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<<   作成日時 : 2017/07/02 10:06   >>

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 「科学と産業の停滞と復興」シンポに参加した

 5月の初めくらいに日本学術会議のHPにこのシンポジウムのお知らせが載っていた。どうしようかな、と思っていた。
 最近の傾向として、迷う時には参加してみる、を実行した。
 一応事前申し込みは不要と知っていたので、開催日の1日前の6月21日に参加を決めた。

 タイトルからして、あまりいいイメージではない。
 よくテレビでも科学技術立国をうたうわが国なのに足元では学術や産業が地盤沈下しているとの指摘がなされている。
 ポスターの文句には、科学と産業がなぜ凋落したのか応用物理の視座から議論し、再興への道筋を見出してゆくことを開催の趣旨とする、とあった。

 6月22日(木)は晴れだったように思う。
 会場の日本学術会議講堂へはスムーズに行った。
 受付で名刺を渡すと名簿に書き込む必要はなかった。ただ、配布されたのはA4のプログラム1枚のみであった。
 プログラムを末尾に添付する。

 学術会議の自販機は通常の場所の自販機より安い。PET160円のものが130円、コーヒー缶130円のものが90円だったような気がする。トイレに行き、コーヒーを飲み、PET500mL1本を買った。

 開会の辞で河田氏は科学をいかに社会に還元するか、ということを語り、産業界からも参加がある、とのことだった。
 大西氏は、国際比較すると日本の科学のランクは下がっている、たかがランク、されどランクと言った。また、留学生が留学先を決める時にこのランクも関係あるらしい。
 保立氏は企業の会員数が減ってきていることを言った。

 講演1で豊田氏は「日本の大学の研究力はなぜ失速したのか?」のテーマで説明した。
 日本の研究力の低下が著しい。論文数は2004年から減少している。被引用論文数もインパクトが低い。注目するべき論文数も4位から12位に後退した。ネイチャー等の著名雑誌掲載数も4位から8位に後退した。
 人口当たりの論文数は38位、GDP当たりの論文数は46位である。日本は人口と富に見合った論文を作成していない。
 論文は大学が大半だから、国公立の大学の停滞が原因である。理工系が減少しているが、臨床医学のみ上昇である。
 なぜ失速したのか。教員の研究時間が減少している。教育時間は増えている。
 ここにFull-Time-Equivalent(FTE)という指標がある。教員の研究に占める割合で、このFTEがEUでは高く、日本では低いことが原因とした。

 講演2の西村氏は「電子立国の凋落に何を学ぶか」というテーマで説明した。
 電子立国としての凋落が著しい日本である。本を出したら売れた。中国語版も出版される。中国が日本のようにならないように、という忠告の書であるという、冗談とも本気ともとれることを言った。
 日本の電子産業は全盛期は26兆円/年の時もあった。コンピュータ生産も一時7兆円だったのが、今は1兆円規模である。
 通信機器とコンピュータは4兆円の赤字である。テレビ生産でもCRT画面から液晶になったが、今日本で生産されていない。
 遡って考えてみると1985年に大きな変動があった。この時に何があったか。
 ドルと円の比率が250円から120円になり、東西冷戦の終結がゴルバチョフの登場で見えてきた。ソ連の脅威はなくなったからこれからは東アジアを抑え込もうという動きになった。
 そもそも第2次大戦直後にアメリカは日本の工業力の抑え込みから始まり、朝鮮戦争の時以降に日本の工業力支援、1985年にまた日本の工業力抑え込みとアメリカの対日政策が変わったことも大きい。
 また、日本でも世界の流れが読めなくなった。米国で新興企業が続々出てきて、グローバルな分業体制を取った。パソコンにその例を見る。
 日本はこうした分業を嫌う。みんなで手をつないで衰退していく。
 シュンペータによると、分業はイノベーションである。
 日本の半導体のプロジェクトができればできるほど地盤沈下していく。
 日本の科学技術基本計画は5年計画で、こうした計画はソ連が好きだったが、うまくいかない代表例なのに、日本がこれを踏襲した計画を推進している。
 自動車産業が割と日本が健闘しているのは民間主体だったからである。
 しかし、自動車もそのうち自分で持つ必要はなくなるかもしれない。
 今都会で流行るものは、自動運転、Iot、ビッグデータ、AIである。
 これからの日本予測は2030年〜2060年は地獄、2060年の団塊ジュニアが定年の時はもっと大変、2100年は6000万人の人口で、エネルギーや食糧の自給自足が可能かもしれない、とのことだった。

 講演3の牧氏は「スター・サイエンティストと日本のイノベーション」ということで説明した。
 スター・サイエンティストは聞き慣れない言葉だが、想像はできる。
 一人の素晴らしい才能を持った学者がいると、その周りのポテンシャルが上がり、論文数も増える。
 1989年の327人のバイオテクノロジー分野のスター・サイエンティストの出した論文が全論文の20%を占めた。 
 スター・サイエンティストがいると、ベンチャー企業も関わると相乗効果が現れる。
 スター・サイエンティストの下で、他の研究者は育つか研究した。スター・サイエンティストが急死した時の他の研究者の追跡調査を行った。
 その結果、彼らの業績は低下していた。スター・サイエンティストのアイデアの提供とメンタルな面での影響が大きい。
 スター・サイエンティストの面倒見の良さを見るのに、論文の謝辞を見た。理論的な貢献の謝辞が多い。
 スター・サイエンティストの抽出をしてみると、米国は2400人で1位、日本は120人で8位である。

 質疑でiPS細胞の山中教授を連れてきた人もいるのでは、との他の人の質問に、あまりその間の事情を知らないようで、どういう受け答えをしたかわからなかった。

 講演4の大澤氏は「若者が切り開く産業の未来」というテーマで説明した。
 どうやって若者を育てるか。産学連携を推し進め、若者と産業を結ぶ。初等・中等教育からトータルで考えていく。
 学問の本質を学び、未来志向とする。ガリレオやニュートンの例を引く。
 ガリレオは逆境の中でも、それでも地球は回っていると言った。
 ニュートンの著書「プリンキピア」の初版本を金沢工業大学は持っている。
 オバマ前大統領のSTEM教育(science, technology, engineering and mathematics、これらが組合わされた教育)推進は参考になる。
 なぜ星が落ちてこないのか。望遠鏡を作って観察する。望遠鏡を作る技術として、設計・製作の技術が進歩する。
 大学におけるSTEM教育を模索している。
 望遠鏡というイノベーション、レンズを2枚重ねると遠くのものが見える、レンズの素材はどうするか。
 STEM+A(Art)が重要と思っている。
 実装してみて初めてわかる。光の波動性で、遠くを見る、空に向けて、を行ったのはガリレイ、ミクロの世界へ向けたのはフック、顕微鏡の発明へとつなげた。
 エンジニアとしての役割が重要としてプリンキピアを読み始めた。第一、第二、第三法則の概念のみを記述してある。P12,P13に書いてある。こういう概念を思いつく学生を育てたい。
 本質の部分が抜けて、流行のものに飛びつく人が多い。
 リリエンタールは鳥が飛ぶ時の浮力を考えた。固定翼は人間の飛行機のみのものである。
 ガルバーニのカエルの筋肉からボルタの電池へと向かう。
 こういうことを考えられる学生を育てる。
 建物の壁に映画のような投影技術のプロジェクションマッピング、電子シラバスシステム等がある。
 イノベーションと若者の力を合わせる。プロジェクト型授業を進めている。
 異分野の人を混ぜるといいアイデアが出る。クラスター研究室を作る。車椅子はいるのか。
 限界を作らない自由な発想が大切である。解は1つではない。自分で限界を作る学習ではいけない。
 子どもが体験するべき50の危険なことがある。
 介護ロボ、ロボットスーツ、AI搭載ロボット、自分の分身を永遠に作ろう、というような考え方がいい。

 この後総合討論となった。
 講演1,2,4は質疑の時間がなくて、講演3のみ質疑があった。

 私は質問で、論文を書く人の年齢と論文数を聞いた。年を取ってくると、だんだん徹夜とかできなくなり、論文の作成体力、また知力も衰えるはず、と思った。
 また、スター・サイエンティストでも同じであり、彼らの年齢と論文数はどうか、と聞いた。
 これらのデータを持っていないようで回答はあいまいなものであった。
 もう一つの質問としては、講演4の大澤氏に、ユニバーサルデザインはどうか、研究室にスティーブン・ホーキングのような身体障害者等を連れてくる等のデザインの手法を聞いたが、やはりあまり大した回答ではなかったと思う。

 この他、研究者のサラリーマン化等を指摘した人もいた。
 高級エンジニアの飼い殺しや民間企業の技術者の評価が低い等も挙げられた。
 また、タブー視されていることとして軍事研究の例を挙げた人もいたように思う。

 以上で、このシンポジウムは終了した。

 出る杭は打たれる、護衛船団方式、赤信号皆で渡れば怖くない、という日本の現代の常識的なことが、グローバル化した現代の世界の趨勢に合致していないことが原因で、これを打破するために、若い学生にSTEM教育(+αとしてArt)のような総合学習、または課題を自分で探し、自分で解くアクティブラーニングのような考え方が必要な時代に入ったのかもしれない。

 今後もこのような課題のものがあれば参加して、若い人の脳に刺激を与えられるような発想法ができればいいと思う。

<公開シンポジウム>
「日本の科学と産業の停滞と復興」
1.日時:2017年(平成29年)6月22日(木)13:30〜17:00
2.会場:日本学術会議講堂
3.参加費:無料(事前申込不要)
4.主催:日本学術会議 総合工学委員会 未来社会と応用物理分科会
 共催:公益社団法人応用物理学会
5.プログラム
 13:30 開会の辞 河田聡(大阪大学名誉教授)
 13:35 挨拶1 大西隆(日本学術会議会長)
 13:40 挨拶2 保立和夫(日本学術会議第三部会員、応用物理学会長)
 13:45 講演1「日本の大学の研究力はなぜ失速したのか?」豊田長康(元三重大学学長)
 14:15 講演2「電子立国の凋落に何を学ぶか」西村吉雄(元東京大学大学院教授)
 14:45 講演3「スター・サイエンティストと日本のイノベーション」牧兼充(政策研究大学院大学助教授)
 15:15 講演4「若者が切り開く産業の未来」大澤敏(金沢工業大学学長)
 15:45−16:00 (休憩)
 16:00 総合討論
      (司会)河田聡(前掲)
      (パネラー)保立和夫(前掲)、豊田長康(前掲)、西村吉雄(前掲)、牧兼充(前掲)、大澤敏(前掲)
 16:50 閉会の辞 中野義昭(東京大学大学院教授)

 −以上−

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