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zoom RSS 東工大・原子力道場のTVセミナーに参加

<<   作成日時 : 2017/10/08 17:28   >>

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 東工大・原子力道場のTVセミナー(福島原発事故の教訓)に参加した。

 今年の9月12日に原子力学会より上記の案内のメールが届いた。
 核セキュリティというテーマに興味があり、また、全国18拠点の大学を結んだTVセミナーということも興味を引いたのである。他に最後の講演の竹下氏のCs-137脱着研究の進展にも興味があった。

 早速申し込みの手続き(東工大のHPの原子力道場の申込ページで申し込み)をした。
 原子力道場というネーミングが面白いと思った。
 最後にプログラムを添付する。

 でもその後によく読んでみると、全国の大学生に対する教育となっていた。
 あれっ、社会人が申し込みするとまずいかもしれないと思った。

 当日27日の朝になっても、この不安を抱えたまま家を出た。
 行く途中で、昼食とPETボトル500mL1本と新聞を買っていった。

 東工大大岡山キャンパスは、東急大井町線の大岡山駅の駅から歩いて1、2分の近くにあり、東西南北4つの地区の集合体となっている。
 東西南地区は一緒の固まりとしてあり、それから、ちょっと離れた北側に北地区があった。
 途中に急勾配の坂道があり、行きはよいよい、帰りは怖い、というような、行く時は楽だが、帰りはしんどい坂道を歩いて行った。
 会場はすぐにわかった。

 受付で、社会人が受けても大丈夫ですか、と聞くと、受付の人が、社会人も半分くらい申し込んでいる、とのことだった。
 その後会場を見渡してみると、確かに20人くらい会場にいたような気がするが、半数くらいが社会人のようだった。
 最初に全国18か所の中継状況を確認していたように思う。この中継でどのくらいの大学生や社会人が受講しているかはわからない。
 東工大の会場正面には、講演者PC用スクリーン、左の演壇で講演者が講演、右側に全国の中継のスクリーンという配置であるが、講演途中は通常のセミナー、講演会と変わらなかった。
 ただ、レーザーポインターで正面のPCスクリーン上の図面等を講演者が指しても、全国の中継場所では見えにくいらしく、パソコンのカーソルを使うように注文がついていた。

 講義1の相樂氏は核セキュリティの基礎について話した。
 ちょっと感心したのは、1枚日本語の資料Aがあると次のページはこの資料Aの英語版をつけていた。

 今、核セキュリティは世界の関心事になっている。
 数年前に核セキュリティサミットも開かれたように思う。
 核セキュリティとは、ISのようなテロリスト等の非国家主体の故意によって、核物質と放射性物質が盗まれたり、まき散らされたりすることを防止すること、である。
 2011年に旧ソ連領内で、高濃縮ウランの不正売買が発覚して数gのウランが押収された。
 最近ではフランスの原発にグリーンピースのメンバーが侵入しようとしたり、ISによるベルギー原発を標的とした計画が発覚したりしたらしい。
 日本の場合には、原子炉等規制法の改正により、核物質等の管理の厳重化等核セキュリティに重きをおいた法律改正が行われている。
 この中で、技術障壁、物理的防護の障壁が重要な項目である。
 前者は立入制限区域、その中でも管理対象によっては防護区域を設ける等の措置が取られる。
 後者ではフェンスを設けたり、入域制限を設ける。
 また、監視カメラ、警報システム等複数のシステムを導入している。

 福島原発事故では悪意を持ったものにとっては効果的な標的となることを気付かせてしまった。
 これに対応して、原発内の全交流電源喪失等の弱点の補強、規制機関の独立性として、原子力規制委員会ができた。
 物理的防護措置の強化という点で、国際原子力機関IAEAの勧告INFCIRC225 Rev.5に基づいて、原子炉等規制法の改正等が行われた。
 核セキュリティ文化なることばもあるらしい。
 このIAEAのINFCIRC225.Rev5なる資料が日本にとって一つの大きな黒船らしかった。
 テロ対策の一つとして、航空機衝突への対策もあるという。
 おそらく9.11テロを踏まえたものであろう。
 F4ファントム戦闘機が3.66mのコンクリート壁に衝突しても、壁は大丈夫なようである。(図1参照)

画像

         図1 戦闘機のコンクリート衝突実験(Sandiaのビデオギャラリーより引用)

 放射性物質(RI)の管理としては、放射線障害防止法の改正が行われ、密封RIや非密封RIの管理を厳重にするよう義務付けられたようである。
 RIの事故として、ブラジルのゴイアニア市の廃病院でセシウム線源が放置され、光る様子に興味を持った市民250人くらいが被ばくし、14名が多量被ばく、4名が死亡する事件が1987年にあったらしい。
 今、文部科学省ではこの核セキュリティ関連の研究を進めているらしい。
 研究トピックスとして、核鑑識等が議論にはなっている。
 この核鑑識は核物質やRIの素性を明らかにするものであり、人間における指紋認証技術と同等と思えばいい。 この研究も現在進められている、とのことである。

 私は質問で、核鑑識のライブラリーはできているのか、またできていないのであれば、原子力規制委員会等で作る動きはあるのか、と聞いた。
 そういうものはヨーロッパではすでにできているらしいが、日本では現在できてなくて、作る動きはあるのかどうか定かでないようであった。

 講義2は東電福島原発事故の反省と教訓というタイトルで、長岡技術科学大学の吉澤氏が講演した。
 吉澤氏は福島原発事故時、5号機と6号機のユニット所長で第一発電所全体の吉田所長と事故対応した一人である。
 吉澤氏は事故の状況を説明し、事故現場の生々しいやり取り等も説明した。
 事故対策の中心にあった免震重要棟は、2004年の新潟沖地震があった時に柏崎刈羽原発が近くにあったことを踏まえて東電が自発的に備えた施設であるが、この施設がないと被害がどれほど拡大したかわからないのでは、ということだった。
 こういうプラスの対策についての報道はほとんどなく、欠点ばかりが浮き彫りになるようにした報道はフェイクニュースとまではいかないが、冷静で客観的な報道姿勢が望まれる。
 現場とこの施設はたかだか100mくらいの距離だが、現場を見ていない。現場の人間の命を守れないで、地元の人の命を守れるわけないじゃないか。作業しているほとんどの人間が過剰被ばくに近い被ばくをしている。
 上記のような現場のやり取りを聞いて、現場の状況を理解するのがいかに難しいかが多少なりとも伝わってくる。
 同じ巨大システムを持つ航空機のパイロットは有事の際に外部といかに連携をとるか、ということを訓練されている。
 外部の力を借りる重要性が指摘された。
 また、福島事故では停電によりほとんどの計器が使えなかった。計器が正常であれば、もう少し的確な判断ができたかもしれない、とのことだった。
 これらのことから、福島事故の教訓として、レジリアンスエンジニアリングを提案していた。

 レジリアンスという言葉は強靭性というような意味だったと思う。
 ダメージを受けても回復する能力ということで、人間の有事での柔軟な対応というイメージらしい。
 レジリアンスな組織としての能力は学習する、対処する、監視する、予見するの4項目である。

 私は質問で、このレジリアンスエンジニアリングは子育てと同じではないか、と言った。
 子どもが公園で遊ぶ場面を想像する。
 遊び方を学習する、すりむいたら、手当する、遊具が危険でないか見る、けがをする恐れがあるものは改善するように行政に働きかける、である。
 この質問にもあまりはっきりした回答はなかった。

 講義3は「東電福島原発事故から学ぶ原子力発電所の運営」というタイトルで、二見氏が講演した。
 二見氏は事故当時の吉田所長より5代前の福島第一原発所長だったらしい。
 二見氏は福島事故については簡単に話した。
 通常の原子炉停止6時間後に発電量の1%弱の出力に相当する発熱があり、この発熱を除去しないと、1時間で約1000℃上昇する。
 もし燃料がこの熱にさらされると約2時間で溶融するらしい。
 また、ミューオンによる原子炉透視の結果から炉内状況の推定を行っていた。
 1号機の炉心はほとんど溶け落ちており、2号機と3号機には少量の燃料が炉心に残っているらしい。

 ちょっと面白いと思ったのは、燃料費を発電コストの10%程度と説明していた。
 100万kWの原発で1年間発電するとして、20円/kWhと仮定する。
 すると、1kWhの発電は1kWの発熱体で1時間による利益は20円である。
 これを100万kWの原発であれば、2,000万円/時である。
 24時間で約5億円、365日では約2,000億円である。
 この10%であれば燃料代は約200億円くらいとなる。
 このくらいの金額を稼げるプラントの緊急停止には何億円、何10億円という額の損害となるので、大変な決断になると思ったが、二見氏にはこの質問をしなかった。

 講義4は東電福島原発事故後の環境回復というタイトルで、竹下氏が講演した。
 この竹下氏は海水によるセシウムCs-137の脱着を考えている人で、以前海水成分の中で、カリウムが有効、との説明を東工大のセミナーで聞いたことがある。
 今はこの考えを進展させて、亜臨界によるCs-137脱着から、ガラス固化体までの一貫した処理方法を研究しているらしい。

 面白いと思ったのは、Cs-137をいろんな土に吸着させてみたことで、粘土に近いバミキュライトが一番吸着のメカニズムが強いことを説明した。
 今あるCs-137の状態ではなく、その状態に至った過程を究明したわけである。
 他の土はほとんどCs-137を吸着してもすぐ離してしまうが、バミキュライトのみが結晶構造の中に取り込んで安定化するらしい。
 これを取り出す方法として、アンモニアNH3、ナトリウムNa、カリウムK、マグネシウムMg、カルシウムCaで薄い濃度0.01M、濃い濃度1Mで試した。
 薄い濃度ではどれもCs-137を脱着しない。
 濃い濃度ではカリウムが100%近い脱着性能を示したが、50時間と時間がかかった。
 おそらくこの遅い反応速度を改善するために、亜臨界という熱を若干加えた状態にしてCs-137の脱着を加速するつもりなのであろう。
 この脱着したCs-137をフェロシアン化鉄で再度吸着して、ガラス固化体までもっていく構想のようであった。

 私は質問で、バミキュライトと他の土の割合を分析して、バミキュライトの割合を究明する研究はどうか、また、この研究は福島の風評被害対策(土の中のCs-137はバミキュライトに吸着されると出てこないから、福島で育てた産物にはCs-137が入ってこない)に役立たないか、と聞いた。
 前者については、分級等で細かい粘土中にCs-137が多いので、そういうもので分離して、その後にバミキュライト実験の結果を適用したい、とのことだった。
 後者については、土中のCs-137についてはこの吸着現象のみ、というわけではないから、風評対策で使用するのは難しい、とのことだった。

 以上でこの原子力道場は終了した。

 今回は核セキュリティに関する話題、また竹下氏の土中のCs-137のK脱着の研究進展をみてみたいということで参加した。
 前者については、核セキュリティの背景、現在の研究動向等がわかってよかった。
 Cs-137脱着については進展したようでもあり、後退したようでもあり、微妙な感じである。
 以前、どこかのセミナーで、ロータリーキルンを使った1,000℃くらいの加熱で、1千億円程度で福島事故の汚染土壌は処理可能といった研究者がいたように思う。この人はこの技術なら今すぐにでも可能と言っていたような気がする。
 竹下氏の汚染土壌処理よりもこちらの方が優れているかも、と思ったのだが、誰がこのロータリーキルン処理を提案したか、記憶が定かでない。

 今後もこれらの研究の進展を見ていきたいと思う。


<第2回 原子力道場>
 国際原子力基礎教育TVセミナー 「東京電力福島原子力発電所事故の教訓」
  TV 講義配信校:東京工業大学

1.開催日:2017 年(平成29年)9月27日(水)
2.開催場所:TV 講義配信校/東京工業大学(東工大会場:大岡山キャンパス 大岡山北2号館6階会議室)
3.全国のTV拠点校:
 茨城大学(水戸キャンパス、日立キャンパス)、大阪大学、岡山大学、金沢大学、九州大学、京都大学、湘南工科大学、東京工業大学、長岡技術科学大学、名古屋大学、八戸工業大学、福井大学(文京キャンパス、敦賀キャンパス)、北海道大学、山梨大学、東京都市大学、早稲田大学(順不同)
4.参加費:無料
5.講義プログラム
 10:30〜10:35 開会の挨拶/開催の趣旨 西村章 東京工業大学教授
 10:35〜12:00 講義1 核セキュリティの基礎 相樂洋 東京工業大学准教授
 13:00〜14:20 講義2 東電福島原発事故の反省と教訓 吉澤厚文 長岡技術科学大学客員研究員
 14:30〜15:50 講義3 東電福島原発事故から学ぶ原子力発電所の運営 
            二見常夫 ビジネス・ブレークスルー大学教授(元東京電力福島第一原子力発電所長)
 16:00〜17:20 講義4 東電福島原発事故後の環境回復 竹下健二 東京工業大学教授
 17:20〜17:25 閉会の挨拶/アンケート調査の説明とセミナーのまとめ 竹下 健二
        −以上−

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