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zoom RSS JAEA報告会2件に参加

<<   作成日時 : 2017/12/10 21:00   >>

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 原子力機構(JAEA)の成果報告会2件に参加した。

 JAEAは福島原発事故に関連した研究ではおそらく業界随一ではないかと思う。

 原子力学会から10/23と10/30にメールが届き、JAEA全体とJAEA安全研究センターの研究成果の報告会があるという。
 前者は11/14(火)、後者は11/29(水)ということであった。
 すぐに参加申し込みをした。

 2件のプログラムの概要は末尾に添付する。

 11月14日(火)は少し小雨模様であった。
 会場のホールはJR有楽町のすぐ近くであった。
 PETボトル500mlを買って行った。

 会場受付に行くと、13時頃に着いたのであるが、すでに行列ができていた。
 名前を言い、資料一式を受け取った。
 会場は広くて200人くらいはいたように思う。

 最初に児玉理事長があいさつし、福島原発廃炉や高速炉「もんじゅ」の廃止などについて語った。

 (1)では全体概要の前に、青砥理事からこの前の大洗での汚染事故についての説明があった。
 概要をおさらいしておくと、今年6月にJAEA大洗でプルトニウム等が入った缶を開けようとしたところ樹脂製の袋が破裂して作業員5名が内部被ばくしたものである。
 新聞で事件を知ってどうなるかと思っていた。
 今年の9月に原子力規制委員会に報告書を出したことも知っていた。
 でも規制委員会は分析不十分ということで10月に再提出を要求していた。
 このような経緯で説明があったものである。
 プルトニウムがあるところでは水素が発生しやすいようで、再処理施設の中で水素濃度の管理も重要な項目だったと記憶している。
 実際には半面マスクのすき間から吸入摂取した可能性が高いらしかった。
 予測不能の事態が起きた場合の柔軟な対応が取れていなかったようである。
 私は被ばくした作業員の栄養管理状態(葉酸、ビタミン摂取で放射線ダメージを回復できる)について質問したかったが質疑応答の時間はなかった。

 (2)の全体概要について大井川氏が説明した。
 福島原発事故の対処研究、原子力安全研究(原子力防災等)、核拡散防止と核セキュリティ、高速炉の研究開発(もんじゅ廃炉やフランスの次期高速炉ASTRIDのことも入る)、再処理等の核燃料サイクル研究がメインの柱になる。
 私が今注目しているのは福島原発事故関連の研究情報と核セキュリティ関連である。
 前者は福島原発事故の対処で環境モニタリングや汚染土壌の処理に関しての研究の進展である。
 後者については東京オリンピック2020年に向けて、テロ対策防止に係る核セキュリティである。
 大井川氏の説明は大まかな説明であるので、あまり注目はしなかったが、イノベーションの創出という言葉に多少反応したくらいである。
 私は大学のRI管理が今大変なので、JAEAが一括管理してはどうかと聞こうとしたが、ここでも質疑応答の時間はなかった。

 (3)の「ふくしまの復興に向けた取組」で田中氏が説明した。
 福島県内には福島環境安全センター(南相馬)等8か所の拠点があって活動している、とのことであった。
 廃炉や環境回復に向けて研究している。
 研究開発の一環として廃炉創造ロボコンを開催したというのが面白かった。
 確か昨年の12月3日の朝日新聞に載っていたようである。
 全国の13高専・15チームが参加したらしい。

 私は質問で、若狭湾エネルギー研究センターの人がセメント業界で使っているロータリーキルンで汚染土壌1千万トンが処理できるというがどうか、と聞いたが明確な回答はなかった。

 (4)「年代測定手法の高度化への挑戦」ということで藤田女史が説明した。
 年代測定としてはリビーの炭素C-14法が有名である。
 これは空気中の炭素C-14が一定で、生物は生きている時はこのC-14を一定量取り込むが、死ぬと取り込まなくなる。
 この性質とC-14の半減期5730年ということを使って生物化石等の年代測定を行うものである。
 この場合は生物化石があるということが重要であるが、地層処分で問題となる地下水等の年代測定に使えないので、それに代わる方法を開発している、とのことである。
 その装置として、加速器質量分析装置(AMS)ということであったが、この時に同重体という妨害物を除去する必要がある。
 この同重体というのは、例えば、元素ベリリウムBe-10(4番元素)の同重体はホウ素B-10(5番元素)、アルミニウムAl-26(13番元素)の同重体はマグネシウムMg-26(12番元素)というようにすぐ近くにある元素が妨害し、原子番号が大きくなると加速器が大型化してしまうので、それを抑えるのに使われたのがRCEという機器で、途中でイオン化の状況を変えてしまうものらしいが、これ以上は資料をみてもよくわからなかった。
 質疑応答の時も質問はなかった。

 (5)の「99番元素アインシュタイニウムを用いた重元素核科学研究」ではリカルド氏が説明した。
 イタリアから来た研究者らしく、たどたどしい日本語で説明した。
 92番元素のウラニウム以上は超ウラン元素として、自然界には存在しない元素である。
 アインシュタイニウムはEsと書いており、核爆発実験で見つかったものらしい。
 もちろんアインシュタインにちなんで名づけられたものである。
 今は米・オークリッジ国立研究所で作られており、再処理施設で見られるようなキュリウム量数100gを1年間原子炉で照射しても1μgしか生成されないらしい。
 今回研究のために、1千万円くらいで購入、とのことであった。
 これで研究して何の役に立つのか、という疑問がある。
 どうも核分裂のメカニズム探求らしい。
 ウラン235の例で言えば、中性子が当たって核分裂する時に、セシウムとストロンチウムのように、質量130ぐらいの元素と質量90くらいの元素に分裂、というように、質量が非対称の元素に分裂する。
 しかし、100番元素のフェルミウムFm以上では、例えばFm-258ではスズSn-129(50番元素)が2つのみの対称分裂となるらしいのである。
 この核分裂の非対称性と対称性の境を見極めたいということで、今回購入したEs-254を使って、O-18(酸素の同位体で天然には0.2%、通常99%以上あるのはO-16)を加速器でぶつけて、Fm-258を作る。
 この時にN-14(普通の窒素)も出る。
 このFm-258で核分裂生成物のSn-129を作ることが目標らしい。
 この時、会場ではわからなかったが、後で調べてみると、Sn-129はアイソトープ手帳にもアイソトープテーブルにも載っていない中性子過剰型の不安定な同位体らしい。
 通常のものはSn-120が33%、Sn-118が24%というように、ちょっと同位体の仲間が多い元素である。
 Sn-129がどういう分裂をするのかわからないが、とにかくこの核分裂のメカニズムを研究するらしい。
 しかし、まだ研究は始まっていない、とことで、12月から始める、とあったので、今は始めているかもしれない。 
 質疑応答では質問はなかった。

 (6)「高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減の実現に向けて」というタイトルで、竹内氏が説明した。
 高レベル廃棄物の中で分離が困難なMA(マイナーアクチニド:超ウラン元素でネプツニウムNp、アメリシウムAm、キュリウムCm)が使用済み核燃料の中に0.1%残っており、これを分離するのに溶媒抽出法を使っている。
 この溶媒抽出法は再処理施設でウラン・プルトニウムとFP(Cs、Sr等の放射性廃棄物)を分離するのと同じ技術である。
 この技術を使い、MAを分離して、それを炉内照射してなくすことを考えているらしかった。

 私は質問で、MAがウランと同じように通常の溶液中で底にたまりやすいことはないか、これによって沈殿分離はできないか、また、溶媒抽出の時にカラムの上部と下部でMA分離が異なることはないか聞いた。
 困ったような顔をしたのは覚えているが、どう答えたかは覚えていない。

 この後、休憩をはさんで、座談会「原子力機構の挑戦−原子力未来は何色か−」が始まった。
 モデレータとして、ノンフィクション作家の山根一眞氏が司会進行した。
 私が感心したのは、山根氏が先ほどの発表で1件も質問がなかった藤田女史とリカルド氏のテーマを取り上げ、大いに称賛していたことである。
 彼らの研究はすばらしいものであるが、レベルが高くて、質問しにくいものであった。
 それをうまく拾い上げて、彼が理解できる範囲の言葉で語っていた。
 原子力の未来は何色だったか、それは各人が抱くもので、何色と答えたかはここでは書かない。

 以上で、この日の報告会は終了した。

 11月29日(水)は確か晴れていたと思う。
 開催時間よりかなり早く着くように家を出たつもりであったが、やはり秋葉原は迷いやすい。
 事前にパソコンで開催場所を確認してきたが、駅を出てうろうろした。
 仕方なくもう一度スマホを使って場所を確認した。
 目印になるものが若干ずれていたのである。

 会場に着いて、受付で資料一式をもらった。
 席について一通り目を通した。
 またアンケートにも書けるところは全部書いておいた。

 会場はJAEA全体の会場に比べると多少狭く、参加者も50名前後といったところであろう。
 正直なところ、事前のプログラム確認した時には最後の発表しか興味はなかったが、さすがに最後だけ、というのはまずいかな、と思って最初から参加したのである。

 開会あいさつで三浦理事は原子力規制委員会が柏崎刈羽原発の認可、JAEAは原子力規制委員会と文部科学省の管轄であり、この報告会は主に若手を育てるために行っている、昨年はシビアアクシデント(SA)主体で行った、今年は地震を主体として行う、と説明した。
 また休憩時間にはポスターセッションも是非見て欲しいといった。

 (1)「安全研究センターにおける研究の概要」を与能本氏が説明した。
 安全研究の内容としては、原子力規制行政への技術的支援、先進的な安全研究である。
 原子炉関連ではSA対策、冷却材喪失事故(LOCA)等の評価、材料関連での照射脆化等である。
 核燃料サイクル関連では重大事故評価、高レベル濃縮廃液蒸発乾個や火災時のFP挙動等である。
 防災・環境・廃棄物関連ではオフサイト事故影響評価、リスク評価の防災への適用、屋内退避の被ばく線量低減、保障措置関係では核物質の性状分析技術等である。
 外的事象の研究では、火山活動評価、地下水流動性、飛行機等の衝突による施設の健全性等がある。
 原子力防災では安定ヨウ素剤の服用時における甲状腺被ばく線量評価等を行っている。

 (2)「原子力施設建屋システムのクリフエッジの特定および回避技術に関する検討」を崔氏が説明した。
 クリフエッジは懐かしい響きがあった。
 福島原発事故後に導入されたストレステストでは、このクリフエッジということの評価が重要と考えられて、非常に考えやすいアイデアと思った。
 クリフエッジを超えた場合は大きな事故につながり、それ以下に抑え込むことが重要で、その原発で最も弱いポイントはどこか、ということがわかりやすいのである。
 しかし、今の原子力規制委員会はこの考え方を取らず、独自の新規制基準を決めて、素人目にはわかりにくいものにしてしまった。
 でも、それは原発の安全保障の観点の配慮だったかもしれない。

 崔氏はこのクリフエッジを原発の建物の耐震に導入していたらしい。
 あまり関心はなかったのでそれ以上はよく聞かなかったが、最後の方で免震の考え方が説明されていた。

 質疑応答では、免震のために免震ゴム以外の何か器具を考えているか聞いてみたが、それは考えていないようであった。

 (3)「設計上の想定を超える地震を考慮した経年配管の健全性評価」ということで、山口氏が説明した。
 塑性変形した後のひび割れの進展を研究しており、経年劣化の評価でも重要と思われた。

 質疑応答では、配管の減肉の評価に関することや、配管の亀裂を光による測定でなく、X線やガンマ線で行うことはどうかと聞いた。
 前者についてはあまり回答は覚えていない。
 後者については今実施している、との回答があった。

 コーヒーブレイクの時にポスターセッションの会場に行ってみた。

 そこで、屋内退避の研究発表の人がいたので、葉酸やビタミンによる栄養摂取について議論してみたが、あまりよく理解していないようであった。

 (4)「冷却材喪失事故時及び事故後の燃料被覆管の破損挙動に関する研究」について成川氏が説明した。
 炉内挙動のことなので、あまりよく聞いていなかった。

 (5)「屋内退避による被ばく低減効果の評価」ということで廣内氏が説明した。
 室内では放射性雲等のプルームによる被ばく(プルームシャイン)と、地面に堆積した放射能から被ばくするグラウンドシャインがある。
 今までは欧米のコンクリートによる影響評価があっても、木造住宅の被ばくのデータがなかったので、この研究を行ったようである。

 私は質疑応答では、屋内退避していると、外部からの飲食物等が届かない可能性があるので、屋内退避期間はどのくらいを目安とするか聞いたら、2日くらいとのことだった。

 全体質疑では私はヨウ素剤の代わりに、葉酸とビタミンの多く入ったサプリのようなもので、放射線による細胞の損傷の回復をすべきといった。
 しかし、どうも放射線ホルミシス(放射線を多少浴びても健康のためにはいい影響を与える、とする説で、検証されていない)と勘違いされたようであった。
 仕方ないので、アンケートに、栄養摂取に関しては2016年11月の香川論文参照、と書いておいた。
 また、原子炉事故の時に冷却水を逆に抜いて、原子炉はだめになっても外部に放射能を逃がさないような方法はどうかと言ってみた。
 発表者ではなく、会場から別の人が、いざという時にはベントシステムで放射能の外部飛散を防止できるから、冷却水がなくなるという仮定は必要ないと答えた。

 その他核シェルターはどうか、と聞いた人もいたようであるが、回答は何だったか思い出せない。

 また、ハーバート大学が福島第二原発の東日本大震災の時のリスク管理が見事だったと評価していて、リスク管理の講義に使っているような話もあった。
 また、OSCAARという事故時影響評価コードは見事なものだから、PRしたり、学生に教育したりしてはどうか、という意見もあった。

 全体を通しての印象では、このセンターでは新規テーマの不足に悩んでいるような印象を受けた。
 従来の課題だけでは先細りする、というような危機感も感じられたが、では何か、となるとよくわかっていないようであった。
 
 JAEA関連の報告は福島に関連したものが多いので、これからも参加して情報収集していきたいと思う。


<第12回 原子力機構報告会>
 「原子力の未来 ―原子力機構の挑戦―」

1.開催日時:2017年(平成29年) 11月14日(火)13時30分〜17時00分
2.開催場所:有楽町朝日ホール
3.プログラム
 13:30 開会挨拶 理事長 児玉敏雄
 13:35 全体概要報告
     (1)大洗研究開発センター燃料研究棟における汚染について 理事 青砥紀身
     (2)機構の概況と研究開発の取組 事業計画統括部長 大井川宏之
 14:05 個別報告
     (3)ふくしまの復興に向けた取組 福島研究開発部門 田中真
     (4)年代測定手法の高度化への挑戦−加速器質量分析装置における新検出手法の開発 東濃地科学センター 藤田奈津子
     (5)99番元素アインスタイニウムを用いた重 元素核科学研究 先端基礎研究センター オルランディ・リカルド
     (6)高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減の実現に向けて−照射済燃料からのMA分離技術への挑戦− 次世代高速炉サイクル研究開発センター 竹内正行

 15:20
     休憩・研究開発部門によるブース展示
 15:55
     座談会
     原子力の未来は何色か −原子力機構の挑戦−
      モデレーター:山根一眞氏(ノンフィクション作家・獨協大学経済学部特任教授)
      パネリスト  :井川陽次郎 氏(読売新聞東京本社論説委員)
               原子力科学研究部門 副部門長 岡嶋成晃
               原子力科学研究部門 J-PARCセンター長 齊藤直人
 17:00
     総括及び閉会挨拶 副理事長 田口康
     総合司会 雲野右子女史


<平成29年度 JAEA安全研究センター報告会 プログラム>
  ―地震を起因とする原子炉への影響と原子力防災に関する安全研究―
1.開催日時:2017年(平成29 年) 11 月29 日(水) 13:30〜17:30
2.開催場所:富士ソフト アキバプラザ 6 階セミナールーム
3.プログラム
 13:30 開会挨拶 理事・部門長 三浦幸俊
 13:40 (1)安全研究センターにおける研究の概要 副センター長 与能本泰介
 14:00 (2)原子力施設建屋システムのクリフエッジの特定および回避技術に関する検討
構造健全性評価研究グループ 崔炳賢
 14:30 (3)設計上の想定を超える地震を考慮した経年配管の健全性評価
構造健全性評価研究グループ 山口義仁
 15:00 コーヒーブレイク & ポスターセッション(セミナールーム4, 5)
 16:00 (4)冷却材喪失事故時及び事故後の燃料被覆管の破損挙動に関する研究
燃料安全研究グループ 成川隆文
 16:30 (5)屋内退避による被ばく低減効果の評価
放射線安全・防災研究グループ 廣内淳
 17:00 全体質疑
 17:20 閉会挨拶 センター長 中村武彦
     (司会 サイクル安全研究グループ 天野祐希)
   −以上−

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