一つの石のブログ−科学と将棋と教育を好む人へ

アクセスカウンタ

zoom RSS 放射線治療フォーラムに参加

<<   作成日時 : 2018/12/02 17:52   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 4 / トラックバック 0 / コメント 0

 放射線治療のフォーラムに参加した。

 10月3日に原子力学会よりメールが来た。

 前立腺がんの告知を受けたのが10月16日だから、その前にすでにこのお知らせが入っていた。
 医療被ばくに興味があったからすぐに申込した。

 その時に事前質問受付という欄もあったので、以下の3点を書いておいた。
  (1)医療被ばくの管理体制
  (2)医療被ばくにおける線量計の開発
  (3)放射線医療と他の治療の併用について

 すると10月15日に、事務局より当日に質問してください、とのメールが返ってきた。
 そんな長期間覚えていられるもんか、と思った。

 11月19日(月)の12時50分という中途半端な時間に開始ということで、家を出るのも変な時間に出た。
 東西線の早稲田駅に着いてペットボトルのお茶500mlを買った。
 地上に出てみても、すぐ近くに地図がないから開催場所がわからない。
 でも早稲田駅というからには早稲田一色であろうと思った。
 ウロウロしてキャンパスらしきところに入ると守衛さんらしき人が何人かいた。
 その人に開催場所の小野記念講堂を聞くと、あちらと言って指さして教えてくれた。
 私の前を歩いていた人もやはり同じことを別の守衛さんに聞いていたようで、同じように歩いて行った。

 受付で名前を言い、私のPCからスマホへ転送しておいた本フォーラムの受付メールを見せた。
 その後、参加費5,000円と聞いてびっくりした。
 てっきり無料と思っていたのである。

 後でメールで確認してみたら、下の方にこっそり一般参加者5,000円と書いてあった。

 資料を受け取り、席に座って読んだ。

 OHPの形式ではなく、1人の講演者が2,3枚の概要を説明しているだけであり、この講演のプレゼンテーション資料は11月26日から1週間の間、IDとパスワードで管理し、参加者のみわかる形で公開する、とのことであった。

 私はこの公開資料を11月26日に入手した。
 でも特許に絡むものは非公開ということで、(3)(5)(6)の資料はなかった。
 しかし、11月29日に再度HPを覗くと、(3)(6)の資料は掲載されており、(6)のみ掲載がなかった。

 最初に、はい島氏があいさつした。
 このフォーラムは既に16回を数えているということで、第15回までの概略を話した。
 21世紀の医療という観点で始めたようであり、最近では人工知能AIやロボット技術等についても講演したようであった。

 (1)は「放射線治療の過去・現在・未来」というタイトルで川崎医科大学の平塚氏が講演した。
 私も放射線治療についてはあまり知らない。
 こうしたシンポジウムには出ているが、系統だって習ったというのではなく、シンポジウムで断片をかじる程度のものである。
 放射線治療は1941年のブラッセル大学のラジウム使用から始まった。
 現在のがん治療は手術、放射線、抗がん剤の3本柱があって、前の2つは局所療法で、抗がん剤は全身療法である。
 私は今年のノーベル賞の免疫療法も加えて4本柱ではないかとふと思ったが、まだこの免疫療法は対象となるがんへの適用が多くはないようであるから、まだ4本柱とはいえないのかもしれない。
 今後の研究が進むと4本柱になるかもしれない。
 私の前立腺がんも免疫療法の対象にはまだ入っていないようである。

 放射線治療の問題点としては、腫瘍周辺部の正常な組織に放射線が照射されることに伴う放射線障害、がんの治癒線量まで照射できない、手術に比べて局所制御の点で劣るがんが少なくない、ということがある。
 いかにして周辺正常組織に放射線を当てないか、ということが放射線治療での最大の研究テーマである。

 これに対して2つのアプローチがある。
 生物学的アプローチと物理学的アプローチである。

 前者の生物学的アプローチでは、正常細胞に比べ、がん細胞により多くの放射線損傷を引き起こす試みで、化学放射線治療、温熱併用放射線治療、増感剤併用等がある。

 後者の物理学的アプローチでは、物理工学的な手法を用いて線量照射方法の改善を行うものである。
 CT、MRI、PET画像から得られたがん領域のみに大量の放射線を照射し、周辺の正常組織には少量の線量しか照射しない治療技術が開発されてきた。
 定位放射線治療、強度変調放射線治療(IMRT)、高線量率組織内照射治療、粒子線治療が代表的なものである。

 ここから先は平塚氏は端折って、BNCTというホウ素中性子捕捉療法(化学放射線治療に近い?)に移ったのであるが、私は後日これらのアプローチを少し調べた。

 化学放射線治療は放射線を照射する前に体内に化学薬品を入れて照射の増感をするものや抗がん剤併用の治療法であり、化学療法と放射線療法の併用といえるかもしれない。
 分子標的治療薬等も開発されてきており、免疫療法との境がなくなるのかもしれない。
 適用がんは肺がん、膵がん、直腸がん、子宮頸がん等で前立腺がんは入っていない。

 温熱併用放射線治療では、がんが熱に弱いことから考えらえたもののようである。
 高周波等を使って患部を温めるもので、42.5℃以上でがんが死滅するらしいが、それだけの熱を加えると正常組織もダメージを受けそうである。
 ただ、この温熱療法は他の療法との併用も可能で、前立腺がんも適用できるようである。
 また療養中の生活の質(QOL:Quality of Life)を維持できるものである。

 定位放射線治療は1方向から放射線を照射するのではなく、3次元的に照射することで、周辺の正常組織へのダメージを減らす方法である。
 脳腫瘍、肺がん、肝がん等に適用する。
 一度に照射するSRS法と複数回に分けて照射するSRT法がある。

 強度変調放射線治療(IMRT)はこの3次元照射による方向に強弱をつけて、腫瘍の形が不整形で複雑な腫瘍に適用可能で、前立腺がんにも有効な方法とされているようである。
 また保険適用もでき、1日30分程度の治療でQOLも確保できるようであり、これが一番今の私の前立腺がんに適合した治療法のように思う。

画像

        図1 定位放射線治療とIMRT治療の概要

 高線量率組織内照射治療は外部線源から患部照射、とは違って、内部線源を使って患部近くに挿入し、内部から照射する治療法のようである。
 でもこれは内部というからには多少患部付近を切除して挿入するようである。

 粒子線治療は上記のX線で照射するのと違って、α線等の荷電粒子を患部に照射するもので、現在は陽子線と炭素イオン線らしい。
 これはまだ開発中のイメージが強く、またがん細胞に強いダメージということはその周りの正常細胞のダメージも強く起こるということであり、肺がんや食道がん等に適用されるようである。


 (2)は「ジンバル型X線治療装置の開発と新たな照射技術」というタイトルで、日本赤十字の平岡氏が講演した。

 はじめに、ということで上記の定位放射線治療とIMRTのことを説明された。
 前立腺がんに対してIMRTが効果的であることがわかったが、線量が72Gyという高線量である。

 3Gy程度で脱毛や紅斑(やけどのような赤いしみ状のもの)ができる。
 10〜20Gyで水泡、30Gy以上で潰瘍ができる。

 考えてみれば、放射線を被ばくしないように、被ばくすると、細胞がダメージを受けると習った。
 それが今回の放射線治療はこの考え方と真逆である。

 がん細胞を消滅させるために、やけど以上の放射線を照射しないと治療効果がないということである。
 このことで、30Gy以上だと潰瘍ができるということは、がんを治療して、他の潰瘍ができる可能性もあることになる。
 ただ、今までの治療経験ではそういうことは起こらなくて、長く生存できたという症例報告が多いようである。

 平岡先生の話はこれがメインではなくて、メインはジンバル型X線治療装置で、肺がんのような動く標的に対してのX線追従型のものらしい。
 私の症例にはあまり参考にならないので、他は割愛する。

 (3)は「更なる低侵襲化を目指した強度変調陽子線照射システムの技術開発と有効性検証」というタイトルで、国立がん研究センターの秋元氏が講演した。
 この技術は陽子線治療ということであり、IMPTというIMRTと似た手法であるが、頭部がんや鼻腔腫瘍等に適用しているらしい。
 前立腺がんにも適用した例が示されていた。
 こちらも優れた方法であるらしいが、やはり60Gyくらいの高線量になるらしい。

 (4)は「日本初となる回転ガントリーを用いた重粒子線がん治療」というタイトルで、放射医研の白井氏が講演した。
 炭素イオン線を用いた放射線治療で、粒子線治療に相当する。
 前立腺がんにも適用しており、約3千件(27%)の患者がいるようである。
 ガントリーという意味は、360度どの方向からも放射線を照射できる箱型の治療機器の名称のようである。
 炭素線の治療で、陽子線の3倍曲がりにくいので、それを改善するための超伝導磁石の開発等を行っているらしい。
 ここでもIMRTと同様の手法でIMCTという治療方法もあるらしい。

 (5)は「腫瘍特異的な低線量放射線治療を実現する無機/有機ハイブリッドナノ粒子の有効性評価」というタイトルで、神戸大学の西村氏が講演した。
 この西村氏の講演では、今までの機器関連ではなく、放射線の効きを高める増感剤の話である。
 過酸化チタンとポリアクリル酸を結合した増感剤を作り、これに患部に作用しやすいように加工し、静脈から注入して患部に集め、それに放射線を照射して、線量を少なくして、効果を高める手法のようである。

 (6)は「ホウ素中性子捕捉療法用加速器の開発と臨床研究」というタイトルで、大阪医科大の川端氏が講演した。
 この講演は最初の平塚氏も述べたホウ素中性子捕捉療法であり、ホウ素Bの同位体のB-10 を薬剤に結合させ、がんの患部に集中する。
 このB-10を原子炉等で発生した中性子を照射して、B-10(n,α)Li-7の反応で、がんにアルファ線を照射することになるものである。
 患部付近にしか作用しないので、副作用が少ないと期待されるが、患部にこの薬剤を集中させることや中性子の発生源が原子炉(京大のKUR原子炉)等の大型機器の傍でなければ使えない等の欠点があった。
 それを小型加速器を使うことで一部を改良しようとしているらしかった。

 (7)は「放射線を利用した医療機器に対する薬事規制」というタイトルで、厚生労働省の宮坂氏が講演した。
 医療機器の製造・販売についての薬事規制は手続きが面倒な気がしている。
 ざっというと、研究開発、臨床、申請、承認審査、承認、保険適用、製造販売の流れである。
 これ以上は立ち入っても意味はないので、以下は省略する。

 この後の総合討論では、上記の講演者が壇上に上がり、事前にあった質問に答えるという形式であった。
 私の他に2件ほどあったのだが、内容は忘れた。

 私の事前に出した質問を再掲する。
  (1)医療被ばくの管理体制
  (2)医療被ばくにおける線量計の開発
  (3)放射線医療と他の治療の併用について

 (1)については、医療従事者の被ばく管理体制と勘違いされたようである。
 これは普通の放射線業務従事者と同じで、線量計をつけて線量管理しているのは当たり前である。
 私は患者の医療被ばくのことを言いたかったのであるが、これはまだ認識がないということのようである。

 (2)の線量計も(1)と同じで、医療関係者のことと捉えられたようである。

 (3)の放射線治療と他の治療の併用ということで、私の場合は手術による前立腺摘出と周囲に浸潤しているかもしれない患部に放射線照射をするという治療法を勧められていたので、それを聞きたかったが、誰もその経験を話せる講演者はいなかった。
 他に司会が、どの治療法がどのがん患部に適しているかのマップのようなものはないか、と聞いていたが、この疑問にも誰も回答できないようであった。

 講演では、一つの分野のスペシャリストは他の分野を知らないことが多く、ジェネラリストが求められる所以であるが、日本ではこの分野が遅れているような気がする。

 以上で今回のフォーラムは終了した。

 前立腺がんに関する情報は多少得られ、また、この情報からさらに調べていくと色々なことがわかってよかったと思う。

 12月以降に前立腺がん用の放射線治療が開始される予定であるが、今は全くの白紙状態で、12月の予定は一切入れていない。

 後は運を天に任す心境である。


<第16回 医療機器フォーラム>
 「放射線治療の最前線」
 1.日時:2018年(平成30年)11月19日(月)12:50〜17:00
 2.場所:早稲田大学 小野記念講堂 地下2階(東京メトロ東西線 早稲田駅より徒歩5分)
 3.主催:医療機器フォーラム
 4.共催:日本薬学会レギュラトリーサイエンス部会
 5.参加費:5,000円
 6.プログラム
  12:50-13:00 開会の辞:はい島由二(国立衛研)(はい:草かんむりに配)
  13:00-13:20 (1)放射線治療の過去・現在・未来:平塚純一(川崎医科大学)
  13:20-13:50 (2)ジンバル型X線治療装置の開発と新たな照射技術
            (Dynamic Tumor Tracking、Dynamic WaveArc)の実現
            :平岡眞寛(日本赤十字和歌山医療センター)
  13:50-14:20 (3)更なる低侵襲化を目指した強度変調陽子線照射システムの技術開発と有効性検証
            :秋元哲夫(国立がん研究センター)
  14:20-14:50 (4)日本初となる回転ガントリーを用いた重粒子線がん治療
            :白井敏之(放射線医学総合研)

   (休憩、事務局による昨年度会計報告)

  15:00-15:30 (5)腫瘍特異的な低線量放射線治療を実現する無機/有機ハイブリッドナノ粒子の有効性評価
            :西村勇哉(神戸大学)
  15:30-16:00 (6)ホウ素中性子捕捉療法用加速器の開発と臨床研究
            :川端信司(大阪医科大)
  16:00-16:15 (7)放射線を利用した医療機器に対する薬事規制
                    :宮坂知幸(厚生労働省)
   (休憩 ステージ設営)

  16:20-16:50 総合討論:座長/平塚純一(川崎医科大学)
  16:50-17:00 閉会の辞:増田茂樹(株式会社カネカ)

 7.概 要:
 近年、我が国では2人に1人が「がん」になり、3人に1人は「がん」で亡くなる時代を迎えている。
 がん治療法の一種である放射線治療の歴史は、レントゲン博士がX線を発見した1895年に始まり、その後治療機器およびその周辺機器、ならびにその基礎となる放射線生物学の進歩に支えられ、放射線治療は手術療法、抗癌剤治療と並ぶがん3大治療法の一つとして認知されるに至った。

 放射線は手術と同じく、腫瘍とその周辺のみを治療する局所治療である。
 そのため如何にしてがんのみに限局して損傷を与えるかが今も放射線治療最大の研究テ−マである。

 現在、放射線局所治療を支援する様々な技術開発が急速に進展している。

 このような背景を考慮して、第16回医療機器フォーラムでは、放射線治療の研究開発に関して、X線、陽子線、重粒子線、中性子線を利用した医療技術の最新動向と実用化支援に至るまでの話題提供を行うとともに、医療機器における規制の考え方について情報を提供する。

 また、パネルディスカッションを通して、放射線を利用した医療技術の現状と課題を産官学関係者で共有し、放射線治療の更なる発展へと繋げたい。

     −以上−

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 4
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
ガッツ(がんばれ!)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
放射線治療フォーラムに参加 一つの石のブログ−科学と将棋と教育を好む人へ/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる