答しかしてくれなかった。
司会の人が私を気の毒そうにみているのと合わせて、一気に奈落の底に落ちたようなどんよりした気分になった。
以上で今回の講演は終了した。
期待していた放射線治療の講演には、質問の回答でがっかりしたものの、副作用の事などが整理されていたので、参加した甲斐はあったのかもしれない。
この講習会は刺激的な講演も多いので、今後もできる限り参加したいと思う。
<令和元年度(秋期)放射線安全管理研修会>
1.日時:2019年(令和元年)9月26日(木)10:00~16:30
2.場所:会場 文京シビックホール(小ホール)
3.主催:放射線障害防止中央協議会
4.共催:(公財)原子力安全技術センター
5.協賛:(公社)日本アイソトープ協会、医療放射線防護連絡協議会
6.受講料:10,000円(テキスト代を含む、消費税込み)
7.参加者:約100名(筆者の主観による)
8.プログラム
開会の挨拶 放射線障害防止中央協議会 会長 山下 孝 10:00 ~ 10:05
(1)「登録機関としての検査及び定期確認の留意点について」10:05 ~ 10:50
講師 山本 貢司 先生 原子力安全技術センター
(休憩 10分)
(2)「放射性同位元素等の規制に関する法律における防護措置について」11:00 ~ 11:45
講師 木村 俊夫 先生 日本アイソトープ協会
(昼休み 60分) 11:45 ~ 12:45
(3)「測定における不確かさの意味と考え方」12:45 ~ 13:50
講師 田中 秀幸 先生 産業技術総合研究所
(休憩 15分)
(4)「新世代の PET 装置開発」14:05 ~ 15:10
講師 山谷 泰賀 先生 量子科学技術研究開発機構(QST)
(休憩 15分)
(5)特別講演「がんの放射線治療について」15:25 ~ 16:30
講師 山下 孝 先生 日本アイソトープ協会
<前立腺がんの放射線治療6か月後の血液検査結果>
10月17日(木)に国立がん研究センターに行って、血液検査を受け、その後泌尿器科のM医師、その後に放射線科のK医師に面談を受けた。
検査結果としてはPSA=4.2と前回の3.2より上昇していた。
ただM医師もK医師も共に短期間ではまだわからないからまだ様子をみようということで、来年1月16日(木)に再度血液検査となった。
何か新たな治療を提案されるのでは、と少し怖かったのであるが、まあ現状維持ということなのであろう。
なお、以前放射線科の担当はI医師であったが、留学されたので、M医師が引き継いだ、とのことであった。
-以上-
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