一つの石のブログ−科学と将棋と教育を好む人へ

アクセスカウンタ

zoom RSS 放射線教育の国際シンポに参加

<<   作成日時 : 2017/01/15 08:21   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

 昨年末に放射線教育に関する国際シンポに参加した。

 昨年12月1日に原子力学会より上記シンポのメールが来た。

 教育関係のメールだから、出ようと思ったが、開催場所を見ると郡山となっていた。
 ちょっと遠い。義父宅に行く途中の福島駅の1つ前だから、新幹線で東京から1時間強かかる。

 やめようかと思ったが、一応プログラムだけでも見ておこうと思った。

 プログラムは末尾に添付する。

 ここに山下俊一氏が基調講演をすることがわかった。
 同氏は福島県民の健康調査を主導したように記憶していた。
 昨年末あたりに、福島で子どもの甲状腺がんが多く見つかった、というような報道もあり、その辺りの情報を聞きたい、また話がなければ質問でも、と思ったので、参加申し込みした。

 12月18日は朝9時頃に自宅を出発した。東京駅には10時前に着き、一番近い新幹線に乗った。昼の弁当と500mLのペットボトルを買い、12時頃に新幹線を降りる前に弁当を食べた。

 郡山駅に着いて、しばらく駅の構内の待合室で時間つぶしをし、シンポ開催場所の郡山商工会議所を目指した。
 出る前に帰りの切符を買っておこうと思い、終了予定時間の30分後の切符を買った。会場から駅まで10分だから、多分多少時間が延びても大丈夫と思った。

 会場は予め地図で確認していたつもりだったが、よくわからなかった。仕方なくスマホで地図を探し、この地図を基に近くにいた地元のおばさんに聞いたら、やっとわかった。
 会場に着き、受付を済まし、資料をもらった。
 すぐそばで、福島でとれたりんごの試食をやっていたので、2切れほどいただいた。
 今福島で取れたものはほとんど放射能はないことがわかっているので、平気でいただいた。
 このシンポは放射線教育に関する国際シンポジウムの一部で、本体は12月16日から開催されており、その一連の行事の中の一環として行われていたようである。
 会場は50人くらいはいたと思う。

 (1)の山下氏の講演は国際シンポを意識して、資料はすべて英語で書かれていたが、講演自体は日本語で行われた。
 以下は同氏の講演メモである。単語の羅列になるが、話の大筋はわかると思う。

 福島原発事故後に、放射線や健康に関するリスクコミュニケーション(リスコミ)をどうするか。説明しうる人材の不足があった。
 福島医大と長崎大学でジョイント教育を行い、指導者の育成を行った。高度被ばく医療センターとして、放医研や広大等が再編成された。
 福島の地で放射線とどう向き合うか。東京の人は他人事のようである。
 危険とリスク、物理・化学・生物的なリスクと生活習慣、自然災害、Sv(シーベルト)・Bq(ベクレル)という単位の理解不足。
 放射線というと原爆のイメージ、紫外線より短い波長、放射線の健康影響をどう理解するか。
 線量率、遮へい、遺伝子・細胞にキズ、なぜ放射線がガンを起こすか、リスクの理解、リスクの大きさが異なる。 原発事故前のリスコミ、歴史は繰り返す。
 広島・長崎のイメージは爆弾による熱傷、長崎7万人の死、広島14万人の死、広島・長崎の爆心地から2、3qの範囲では亡くなっている人は多いが、周辺の生き延びた人の健康影響はどうなのか。
 一時に多く被ばくした人と徐々に被ばくした人は違うのか、急性と晩発性の違い、100mSv/回の放射線影響、低線量の影響はどうなのか。
 チェルノブイリ事故ではスウェーデンの原発がアラーム、自分たちの原発の事故ではないか、セシウム(Cs-137)の分布でCs-137はヨーロッパ全部に分布、10-1000q、福島では10-20qの範囲である。
 地産地消の点で、チェルノブイリ原発事故と福島原発事故とは違う、情報災害はどちらも同じ、チェルノブイリ原発事故では、放射能汚染した牛乳を飲んだことが最大の問題であり、ベラルーシの子どもはこれが原因で青年期にガンが発生。
 1Svは影響が出る、10Svはみんな死亡、低線量でのガンリスクとLNT、しきい値の有無の議論。
 長年にわたる放射能疫学の研究、放射能以外の影響もあるため、個人に注目しても無理、数100mSvでは100人に1人か2人に影響。
 人間の細胞60兆個が100兆個の細菌と共存、好気性と嫌気性の菌の全体の進化。
 紫外線や放射線の被ばく、潜伏期の存在、DNAの電顕写真、染色体の放射線や紫外線による切断。
 発がんリスク、生細胞のガン化、DNA損傷のプロセス、活性酸素がガンの原因の多くの要因。
 1mSvのX線でどれだけの細胞が壊れるか、単鎖切断と二重鎖切断。
 細胞のミトコンドリアはエネルギーを生産する、100mSvの急性被ばく、ICRPではしきい値なし、UNSCEARは影響量と防護量の違いを指摘。
 避難で、今の問題は心理的な問題が大きい。
 県民の健康調査を行った。
 線量を評価した、強制はしない、200万人の初期被ばく調査、初期避難の50万人の回答でほとんど50mSv以下、甲状腺の検査で誰も100mSvを超えていない。
 全県の甲状腺調査で今まで見つかっていなかった病気が見つかる。(最新の機器を使ったため、これを他県でも使えば同じような頻度で見つかるはず)
 0-18才の検査で第1ラウンド30万人、第2ラウンドで20万人、福島県38万人の子どもが対象である。
 検査をしていなかった人に病気が見つかる、超音波検査で30万人のうち100人にガン見つかる。
 長崎や青森でも同じような頻度である、全国でやる意義はあるのか、過剰診断の走りになるかもしれない、と一気呵成に説明した。

 まとめとしては、4年間で137人の甲状腺ガンが見つかったが、全国レベルと変わらない、世界で甲状腺ガンが増えているが、これは精密検査で技術向上したことによるものである、とした。
 以上のことは、福島医大のHPに定期的に掲載されているので見て欲しい、とのことだった。

 一応、同HPを見てみると、右側中間辺りに県民健康調査の項目があり、クリックすると健康調査報告書がいっぱい掲載されていた。

 http://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/kenkocyosa-kentoiinkai-25.html

 見た印象では、医者の報告書らしく、素人が見てもよくわからないように報告されている。
 この報告書を見ても、きっとわからない人が多いだろうな、と思うものであった。

 私は、原子力学会誌の2016年11月号で、香川氏が放射線の損傷の細胞修復に栄養の大切さを説明しているがどう思うか、と聞いた。詳細は下のブログを参照ください。

 http://hitotsunoishi.at.webry.info/201611/article_4.html

 もちろん山下氏は香川氏のことをよく知っているらしかったが、その論文はよく知らない、宇宙飛行士の放射線のダメージ回復に栄養を通常以上に摂取していると、地上では栄養過多になる恐れはある、と回答した。
 栄養過多で不健康になる恐れとはちょっと意外な答えであったが、確かに肥満と同義ということであれば、一面の真理はあるかもしれないと思った。

 (2)の阿部氏は福島原発のすぐ近くの富岡の学校の先生である。
 富岡町は福島原発のすぐ近くの町で避難先の三春町で2011年9月(福島原発事故の半年後)に再開、テニスコートまで津波が来た、とのことである。
 さて、福島原発事故が起きて、福島県において、子どもたちの健康や生活に対する放射線の影響を最小限に抑えることが重要な課題となったが、教員の知識不足により混乱した。
 喫緊の課題として、何をどう教えたらいいのか、何の教科で指導するか(理科?)、具体的な指導時間を示して欲しい、研修の機会がないと自信をもって子どもに教えられない、等があった。
 これらの課題に対して、指導の拠り所となる指導資料を作成し、指導者の養成や教職員のリテラシーの向上に向けた研修の実施を目的にして、放射線教育に対応するための事業構想と立ち上げを行った。
 この事業のために3つの柱を掲げた。
 指導用資料の作成、研修会の開催、先進的実践の推進と紹介であった。
 これらの実践である程度の成果は得られたが、今後は横浜の避難先でのいじめに見られるように、全国での放射線教育の実施が必要とのことだった。
 実は全国展開のことを質問しようと思っていたことに、先手を打たれたみたいであるが、ではその方法は、というと、まだ見えていないようであった。

 (3)の佐々木氏は郡山の中学校の先生であった。
 2012年に全国に先駆けて放射線教育推進委員会を発足させた。専門家の話は難しい。ロシアのプリピャチに行ってきたり、福島原発の中の廃炉作業員を呼んで授業をしてもらったりした。
 福島原発の中で働く人の半数は福島の人である。防護服を着てもらったりした。応援メッセージを送ると、リプライ(返答)メッセージを返ってきたりした。

 (4)の原氏は福島高校の先生であった。
 SSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校となり、天文、化学、生物のクラブを合併して、スーパーサイエンスクラブを作った。
 課題研究として、海外の人とのワークショップに参加したりした。3.8μSv/h以下であれば、校外で活動してよいこととした。
 線量計の「はかるくん」を借り出して、校内の線量マップを作った。5回繰り返し測定、生徒の自宅を測った。
 2014年よりD-シャトルを使った。
 D-シャトルという携帯型の線量計で線量を図る。ヨーロッパの線量は事故由来でないのに高い。なぜ福島は線量率が低いのか。
 福島は自然放射線自体が低い。西日本は自然放射能が高い。
 福島高校だけではだめだ。県内6校、県外で福山、恵那、灘、奈良、神奈川、海外ではフランスの3つの地域、ベラルーシで2つの地域の線量率を測った。
 D-シャトルで測定したこれらの放射能データをジャーナルに投稿した。
 参加した216人の高校生をファーストオーサー(第一発表者)とした例を紹介した。
 調べてみると、下記のような記事が出てきた。

 https://sangakukan.jp/journal/journal_contents/2016/03/articles/1603-05/1603-05_article.html#**1
 http://iopscience.iop.org/article/10.1088/0952-4746/36/1/49
 http://www.c-technol.co.jp/cms/wp-content/uploads/2014/04/FBN464_201508web.pdf

 これらの結果で、福島でも福島以外の日本の各地、フランス、ベラルーシなどでもほとんど線量率の変化はなかった、としている。
 世界・日本の風評被害の減少に寄与すればいいなと思う。
 何よりもこうした結果を有名なジャーナルに投稿し、それが掲載されたことは快挙であろう。

 (5)の田中氏は主催者のグループの一人である。
 このグループは放射線教育に関連した団体であり、中学校の放射線教育の支援を行っている。パネルディスカッションを年2回行っている。
 テキストブックは万遍なく載っているが、どこが重要かはわからない。
 DNA損傷等の記述に係るミスリード(誤解)が心配である。
 受験シーズンに放射線のことを習う学校が多い。先生の負担もあるが、生徒の方も付けたしのように感じている部分もある。

 (6)の工藤氏は原子力学会の活動の紹介だったが、このワークショップの時間が延びて、帰りの時間(新幹線の発車時刻)が迫ってきたので、講演は聞かずに退席した。

 まとめとしては、山下氏の講演で、福島の甲状腺がんが多く見つかったような新聞報道があったが、それは誤解であり、福島の子どもの甲状腺がんの発生率は他の地域と変わらない、精密機器の導入によって、今まで見逃していた病気が見つかったのをデータにすると、マスコミが負のイメージを持っているため、誤解を生む報道になっているらしいことがわかった。
 でも、福島医大の健康診断の報告書を医者以外の人が読むと、誤解をしてしまいそうだ、とは私も思ったのである。
 医者としての報告書でも、マスコミ等一般の人も読むことを念頭において、報告書を書けばよかったのであろうが、そこまでは考えていないようである。
 要するにわかる人だけわかればいい、という書き方なのである。
 もし、この報告書に『福島県での甲状腺がんの発生率は他県と変わらない』、この一言でも記載しておけば、マスコミの報道ももう少し正確なものになっていたのでは、と思った。
 ただ、子どもの甲状腺に関して、福島事故の影響はない、この一事がわかっただけでも、郡山まで行って参加した甲斐があった。

 また、福島県の先生方は他県よりもっと切実に放射線教育のことを考えている、という印象であった。

 今後もこうしたシンポジウムに参加して、放射線教育の向上に少しでも寄与できれば、と思う。


<第5回放射線教育に関する国際シンポジウム(ISRE2016)>
 一般公開セッション「放射線の健康影響と学校教育」

1.日時: 2016年(平成28年)12月18日(日) 13:00〜16:45
2.会場: 郡山商工会議所会館 6 階ホールA
3.主催: NPO法人放射線教育フォーラム
4.募集定員:100 人
5.参加費: 無料
6.プログラム:
 13:00 開会
【基調講演】
 13:05 (1)放射線健康リスクを一般公衆にどのように説明するのか:チェルノブイリと福島の原発事故から学んだ教訓 山下俊一 長崎大学/福島県立医科大学
 休憩(10 分)
【学校における放射線教育の取り組み】
 14:30 (2)福島県における放射線教育の取り組み 阿部洋己 福島県立富岡町立富岡第一中学校
 14:55 (3)「学校と学校のつながり」「人と人とのつながり」を大切にした放射線教育 佐々木清 前福島県郡山市立郡山第六中学校
 15:20 (4)福島高校での放射線教育の取り組み 原尚志 福島県立福島高校
 休憩(10 分)
【学校における放射線教育の支援】
 15:55 (5)放射線教育フォーラムにおける近年の授業実践支援活動 田中隆一 放射線教育フォーラム
 16:20 (6)日本原子力学会における原子力・放射線教育の支援活動 工藤和彦 九州大学名誉教授
 16:45 閉会
          −以上−

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
放射線教育の国際シンポに参加 一つの石のブログ−科学と将棋と教育を好む人へ/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる