JAXA説明会に参加
JAXA説明会(2019/1/16)に参加した。
昨年12月10日にJAXA(宇宙航空研究開発機構)よりメールが来た。
今JAXAにも登録しているので、定期的にメールが来る。
この中で、宇宙医学・健康管理に関する意見募集(2018/12/10-2019/2/28)があるという。
宇宙という点では、宇宙飛行士が1日約1mSvと地上の半年分の被ばくをするので、地上の2倍の栄養を必要とするという原子力学会誌2016年11月号の香川論文を見てから以降注目していた。
また、今回私は前立腺がんの放射線治療を行うに当たり、この栄養について自分なりの栄養食品(サプリメント的)の収集を始めていることもあり、今回のメールの内容はちょっと気にかかるものがあった。
放射線に関しては、宇宙ステーションISSにいると、宇宙線による被ばくは不可避である。
この放射線被ばくに関連して、私の知識を何か活かせないか、と考えたのである。
この意見募集に関連ある説明会が今年1月16日(水)<私の前立腺がんの治療回答面接の前日>に開催されるというので、早速JAXAに参加申込をした。
すると、申込者が多く、会場を分けるかもしれない、とのメールも届いたが、このメールのせいもあって、結局少し早めに会場に着いたので、私は予定した会場に入れた。
会場に入れなかった人は隣室に入れられて、テレビ画面の説明となったらしい。
末尾にプログラム概要を添付する。
最初に開会挨拶として、宇宙飛行士だった若田光一氏が話した。
かつて毛利衛さんは2週間のISS滞在だったが、今は半年となっている。
星出さん、野口さんが今後搭乗予定である。
昨年3月には宇宙国際フォーラムがあった。
スペースX等宇宙旅行ビジネスも出ている。
また、月や火星への有人飛行も計画されている。
ISSとの技術ギャップ(宇宙滞在というISSと月・火星旅行での往復という旅行の間のギャップ)がある。
国内企業とのイノベーションを希望している。
我が国のプレゼンスを高めたいと思っている、と言われた。
最初に「国際宇宙探査の概要」というタイトルで、佐藤氏が講演した。
国際協力によって探査を行い、当面は月と火星を探査範囲とする。
研究の意義は活動領域の拡大とサイエンスの成果の2つである。
参加機関はISECGグループとして、米ロ日等の16か国である。
宇宙探査のロードマップを作成している。
2020年から10年くらいは月が目標となる。
図1 月や火星探査計画の概要
一気に月へ、というのでなく、月の近くにゲートウェイというISSの6分の1くらいの中継基地を作り、そこから月へと2段階の行程を考えている。
有人ミッションである。
JAXAのシナリオとしてはこのミッションに沿ったスリム計画というのがある。
月着陸、移動、サンプル持ち帰り(リターン)ミッションというものがある。
火星は直接着陸というのでなく、火星の衛星を目指す。
有人ロケットは米ロの技術がある。
水が見つかればそこに基地を作るという計画がある。
政府の計画では、月へのゲートウェイ、ランデブードッキング、宇宙医学、探査技術の4つを主に狙っていく。
電力系と推進系を最初に、次に居住系を考える。
30日滞在/年を当面の目標として、次第に伸ばしていく。
ゲートウェイの軌道は楕円で、地球との通信が常にできることや姿勢制御が楽である。
図2 月へのゲートウェイ(中継基地)構想の概要
有人月面探査のコンセプトは与圧ローバー(宇宙服を着ないで普通に活動できる乗り物らしい・注)に乗り、1千~1万㎞の走行距離を目指す。
健康管理のリスクや視覚障害、放射線障害のリスクが大となる。
次に「昨年の宇宙ミッションの経験・身体の変化」というタイトルで、宇宙飛行士の金井氏が講演した。
ISSは地上から400㎞離れている。
90分で地球1周する。
地球表面を撫でるような感じである。
照明は昼明るく、夜は暗い。
時計は世界標準時を使っている。
各個人にはマイクロバスのような部屋があり、6人の宇宙飛行士が滞在した。
半年生活したが、閉鎖環境である。
身体の変化としては宇宙酔い(体液が全身に均等分布)、頭がボーっとする。
無重力適応時期である。
免疫が低下する。
風邪をひくと困る。
その予防として、出発前の2週間は隔離される。
回転椅子を使った模擬生活をした。
足にバンドを巻く。
動脈を抑えず、静脈を抑える。
食べること、寝ることもある。
食事はクルーの士気を高める。
クルーで歓談する。
補給時は新鮮な食事が食べられる。
プライバシーも大切で電話ボックス型の中に国際電話を置いている。
トイレはある。
空気の流れを使う。
シャワーはない。
水を使わないシャンプーがある。
身体を拭う。
髪の毛はバリカンに掃除機で行う。
骨と筋肉が弱るので1日2時間半の運動が課されている。
精神心理支援も必要である。
ちょっとしたパーティーやギターのライブイベントをやったりする。
モニターで映画を見られる。
こういう息抜きも必要である。
医療の面では目の症状が出る。
眼底写真を撮る。(後で資料を見ると、放射線障害による若年性白内障らしい)
地球上の医師のアドバイスでケガの治療をする。
放射線が多い。
クルーに個人線量計が貸与される。
データを蓄積して地上に戻る。
無重力から重力へのシフトとなる。
起立性低血圧で頭がクラっとなる。
Gスーツを着ている。
バランス感覚のリハビリが必要になる。
三半規管を半年使わなかったので、目がグルグルする。
筋力低下で立てないわけではない。
1週間から10日で元に戻る。
リハビリは6週間行った。
次に「地上からのサポート:ISSでの健康管理について(医学、衣食住)」というタイトルで、三丸氏が講演した。
地上基地はジョンソンと筑波にある。
宇宙飛行士一人に医師一人がつく。
ジョンソンと筑波の連携も大事である。
募集・選抜からISSに行くまで、行ってからの生活の健康管理を行う。
宇宙食、チーム医療、衣食住、医学選抜、継続医学認定、体力測定、運動処方、飛行中、飛行後のサイクル、長期滞在による筋萎縮、平衡、体液シフト、骨量低下、スポーツセンターのような筋力トレーニング、ばねで抑える。
帰還直後よろよろ。
リハビリでメディシンボールを使う。
平衡感覚を元に戻す。
疾病対策は地上と連携する。
精神支援ではテレカンファレンスもある。
服は着っぱなし、汚れると洗濯しないで廃棄する。
300種類の食事があり、日本食は34種類ある。
新鮮な果物も必要になる。
住環境として、空気は24時間モニタリングしている。
次に「探査活動における宇宙生活の変化:技術ギャップ」というタイトルで、井上氏が講演した。
ISSには概ね半年滞在する。
1,2か月に1回補給がある。
補給船はISSに行く時は6~48時間、帰る時は3.6時間である。
ISSは400㎞上空におり、ジャンボジェット機1.5機分のスペースがある。
水や空気を循環している。
時計はグリニッジ時間を採用している。
地球上での半年分の放射線を1日で浴びる。
多国籍のクルーがいる。
共通語は英語とロシア語。
異文化であり、ストレスもかかる。
ストレス解消にテレビ電話やメールを使う。
健康管理は地上の医師と週1回面談する。
宇宙酔い、重力酔いがあり、骨量・筋力低下がある。
有酸素運動の器具がある。
月と火星に行った時にどう変わるか。
月は距離40万㎞、片道9日で行ける。
通信は数秒で到達する。
月面ダスト(火山灰)はとげとげしい。
アレルギーが出る可能性がある。
火星へは8000万km、片道1年かかる。
行程は3年で重力は0.38Gである。
火星は風化している。
ダストはないが砂嵐がある。
補給は難しい。
通信はリアルタイムでは行えない。
病気は自律的に治さないといけない。
資源・水はリサイクルする。
重力の再適用(火星の降りると0.38Gの重力で重力酔い)、放射線は太陽フレアない時は大丈夫である。
続いて、「誰もが宇宙に行くためには 技術ギャップ」というタイトルで、山村氏が講演した。
技術ギャップ(ISSでの活動と月・火星探査旅行との間の技術ギャップ)には別紙として、様々なギャップ項目があった。
簡単に概要項目だけ挙げると、全般、重力による神経学的影響、心疾患、代謝機能障害、歯科疾患、白内障等眼病、骨密度低下、椎間板損傷、尿路結石、胆嚢結石、免疫機能低下、粉じん、被ばく、起立耐性低下、心肺機能低下、筋力低下、船外活動、精神心理、栄養不足、空気等の環境、衛生、救急救命等である。
ほとんど身体に関する病気が発生するようである。
逆に言えば、地球上ではこれらのことがすべてうまく機能していることになる。
山村氏は多数ある健康のリスクを高中低の3つに分けた。
重力再適応(神経系、起立性、骨格筋)、ISSと違って自律制御できないといけない。
ミッションが長期化すると、筋力・骨密度低下は必須である。
椎間板障害もある。
宇宙では骨密度は測っていない。
眼病等も正確にはわかっていない。(多分私は放射線の影響と思う。)
菌種も地上で問題ないものが活性化するかもしれない。
外傷等の治療も地上からの通信やテレビを通して自分でやるしかない。
重力加速度(火星で0.38G)による不整脈発生の恐れもある。
代謝機能も落ちる。
食事も限られるので、生活習慣病発生のおそれもある。
遺伝子疾患の事前検査も必要である。
ISSでエタノールが使えないので、衛生の悪化が心配である。
服の使い捨ても洗濯できるようにしないといけない。
救命措置や死亡時の扱いも難しい。
放射線障害は大きな問題である。
次に「皆さまと一緒にやりたいこと」というタイトルで、込山氏が講演した。
オープンイノベーションは国際協力、民間ビジネスへの波及を狙う。
リスクの大きなものに優先して着手したい。
NASAやロシアに勝つ独自性のある開発をしたい。
2月28日まで募集しているのでよろしくお願いします、とのことだった。
最後に「宇宙探査イノベーションハブでの皆様との共同研究のご案内」というタイトルで、川崎氏が講演した。
イノベーションハブは2015年に発足した。
宇宙と地上の両方での研究開発である。
イノベーションハブの理念は社会に変革を起こすというもので、86の大学と46の民間社と提携している。
ソニーとの光ディスク研究では一品物から大量生産した成功例である。
地上の技術を宇宙へ持っていく。
月や火星に植民のイメージである。
建てる、操る、作る、住むという概念でその種(RFI:情報提供)から大きく育ててRFP(研究開発提案)とする。
アイデア型、チャレンジ型、問題解決型、ビジネスインパクト重視等が考えられる。
質疑応答では私は2回行った。
1回目は太陽フレアの放射線をどうするか、2回目は火星旅行での食糧生産のことである。
どちらも重要である、との何ともしまらない回答だったように思う。
他の人ではオーラルケア(口腔衛生)、心電図は取っているか、診断にAIを利用すれば、等があった。
隣の部屋の人からも質問あったと思うが忘れた。
私は他に、火星旅行の時間設定、水、3食のバラエティ感、身体障害者が宇宙飛行士になれるか、等を思い浮かべたが、あまり質問すると、進行の人に嫌われるし、手を挙げても当ててもらえなかった。
今私は放射線障害に関する提案2件と重力障害に関する提案1件を考えている。
2件のうちの1つは、地球上での電離圏とオゾン層のミニチュア化である。
電離層で宇宙線の荷電粒子を止めて、そこを通過した紫外線や制動放射線等をオゾン層で捕集して、地上に宇宙線が降り注ぐのを防止している。
これをISSの中で実現できないかと思っている。
私はこのアイデアに「電磁シールドシステム」と名付ける。
もう一つの放射線については、放射線の殺菌作用の防止である。
放射線はジャガイモの発芽を抑えたり、害虫を殺したりする。
でも逆に人間の腸内細菌も殺菌してしまう。
私は1年に1度、胃のレントゲン検査をしているが、この時の透視で相当腸内細菌が殺菌されているはずである。
これをISS内で考えると、当然宇宙飛行士たちは宇宙線で腸内細菌を殺菌されているはずである。
この殺菌作用を防止する宇宙服を考えられないか、と思ったのである。
具体的には上記の電磁シールドシステムが使えればいいのだが、規模が大きくなりすぎる。
次に考えたのが静電気利用である。
宇宙線のうち、粒子線はプラスの荷電を持っているから、プラスに帯電した衣服を考案できればいいのではないかと思う。
これを「静電シールド服」と名付ける。
重力障害に関しては、ちょっとあてずっぽうな考えである。
「ブランコ型ベッド」を考えた。
ブランコで寝ている時に常に微小な重力を感じると、骨密度低下等の速度を遅らせるのではないかというものである。
これらのことを情報提供として、JAXAに応募してみたいと思う。
まあ、多分結果は不採用になると思うが、何事もチャレンジである。
<将来有人宇宙活動に向けた宇宙医学/健康管理技術研究開発に係る説明会>
1.説明会概要(将来有人宇宙活動に向けた宇宙医学/健康管理技術研究開発 キックオフ)
本意見募集を実施するにあたり、技術ギャップの詳細及び今後の進め方等をご説明させていただくため、説明会(『将来有人宇宙活動に向けた宇宙医学/健康管理技術研究開発 キックオフ』)を開催いたします。
本研究開発にご関心をお持ちの方々のご参加をお待ちしております。
2.日時:2019年(平成31年)1月16日(水) 15:00~17:30
3.場所:日本橋 室町ちばぎん三井ビルディング8階(COREDO室町3)
4.申込概要対象:日本の法令に基づいて設立された法人の皆さま又は日本国籍を有する個人
5.定員:250名(主会場:180名、主会場に隣接するサテライト会場:70名)
6.プログラム
15:00~15:05開会挨拶
有人宇宙技術部門 部門長 若田光一
15:05~15:20
第一部:将来有人探査×JAXA
国際宇宙探査センター 宇宙探査システム技術ユニット ユニット長 佐藤直樹
15:20~15:30質疑応答
15:30~16:00
第二部:宇宙×健康管理×国際宇宙ステーション
1.ISSでの生活・体の変化について
宇宙飛行士グループ 金井宣茂
2.ISSでの健康管理について(医学、衣食住)
宇宙飛行士健康管理グループ 総括医長 三丸敦洋
16:00~16:10質疑応答
16:10~17:00
第三部:宇宙×健康管理×探査・LEO
1.探査活動における宇宙生活の変化
宇宙医学生物学研究グループ 主任研究開発員 井上夏彦
2.誰もが宇宙に行くためには
宇宙飛行士健康管理グループ 研究開発員 山村侑平
3.探査に必要な健康管理技術
宇宙飛行士健康管理グループ 研究開発員 山村侑平
4.宇宙医学・健康管理技術に係る研究開発の枠組みについて
4.1宇宙医学・健康管理技術に係る研究開発の枠組みについて
宇宙飛行士健康管理グループ 研究開発員 山村侑平
4.2皆さまと一緒にやりたいこと
宇宙飛行士健康管理グループ グループ長 込山立人
4.3宇宙探査イノベーションハブでの皆様との共同研究のご案内
宇宙探査イノベーションハブ 副ハブ長 川崎一義
17:00~17:10質疑応答
17:10~17:25全体への質疑応答
17:25~17:30閉会挨拶
JAXA 宇宙飛行士・運用管制ユニット ユニット長 田崎一行
7.背景
JAXA有人宇宙技術部門では、将来有人探査活動(月面・月周辺、火星表面・火星周辺)における宇宙飛行士の健康管理運用に向けて、これらに必要な宇宙医学/健康管理技術を獲得すべく研究開発計画の策定を進めております。
これまでに、現在の国際宇宙ステーション(ISS)で行っている健康管理運用と比較し、将来有人探査活動では技術的に足りないと思われる課題を「技術ギャップ」として識別しました。
今後、当該技術ギャップを埋めるための研究開発計画を策定していくにあたっては、将来の有人探査活動が国際協力で実施される計画であることを踏まえ、国際的に我が国の優位性・独自性を示すことができることや、今後の地球低軌道(LEO)等における民間活動及び地上医療への波及効果も考慮した上で、JAXAとして取り組むべき課題を明確にしていきたいと考えております。
8.意見募集(情報提供要請)概要
本意見募集は、上記研究開発活動の第一歩として、国内の企業、研究機関等の皆さまに、JAXAが識別した技術ギャップと皆様の事業又は研究開発活動との連携の可能性をお聞きするために実施するものです。
今後、ご意見・情報を提供いただいた方々との間で対話を実施し、段階的に研究開発計画を詳細化していく予定としております。
なお、本意見募集はJAXA宇宙探査イノベーションハブが実施しているオープンイノベーションハブ事業の枠組みの中で行う情報提供要請(RFI)としても位置付けており、宇宙探査イノベーションハブへの参加を希望する皆さまに対する研究提案募集(RFP)に繋げられるようにしております。
-以上-
昨年12月10日にJAXA(宇宙航空研究開発機構)よりメールが来た。
今JAXAにも登録しているので、定期的にメールが来る。
この中で、宇宙医学・健康管理に関する意見募集(2018/12/10-2019/2/28)があるという。
宇宙という点では、宇宙飛行士が1日約1mSvと地上の半年分の被ばくをするので、地上の2倍の栄養を必要とするという原子力学会誌2016年11月号の香川論文を見てから以降注目していた。
また、今回私は前立腺がんの放射線治療を行うに当たり、この栄養について自分なりの栄養食品(サプリメント的)の収集を始めていることもあり、今回のメールの内容はちょっと気にかかるものがあった。
放射線に関しては、宇宙ステーションISSにいると、宇宙線による被ばくは不可避である。
この放射線被ばくに関連して、私の知識を何か活かせないか、と考えたのである。
この意見募集に関連ある説明会が今年1月16日(水)<私の前立腺がんの治療回答面接の前日>に開催されるというので、早速JAXAに参加申込をした。
すると、申込者が多く、会場を分けるかもしれない、とのメールも届いたが、このメールのせいもあって、結局少し早めに会場に着いたので、私は予定した会場に入れた。
会場に入れなかった人は隣室に入れられて、テレビ画面の説明となったらしい。
末尾にプログラム概要を添付する。
最初に開会挨拶として、宇宙飛行士だった若田光一氏が話した。
かつて毛利衛さんは2週間のISS滞在だったが、今は半年となっている。
星出さん、野口さんが今後搭乗予定である。
昨年3月には宇宙国際フォーラムがあった。
スペースX等宇宙旅行ビジネスも出ている。
また、月や火星への有人飛行も計画されている。
ISSとの技術ギャップ(宇宙滞在というISSと月・火星旅行での往復という旅行の間のギャップ)がある。
国内企業とのイノベーションを希望している。
我が国のプレゼンスを高めたいと思っている、と言われた。
最初に「国際宇宙探査の概要」というタイトルで、佐藤氏が講演した。
国際協力によって探査を行い、当面は月と火星を探査範囲とする。
研究の意義は活動領域の拡大とサイエンスの成果の2つである。
参加機関はISECGグループとして、米ロ日等の16か国である。
宇宙探査のロードマップを作成している。
2020年から10年くらいは月が目標となる。
図1 月や火星探査計画の概要
一気に月へ、というのでなく、月の近くにゲートウェイというISSの6分の1くらいの中継基地を作り、そこから月へと2段階の行程を考えている。
有人ミッションである。
JAXAのシナリオとしてはこのミッションに沿ったスリム計画というのがある。
月着陸、移動、サンプル持ち帰り(リターン)ミッションというものがある。
火星は直接着陸というのでなく、火星の衛星を目指す。
有人ロケットは米ロの技術がある。
水が見つかればそこに基地を作るという計画がある。
政府の計画では、月へのゲートウェイ、ランデブードッキング、宇宙医学、探査技術の4つを主に狙っていく。
電力系と推進系を最初に、次に居住系を考える。
30日滞在/年を当面の目標として、次第に伸ばしていく。
ゲートウェイの軌道は楕円で、地球との通信が常にできることや姿勢制御が楽である。
図2 月へのゲートウェイ(中継基地)構想の概要
有人月面探査のコンセプトは与圧ローバー(宇宙服を着ないで普通に活動できる乗り物らしい・注)に乗り、1千~1万㎞の走行距離を目指す。
健康管理のリスクや視覚障害、放射線障害のリスクが大となる。
次に「昨年の宇宙ミッションの経験・身体の変化」というタイトルで、宇宙飛行士の金井氏が講演した。
ISSは地上から400㎞離れている。
90分で地球1周する。
地球表面を撫でるような感じである。
照明は昼明るく、夜は暗い。
時計は世界標準時を使っている。
各個人にはマイクロバスのような部屋があり、6人の宇宙飛行士が滞在した。
半年生活したが、閉鎖環境である。
身体の変化としては宇宙酔い(体液が全身に均等分布)、頭がボーっとする。
無重力適応時期である。
免疫が低下する。
風邪をひくと困る。
その予防として、出発前の2週間は隔離される。
回転椅子を使った模擬生活をした。
足にバンドを巻く。
動脈を抑えず、静脈を抑える。
食べること、寝ることもある。
食事はクルーの士気を高める。
クルーで歓談する。
補給時は新鮮な食事が食べられる。
プライバシーも大切で電話ボックス型の中に国際電話を置いている。
トイレはある。
空気の流れを使う。
シャワーはない。
水を使わないシャンプーがある。
身体を拭う。
髪の毛はバリカンに掃除機で行う。
骨と筋肉が弱るので1日2時間半の運動が課されている。
精神心理支援も必要である。
ちょっとしたパーティーやギターのライブイベントをやったりする。
モニターで映画を見られる。
こういう息抜きも必要である。
医療の面では目の症状が出る。
眼底写真を撮る。(後で資料を見ると、放射線障害による若年性白内障らしい)
地球上の医師のアドバイスでケガの治療をする。
放射線が多い。
クルーに個人線量計が貸与される。
データを蓄積して地上に戻る。
無重力から重力へのシフトとなる。
起立性低血圧で頭がクラっとなる。
Gスーツを着ている。
バランス感覚のリハビリが必要になる。
三半規管を半年使わなかったので、目がグルグルする。
筋力低下で立てないわけではない。
1週間から10日で元に戻る。
リハビリは6週間行った。
次に「地上からのサポート:ISSでの健康管理について(医学、衣食住)」というタイトルで、三丸氏が講演した。
地上基地はジョンソンと筑波にある。
宇宙飛行士一人に医師一人がつく。
ジョンソンと筑波の連携も大事である。
募集・選抜からISSに行くまで、行ってからの生活の健康管理を行う。
宇宙食、チーム医療、衣食住、医学選抜、継続医学認定、体力測定、運動処方、飛行中、飛行後のサイクル、長期滞在による筋萎縮、平衡、体液シフト、骨量低下、スポーツセンターのような筋力トレーニング、ばねで抑える。
帰還直後よろよろ。
リハビリでメディシンボールを使う。
平衡感覚を元に戻す。
疾病対策は地上と連携する。
精神支援ではテレカンファレンスもある。
服は着っぱなし、汚れると洗濯しないで廃棄する。
300種類の食事があり、日本食は34種類ある。
新鮮な果物も必要になる。
住環境として、空気は24時間モニタリングしている。
次に「探査活動における宇宙生活の変化:技術ギャップ」というタイトルで、井上氏が講演した。
ISSには概ね半年滞在する。
1,2か月に1回補給がある。
補給船はISSに行く時は6~48時間、帰る時は3.6時間である。
ISSは400㎞上空におり、ジャンボジェット機1.5機分のスペースがある。
水や空気を循環している。
時計はグリニッジ時間を採用している。
地球上での半年分の放射線を1日で浴びる。
多国籍のクルーがいる。
共通語は英語とロシア語。
異文化であり、ストレスもかかる。
ストレス解消にテレビ電話やメールを使う。
健康管理は地上の医師と週1回面談する。
宇宙酔い、重力酔いがあり、骨量・筋力低下がある。
有酸素運動の器具がある。
月と火星に行った時にどう変わるか。
月は距離40万㎞、片道9日で行ける。
通信は数秒で到達する。
月面ダスト(火山灰)はとげとげしい。
アレルギーが出る可能性がある。
火星へは8000万km、片道1年かかる。
行程は3年で重力は0.38Gである。
火星は風化している。
ダストはないが砂嵐がある。
補給は難しい。
通信はリアルタイムでは行えない。
病気は自律的に治さないといけない。
資源・水はリサイクルする。
重力の再適用(火星の降りると0.38Gの重力で重力酔い)、放射線は太陽フレアない時は大丈夫である。
続いて、「誰もが宇宙に行くためには 技術ギャップ」というタイトルで、山村氏が講演した。
技術ギャップ(ISSでの活動と月・火星探査旅行との間の技術ギャップ)には別紙として、様々なギャップ項目があった。
簡単に概要項目だけ挙げると、全般、重力による神経学的影響、心疾患、代謝機能障害、歯科疾患、白内障等眼病、骨密度低下、椎間板損傷、尿路結石、胆嚢結石、免疫機能低下、粉じん、被ばく、起立耐性低下、心肺機能低下、筋力低下、船外活動、精神心理、栄養不足、空気等の環境、衛生、救急救命等である。
ほとんど身体に関する病気が発生するようである。
逆に言えば、地球上ではこれらのことがすべてうまく機能していることになる。
山村氏は多数ある健康のリスクを高中低の3つに分けた。
重力再適応(神経系、起立性、骨格筋)、ISSと違って自律制御できないといけない。
ミッションが長期化すると、筋力・骨密度低下は必須である。
椎間板障害もある。
宇宙では骨密度は測っていない。
眼病等も正確にはわかっていない。(多分私は放射線の影響と思う。)
菌種も地上で問題ないものが活性化するかもしれない。
外傷等の治療も地上からの通信やテレビを通して自分でやるしかない。
重力加速度(火星で0.38G)による不整脈発生の恐れもある。
代謝機能も落ちる。
食事も限られるので、生活習慣病発生のおそれもある。
遺伝子疾患の事前検査も必要である。
ISSでエタノールが使えないので、衛生の悪化が心配である。
服の使い捨ても洗濯できるようにしないといけない。
救命措置や死亡時の扱いも難しい。
放射線障害は大きな問題である。
次に「皆さまと一緒にやりたいこと」というタイトルで、込山氏が講演した。
オープンイノベーションは国際協力、民間ビジネスへの波及を狙う。
リスクの大きなものに優先して着手したい。
NASAやロシアに勝つ独自性のある開発をしたい。
2月28日まで募集しているのでよろしくお願いします、とのことだった。
最後に「宇宙探査イノベーションハブでの皆様との共同研究のご案内」というタイトルで、川崎氏が講演した。
イノベーションハブは2015年に発足した。
宇宙と地上の両方での研究開発である。
イノベーションハブの理念は社会に変革を起こすというもので、86の大学と46の民間社と提携している。
ソニーとの光ディスク研究では一品物から大量生産した成功例である。
地上の技術を宇宙へ持っていく。
月や火星に植民のイメージである。
建てる、操る、作る、住むという概念でその種(RFI:情報提供)から大きく育ててRFP(研究開発提案)とする。
アイデア型、チャレンジ型、問題解決型、ビジネスインパクト重視等が考えられる。
質疑応答では私は2回行った。
1回目は太陽フレアの放射線をどうするか、2回目は火星旅行での食糧生産のことである。
どちらも重要である、との何ともしまらない回答だったように思う。
他の人ではオーラルケア(口腔衛生)、心電図は取っているか、診断にAIを利用すれば、等があった。
隣の部屋の人からも質問あったと思うが忘れた。
私は他に、火星旅行の時間設定、水、3食のバラエティ感、身体障害者が宇宙飛行士になれるか、等を思い浮かべたが、あまり質問すると、進行の人に嫌われるし、手を挙げても当ててもらえなかった。
今私は放射線障害に関する提案2件と重力障害に関する提案1件を考えている。
2件のうちの1つは、地球上での電離圏とオゾン層のミニチュア化である。
電離層で宇宙線の荷電粒子を止めて、そこを通過した紫外線や制動放射線等をオゾン層で捕集して、地上に宇宙線が降り注ぐのを防止している。
これをISSの中で実現できないかと思っている。
私はこのアイデアに「電磁シールドシステム」と名付ける。
もう一つの放射線については、放射線の殺菌作用の防止である。
放射線はジャガイモの発芽を抑えたり、害虫を殺したりする。
でも逆に人間の腸内細菌も殺菌してしまう。
私は1年に1度、胃のレントゲン検査をしているが、この時の透視で相当腸内細菌が殺菌されているはずである。
これをISS内で考えると、当然宇宙飛行士たちは宇宙線で腸内細菌を殺菌されているはずである。
この殺菌作用を防止する宇宙服を考えられないか、と思ったのである。
具体的には上記の電磁シールドシステムが使えればいいのだが、規模が大きくなりすぎる。
次に考えたのが静電気利用である。
宇宙線のうち、粒子線はプラスの荷電を持っているから、プラスに帯電した衣服を考案できればいいのではないかと思う。
これを「静電シールド服」と名付ける。
重力障害に関しては、ちょっとあてずっぽうな考えである。
「ブランコ型ベッド」を考えた。
ブランコで寝ている時に常に微小な重力を感じると、骨密度低下等の速度を遅らせるのではないかというものである。
これらのことを情報提供として、JAXAに応募してみたいと思う。
まあ、多分結果は不採用になると思うが、何事もチャレンジである。
<将来有人宇宙活動に向けた宇宙医学/健康管理技術研究開発に係る説明会>
1.説明会概要(将来有人宇宙活動に向けた宇宙医学/健康管理技術研究開発 キックオフ)
本意見募集を実施するにあたり、技術ギャップの詳細及び今後の進め方等をご説明させていただくため、説明会(『将来有人宇宙活動に向けた宇宙医学/健康管理技術研究開発 キックオフ』)を開催いたします。
本研究開発にご関心をお持ちの方々のご参加をお待ちしております。
2.日時:2019年(平成31年)1月16日(水) 15:00~17:30
3.場所:日本橋 室町ちばぎん三井ビルディング8階(COREDO室町3)
4.申込概要対象:日本の法令に基づいて設立された法人の皆さま又は日本国籍を有する個人
5.定員:250名(主会場:180名、主会場に隣接するサテライト会場:70名)
6.プログラム
15:00~15:05開会挨拶
有人宇宙技術部門 部門長 若田光一
15:05~15:20
第一部:将来有人探査×JAXA
国際宇宙探査センター 宇宙探査システム技術ユニット ユニット長 佐藤直樹
15:20~15:30質疑応答
15:30~16:00
第二部:宇宙×健康管理×国際宇宙ステーション
1.ISSでの生活・体の変化について
宇宙飛行士グループ 金井宣茂
2.ISSでの健康管理について(医学、衣食住)
宇宙飛行士健康管理グループ 総括医長 三丸敦洋
16:00~16:10質疑応答
16:10~17:00
第三部:宇宙×健康管理×探査・LEO
1.探査活動における宇宙生活の変化
宇宙医学生物学研究グループ 主任研究開発員 井上夏彦
2.誰もが宇宙に行くためには
宇宙飛行士健康管理グループ 研究開発員 山村侑平
3.探査に必要な健康管理技術
宇宙飛行士健康管理グループ 研究開発員 山村侑平
4.宇宙医学・健康管理技術に係る研究開発の枠組みについて
4.1宇宙医学・健康管理技術に係る研究開発の枠組みについて
宇宙飛行士健康管理グループ 研究開発員 山村侑平
4.2皆さまと一緒にやりたいこと
宇宙飛行士健康管理グループ グループ長 込山立人
4.3宇宙探査イノベーションハブでの皆様との共同研究のご案内
宇宙探査イノベーションハブ 副ハブ長 川崎一義
17:00~17:10質疑応答
17:10~17:25全体への質疑応答
17:25~17:30閉会挨拶
JAXA 宇宙飛行士・運用管制ユニット ユニット長 田崎一行
7.背景
JAXA有人宇宙技術部門では、将来有人探査活動(月面・月周辺、火星表面・火星周辺)における宇宙飛行士の健康管理運用に向けて、これらに必要な宇宙医学/健康管理技術を獲得すべく研究開発計画の策定を進めております。
これまでに、現在の国際宇宙ステーション(ISS)で行っている健康管理運用と比較し、将来有人探査活動では技術的に足りないと思われる課題を「技術ギャップ」として識別しました。
今後、当該技術ギャップを埋めるための研究開発計画を策定していくにあたっては、将来の有人探査活動が国際協力で実施される計画であることを踏まえ、国際的に我が国の優位性・独自性を示すことができることや、今後の地球低軌道(LEO)等における民間活動及び地上医療への波及効果も考慮した上で、JAXAとして取り組むべき課題を明確にしていきたいと考えております。
8.意見募集(情報提供要請)概要
本意見募集は、上記研究開発活動の第一歩として、国内の企業、研究機関等の皆さまに、JAXAが識別した技術ギャップと皆様の事業又は研究開発活動との連携の可能性をお聞きするために実施するものです。
今後、ご意見・情報を提供いただいた方々との間で対話を実施し、段階的に研究開発計画を詳細化していく予定としております。
なお、本意見募集はJAXA宇宙探査イノベーションハブが実施しているオープンイノベーションハブ事業の枠組みの中で行う情報提供要請(RFI)としても位置付けており、宇宙探査イノベーションハブへの参加を希望する皆さまに対する研究提案募集(RFP)に繋げられるようにしております。
-以上-
この記事へのコメント