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zoom RSS 放射線安全管理研修会に参加

<<   作成日時 : 2018/10/14 09:16   >>

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 放射線安全管理研修会(9/20(木))に参加した。

 この研修会は毎年受講しているので、今年6月にはすでに封書で案内が来ていたのだが、3か月先というのですっかり忘れていた。

 8月16日に原子力学会よりこの研修会の案内メールが来て、前に来ていたのを思い出したが、資料はどこにいったかわからない。
 仕方ないので、同メールに書いてあったURLから申込用紙をダウンロードして、WORD形式のものに名前等を記入して、それをPDFに変換してプリントアウトした。
 それから研修会事務局に宛ててFAXで送った。
 インターネットで申込できればいいが、この事務局は相変わらず郵送かFAXの申込のみである。

 申込用紙の中に、事前に質問があれば、というので、医療被ばく管理について聞きたい、と書いていた。
 研修会の2、3日前に事務局から連絡が来て、要望には添えないかもしれないので、当日の会場の様子を見て質問してもらいたい、とのことだった。

 当日朝、会場に行く途中にコンビニで500mlのお茶とおにぎり2個と毎日新聞(朝読む時間がなかった)を買った。
 会場には9時半には着いて、受付で1万円を払い、資料とアンケートを受け取った。

 プログラム概要は末尾に添付する。

 1は「放射線障害防止法関係の最近の動向」というタイトルで、規制庁の堀越氏が講演した。
 この話は今年の2月の研修会でも取り上げていた。
 主眼となるのは、原子炉等規制法の改正に連動して、テロ対策等を盛り込んだ予防規程の変更届を来年8月までに出す、ということである。
 予防規程の内容で、よくある質問では、例文が欲しい、どこまで詳細に書けばいいか、等がある。
 規制庁で例文を作るわけにはいかないが、予防規程に定めるべき事項に関するガイドを作成しているので、それをホームページで確認して欲しい、とのことだった。
 業務の責任者は個人名を書くと、その人が異動するとまた届け出し直しとなるので、職名を書く、予防規程は事業所毎に書く。
 主任者(第一種放射線取扱主任者等)の代理は複数名を書いていることもあるが、職務や権限を規定しておくことが必要になる。
 教育訓練の時間数についても質問が多い。
 教育訓練の時間数を決定する手順を定めておく。
 具体的な時間数は下部規程でもよい。
 管理状況の報告はいつ出すか。年度の次の4月から3か月の間のどこでもよい。
 予防規程のドラフトチェックして欲しい、との要望もあるが、それはできない。
 ただ、提出されたものは立入検査でもチェックするので、主任者に丸投げというのでなく、マネージメント層も関与したものとすることが大事、とのことやPDCAサイクルを回してやるように、とのことだった。

 緊急時の連絡は現場のわかる人であれば、主任者である必要はない。
 震度5以上の地震等で連絡をして欲しい、とのことだった。
 H29年度の立入検査では250件の立入検査で約10%の事業所が不備を指摘されていた。
 記帳ミスが約半分あった。

 私は質問で、この前の倉敷の水害のような場合はどうするのか、主任者が病気などで長期療養する場合に代替要員がいない場合はいつまで主任者不在は許されるか、外部の主任者で代理は可能か、と聞いた。
 前者の場合は大規模な自然災害の場合には連絡するようにしているので、それは問題ない。
 後者に関しては会場から別の担当者が出てきて、主任者不在の時は試験等の業務はできない、外部のピンチヒッター的な人では内部の様子がわからないので、基本的には難しい、と回答した。

 2は「放射線安全の理念と防護の体系」というタイトルで、東京大学の飯本氏が講演した。
 飯本氏は東大の放射線安全推進主任者で、東大の中の放射線安全の責任者である。
 飯本氏の説明ポイントは国際的な流れを知っていれば、それが日本に跳ね返ってくる、とのことで、主にIAEA(国際原子力機関)の動向を詳しく説明した。

 IAEAが重要と考えるトップ13と、事例研究として、眼の水晶体の線量管理と核燃料物質やNORM(自然界にある放射性物質:ウランU、トリウムTh、カリウムK(K-40))を取り上げていた。
 トップ13(Future Priorities)としては以下の項目がある。

 (1)全般的安全要件GSR Part3 (この中に眼の水晶体、核燃料物質問題も含む)
 (2)規制免除(Exemption)とクリアランス(Clearance):除染の時に放射性の有無の基準値で判別
 (3)重要度に応じた管理、法規制(Graded Aproach)、重大事故かどうかで規制レベル変化
 (4)食料と飲料水の中の放射性物質
 (5)医療用以外の放射線源使用での被ばく
 (6)作業者の線量被ばく低減
 (7)家や仕事場でのラドン
 (8)国連の放射線委員会UNSCEAR等との連携
 (9)評価と実践での不確実性、保守主義、比例関係(発がんの100mSvしきい値、LNT等?)
 (10)実在する被ばくの管理(医療被ばくか?)
 (11)獣医の薬剤の放射線防護
 (12)福島原発事故の教訓
 (13)パイロット・CAや宇宙飛行士の被ばく

 事例研究の水晶体の線量管理ということでは、最近原子力規制委員会で議論していたように思う。
 眼の水晶体の被ばくは従来150mSv/年で管理されていた。
 これが福島原発事故で多くの作業員が被ばくしたことで問題となる他、医療現場でも従来から問題となっていたようである。
 この規制値を厳しくする(100mSv/5年、1年最大50mSv)ことが議論されていたようである。
 自然放射能や宇宙線等での普通の人の被ばく線量が2.4mSv/年であることを考えると、かなり大きな数値での議論であり、100mSvというのは発がんの割合が0.1%高くなるかどうかという値である。

 眼は放射線防護する時に防護できないものの一つである。
 防護衣等を着ていても眼にはない。せいぜい鉛入りゴーグルかサングラスくらいである。
 被ばくが進むと、白内障等のおそれもあることから、遅まきながら管理対象として厳しくなったのはよいことである。

 もう一つの事例研究の核燃料物質やNORM(自然界にある放射性物質でウラン、トリウム、カリウム等)の問題では、大学では結構大きな問題となるかもしれない。
 昔の大学ではウラン等を入手していろんな実験をしていて、もう忘れらているかもしれないが、時限爆弾的にどこかの研究室の奥に隠れていることがありそうである。
 ウラン1g、トリウム3g以上の量、また放射能濃度がU-238/Th-232で1Bq/g、 K-40は10Bq/g以上が規制されることが検討されている。
 U−238が1gの時に12,400Bq、Th-232が1gで4,100Bqとなるので、1r単位でも引っかかる可能性があることになる。

 私は質問で、この前京都大学でRI施設の火災が発生した等の事故が起こっている、大学間の連携はあるか、水晶体の被ばく管理は必要だが、水晶体の栄養による回復の研究はあるか、と聞いた。
 前者に関しては、大学の協議会のようなものがある、との答えだった。
 しかし、飯本氏の説明ではそのような協議会の話は一切出てこなかった。
 後者に関しては必要かもしれない、というようなあいまいな回答であった。

 3は「放射性核種(α線放出核種を含む)の医学利用と合理的な安全管理」というタイトルで近畿大学の細野氏が講演した。
 放射線医療(核医学)は放射性医薬品とイメージングRI内用療法という二つの治療法があり、ここでは後者のイメージングRI内用療法に焦点を当てて話した。
 さすがに医療関係の話なので、医学用語が難しくてよくわからなかった。
 最初に2種類の内部放射線を利用する方法(ガンマ線2本利用とガンマ線1本利用)を説明した。
 服用する薬剤中に炭素C-11等の陽電子を放出する分子を混入して陽電子-電子対消滅で発生する2本のガンマ線を利用したPETと、服用する薬剤中にタリウムTl-201等の単一ガンマ線を放出する分子を混入して1本のガンマ線を利用したSPECTという2種類である。
 共にX線照射のうちの外部線源を内部線源に置き換えたようなものである。

 最初の頃は放射性ヨウ素を使った甲状腺がん治療を行った。
 治療は1943-1946という第二次大戦前後に行われ、累積350Gy(ガンマ線単一換算でのどに350Sv、全身に被ばくすると致死量となるような高線量)を投与してがんは改善されたが、甲状腺機能は消失した。
 今は甲状腺の一部摘出後の治療に使っているようである。
 日本では外来治療でヨウ素I-131を1,110MBq投与するらしい。
 この時1m離れた位置では約70μSv/hの線量がある。
 通常の家(「一つの石」の家において、「はかるくん」で福島事故以前に測った時に確か0.03μSv/h)の約2,000倍の線量率である。
 普通原子力施設から特殊容器で放射線源を持ち出す場合には表面で5μSv/h以下であるから、人間が体内で持ち出している量はこの10倍くらいになる。
 他の内用治療ではイットリウムY-90を使った悪性リンパ腫の治療、ルテチウムLu-177を使った膵臓腫瘍(?)等の例を紹介していた。
 これらは患部にベータ線核種をつけた薬剤を投与して、がんをベータ線で照射して治療するが、最近はアルファ線核種を使ったラジウムRa-223等の治療も行われているようである。

 私は質問で治療に使っている核種でアルミニウム族が多いのはなぜか聞こうと思ったが、この細野先生の質疑は私以外の事前アンケートの質問(どういうものだったか覚えていない)に答えて、さっさと終わった。
 医療用被ばくについて聞かれることを避けたのかもしれない。
 通常の放射線従事者被ばく管理の1,000倍のオーダーの被ばく線量を受けているのはやはり尋常ではない気がする。

 4は「PIXEでなにがわかるか?−高エネルギ利用の可能性を求めて−」というタイトルで岩手医科大学の世良氏が講演した。
 最初にこんな場を設けていただいて、ということから話は始まった。
 どうも世良氏の退職祝いの講演のようで、どうせ大したことはないだろうとたかをくくっていた。
 しかし、この世良氏は本物であった。東北大卒であり、原子物理学を専攻していた。
 その関係でサイクロトロンという加速器、そこからPIXEという分析機器に至る経歴であった。

 このPIXEはParticle Induced X-ray Emissionの略で、簡単に言えば、粒子を加速して分析対象物質に照射し、そこから出てくる元素毎に異なる固有のX線が飛び出してくる、このX線を解析して分析対象物質の成分を調べる技術である。
画像

         図1 PIXE分析器の概要(早稲田大学宇田氏の1992年資料より抜粋:図は前半のサイクロトロン加速の図はない。)

 ナトリウムNa以上の元素の同時短時間分析ができるのが大きな特徴である。
 最初は医学の研究だったのが、だんだん環境分野にシフトしていき、有害元素による環境汚染等に関わるようになった。
 最初は秋田県大潟村で2006年に起きたカラスの大量死事件で、この分析はわずか10秒でタリウム中毒と分析した。
 殺鼠剤としてのタリウムをどこかで摂取したらしい。

 次に毛髪等の分析で体内の薬剤成分の分析へと移行し、小動物の体液成分の分析等も行った。
画像

        図2 PIXE分析例

 近年は環境分析の要望が多くなった。
 中国、インド、東南アジアの井戸掘りで出てくるヒ素汚染による中毒や闇での金の精錬で使われる水銀(金鉱から金鉱石を掘ってきて、金と水銀のアマルガムを作り、そこから水銀を飛ばして金を得て、それを売る)での水銀中毒が蔓延しているらしい。
 この時の水銀やヒ素の毛髪中濃度を見ると、水銀では水俣病での20ppmの15倍の300ppmとか出てくる。
 ヒ素も日本人の20倍の例もある。
 中国では文化大革命以降に万里の長城付近の干ばつ地帯で多くの井戸が掘られたが、ほとんどがヒ素で汚染されていた。
 今中国で約1億人がフッ素・ヒ素中毒を発症しているらしい。
 また、東日本大震災では津波がもたらしたヘドロの中にカドミウム等の重金属が通常濃度よりも多く堆積していたらしい。
 1年後に相当減少したらしい。
 おそらく雨で流され、元の海に戻ったのかもしれない。

 最近の話題としては蚊が媒介するデング熱等の発生において、蚊の体内元素分析で蚊の特定等ができるようである。
 ただ、世良氏のいる大学の研究所は閉鎖するらしく、今後は他のPIXE施設(全国に20か所くらいある)で分析が行われるであろうが、世良氏ほどの経験を有しているかどうかはわからない。
 世良氏は今後環境分析の分野の貢献をするらしい。

 私は質問で、国連のSDG’s(持続可能な研究開発)17項目の一つに飲料水の問題(「6.安全な水とトイレを世界中に」)があるが、この国連の人と協力して仕事をしたことはないか聞いた。
 国連の人は個々の業務にとらわれて、全体が見えていない、というようなことを話された。

 5は「特別講演 放射線を話しましょう−易しい話から 優しい話へ−」というタイトルで(前)原子力規制委員の中村女史が講演した。
 原子力規制委員になる前は日本アイソトープ協会(RI協会)に勤務していた。
 だから協会の人間として福島原発事故に関わる業務の中で、その難しさを痛感し、2012年に原子力規制委員に就任してからも関わったが、肩書が違うことで信用されたりされなかったりしたようである。
 知っていることと理解していることは違う。
 医学生に質問したことは以下の2点である。

  Q1.ヨウ素I-131の治療を受けた妻と一緒に寝るか?(甲状腺がん治療)
  Q2.ストロンチウムSr-89治療を受けた夫と一緒に寝るか?(骨転移治療)

 大抵の医学生はQ1はYes、Q2はNoと答える。
 ちょっと考えると、ヨウ素はヨウ素剤等の例もあるから怖いイメージが薄い。
 一方、ストロンチウムは放射能として、カルシウムと同族なので骨に蓄積するから怖いイメージがあるから、当然のように見える。
 でも実際はQ1はNo、Q2はYesが正解であろう。
 I-131はガンマ線を出すから周囲の人も被ばくする。
 Sr-89はベータ線のみしか出さないので、体外に出てこない。
 したがって被ばくの怖れはない。

 放射性医薬品を運んできたメーカーの女性が検査室に入ると被ばくするから入りたくないという。
 放射線治療を受けた患者の話では、勤務先の放射線モニターにひっかかり、勤務に支障が出た、等の例が紹介された。
 放射線の知識の一部は知っていても、全体像を正しく理解していないと上記のような逸話がいくらでも出てくる。

 福島原発事故で受けた質問では、子どもの様子がおかしい、周りがおかしい、鳥がいないという。
 小児科の先生が真先に逃げたらしい。
 人の営みがあると鳥は寄ってくるが、閑散とした人がいないところに鳥は来ない。
 現状の線量はどうなっているか。
 パソコンを使えないと正確な情報、理解しやすい情報が入ってこない。
 周りは雨戸を締め切っている。
 雨戸を閉めて避難しているようである。
 福島原発事故が起こって汚染が出たが、平常は線量ゼロだったのではないか。
 RI協会の人の話は信じるが、原子力規制委員の話は信じない。
 安定ヨウ素剤の配布と服用はどうするか。
 40才以上の人には渡さない。(副作用の害あって、甲状腺防護の益があまりない。) 
 緊急時に仕事をする人の緊急時被ばくをどうするか。
 250mSvで決着しているが、福島原発事故では福島県内に運送業者はあまり入って来なかった。
 今後、もし原発事故が起きた時にバス運転手には危険地域で業務させない、とバス協会と川内原発のある鹿児島県では決めたように記憶している。

 原子力災害医療の意図することは、原子力災害が起きた時に住民、住民を助ける人に説明できること、説明できる人を地域で育てること、相談できる人が近くにいるという安心感が大事等を説明した。

 私は質問で、私の子どもたちは福島原発事故後に東京から逃げ出したことを話した。
 その教訓から放射線の話を初級、中級、上級の3レベルで説明してはどうかと聞いた。
 中村女史はこの3レベルではなく、私の家族からの信頼の方が問題で、普通家族が原子力従事者にとって一番の理解者であるはずなのに、それをしなかったことが問題ではないか、と逆に指摘された。
 父親不信かもしれないと答えた。

 以上で今回の研修会は終了した。

 この研修会は毎回かなり充実した講師陣を揃えているので、参加費1万円でも高くない、という感じを持たせてくれる。
 今回も主任者レンタル、RIに関する大学連携や自然放射性同位元素、放射線医療での医療被ばく、放射線分析PIXEを通してみた医療と環境問題、放射線の専門家としての信用度等がピックアップされて、考えるべき問題と思われる。

 今後もこの研修会にはよほどのことがない限り、参加していきたいと思う。

<平成30年度「秋期」放射線安全管理研修会>
 1.日時:2018年(平成30年)9月20日(木)10:00〜16:30
 2.場所  :文京シビックホール(小ホール)
 3.主催  :放射線障害防止中央協議会
 4.共催  :(公財)原子力安全技術センター
 5.費用  :会員以外10,000円(テキスト代を含む、消費税込み)、当日支払い
 6.プログラム内容
  10:00〜10:05  開会の挨拶 放射線障害防止中央協議会 会長 山下 孝
  10:05〜10:55  1.放射線障害防止法関係の最近の動向
               堀越研一 原子力規制庁 
  10:55〜11:45  2.放射線安全の理念と防護の体系
               飯本武志 東京大学教授  

  11:45〜12:45  昼休み(60分) 

  12:45〜14:00  3.放射性核種(α線放出核種を含む)の医学利用と合理的な安全管理       
               細野眞 近畿大学教授
       (休憩 15分)

  14:15〜15:15  4.PIXEでなにがわかるか?−高エネルギ利用の可能性を求めて−
               世良耕一郎 岩手医科大学教授 
       (休憩 15分)

  15:30〜16:30  5.特別講演 放射線を話しましょう−易しい話から 優しい話へ−
              中村佳代子 (前)原子力規制委員会 原子力規制委員

      −以上−

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