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zoom RSS 2018年原子力学会春の年会参加(その2)−発表内容の説明等

<<   作成日時 : 2018/04/08 22:15   >>

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 2018年原子力学会春の年会に参加した。

 (その2)は学会で発表された内容等の説明である。

 期間は2018年の3/26(月)〜3/28(水)の3日間で、大阪大学吹田キャンパスで開催された。

 今回も福島事故関連を主としたE会場(以下Eと略、会場はO会場まであった。)なども聴講した。
 今回は昨年11月に原子力学会長から、放射線損傷した遺伝子の修復の可視化の発表がある、との話を聞いていたので、それも聞こうと思った。
 また、核変換に関して1件、ニューラルネットワークの研究発表を1件聞こうと思った。

 これらはプログラムや予稿集を見て計画を立てた。

 聴講スケジュールは以下の通りとした。

3/26(月) AM1  AM2     PM1      PM2      PM3      
      −  J原子力と法 J原子力白書 J伊方訴訟 J風評被害(*1)   
3/27(火)
  Aコミュニケ(*2) E放射線医学 L安全文化  I中性子応用 A人材育成  
3/28(水)
  E環境放射能 E環境放射能 J福島原発現状 Hプラント計測   −
(*1:最初にI会場<遺伝子修復>を少し聴講、*2:H会場<核変換>を少し聴講)

 AM1は9:30−10:45くらいにある発表、AM2は10:45−12:00くらいにある発表、PM1は13:00−14:30にある特別セッション、PM2は14:45-16:00くらいにある発表、PM3は16:00-17:30 くらいにある発表時間帯である。

 各テーマについて整理してみる。

 第一には、福島事故関連の情報収集である。
 第二には、私が研究している核変換技術の情報収集と共同研究グループとの連携の検討である。
 第三には、教育、といっても私の研究の後継者探しという面が強い。
 第四に興味があるものの聴講、遺伝子修復とニューラルネットワークである。
 その他として、今回は原子力と法律(伊方原発の訴訟で広島高裁の運転差し止め判決)等のトピックスもあったので、ミーハー的に参加することとした。

 以下に聴講順にメモ程度に書き留めていく。

 長々と見たくない人は末尾にまとめを書いておくので、それだけみればいいかもしれない。

 第1日目の最初は原子力と法がテーマのJ会場に行った。

 1J01から1J04では、原発再稼働裁判の課題で最近の原子力裁判の論点を原子力推進の関係者が発表した。 事業者側が十分に説明していない、リスクの概念が理解されていない、訓練の基準化が必要、地震動の設定が甘い、被ばくの基準は1mSvか20mSvか、自主避難の判断で損害賠償の期間が通常2年だが、東京地裁は半年、バックフィット(過去に遡って適用すること)をしなかった、原子力規制庁に裁判担当を置くなどの対策、訴訟の一元化等司法の改革をするべき、等の意見があった。
 私はバックフィットについて、一般の建築物について、過去の建築物に関して、新しくできた規制は適応していないはず、と聞いた。
 あまり明確な回答はなかったと思う。
 また規制基準の21項目に関して5点満点の点数をつけてみては、ということにも明確な回答はなかった。
 裁判所もそうだが、世間一般の人は過去に原子力教育を受けたことがないから、司法にも原子力出前授業はどうかと聞いた。
 司法の関係者は原子力に関してすごく勉強しているから意味はない、との回答だった。
 私が言いたかったのは、最初から偏見を持って勉強するのと、偏見を持たないように教育することは違うことを言いたかったが、その趣旨は伝わらなかったようである。
 ただ、他の人から、ここの関係者はしっかり勉強して司法の学会等に乗り込んでみてはどうか、との意見があった。
 さすがにそこまでの勇気はまだ持てない、と苦笑いしていた。

 昼過ぎにはまたJ会場で「原子力利用の基本的な考え方と原子力白書」というタイトルで原子力委員会の事務局の内閣府の川渕氏が講演した。
 本来は原子力委員長の岡氏が説明するはずだったが、所用で代わりに事務局が説明、とのことだった。
 JAEAへの提案が多い内容であるが、会場にいるJAEAの人は2名だったことに不満らしかった。
 会場にいる人を見ると、原子力委員会の立ち位置がよくわかる。
 原子力に関して中立的な立場であり、従来の司令塔から福島原発事故後に羅針盤の役割に変更した。
 原子力白書は7年ぶりに再開し、昨年9月に出した。
 今年も出す予定である。
 福島事故の教訓、定点観測、国際潮流(JAEAもしっかり見て欲しい。)、Puの管理、国民からの信頼回復、廃炉、RI利用、基盤強化と人材確保、理解の深化のための検索システム構築、今までは橋渡し情報がなかった、関係機関同士がつながっていない、コミュニケーションがなく決定事項を伝えただけだった、双方向の対話、ステークホルダーの参画、若い世代の巻き込み、過酷事故の連携プラットフォーム、等今までの問題点と改善策等を説明した。

 私は質問で、原子力防災を一般防災の中に含めて考えてはどうか、Pu管理と共にRI管理もすべきではないか、講師の家族への原子力との関わりの説明はどうか、と言った。
 どれも難しい問題、ということで明確な回答は避けられたように思う。
 他に、AIを理解の深化等に使ってみてはどうか、もんじゅがダメになって核燃料サイクルをどう考えているのか、等も聞きたかったが、一人の人があまり多く質問するのは嫌われるようで、2度目の質問はできなかった。

 続いてJ会場で「広島高裁の伊方再稼働停止判断を考える」というテーマで、伊方原発の事業者の四電担当者、法律専門の大学の先生、火山の専門家の大学の先生が登壇して説明した。
 四電の瀧川氏は火山現象以外に不合理なしと認められている、保全異議申し立てをしている、阿蘇山のカルデラ噴火はない、シミュレーションを実施している等を述べた。
 中央大の安念氏は仮処分決定の資料は400ページに及ぶ、原子力規制委員会の火山ガイドでは160q以内の火山が対象に該当し、伊方原発では40火山が相当する、将来の活動の可能性、9万年前のカルデラ噴火等の検討、火山爆発指数(VEI)7規模の巨大噴火の仮定、専門家は裁判官にならない、裁判に関わると知らないと言えない、高い知性を持った素人、判断に足りる根拠はない、十分小さいと言える根拠を示せ、とは核戦争を考えるとの同じ、との裁判における不合理性について論じた。
 続いて、神戸大学の鈴木女史がVEI6以上の噴火がカルデラ噴火と説明した。
 カルデラ噴火は一気に大量のマグマを噴出することにより地下のマグマ溜まりが空洞化することにより地表を支えきれずに陥没を起こした結果、地表に直径2q以上の窪地を形成する。
 12万年以内のカルデラ火山候補は11個あり、7%の活火山は日本に集中している、鬼界カルデラは鹿児島に到達した、1万m3〜1兆m3までの噴火物でVEIが決まっている、3万年前の鹿児島湾北部のカルデラ噴火は火山灰がほぼ日本中を覆った、火砕流は時速100qくらいの速度で流れ、海なども超えていくダイナミックさがある、とのことだった。
 おそらく会場にいる人はその火山活動の強力さ、影響範囲の膨大さに度肝を抜かれた思いがしたのではないかと思った。
 私もそう感じた一人で、これは阿蘇山のカルデラ噴火が万が一起きると、伊方原発だけでなく、川内原発にも火山灰などの影響が及ぶのではないか、と恐怖を感じた。
 この後、質疑応答があったはずだが、私はI会場の遺伝子修復発表があるために会場を後にしたので、内容は不明だが、相当活発な議論があったのではないかと思う。

 1I06では、DNA損傷修復動画画像化のための卓上マイクロイオンビーム源の基礎研究というタイトルで東大の上坂教授(日本原子力学会会長)が発表した。
 装置の概念を説明したが、肝心の動画はなかった。
 後で聞くと、来年の春の年会で発表とのことで、今回は動画作成までたどり着かなかったようである。

 続いて、またJ会場に戻って、「福島復興に向けた『風評被害』への対応」を聴講した。
 最初に上坂会長があいさつする予定であったが、私がその直前に聴講していた発表者なので、前の会場から到着しておらず、省略された。
 関西大学の土田氏は社会心理学の視点からのアプローチを説明した。
 風評とは日本特有のもので、流言が次々広まるが、内容に確実な証拠を持たない、うそとは限らない、発生源や伝達者に悪意はなく、善意で風評を広める、と説明した。
 心理学のロールシャッハテストと同じで、どうにでも見える、見る人がみたいように見る、幽霊の正体見たり枯れ尾花、福島は怖い、何とか逃げたい、原発はなくなっていい、何を買うかは自由、被ばくは不安、福島県産を買うな、他の人は買わなかった、買わないように勧める、不買しても罪にならない、と説明した。
 対策としては上記の連鎖のどれかを止めればいい、被ばくは不安、を払拭すればいい、そのためには正しい知識を伝えること、でも反動で悪い意見もある、不安に打ち勝つこと、と説明した。
 続いて、藤田保健衛生大学の下氏は被災地でのケアコミュニケーションを行った経験から説明した。
 東海村のJCOの事故の時に、周辺の農家の人は農作物は安全なのに出荷できなかった、放射線は安全でも、よい放射線と悪い放射線があると考える人もいる、街角で話を聞くと、放射線は怖い、山で採れたマツタケは食べてよいか、保健物理学会では福島原発事故後にQAを出した、放射線に関する数値が出てもよくわからない、政府と専門家がグルになっている、基礎知識不足、データや知識が体系化されていない、健康影響のメカニズムがわかっていない、海外(台湾、韓国の輸入制限等)、日本の規制値は厳しい、福島では陰膳調査(食事を作るときに2人分作り、1人分は放射能分析にかける)は今もやっている、都民の意識は低い、特効薬はない、と説明した。
 千葉大の神里氏は食とリスクと科学技術社会論について説明した。
 食のリスクについて特効薬はない、と下氏と同じ用語が使われた。
 安全と安心、農薬、ダイオキシン、BSE(牛のスポンジ脳症)、食品偽装、O-157、豊洲新市場のベンゼン基準値超過、環境汚染による微量物質はBSEの問題と似る、BSEは日本に来ない、風評はマイナスの情報消費、代替可能なことは観光にも言える、草津温泉は火山が怖いが、温泉なら箱根でもいい、同じ立場の人が互助するシステム、温泉地が保険を作ってもいい、自動車とエレベータでも事故は起こる、エレベータ事故は大問題、自動車事故はそれほどでもない、一般の人はあなた方が信頼できないと思っている、等の説明があった。

 この後総合討論があった。
 私は飛行機の中の被ばく量を原子力従事者がすべて行い、それを全国の被ばく線量として学会HPで発表する、天気予報があるが、毎日新聞では福島原発の正門の線量率のみ今でも毎日掲載している、これはおかしい、線量率予報みたいなものはできないか、NHKの「ブラたもり」のようにホールボディカウンター(WBC)とGe検出器を備えた車で全国を旅して、それを放映するような企画はできないか、と聞いてみた。
 飛行機の中の被ばく線量は放医研ですでに実施してHPで示している、とのことだった。
 他の件についてははっきりした回答はなかったと思う。

 以上で、第1日目は終わった。

 第2日目は最初にH会場に行った。
 ここは放射線物理のテーマの会場であり、私は2H02の「La-138のガンマ線照射によるベータ崩壊の変化」(大阪府立大学の谷口氏他)という発表を聞きたかったのである。
 発表はCs-137の近くにあるLa-138についてであり、半減期1000億年の長寿命核種で、これらにCo-60のガンマ線2本(1173Kev,1332Kev)を照射したり、電子線を照射すると%オーダーでLa-138のピーク(788Kev,1,436Kev)が減少するというものであった。
 これは私のダブルガンマ線法と似ているので、質問した。
 また、発表終了後に私のダブルガンマ線の論文と名刺を発表者の谷口氏に渡してきたが、今現在何も連絡はない。

 この発表を聞いた後すぐにA会場に行った。
 ここのテーマはコミュニケーションということで、福島事故後の活動に関連した2件を聴講に行った。
 2A03は「福島原発事故に係る情報収集・保存と利用」というタイトルでJAEAの早川女史が発表した。
 福島原発事故のデータをアーカイブで残すことや事故に関連したキーワードを検索して動向を調べたりしていた。
 私は質問で、原子力委員会が理解の深化ということで、情報発信・収集データの一元化を進めているようであるが、そうした動きとの連携はあるか聞いたが、ないようだった。
 2A04は「福島浜通りと首都圏の中高生による参加型対話の課題と成果」というタイトルで東工大の澤田氏が発表した。
 福島県の対話で甲状腺検査を取り上げていた。
 国連科学委員会UNSCEARの報告では安全といっているがどうか、岡山大学の津田氏は福島の甲状腺がんは全国の50倍、というような話を提供して、場のデザインはするが、結論は誘導しないでサポートするだけで議論させたようである。
 私は日本学術会議が2017年9月に福島の甲状腺がんは全国平均と変わらない、全国の平均は甲状腺に異常を感じて受診するが、福島では全員検査であり、なおかつ最新の高度な医療機器で診断しているので発見する確率が上がっているだけ、としているが、これらのデータは示したのか聞いたが、澤田氏はその資料のことを知らなかったようであった。

 それが終わるとE会場の「放射線医学」のテーマのところに行った。
 2E05は「WAMモデルによるショウジョウバエ突然変異における線量率効果の解析」というタイトルで関西大学の和田氏が発表した。
 このWAMモデルというのは「モグラたたきモデル」として、長期間微弱な線量率だと短期間に大きな線量率の被ばくをした時より線量率効果が低いという仮説を実証しようとしている。
 過去の放射線生物実験の再解釈等をしており、ショウジョウバエにおいてはその効果があることを説明した。
 この線量率効果にDNA修復(葉酸等の栄養摂取で放射線で損傷したDNAが修復される機能が人体内にある)が関係しているかを聞いたかどうか記憶がはっきりしていない。
 ノートにはQとして書いている。

 2E06は「トリチウムからのベータ線によるDNA二重鎖切断評価技術の開発」というタイトルで富山大学の胡中氏が発表した。
 福島原発事故で発生した汚染水中のトリチウムの生物中でのDNAの二重鎖切断を調べたもので、3Gy(脱毛が起こる程度の量)くらいの高線量に暴露したDNAの切断頻度が増加したという結果を得ているが、これほどの高濃度・高線量の汚染水ということはあり得ず、もしあるとすれば食物連鎖で海水中のプランクトンがトリチウムを摂取し、これを魚が食べて魚の体内にトリチウムを蓄積・濃縮するというシナリオが必要であるが、現在トリチウムに関するこうした食物連鎖のデータを私は見たことがない。
 もし海水中に汚染水を希釈して流す場合は、こうした食物連鎖でも健康影響はないようなシナリオが必要かもしれない。
 2E07は「ニューラルネットワークを用いた追尾X線治療のための肺腫瘍挙動予測システムの開発」というタイトルで東大の酒井氏が発表した。
 肺腫瘍を放射線治療する場合に、肺は常に呼吸と同時に上下動をするため、肺腫瘍患部も同時に上下動し、効率的に患部を照射できない問題がある。
 これに対処するために、ニューラルネットワークの手法を用いて、患部の動きを予測して照射効率を上げようとするものである。
 私は今ソニーの公開AIソフトを使って、おそらくがんの患部の判別が可能な手法と思えるものは持っているが、このように動くターゲットに関する予測手法は持っていない。
 興味本位で聴講した。
 私はこの手法は照射時間は1秒以下の応答であるが、この応答をさせるための予備的な学習時間はどのくらいか聞いてみた。
 ディープラーニングでの方法ではないので比較的短時間で10分くらいでできる、とのことだった。
 私がやっているディープラーニングの手法は予備学習に半日くらいかかるので、それに比べると簡単な手法を使っているらしい。
 他の人の質問でこの手法は今2次元で行っているが、3次元化しないのか、と聞いた。
 必要かもしれないと答えたと思う。

 2E08は「低線量放射線がマウス脳に及ぼす酸化ストレスの検討」というタイトルで岡山大学の片岡氏が発表した。
 原爆被災者に脳卒中が増加しているため、その影響を調べるものである。
 放射線による水の電離で活性酸素等が発生し、これらの物質が脳卒中の原因かもしれないということからマウスの脳に1Gy程度(皮膚の紅斑<日焼け>程度)の照射を行い、脳内の活性酸素やそれらによって引き起こされる熱ショックプロテイン等を測定し、有意な結果を得たとしている。
 でもこれらは時間というのが1日とか2日とかの実験で、原爆被災者の70年の期間にこうした活性酸素が持続してできる、またはある日突然できるというのは考えにくい。
 私はどちらかというと内蔵に蓄積している放射性物質の方が効いているのではないかと思い、内臓の放射能蓄積について尋ねたが、調べてはいないようであった。

 2E09は「放射線防護剤における糖転移ルチンを用いたフラボノイド複合体の最適化検討」というタイトルで東大の相澤氏が発表した。
 放射線防護剤としてはヨウ素剤が有名であるが、それ以外の防護剤を開発しようとしている。
 その候補として、テレビでよく聞くフラボノイド(ポリフェノールの代表例)に着目した。
 このフラボノイドは水溶性で水に溶けやすい反面、細胞に吸収される率が低いことが問題としてあり、それを解決しようとして、水溶性のフラボノイドと疎水性のフラボノイドを混合した物質の開発をしたようである。
 結果として放射線防護剤として有用な物質が生成できたとしていた。
 私は質問で、このフラボノイドを服用ではなくて、紫外線の日焼け止めのようなクリームや防護服表面に装着したようなものはできないか聞いたが、そういうことはやっていない、しかし、日焼け止めクリームの中にはこれらの成分が含まれているらしかった。

 午後はL会場に行った。
 ここのテーマは「災害に備えるために必要となる原子力関係者の倫理 再稼働の現場、大学研究炉の現場の声から考える」というものである。
 最初に「関西電力における安全文化醸成に係る取組」というタイトルで関西電力の古田氏が講演した。
 美浜3号機の二次系配管破損事故で蒸気が漏れ、5名が亡くなり、6名が負傷した事故を教訓にして、安全文化に取り組んだ。
 事故の原因分析、安全優先の方針、安全に資源投入、保守管理の見直し、地元対策等に取り組んできた。
 安全文化の3本柱としてトップマネージメント、コミュニケーションの重要性、(技術を)学習する組織とした。
 課題としては、安全文化には自己満足が危ないというIAEAの指摘を肝に銘じている。
 CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)をうるさく言われているが、倫理という点はあまり意識していない。
 平成26年には美浜事故10年と福島事故の反省をし、法律に従っていさえすればよいという意識でなく、世界の原発の安全性向上等を知ることが大事である。
 今は毎朝幹部からのメッセージが来る。
 協力会社への丁寧な説明、若手社員の交流、社員の家族見学会、動いている原発の派遣等を行って、高浜3,4号の再稼働に備えている。
 私は質問で、ストレステストは原発の弱点が従業員にも一般の人にもわかりやすく、自分たちの努力をどうすればいいかを示していていいと思ったが、今は九州電力が原子力規制委員会に提出しているくらいで、他の原発では見られない、これをどう思うか聞いた。
 古田氏はどこでもストレステストという言葉は使っていないかもしれないが、内容として同様のことは行っている、と答えた。
 ここに原子力ムラの体質が垣間見える、と思った。
 自分たちが安全に取り組む姿勢を自分たちの中で共有し、外部の人にも安全を心掛けているアピールをするにはストレステストというようなわかりやすい用語を使った方がいい。
 もちろんテロ攻撃に備えて、セキュリティに関する内容には注意が必要だが、ストレステストの公開は世間にどれだけ自分たちが安全に配慮しているか、弱点はここだから、これからこの弱点の解消に向けて努力するということを示すことが、原子力の安全文化の取組に対する世間の理解の近道という意識が不足しているように思う。
 他に関電社員の長時間労働報道、ヒヤリハットの活用等を聞いてみたかったが、あまり質問が多すぎるとよくないと思い、遠慮した。

 次に、「京大炉運転再開に係る取組」というタイトルで京大の中島氏が講演した。
 京大の原子炉は5,000KWの研究炉(KUR)1機と100WのKUCA実験装置1機の計2機である。
 原発みたいに一旦運転を始めると容易に止められないものと違って研究炉であるから、何か異常があったら一旦止めて考えることが可能である。
 しかし、この研究炉にも原発と同じような予備の設備として可搬型発電機や可搬型消防ポンプを原子力規制委員会から要求された。
 2014年に申請してから毎週1回のヒアリングを受けてきた。
 2016年に承認された。
 しかし、新規制基準に適用するように保安規定の改定や所員24名ですべて対応できるような訓練をしてきた。 この炉は治療に使われることから、早く運転再開して欲しいとの要望も受けた。
 火山、森林火災やテロ対策等の準備も必要だが、やりすぎると自分の首を絞めることにもなるので、限度がどこまでかを見極める必要がある。
 また使用済燃料(SF)は2026年に米国への引き取りが決まっているがそれ以降は未定である。
 私は質問で「ゆりかごから墓場まで」ということを上げて、KURの最終的な廃炉までの行程は決まっているか聞いたが、決まっていないようであった。

 次に「近大炉の運転再開に係る取組」というタイトルで近大の伊藤氏が講演した。
 この炉は1Wである。
 昭和34年に来たもので、57年が経過している。
 とりあえず申請して欲しい、との要望があり、原子力規制委員会に申請した。
 毎週1回ヒアリングに行ったが、私大なので旅費もバカにならない。
 京大炉と同じ日に認可された。
 近大は1番が好きである。
 7人のサムライの助力が大きかった。
 マスコミの好意的な報道が力になった。また地元対策にもなった。
 NHKの記者からなぜ3年もかかったのか、と聞かれた。
 当時の田中委員長がおもちゃみたいと言ったことに、はらわたが煮えくり返った。
 トップの一言は大事だと思う。
 すべては人とカネである。
 専任スタッフが少ない、新しい研究炉は簡単にはできない。
 私は質問で、なぜマスコミが応援してくれたのか、マスコミは原子力反対のところが多いのでは、と聞いた。
 私の人徳、ということは冗談で、マスコミには丁寧に説明したことがよかったのではないか、とのことだった。

 午後からはI会場に行った。
 ここのテーマは「X線・中性子応用」ということだった。
 ここでは橋の経年劣化を診断するシステムということであった。
 3.95MevのX線を使ったコンクリートの橋梁の診断、同様のシステムで中性子を用いた橋梁の水分測定、であった。
 マンションのコンクリート壁の経年劣化に適用できないか、という課題はあるが、この課題は今回の目的の中ではあまり重要でないので省略する。

 次にA会場の「教育・人材育成」のテーマに行った。
 2A15は「酸化マグネシウムと氷による寒剤用いた普及可能な霧箱の開発」というタイトルで大阪府立大学の山本氏が発表した。
 ペルチェ素子等を使った霧箱は高価なので教育現場で多くは使えないので、もっと安い材料で作るというものだった。
 10分以上マイナス20℃を持続できた、とのことだった。
 私は質問で、コストを聞いた。
 ペルチェ霧箱で2万円くらい、この寒剤霧箱はその10分の1の2,000円程度でできるとのことだった。

 2A16は「原子力発電所近接県における原子力災害リスクコミュニケーション」というタイトルで滋賀県の柏女史が発表した。
 原子力事故が発生した時の屋内退避等の問題の講習会を開いた。
 20人参加の予定だったが、講習の日に大雪が降ってそちらに行く人が多く、半数で議論した。
 私は質問で線量計等は準備しているか、原子力規制委員会が風向を基にした放射能放出のモデルを各原発毎に発表しているが利用しているか聞いた。
 前者は準備しているとのことだった。
 後者についてはまだ考えていないようであった。

 2A17は「緊急現場対応訓練を題材とした産学連携の取組」というタイトルでINSSの彦野氏が発表した。でもあまり興味ないので省略する。
 2A18は「日本原子力学会 教育委員会の進めるCPD(継続研鑽)登録制度の現状と課題」というタイトルで日本原燃の浜崎氏が発表した。
 CPDについてはよく聞く話ではあるが、インセンティブ(利益、得になること)がないので、イマイチ関心が薄いようであった。
 私は質問で、このCPDは原子力安全文化の一つの認証システムとなり得るのだから、学会誌でアピールするとか、学会誌の最後にCPD取得者の名簿リスト(個人名でなく、企業や電力のCPD各項目の人数)をするべきではないか、と聞いた。
 学会誌には掲載したが、反響はなかったと答えた。
 私はあまり学会誌にCPD掲載の記憶がない。
 おそらくあまり目立たないタイトルだったのではないか。
 安全文化向上のためにCPD登録推進を、というような目立ったタイトルにすべきだった。
 昼間の安全文化のセッションでもCPDの話はなかったように思う。

 2A19もあったのだが、直前に取り消しとなったようで、第2日目も終わった。

 第3日目、最終日は午前中はずっとE会場に行った。
 ここのテーマは「環境放射能・放射線」である。
 3E01は「日本海沿岸における冬の雷や雷雲に伴う放射能観測」というタイトルでJAEAの土屋氏が発表した。
 雷や雷雲がある時に高エネルギーの放射線が観測された。
 どうも雷で加速された電子が制動放射でガンマ線を出すと思われていたが、中性子や陽電子等も観測されたので、単純な制動放射だけの現象ではないようである。
 今は光核反応のN-14(γ、n)N-13、N-13はC-13と変化し、またN-14(n、γ)N-15やN-14(n、p)C-14等の複雑な核反応も起こっているらしい。
 今までは宇宙線でC-14等ができたものと考えていたが、雷で生成するものもあるらしいことがわかった。
 要するに、宇宙線だけでなく、雷等地球の気象関係の現象でも核反応が起こっているという新しい状況があるので、驚くべき自然界といえるのであろう。

 3E02は「大陸由来の大気中有害物質のトレーサー検討」というタイトルで東京都市大学の舟生氏が発表した。
 大陸由来ということで期待していたのだが、論理がぐちゃぐちゃみたいで、何を言っているのかよくわからなかった。

 3E03は「換気のある一般家屋内でのラドン起因放射性エアロゾルの生成・除去の解析」というタイトルで名大の森泉氏が発表した。
 一般家屋のラドンはどこでもあり得るものであるが、データ採取がどうもきちんとしていない印象を受けた。

 3E04は「NaI(Tl)波高分布からの放射性物質大気中濃度の推定法の検討」というタイトルで名大の山澤氏が発表した。
 クラウドシャインとグラウンドシャインという、空の雲と地面の降り積もったものの放射能の影響を評価したものだが、過去の発表者の2名の折衷案のようで、あまり興味がなかった。

 3E05は「DEM・DSMデータと現実的な建物・樹木モデルを用いた空間線量評価システムツールの開発」というタイトルでJAEAの金氏が発表した。
 モデル構築なのでパスする。
 3E06は「福島原発事故の4日後に関東地方で観測された不溶性Cs粒子の生成起源」というタイトルでJAEAの日高氏が発表した。
 セシウムボールに関する発表であるが、保健物理学会の発表以上のものではないので省略する。

 3E07は「福島沿岸における放射性セシウム及びトリウムの長期挙動」というタイトルで福島大学の青山氏が発表した。
 セシウムとトリチウムの海洋汚染がアメリカ西岸まで達する長期挙動等を説明した。
 セシウムは10Bq/m3と下がってきているが、トリチウムは100〜200Bq/m3と下がっていない。
 トリチウムの蒸発(トリチウムTは水H2Oの同位体置換タイプのHTOやT2O等となる。)循環でなかなか下がらないのではないか、との推定を説明した。
 私は質問で、トリチウムの汚染水を希釈して海に流すのは可能か聞いたら、かなりの希釈をして10年くらいかけて処理すれば可能かもしれない、との回答であった。
 トリチウム汚染水の処理は簡単にはいかないことを再認識した。

 3E08は「福島原発港湾内の放射性核種の環境動態:沿岸域を含めた環境影響評価の取組」というタイトルでJAEAの町田氏が発表した。
 主に湾内の汚染や海洋流動のシミュレーションに関するものなので省略する。

 3E09は「海上移動型放射線モニタリングにおける移流拡散モデルを用いた船舶乗務員への線量評価」というタイトルで神戸大学の足立氏が発表した。
 これは原発事故が発生した時の海から接近するモニタリング船の開発であり、以前からの発表の継続のものである。
 線量が高くて事故原発に近づけない時は無人機を使うことも検討している。
 私は船内にヨウ素剤は準備しているか、また密室構造にしているのか聞いたら、両方ともイエスとのことであった。
 後で、「ともだち作戦」で福島原発を北上した米海軍の軍艦の乗組員が被ばく訴訟を行っているのが参考データになるのではないか、と足立氏に伝えておいた。

 昼過ぎにJ会場の「福島原発廃炉検討委員会現状報告及び活動報告」に行った。

 最初に東海大の浅沼女史が当該委員会の活動の概要を説明した。
 学会としての課題は汚染水対策、燃料やデブリの取出し、がれき等の処理処分と説明した。

 次に山本氏が未解明事項の調査と評価について説明した。
 未解明整理表を作った。
 73項目をピックアップしてA〜Dに分類した。
 2号機のラプチャーディスク(圧力高の時に自動的に壊れ、圧力を外に逃がす)が機能したか、等があった。

 3番目に糸井氏が建屋の耐震健全性について説明した。
 プール内燃料、デブリ、滞留、建屋に対する要求性能の変化、上部カバー等の問題があると説明した。

 4番目は吉見氏のロボット分科会の報告であった。
 ロボット学会と原子力学会のコラボになる。
 ロボット技術のコンペを行う等の活動を行った。
 コンペではテスト環境と模擬作業を設定し、2016年9月に募集開始し、2017年1月に締め切った。
 16件の応募があった。
 ロボット学会では2017年9月にオープンフォーラムを実施した。
 現場を知ることなくしてアイデアだけではだめである。

 最後に川崎氏が廃炉と廃棄物管理シナリオに関する検討を説明した。
 サイトはどんどんキレイになっていくがどこまでやればいいかが問題となる。
 サイト内の中間処分、サイト全域の管理などがあることを説明した。

 質疑応答で、私はこれらの活動の評価を行うべきで、例えば原子力学会員へのアンケートやもっと安易な方法として、シニア会員等を活用してはどうか、といった。
 また、福島原発の中はデブリ等を考慮すると、再処理施設と同様の廃棄物処理処分が可能ではないかと聞いた。
 両方ともあまり芳しい回答はなかった。
 しかし、このセッション終了後誰かわからないが、福島原発・再処理類似廃棄物処理・処分に賛成だ、という人が通りすがりにささやいてくれた。

 その次にH会場の「プラント計測」のテーマに行った。
 3H10は「甲状腺被ばくモニタリングのための放射性ヨウ素測定手法の開発」というタイトルで三菱電機の林氏が発表した。
 CeBr3型検出器を用いて、逐次近似法を用いるものであったが、よくわからなかった。
 3H11は「高線量下におけるαダスト計測技術の開発」というタイトルで東芝ESSの久米氏が発表した。
 多分原発内の粉塵が舞う環境の設定であろう。
 3H12も同様であった。
 以下数件の発表があったが、ほとんど時間つぶし的で、帰りの新幹線が夕方6時なので、あまり聞く気はなかったものをスケジュールに加えていたものである。

 以上で2018年日本原子力学会・春の年会は終了した。

 ここでこれらの内容を簡単にまとめておく。

 第一には、福島事故関連の情報収集であった。
 福島県のことはあまり情報はなかったように思う。
 学会の廃炉検討委員会で実施していることで、福島原発の活動の現状はだいたいつかめたように思う。
 ただ気になる点はトリチウム汚染水は元々半減期は12年となかなか減らないし、水の中の水素と容易に同位体置換して、これが蒸発して移動が自由であり、また、海洋放出して食物連鎖で魚の中に濃縮すると、人間が取り込んだ時に内部被ばくで遺伝子破壊を起こしやすい状況が見えてきた。
 濃縮さえしなければ、その放出ベータ線のエネルギーは18kevと小さい(セシウム137は662kev)ので、内臓の器官のダメージは少ないと思うが、塵も積もれば山となるのことわざ通りの現象が推定される。

 第二には、私が研究している核変換技術の情報収集と共同研究グループとの連携の検討であった。
 La-138の研究をしている大阪府立大学の研究者に私のダブルガンマ線の論文を渡したが、未だ連絡は何もない。
 第三には、教育、といっても私の研究の後継者探しという面が強い。
 この面では、霧箱の研究に関心があるが、なかなか研究が進展しない。
 CDP(継続研鑽)が原子力安全文化のブラッシュアップにつながるのではないかという期待感が出てきた。

 第四に興味があるものの聴講、遺伝子修復とニューラルネットワークであった。
 前者に関しては実験そのものがうまくいってなかったのか、遺伝子修復動画は来年春の年会まで待つことになった。
 ニューラルネットワークについては、私が求めているディープラーニングタイプの研究ではなく、別のタイプだったので、ちょっとがっかりである。

 その他として、今回は原子力と法律(伊方原発の訴訟で広島高裁の運転差し止め判決)等のトピックスもあった。
 ミーハー的に参加したが、阿蘇山のカルデラ噴火が起きると、伊方原発に海を越えて火砕流が時速100qで流れる可能性を指摘されて、ちょっと驚いた。
 私はこのセッションに参加する前には阿蘇山の火山活動で伊方原発運転停止なんて馬鹿げていると思っていたが、可能性としては一概に否定できないものがあり、悩ましいところである。
 後は発生頻度が1万年に1度くらいという実績でも出れば、と思うが、時間はかかりそうである。

 原子力学会の発表は原子力の情報の宝庫であり、福島原発事故後の復興という観点からも継続して情報収集し、それらのデータを整理していく必要があると思う。

 今後も続いて参加していきたいと思う。
   −以上−

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