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zoom RSS 福島復興シンポに参加

<<   作成日時 : 2017/01/08 09:40   >>

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 昨年末に福島復興シンポジウムに参加した。

 最近は福島復興というキーワードだけで参加しているような気がする。

 昨年12月8日に原子力学会より上記の案内メールが届いた。すぐに出席の申し込みをした。
 ただ、これは技術士会の主催なので、原子力学会の会員は証明書を見せるように、と書かれていたが、そんなものはもらっていないので、事務局に連絡した。
 そうすると、その旨受付に言ってもらえれば、技術士の正会員と同額の2,000円でよい、とのことだった。

 12月17日にJR神田駅に12時半頃着いた。開催場所は駅から歩いて3分くらいの距離であった。
 会場に着くとまだ受付の準備ができていない、とのことでしばらく会場内の席で待った。10分くらい待って受付を済ませ、資料をざっと読んだ。

 プログラム概要は末尾に添付する。

 講演1の宇野女史は福島原発事故後によく原子力学会主催の福島除染シンポにも講演されている方である。
 結構な年配の方であるが、リケジョのパイオニアであろう。
 言いたかったことは福島で放射線を浴びたとしても、それから後の生活の仕方で改善できるということらしい。
 福島では今でも陰膳方式で放射能のチェックをしているし、また2015年のお米1千万袋以上の全数検査を行い、100Bq/kgを超えたものは0という結果だった。
 これは私がいつも主張していることだが、土に捕まったセシウムは外に出てこない。
 だから、そこでお米を作っても、お米の中にセシウムは入って来ない。
 だけど、山菜やタケノコ等は付着している土のせいで放射能検出されるし、そういう山菜等を泥付きで食べたイノシシ等は放射能が若干検出される。
 それでも人体に有害といえる量ではないが、今は食べない方がよいだろう。
 この飲食物摂取制限を福島では速やかに行ったので、人体に取り込んだ放射能は呼吸で若干あるかもしれないが、内部被ばくの程度はものすごく軽い。
 広島・長崎の原爆被爆やチェルノブイリ事故の後ではこうした飲食物摂取制限を行わなかったので、汚染飲食物を食べたり飲んだりして内部に相当な放射能が入って内臓に蓄積されたものと思われる。
 低線量放射線の影響は福島の場合はほとんど心配の必要はないし、遺伝的な影響もないということである。
 宇野女史の結論はいたって簡単で、「福島は第二のチェルノブイリにはならない」ということである。
 放射線で被ばくすることより、被ばくしたことを心配して免疫機能が低下する方が心配である。
 福島に行った時に女性に化粧してみたら元気になった例を紹介していた。また、抗酸化力の強い食品、野菜や果物をバランスよく摂ることが大事と説明した。
 私は、宇野女史は世界のあちこちを旅行されている時に線量率を測っているが、それを日常化して、NHKの世界の天気予報みたいに、世界の各地の線量率予報のようなシステムができないか、と聞いたが、できればいいですね、くらいの回答だったと思う。

 講演2の開沼氏は福島出身の社会学者である。
 福島原発事故でひどい状況になったが、そのひどい状況を単に感情的な面でひどいといってもそれは何ら解決にならない。
 その背後にある社会データを冷静に整理して提示して初めて見えてくるものがある、というのが持論らしい。
 著書として、「はじめての福島学」「福島第一原発廃炉図鑑」の本も出している。

 まず自己紹介として、福島の過去から述べた。
 米国のニューディール政策を真似して、日本で1950年代に国土総合開発法ができた。これはケインズ経済学を背景としたもので、田舎の貧しいところに施設を作って底上げするという思想である。
 福島では原発立地ということになった。
 1960年代に原発の初期導入のためにGE村(アメリカの原発メーカー:GEの技術者が来日して住んで村ができた)ができ、この村との交流などもあった。
 雇用もある程度確保され、ブランド意識も多少あったかもしれない。
 しかし、3.11の後には様相が一変した。
 福島は必要以上に政治問題化し過ぎた。放射線の悪いイメージしか出て来ない。
 データが断片的に出てくるが、それらを結び付ける作業があまりできていない。
 福島の人口はどうなっているか、自治体格差はどうなるか、復興による需要が出ている、等があるが、これらを総合的に理解する体系ができていない。

 これらの前置きの後で、「福島を知るための15問」という問題(資料に載っていた)に言及した。
 福島避難の人の割合、福島の米の生産高の3.11前後の全国順位、米の全袋の放射能検査でどのくらい放射能検出されているか、福島の漁業の水揚げ量はどのくらいか、等はおそらく皆知っているようで知らないクイズである。
 これらのクイズの他に、「福島原発内の廃炉に関するクイズ15問」もあったが、これは時間がないので省略した。 
 一端のみを示すと、廃炉の期間、地下水量1日何トンか、入って作業する人は一日何千人いるか、等であった。 こういうデータは知っているようで詳しくは知らない。
 これを開沼氏は懸命にまとめているようであった。

 私は講演直後には質問しなかったが、後の総合質疑で、福島復興対策の一つにイノベーション・コースト構想があるが、これは「福島県民ファースト」で考えてどうなのか、と3人に聞いた。

 その時に開沼氏は会場にいるイノベーション・コースト構想を知らない人に向けて説明するかのように、同構想は福島県の海岸地域の津波被害の大きな場所で、ロボット、ドローンや遠隔操作機器等の企業を誘致して内需を盛り上げる構想であると説明した上で、こうした企業の下請け等に福島県民が食い込んで、復興の足掛かりになればいい、と答えた。
 私は質問する時に、同構想を会場の人皆が知っているものと錯覚して質問したが、一部の人は知っていても会場の人皆が知っているわけではないと気がついて、開沼氏の機転に感心した。
 しかし、同時にこうした企業に県内の企業が食い込むのは難しいだろうと思った。
 これらの企業に食い込むためには相当の下請け技術があるところでないとだめだろうし、今現在でもそうしたところがあるとは思えなかったからである。
 原発内で使われているロボット等に福島県民がどのくらい関与しているか調べてみれば、多分ほとんど東京等で作られたものを持ってきているのではないかと思う。

 講演3の越智女史は福島県の病院の先生である。
 病院の先生が東京に来てなぜ福島のことを語るか、リスクコミュニケーション<リスコミ>は未来の話である。
 リスコミに対する疑問は聞き手の立場・目的・意見はよく解析しているが、話し手の立場・目的・意見が見えない。
 「皆さんに知っていただくために」というのは、信用されない上に、見下されている感じがする。
 原発事故について越智先生が語るのは、防ぎ得る健康被害を繰り返さないためと災害に備えることで平時の住民の健康をよくするため、と説明した。
 南相馬にいると、年間の追加線量が大体1mSv/年以下である。
 世界各地の自然放射線はフィンランドの8mSv/年、スウェーデンの6mSv/年で高く、世界平均で2mSv/年くらいである。
 福島での内部被ばくは2015年でほとんど検出されていない。ただ食品の一部から放射能が検出されたのは確かで、山菜やキノコがその代表である。
 魚・肉類ではイノシシ、イワナ・ヤマメ等の魚が多少検出されている。
 これらは食べても別に健康に影響があるレベルではなく、食べたい人は食べても問題はないが、いやだと思う人は食べないことで安心が得られる。
 ガンの死亡率や低出生体重児も震災前後で変わらない。
 避難民の健康が心配である。
 震災後50q圏内は物流が制限されていた。
 医療も制限されており、圏内に弱者が取り残されたケースが多い。
 非計画的な避難で移送時に亡くなった人もいる。
 避難生活で運動不足になり、健康を損なった人も多い。失業、狭い住居、店が遠い、精神状態の悪化、自信の喪失等によるものである。
 子どもたちの運動能力も低下している。敏捷性や持久力が低下している。幼稚園の子どもの奇声や不機嫌が親のストレスと連動していること等が挙げられた。
 除染作業員も当初は劣悪な環境で働いていたので、健康を損ねていたのであろう。
 被災地の医療についても病院スタッフの8割くらいは女性であり、資格職を持つ女性は避難先でも職を見つけやすいので、戻って来なくなる。
 教育レベルの低下、被ばくの心配もあると帰還しにくくなる。
 薬難民も出る。逃げる時に薬を忘れるとか、カルテの津波流出や避難元に戻れないのでカルテがない、等の問題もある。
 医者は病院で患者を待つのであるが、社会を元気にはできない。
 健康は社会にいる一人ひとりの仕事である自覚が必要と説明した。
 今後のリスクアセスメントでは弱者の同定、逃げ遅れ対策等が必要になる、とのことだった。
 平時に人々を健康にする「攻めの安全」を、で締めくくった。

 私は、ドクターカーやドクターヘリのようなものを一歩進めて、ドクタートレーラーやドクター船(海岸近く)の利用を考えてみてはどうか、と質問した。
 本当はこのドクタートレーラーは平時病院の弱者用に建物と一体型のもの、という意味で言った。
 そこまでは理解してもらっていなかったが、越智女史の回答は、この技術士会のメンバー等がそうした機器を開発してくれればいいと思うと言った。

 この後に総合質疑の時間がとられた。
 ゲストの一人の越智女史から他の2人のゲストに、福島に来る人はフラットすぎる(自分の意見を言わない)のではないか、と聞いた。
 宇野女史は、確かにそういうことはあるかもしれない。説明の時のエビデンスというより、肩書でバイアスがかかる(偏見を持たれる)こともある、と答えた。
 反対に、あの人と行けば大丈夫というような人もいる、とのことだった。
 この他、森林汚染等に言及した人もいたが、議論内容を忘れた。

 こうした議論は何回も繰り返し行って、福島に関する誤解や偏見を少しずつでも減らしていくことが必要なので、今後もこうしたセミナー等に参加していきたいと思う。

<12月度技術士CPD*中央講座(第138回)>
 『東京電力福島第一原子力発電所の事故から5年、福島の復興を考える-知の統合に向けた専門家の役割-』
       (*CPD:Continuing Professional Development<継続的な能力開発>)

1.日時:2016年(平成28年)12月17日(土)13:00〜17:00
2.場所:エッサム神田 【2号館】 3階大会議室(JR神田駅周辺)
3.主催:公益社団法人日本技術士会 CPD支援委員会
4.会費:正会員(A)2,000円、準会員(B)1,000円、非会員(C)4,000円
 (なお、CPD覚書を日本技術士会と締結している学協会*)の会員は、正会員と同額となります。)
 *)電気学会、日本機械学会、日本原子力学会、日本保健物理学会他全11学協会
 ※会費は資料代込みです。当日、会場の受付でお支払いください。
5.定員:140名(定員に達し次第締切)
6.内容:
 13:05-14:15 講演1 「低線量放射線の影響と食の重要性、情報発信における専門家の責任」 宇野賀津子氏(ルイ・パストゥール医学研究センター)
 14:15-15:25 講演2 「福島復興に向けて把握すべき事実と課題、専門家/メディア・国民/住人各々の課題」 開沼博氏(立命館大学准教授)
 15:35-16:45 講演3「福島トリプル災害の真の健康被害とは:現場からの知見」 越智小枝氏(相馬中央病院)
 16:45-17:00 総合質疑

◆ 講演1「低線量放射線の影響と食の重要性、情報発信における専門家の責任」 宇野賀津子氏
 福島原発事故直後から、低線量放射線の影響で一番心配されているのががんリスクだったら、癌(の再発)を予防するライフスタイルや免疫機能を活性化する方法等の研究に係わって来た経験が役立つと発言し、今に至っている。
 免疫学者としては、わずかな放射線よりも恐怖で免疫機能が低下する、あるいは放射能汚染への不安から野菜不足となる方が、がんリスクは高くなるので、リスクは総合的に考える必要があると言い続けてきた。
 これまでに学術振興会や日赤の要請で、福島での低線量放射線の影響と食の重要性についてお話をしてきたが、県外避難者の推移をグラフ化すると、2011年夏以降県外避難者が増加し2012年3月がピークであることが解る。
 何故事故がある程度落ち着いた後も県外避難者が増えたか、政府の動き、科学者の発言と関連して考察する。

◆ 講演2 「福島復興に向けて把握すべき事実と課題、専門家/メディア・国民/住人各々の課題」 開沼博氏
 解説文なし

◆ 講演3 「福島トリプル災害の真の健康被害とは:現場からの知見」 越智小枝氏
 地震、津波、放射線災害という福島のトリプル災害における健康被害のほとんどは放射線被害ではない。
 大量避難、風評被害、失業、コミュニティ崩壊などの様々な要素が直接的・間接的に健康被害を生ぜしめている。
 しかし福島の議論が放射能とがんに終始することにより、大量かつ現在進行形の健康被害が今なお見過ごされている。
 将来世界で起こり得る原発事故をはじめとした複合災害において同様の被害を繰り返さないため、福島に生じた多様な健康被害を俯瞰することは必須である。
 真に実際的な災害対策のため、福島の医療現場において得られた知見を提供したい。
                 −以上−

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