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zoom RSS 原発用地震時クリフエッジ回避ワークショップに参加

<<   作成日時 : 2018/03/18 10:23   >>

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 原発用地震時クリフエッジ回避ワークショップ(3/13(火))に参加した。

 クリフエッジとは聞き慣れない言葉だが、原子力関係者だと、ああ、あれねというような種類のものである。
 文字通りの意味では、クリフは「崖」で、「エッジ」は「淵」であるから崖っぷちといえる。
 ここより先に行くと落下して地獄の底に行ってしまう、その境界線上のことを指し、原子力用語としては、ここから先に進んでしまうと事故が起きる、その直前の状態のことを指す。
 クリフエッジ回避とは、このような状態になる前に回避し、なったとしてもここで踏みとどまるという意味合いである。

 この開催案内は2月23日に原子力学会メールで来た。
 クリフエッジに関しては、以前から多少興味があったので、すぐにメールで参加申し込みをした。

 3月13日(火)は晴れていた。途中でペットボトル500mL1本を買って行った。
 ただ、東大工学部1号館に行ったのだが、15号教室なるものがない。
 あれっと思ったが、後ろから二人連れがやってきた。何となく今回の参加者らしいので、15号教室がない旨告げると、すぐに建屋案内を見て開催場所に行った。
 1号館の1階は101号とか102号とか100につながる名称があって、15号だと0階になるが、そうではなくて特別な部屋に特有の番号がつけられており、2階の部屋の1つが200番代の番号がついており、その横に括弧書きのように15号教室となっていた。
 2階に上がっていくと受付があった。
 名前を言うと資料一式と参加証シールをくれた。
 このシールは途中でトイレ等で退席しても再入場できる目印のようで、上着等の目立つ場所に貼って欲しいとのことだった。

 プログラムは末尾に添付する。

 会場に入って着席し、資料をざっと読んだ。
 そこで、数点の質問事項が浮かんだので、書き留めておいた。
 この研究は新規プラントに適用するものか、従来のプラントに適用するものか、熊本地震は大きな地震が2回あったが、今回のクリフエッジにはそういうことが含まれるか、長周期地震動が高層ビルで問題となっているが、原発ではどうか、活断層の問題はどうか、原発のみでなく、周辺道路の陥没等周辺環境についてはどうか、レジリエンス(事故が起きにくいような柔軟な構造やシステム)との関連性はどうか、原子力規制委員会は原発再稼働に向けて、再稼働原発に点数評価をすればいいのに、と思っているが、この研究ではそういう点数評価は可能か、等である。

 最初に高田氏より開会のあいさつがあった。
 今大学では定年退官の教授の最終講義が多いというようなことを話された。
 来週は卒業式関連の行事が多い、この忙しい時期に来ていただき、感謝する、とのことだった。
 司会の進行については、予めスマホの電源をマナーモードにするか、電源を切るように言っておくべきだった。途中で出席者の一人のスマホが鳴りだし、それが、地震時の警報と似ていたので、一時場内がざわついた一幕があった。

 高田氏は続いて、今回の研究の概要について説明した。
 まずクリフエッジとは何か、という定義から始めた。
 崖っぷちでシステムの状態が変わる、ということで、これが物理的なクリフエッジであり、もう一つ別のクリフエッジとして、知識起因のクリフエッジというものも説明した。
 想定外という言葉をよく聞くが、これまでの経験から想定できないような未知の領域への突入という意味である。
 前者の物理的なクリフエッジをハードクリフエッジとすると、知識起因のクリフエッジはソフトクリフエッジといえるであろう。
 原発でのクリフエッジのイメージを持ってもらうために、図を1つ載せておく。

画像

          図1 原発のクリフエッジの例(旧・原子力安全・保安院の資料より)

 牟田氏は「地震時プラントの要求性能の分類と整理」というタイトルで講演された。
 ここで対象とする範囲を原発の建屋、建屋内の機器・システム、容器・配管、そこで働く人間として、回避技術として、これらの対象について検討することとした。
 また、原子力プラントにおいては深層防護という概念が重要で、5つの防護レベルを設定している。
 レベル1は普通の異常事象(普通の事故の意味)の発生防止、レベル2はレベル1を防げない場合は異常事象の拡大防止、レベル2でもダメな場合、レベル3は放射性物質の異常な放出の防止、となる。
 レベル4は最初から重大事故が起こることを想定してその対策を講じておく、レベル5は原子力災害時の防災対策として、被害が広範囲に及ばないように対策を立てるものである。
 従来日本では、安全神話のためにレベル3までしか対策を取ってこなかった。
 福島原発事故はそのために被害を拡大してしまった。
 炉心損傷はレベル4に相当し、放射能の外部への放出はレベル5に相当する。
 レベル4をもし取れていたら、ベント(放射能のフィルターによる放出低減)、レベル5としては、避難訓練等を事前に行っておれば混乱が多少は減少できたはずである。
 世界の趨勢は米TMI事故、ソ連のチェルノブイリ原発事故のために、レベル5までの対策を取る方向であったが、日本のみ安全神話が邪魔をしてしまった。
 クリフエッジ回避技術はこの深層防護と連動して行う。
 また、新たな問題として、ソフトクリフエッジとして、知識起因のクリフエッジの検討を行うとした。

 西田女史は「建屋システムのクリフエッジの特定と評価」というタイトルで講演された。
 原発建屋の質点系モデルと3次元モデルを構築し、耐震設計でどの程度の揺れまで耐えられるかという限界点を探った。
 建物の脆性(フラジリティ)を評価した。
 また、知識起因のクリフエッジとして、建屋下層と上層の応答で差が出ており、これらを評価することで、応答の想定外というクリフエッジを減らせるとした。

 皆川氏は「免震化によるクリフエッジ回避技術と課題」というタイトルで講演された。
 今の原発建屋は耐震構造であるが、免震構造よりおそらく弱いと推定されている。
 免震構造として一般的なのは積層ゴムであろう。
 免震構造にした場合と従来の耐震構造とを比較して、免震構造が有利とした。
 ただ、これに加えて、建屋が壁に衝突、ということを検討していた。
 50階建てのビルが揺れて隣のビルに当たるというような推定をしてしまったがいいかどうかは定かでない。(保護)壁というのが原発建屋にあるのか、という疑問は残ったままである。
 質疑の時に、積層ゴムの経年劣化について質問すると、別の発表者から、高温で加熱した加速試験を行っているが耐久性は保持されている、との回答があった。

 「原子炉容器・配管のクリフエッジの特定と回避技術」というタイトルで山野氏が講演される予定であったが、都合が悪くなったようで、三菱重工のX氏(司会が名前を言ったのだが聞き取れず、スライドの名前も山野氏のままだった。)が講演した。
 この原子炉容器の解析だけで配管については検討がなかったようである。
 しかも軽水炉の解析評価でなく、高速炉の解析評価だった。
 また、3次元モデルでなく、質点系の解析のみであった。
 質疑の時間に他の人が配管はどうなのか聞いたが、ほとんど影響はない、との回答だったと思う。

 肥田氏は「人間挙動のモデル化とクリフエッジ評価」というタイトルで講演された。
 物理的なクリフエッジとしては振動台に人間を立たせた実験、知識起因のクリフエッジとして、柏崎刈羽原発の運転員へのインタビューという、ちょっと変わった手法を用いていた。
 前者は東大柏キャンパスにある2次元振動台に大学院生2人を立たせてできるだけバーにつかまらないようにして実験した。
 地震の加速度と転倒しないための足の踏み出しの関係をグラフ化していた。
 60pを超えると転倒と仮定し、ケガをしない範囲で実験し、300ガルくらいの加振で30pくらいの踏み出しと評価していた。
 後者の知識起因のクリフエッジとして柏崎刈羽原発の運転員7人に2004年の中越沖地震(10月16日月曜朝10時、震度6強)の時の体験談を聞いていた。
 ダクト2か所落下、地盤沈下、道路のゆがんでパニック状態になった。2,3時間後にもまだ揺れている感覚があった、等の生々しい証言があった。
 地震後に火災があったが、消防署に連絡が通じなかった。消火しようとしたら消火配管が破断していた。
 建物入口のガラスの自動扉が壊れた。海水取水口の様子を見に行かせたかったが、津波の危険があるため、行かせられなかった。
 もし人員が不足していたら、不具合の発見が遅れたかもしれない。
 避難する際に管理区域入口のゲートに人が殺到した。
 中央制御室への電話が集中した。プラントの健全性チェックに数か月を要した。
 定期点検中の運搬機材をクレーンで吊っている状態だったので落下の危険性もあった。
 夜間に地震が発生したら現場の確認、人数不足による対応遅れがあると思う、との意見も載せられていた。

 牟田氏が再度登壇し、「機器・システムのモデル化とクリフエッジ回避技術」というタイトルで講演された。
 機器・システムのモデル化ということで、機器の故障や破損等をフォールトツリーで示した。
 評価シナリオとしてイベントツリーを構築し、冷却水喪失シナリオを取り出し、免震構造や耐震構造の比較を行った。

 最後に高田氏が再度登壇し、「既存プラントの安全性向上のための実施案および今後の課題」というタイトルで全体のまとめを行った。

 その後全体討論ということで質疑応答も含めて行われた。

 事前に浮かんだ質問事項が浮かんだうち、熊本地震は大きな地震が2回あったことに触れると、高田氏は2回目の地震の方が大きかったのでそういう問題がどうなるかは検討していないようであった。
 またレジリエンス(事故が起きにくいような柔軟な構造やシステム)との関連性はどうか、ということでもあまりはっきりした回答ではなかったと思う。
 原子力規制委員会は原発再稼働に向けて、再稼働原発に点数評価をすればいいのに、と思っているが、この研究ではそういう点数評価は可能か、という質問や周辺環境については、質問し過ぎるとまた敬遠される恐怖を感じて、アンケートに書いて出しておいた。

 他の人の質問で、電気系統のクリフエッジもあるのではないか、インターフェースマネージメント(建築関係以外の分野との連携)はどうなのか、という質問もあったが、ここでは建築に関連するワークショップだったので、はっきりした回答はなかったと思う。

 以上でこのワークショップは終了した。

 原発の健全性ということに関しては、この建屋耐震等が重要な要素ではあるが、地震のシミュレーションが主であり、これだと聞いてみるだけに終わってしまうのかと思う。

 今後こうしたワークショップに出るのはなるべく遠慮して、福島復興へのハード・ソフトへのシフトをしていきたいと思う。

 <原子力プラントの包括的安全性向上のための地震時クリフエッジ回避技術の開発 公開ワークショップ>

1.開催日時:2018年(平成30年) 3月13日(火)13:30〜17:20
2.開催場所:東京大学本郷キャンパス 工学部1号館15号教室
3.参加費 :無料(配布資料あり、事前申し込み要)

4.プログラム
 第1部 研究計画と進捗状況の報告
  13:30-13:35 開会挨拶          高田 毅士(東京大学)
  13:35-13:50 「プロジェクト全体概要 開発の背景とねらい」
                     高田 毅士(東京大学)
 ―I. 地震時プラントの要求性能の分類と整理―
  13:50-14:10                牟田 仁(東京都市大学)
 ―II. 原子力プラントの地震時挙動とクリフエッジ回避技術の開発― 
  14:10-14:30 その1 建屋システムのクリフエッジの特定と評価
               西田 明美(日本原子力研究開発機構)
  14:30-14:50 その2 免震化によるクリフエッジ回避技術と課題
                     皆川 佳祐(埼玉工業大学)
  14:50-15:10 その3 原子炉容器・配管のクリフエッジの特定と回避技術
               山野 秀将(日本原子力研究開発機構)
    ―― 休憩(10分) ――
  15:20-15:40 その4 人間挙動のモデル化とクリフエッジ評価
                     肥田 剛典(東京大学)
  15:40-16:00 その5 機器・システムのモデル化とクリフエッジ回避技術
                     牟田 仁(東京都市大学)
  ―III. 既存プラントの安全性向上のための実施案および今後の課題―
  16:00-16:20                高田 毅士(東京大学)

 第2部 全体討論             
  16:20-17:10 討論           参加者全員
  17:10-17:15 講評           白鳥 正樹(横浜国立大学)
  17:15-17:20 閉会挨拶          高田 毅士(東京大学)

5.開催趣旨
 平成27年度文部科学省「英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業 原子力基礎基盤戦略研究プログラム−戦略的原子力共同研究プログラム」公募事業による受託研究として、標記研究(平成27〜29年度)を実施中である。
 原子力発電所は、周辺環境、建屋や機器、安全系システム、それらを操作・制御する人間を含めた複雑な系であり、地震時の安全性を議論するには、その系全体を包括的に相互関連性も考慮しながら検討することが極めて重要である。本研究では、原子力プラントの地盤−建屋−設備機器−安全系−人間システム全体系を分野領域横断的に取り扱い、全体系および各部の要求性能を明確化した後、それらに係る地震時クリフエッジを特定・定量化し、これらを回避する技術を開発することを目的としている。
 本ワークショプでは、本研究で得られた最新の成果を紹介した上で、実施内容やプロジェクトの方向性について、参加者からの忌憚のないご意見をいただくとともに、原子力発電所の地震時安全性向上に関する研究課題や、その解決方策などについて広く意見交換できる場となることを期待している。
       −以上−

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