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zoom RSS 廃止措置技術・人材育成フォーラムに参加

<<   作成日時 : 2017/02/05 16:03   >>

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 東工大の廃止措置技術・人材育成フォーラムに参加した。

 昨年12月28日に、原子力学会よりこのフォーラムの開催案内があったので、すぐに参加申し込みをした。

 このフォーラムは廃炉のようなイメージはあるが、セシウム除染研究についても最新の研究発表をするので、参加しておきたいと思ったのである。

 1月20日に朝のNHKドラマを見終わって家を出た。途中コンビニで、おにぎりとペットボトル500mL1本を買った。

 9時半過ぎに大岡山に着いた。東工大の大岡山キャンパスはよく来ているので、比較的迷わずに会場に着いた。
 受付を済まし、資料をもらった。
 プログラムについては末尾に付ける。

 おおまかにいえば、東工大の廃止措置技術の教育プログラムの紹介、廃炉に関わる研究紹介、IRID(廃炉機構)の研究紹介、それらのメンバーを交えた討論というものである。

 開会挨拶の小原氏も最初の佐藤氏も共に同じ図を使って説明した。
 廃止措置の技術研究とそれを担う人材育成という2本柱で、前者は分析、除染、回収・固化、遠隔計測、臨界安全の技術開発であり、東海大学、芝浦工大、東京医科歯科大と連携して行う。
 後者は廃止措置工学特別コースとして、デブリ材料工学、デブリ化学、シビアアクシデント後の遠隔計測等を用意して学生の教育を行うものである。

 私は質問でデブリ(燃料、被覆材、制御棒と構造物のコンクリート等が混在した炉心高レベル溶融廃棄物)という言葉は印象が悪い、環境調和工学等のネーミングにしてはどうか、と聞いた。
 すると小原氏は、目先のごまかしみたいなことはよくないと思う、堂々とデブリということを打ち出して教育を行いたい、と答えた。
 確かに東大が原子力工学という言葉をやめて、システム量子工学という用語に変えたように、全国の大学で原子力という用語を使わない名前の変更を行った大学が結構あった。
 それに比べると、小原氏の回答は立派なものだが、果たしてこれで学生が集まるか、学生の親の方でも印象が悪いのではないか、と思った。
 また、教育に関して、放射線生物学、特に放射線の身体に与える影響等の教育は大丈夫か聞いたら、今回紹介したものは廃止措置工学に関連したもので、基本的なところの教育は実施している、とのことだった。

 材木の除染技術の鷹尾氏はセルロース分解性イオン液体を使う除染技術である。
 イオン液体とは100℃以下で液体のイオン性化合物で、簡単に言えば、塩(NaCl)の常温で固体であるものが、液化したようなものである。
 木材汚染物は通常燃焼して灰化して、その灰の中のセシウムをセメント固化等の処理をして安定化するが、それを材木の段階で除染したい時に、普通に水洗いしても除染されない。
 イオン液体で表面のセルロースを溶解してその中のセシウムを回収するものである。
 陽イオン(カチオン)を様々に変化させて、イオン液体として設計したものを使い、セシウムを溶出させた。

 私はセルロースに3種類(セルロース、ヘミセルロース、リグニン)あって、どのセルロースを溶解したのか聞いたが、その辺は確認していないようだった。

 土壌の汚染除去で、竹下氏は海水がセシウム汚染した土壌からセシウムが除染しやすいことを一歩進めて、その中の成分のマグネシウムMgやカルシウムCaが除去しやすいことを確認した。
 また、これらを土壌にそのまま作用させるのではなく、亜臨界水(100-374℃で圧力をかけて液体として存在)として除染することを提案していた。

 私は質問で、太平洋セメントは1300℃の加熱で土壌からのセシウム除染を提案しているが、これらのことをどう思うか聞いた。
 太平洋セメントの方法は竹下氏も知っており、この方法は温度が高すぎるので、竹下氏の提案する方法の方が優れている、との回答だったと思う。

 回収・固化の講演で、吉田氏は除染したセシウムの固定化にゼオライト粉末等から多孔体を作り、その中にセシウムを封じ込めると説明した。

 遠隔操作技術で遠藤氏は5軸駆動のアーム等の説明を行った。バルーン型のアーム等も説明した。

 私は質問で、バルーン型アーム等は通常の防災などにも使えるのではないかと言った。
 遠藤氏は元々この技術は防災の方からのアイデアであり、適用は可能と答えた。
 原子力で使うロボットは福島原発の廃炉専用みたいなイメージがあって、他の分野への応用がきかない可能性もあることから、この質問をしたのである。
 原子力専用というのではなく、防災にも使える汎用性のあるロボット技術の開発にして欲しいと思う。
 文部科学省の支援を受けて、国の予算を使うのであるから、汎用性は重要なキーワードではないかと思う。

 午後の2つのデブリ取り出しに係る臨界解析の内容について、私はあまり詳しくないので省略する。

 塚原氏は難分析核種として、ストロンチウムSrやセレンSeを分析した結果を説明した。
 これらはベータ線しか出さず、長半減期核種である。
 これを分析するのに、マイクロ化学チップを用いた。
 これは半導体の基板みたいなガラス面上に溝を刻み、ここに微小な分析対象の液体を流し、ここで分離・分析等の分析操作を行うもので、分析廃液が少ないメリットがあるが、振動等の影響を受けやすい欠点もある。

 私はこうしたマイクロ化学チップは誰でも作れるものか、また分析誤差はどのくらいか聞いた。
 塚原氏は大学院生クラスでも作れる、分析誤差は普通の分析と同じ数パーセントであると答えた。

 IRIDの研究開発として、吉澤氏は福島原発の現状や研究状況を説明した。
 1-3号機の燃料デブリ取り出しに向けた調査を行っている。高線量のガレキの撤去が進み、汚染水対策も進んでいる。
 汚染水タンクはフランジ型から溶接型にしている、構内環境は改善され、簡易マスクでの作業になり、大熊町に給食センターができる等の労働環境も改善している。
 Jビレッジも役割を終えた。事務本館もでき、2017年2月に入居予定である。

 IRIDの研究課題として、奥住氏は大学にお願いしたい課題を説明した。
 シーズ(技術)とニーズ(要求)のマッチングが難しい。
 ミューオンによる炉心透過撮影はうまくマッチングした稀有な例である。
 今25件のニーズがある。
 使用済み燃料プールからの燃料取り出し技術2件、格納容器(PCV)補修・止水技術7件、PCV等内部調査技術7件、構造健全性評価技術3件、臨界管理技術4件、廃棄物処理・処分技術2件である。
 燃料取り出しは4号機は終了したが、1-3号機はこれからである。
 構造物が燃料に落下している。これをどう除去するか。
 構造健全性は水素脆化がある。(炉心溶融の際に被覆管破壊した時発生した水素が構造材の鉄骨等に吸収され、脆弱になったものと思われる。) 
 また、構造材の海水による腐食の問題がある。
 止水としてはベント管の止水であり、風船による止水等を行っている。
 止水したことをどうやって確認するか、等の問題もある。
 底面のサプレッションチェンバー(ドーナツ状の冷却水保管スペース、S/Cと略される。)を充填止水するために、セメントやコンクリ等を充填している。
 PCV内調査として、TMI(米国で炉心溶融したスリーマイルアイランド原発)は水が濁っていて見えなかった。
 ガンマ線によりデブリ形状を推定できないか。
 上から穴をあけてカメラを下すのだが、高線量で軽い遮へい材が必要になる。炉水サンプリングできる器具が必要である。
 カメラは高線量で使用できなくなるので、カメラのセンサーの寿命も問題となる。
 SSD(半導体式)でなく、真空管式カメラがよいかもしれない。
 炉内状況はデブリがコンクリ内に侵入しているかもしれない。
 どうもいろんな問題が山積しているらしく、なかなか原発内部の浄化やデブリ取り出し等が難航しているらしいことをうかがわせる説明であった。

 私はこうした難問は原子力学会に提出して、懸賞金を出すとかしてはどうか、と聞いたが、あまりはっきりした回答はなかった。
 よく考えてみれば、IRID自体がオールジャパンを標ぼうしており、確かに東芝、三菱、日立等のメーカー出身者も多くいる。
 この課題を説明した奥住氏は東芝出身で出向みたいであった。また、この後の講演の大井氏はJAEAである。
 だから、原子力学会にこれらの課題を出しても結局同じことだと思ったのかもしれない。

 放射性廃棄物処理・処分のことを大井氏は説明した。
 大井氏は高レベル廃棄物に関与していたということだった。
 これまでの廃棄物処理・処分の進展に合わせて行ってきた。データの蓄積は待てない。廃棄物の性状把握、難測定核種、最大濃度を示せるか、スケーリングファクタ(例えばセシウムの濃度がわかると他の核種をその比例係数を仮定して濃度算出)はどうか、ORIGEN(燃料の燃焼度により燃料の濃度減少や廃棄物核種の濃度を計算するコードで、廃棄物量を推定)の解析データは使えるか、海水成分はどのくらいか、制御棒のホウ素はどのくらいか、有機物などの有害成分はどのくらいか、汚染水の処理システムはどうか、廃ゼオライト、スラッジ、ALPS(汚染水処理装置)からの廃棄物のHIC化、がれきの分析、等今までの廃棄物処理・処分の方法と違うものをどのように処理・処分していくか、のシナリオが必要である。

 他の人の質問で、計量管理の上での不明量の問題を聞いていた。
 ウランやプルトニウムは分析誤差などで通常の原発等でも不明量が発生する。それをきちんと管理するのが計量管理であり、福島原発事故での不明量はこれらと同じ取り扱いが必要になるが、そうしたことがあまり考慮されてなかったらしく、これからそれらについても検討が必要なようであった。

 その後の総合討論では、私は福島原発事故で再処理施設に近い状況が出来上がっているから、そこにミニ六ケ所を作ってはどうか、と言ったがあまり芳しい反応はなかった。
 TMIでのデブリの処理の報告書が出ているはずで、それを確認したいと他の人が質問したところ、JAEAかまたはアメリカのNUREGレポートにあるのではないか、とIRID奥住氏が答えていた。
 また、廃棄物としてのトリチウム分離を東芝が研究していたはずだが、と聞いたが、IRID自体があまりトリチウムに関心がないのか反応はなかった。

 以上でこのフォーラムは終了した。
 
 東工大はセシウム除染に関する研究ではなかなか面白いことをしているという認識があるので、今後もこうしたフォーラムがあれば参加して情報収集したいと思う。


<東京工業大学 廃止措置技術・人材育成フォーラム>

1.日時:2017年(平成29年)1月20日(金) 10:00〜19:00
2.場所:東京工業大学大岡山キャンパス 大岡山西9号館2階コラボレーションルーム
3.プログラム:
 10:00〜10:05 開会挨拶      小原 徹(東工大)
第1部 東工大における人材育成活動及び基盤研究
 10:05〜10:30 東工大における廃止措置工学人材育成活動 佐藤勇(東工大)
 10:30〜10:50 材木の除染技術 鷹尾康一朗(東工大)
 10:50〜11:20 土壌の汚染除去と回収・固化技術 竹下健二(東工大)
 11:20〜11:35 天然鉱物を利用したCs、Sr回収・固化技術 吉田克己(東工大)
 11:35〜11:55 シビアアクシデント後の遠隔計測技術 遠藤玄(東工大)
 11:55〜13:10  (お昼休憩)
 13:10〜13:30 デブリ取り出し時の未臨界確保方策 高木直行(都市大)
 13:30〜13:50 デブリ取り出し時の再臨界事故解析 小原徹(東工大)
 13:50〜14:10 難分析核種分析 塚原剛彦 (東工大)
 第2部 IRIDにおける研究開発      
 14:30〜15:10 IRIDの研究開発の状況 吉澤厚文(IRID)
 15:10〜15:40 IRIDから見た研究開発課題例 奥住直明(IRID)
 15:40〜16:10 福島第一原発事故廃棄物の処理・処分研究 大井貴夫(IRID/JAEA)
第3部 総合討論
 16:30〜17:10 総合討論・意見交換・今後の展望
 17:10〜17:15 閉会挨拶 矢野豊彦(東工大)
                              −以上−

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