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zoom RSS 放射線等によるDNA損傷の回復の基礎知識についてーその2

<<   作成日時 : 2017/05/07 08:22   >>

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 先週に引き続き、放射線等によるDNA損傷の回復の基礎知識について述べてみる。(その2)

 昨年11月にこの概要については述べた。下記にそのURLを示しておく。

 http://hitotsunoishi.at.webry.info/201611/article_4.html

 この時、香川論文では2015年のノーベル化学賞についても、DNA修復機構の解明ということで紹介している。
 DNA修復には3つの方法がある。
 放射線等でDNAに異常が発生した時、これを除去して正常なDNAに戻す機能がある。この方法に2通りあって、元通りのDNAにする方法と、異常箇所を切り取って、別の正常なDNAを作るものである。
 また、DNAのコピー(複製)を作る時に異常なDNAをコピーした時に酵素で検出し、正しいDNAコピーを作る。
 これらのDNA修復作業には葉酸等の栄養素が不可欠なのである。

 この3つの修復に対するノーベル財団の資料があったので、それを引用し、勝手に私が和訳してみた。生物学には詳しくないので、一部不適な部分はあるかもしれない。
 また図に関しては、図1のDNA構造(A:アデニン、T:チミン、G:グアニン、T:チミンの4つの塩基の複雑な構造)のみ示し、その2で、3つのDNA修復の図を入れる。

<THE NOBEL PRIZE IN CHEMISTRY 2015>(その2)

It pays off to learn about “DNA stuff”
 Paul Modrich grew up in a small town in northern New Mexico, USA. The diversity of the expansive landscape spurred his interest in nature, but one day his father, a biology teacher, said: “You should learn about this DNA stuff.” This was in 1963, the year after James Watson and Francis Crick had been awarded the Nobel Prize for discovering the structure of DNA.

<「DNA材料」について学ぶことはためになる>
 ポール・モドリッチは米国の北部ニューメキシコの小さい町で成長した。広大な景色の多様性は彼の自然への興味を駆り立てたけれど、ある日、彼の父〈生物学の先生〉が言った。
 「あなたはこのDNA材料について学ぶべきである。」 
 これは1963年のことであり、ジェイムズ・ワトソンとフランシス・クリックがDNAの構造を発見してノーベル賞を授与された次の年であった。

 A few years later, that “DNA stuff” really became central to Paul Modrich’s life. Early in his research career, as doctoral student at Stanford, during his postdoc at Harvard, and as an assistant professor at Duke University, he examined a series of enzymes that affect DNA: DNA ligase, DNA polymerase and the restriction enzyme Eco RI.
 When he subsequently, towards the end of the 1970s, shifted his attention to the enzyme Dam methylase he stumbled over another piece of “DNA stuff” that would come to occupy him for a large part of his scientific career.

 数年後に、「DNA材料」は本当にポール・モドリッチの生活の中心になった。
 彼の研究履歴の初期において、スタンフォードで博士課程、ハーバードでポストドクター、およびデューク大学で助教授として、DNAに影響を与える一連の酵素、DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、および制限酵素エコRIを研究した。
 彼はその後 1970年代の終り頃に、彼の注意は酵素のダム・メチラーゼに移した時に、彼は、彼の科学の経歴の大きい部分を占めるようになる「DNA材料」の別の断片につまずいた。

Interweaving two strands of research
 Dam methylase couples methyl groups to DNA. Paul Modrich showed that these methyl groups could function as signposts, helping a particular restriction enzyme to cut the DNA strand at the correct location.
 However, only a few years earlier, Matthew Meselson, a molecular biologist at Harvard University, had suggested a different signalling function for the methyl groups on DNA.

<2つの研究の糸を織り込む>
 ダム・メチラーゼはDNAにメチルグループを結びつける。ポール・モドリッチは、正しい位置で特定の制限酵素をDNAブロックから切り離すことを手助けして、これらのメチルグループが目印として機能することを示した。
 しかし、ほんの数年早く、マシュー・メセルソン〈ハーバード大学の分子の生物学者〉は、DNAに関するメチルグループの違う合図の機能を提案した。

 Using some molecular biology artistry, Meselson had constructed a bacterial virus with several occurrences of mismatching bases in the DNA. For instance, A could be placed opposite C, instead of T. When he let these viruses infect bacteria, the bacteria corrected the mismatches. No one knew why the bacteria had developed this function, but in 1976 Meselson speculated, among other things, that it could be a repair mechanism that corrected the faulty matches that sometimes occur when DNA is replicated. If that was the case, Meselson continued, perhaps the methyl groups on the DNA helped the bacteria identify which strand to use as template during correction. As the new DNA strand, the faulty replica, was still unmethylated, maybe that was how it could be identified and corrected?

 いくらかの分子の生物学の技術を使うことによって、メセルソンは、DNAでの数個の塩基のミスマッチ(複製ミス)を引き起こしている細菌のウイルスを作った。例えば、AはTの代わりに、Cの反対側に置かれた。彼がこれらのウイルスを細菌に感染させた時、細菌はミスマッチを修復した。
 誰も、なぜ細菌がこの機能を持っているかを知らなかったが、1976年にメセルソンは他の生物の間でも、DNAが複製される時に時々起こる間違った組合せを修正する修復メカニズムがあるのではないかと思った。
 もしそうならば、メセルソンはさらに、DNAでのメチルグループは、細菌が修正をどのブロックで行うのかを識別する手助けをすると思った。
 新しいDNAのブロックとして、間違ったレプリカはまだメチル化されていなくて、たぶん、それがどのように識別されて修復されるかであろう。

 Here−in the methylation of DNA−Paul Modrich’s and Matthew Meselson’s paths crossed. Working together, they created a virus with a number of mismatches in its DNA. This time, Modrich’s dam methylase was also used to add methyl groups to one of the DNA strands. When these viruses infected bacteria, the bacteria consistently corrected the DNA strand that lacked methyl groups.
 Modrich and Meselson’s conclusion was that DNA mismatch repair is a natural process that corrects mismatches that occur when DNA is copied, recognising the defect strand by its unmethylated state.

 ここで−DNAのメチル化では−ポール・モドリッチとマシュー・メセルソンの思考過程は交差していた。
 いっしょに働くことによって、彼らは細菌のDNAの中に多くのミスマッチを持つウイルスを作成した。今回、またモドリッチのダム・メチラーゼはDNAブロックのうちの1つにメチルグループを追加するために用いられた。
 これらのウイルスが細菌に感染した時には、細菌はメチルグループを欠いたDNAブロックを誤りなく修復した。
 モドリッチおよびメセルソンの結論は、DNAのミスマッチ修復は、DNAが複製される時に起こるミスマッチを修復する自然なプロセスであり、その非メチル化の状態によって欠陥ブロックを認識していたということであった。

Paul Modrich−illustrating DNA mismatch repair
 For Paul Modrich, this discovery kick-started a decade of systematic work, cloning and mapping one enzyme after the other in the mismatch repair process. Towards the end of the 1980s, he was able to recreate the complex molecular repair mechanism in vitro and study it in great detail. This work was published in 1989.
 Paul Modrich, just like Tomas Lindahl and Aziz Sancar, has also studied the human version of the repair system. Today we know that all but one out of a thousand errors that occur when the human genome is copied, are corrected by mismatch repair. However, in human mismatch repair, we still do not know for sure how the original strand is identified. DNA methylation has other functions in our genome to that of bacteria, so something else must govern which strand gets corrected− and exactly what remains to be clarified.

<ポール・モドリッチ−DNAミスマッチ修復を明らかにする>
 ポール・モドリッチにとって、この発見後は、ミスマッチ修復プロセスにおける次々に見つかる酵素の増殖と系統的な整理の研究を始動させた10年間であった。
 1980年代の終り頃に、彼は、生体外の複雑な分子修復メカニズムを再構築し、詳細な研究を行った。この研究は1989年に公表された。
 ポール・モドリッチは、ちょうどトマス・リンダールとアジズ・サンジャルのように修復システムの人への適用版も研究した。
 今日、私たちは人のゲノム(遺伝子)が複製される時に起こる1000個のエラーのうちの1つさえも、すべてミスマッチ修復によって修正されることを知っている。
 しかし、人のミスマッチ修復において、私たちは、まだ、どのように最初のブロックが識別されるかを正確には知らない。DNAメチル化は私たちのゲノムにおいて、細菌の機能のような別の機能を持っている。そして、その何かはどのブロックが修復されるか、そして、正確に残りの部分が明確になるかを支配するものなのである 。

Defects in the repair systems cause cancer
 Besides base excision repair, nucleotide excision repair, and mismatch repair, there are several other mechanisms that maintain our DNA. Every day, they fix thousands of occurrences of DNA damage caused by the sun, cigarette smoke or other genotoxic substances; they continuously counteract spontaneous alterations to DNA and, for each cell division, mismatch repair corrects some thousand mismatches. Our genome would collapse without these repair mechanisms. If just one component fails, the genetic information changes rapidly and the risk of cancer increases. Congenital damage to the nucleotide excision repair process causes the disease xeroderma pigmentosum; individuals who suffer from this disease are extremely sensitive to UV radia¬tion and develop skin cancer after exposure to the sun. Defects in DNA mismatch repair increase the risk of developing hereditary colon cancer, for instance.

<ガンを引き起こす修復システムの欠陥>
 塩基除去修復、ヌクレオチド除去修復、およびミスマッチ修復の他に、私達のDNAを維持する数個のシステムがある。
 毎日、それらのシステムは、太陽、タバコの煙、または他の遺伝的毒性物質により起こされる数千のDNA損傷を固定する。
 それらはDNAへの自発的な変更を継続的に相殺し、個々の細胞分裂のために、ミスマッチ修復は数千のミスマッチを修正する。
 私たちのゲノムはこれらの修復メカニズムがなければ崩壊している。
 もしちょうど1つの機能が故障したならば、遺伝情報は急速に変更され、癌のリスクは増大する。
 ヌクレオチド除去修復プロセスへの先天性障害は色素性乾皮症という病気を起こす。この病気に苦しむ人は、紫外線に極めて敏感で、太陽への暴露後は皮膚ガンを発症する。
 例えば、DNAミスマッチ修復の欠陥があると、遺伝性の結腸ガンを発症するリスクを増大させる。

 In fact, in many forms of cancer, one or more of these repair systems have been entirely or partially switched off. This makes the cancer cells’ DNA unstable, which is one reason why cancer cells often mutate and become resistant to chemotherapy. At the same time, these sick cells are even more dependent on the repair systems that are still functioning; without these, their DNA will become too damaged and the cells will die.
Researchers are attempting to utilise this weakness in the development of new cancer drugs. Inhibiting a remaining repair system allows them to slow down or completely stop the growth of the cancer. One example of a pharmaceutical that inhibits a repair system in cancer cells is olaparib.

  (注記)ここで、遺伝子修復の3つの方法に関する図を掲載する。
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           図2 塩基除去修復


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           図3ヌクレオチド除去修復


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           図4ミスマッチ修復



  (これらの図はノーベル財団の資料を日本科学未来館の人が翻訳したものを示す。)

 実際、ガンの多くの形において、これらの修復システムのうちの1つ以上の機能のスイッチが完全に、または部分的に切られることによって起こる。これはガン細胞のDNAを不安定にする。
 また、それはしばしばガン細胞が突然変異し、化学療法に抵抗力ができる1つの理由である。同時に、これらの病気細胞は、まだ機能している修復システムにいっそう依存する。これらなしでは、それらのDNAはまた損傷して細胞は死んでしまう。
 研究者は、新しいガン治療薬の開発においてこの弱さを利用することを試みている。残っている修復システムを抑制することは、ガン細胞は成長速度を落とし、癌の成長を完全に止めることを可能にする。
 ガン細胞の修復システムを抑制する治療薬の1つの例がオラパリブ(進行した卵巣ガンへの分子標的治療薬)である。

 In conclusion, the basic research carried out by the 2015 Nobel Laureates in Chemistry has not only deep¬ened our knowledge of how we function, but could also lead to the development of lifesaving treatments. Or, in the words of Paul Modrich: “That is why curiosity-based research is so important. You never know where it is going to lead… A little luck helps, too.”


 結論として、2015年のノーベル化学賞受賞者により実施された基礎研究は、私たちがどのように機能するかという私たちの知識を深化させただけでなく、また、救命の治療方法の開発につながるものである。
 また、ポール・モドリッチの言葉に以下のようなものがある。
「それは好奇心を基本とした研究がなぜ重要なのかという理由である。あなたはそれがどこに行きつくかは決してわからない。小さな幸運が助けてくれることを。」
                                 −以上−

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