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zoom RSS 核セキュリティを支える技術開発の国際シンポジウムに参加

<<   作成日時 : 2016/10/30 08:37   >>

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 核セキュリティを支える技術開発の国際シンポジウムに参加した。

 このシンポジウムは今年の9月26日に原子力学会から案内メールが届いていた。
 当初このシンポジウムはあまり関係がないと思い、出ないつもりであった。

 しかし、10月に入ってから、江東区HPでちょっと変なタイトルのパブリックコメントを募集していた。
その名は「江東区国民保護計画」であり、中を見てみるとテロ対策の計画であるとわかった。要するにテロ等が起きた時に江東区がどのように対応するかが書かれている。
 今年の9月10日に日本放射線事故・災害医学会のセミナーにも参加して、やはり日本の官民のどのレベルでもテロに対する認識が不足していると思った。(9/18のブログに少し書いた) もちろん私も例外ではない。
 テロ対策に関して、多少なりとも知識をもっていないと、将来東京オリンピック等の大きなイベントがある中では、うろたえて何もできない事態も考えられる。
 この際、少しでもそうしたことの情報を集めて多少なりとも整理しておかないといけないと思い、10月半ばに参加申し込みした。

 10月27日(木)は天気のいい日であった。近くのコンビニでおにぎりとペットボトル500ml1本を買った。電車を乗り継ぎ、9時20分には会場に着いた。
 登録番号を言うと、参加証、資料と同時通訳用レシーバーを渡してくれた。
 プログラムは末尾に添付する。

 そもそも核セキュリティという名前からして重々しい感じがある。
 @の講演者のIAEAのPelletier(ペルチエ)氏がわかりやすい概要を説明してくれたので、それを引用する。
 IAEAは国際原子力機関の略であり、日本人の天野之弥(ゆきや)事務局長がそのトップである。約2300人のスタッフがいて、6つの部門に分かれていて、その1つに原子力安全部門がある。
 その業務としては3つの柱があり、原発の安全、セーフガード(核不拡散)、核セキュリティである。
 この3番目の柱は核燃料や放射性物質を使った犯罪の防止である。
 その概要は、こうした物質の盗難、サボタージュ、悪意の侵入、違法な入手や悪意のある活動(多分テロ)の防止に係る活動である。
 活動のイメージとしては、放射性物質等を盗まれないこと、盗まれた場合の放射線測定等での防護、放射性物質の検出、もしテロ等が発生した場合の対処・措置等がある。
 2002年からこうした活動は始まったようであるから、9.11同時テロを念頭においた活動であると思う。
 ただ、IAEAは自分たちでこうした自発的な活動をするのでなく、各国が自主的に行うのが基本で、困った国の要請があれば、IAEAが支援するという位置付けである。
 その支援サービスとしては、違法な物質に関するアドバイス、防護方法やセキュリティ情報管理等である。また、これらの技術等の教育や訓練、世界的なネットワークの構築等も含まれる。
 検出器としては、ゲートモニターのような固定型モニターや携帯型測定器の2通りがある。
 この他、個人放射線検出器、ガンマ線や中性子線検出器やRI検出器等がある。
 これらの機器を国境警備所や港湾施設や鉄道施設に設置している。また、核種の同定ができるスペクトロメータを開発中である。

 AのRynes(リネス)氏は米国の核セキュリティのことについて話した。
 基本はIAEAの場合と同じであるが、核セキュリティを支える技術として、Nuclear Detection(核検知)とNuclear Forensics(核鑑識)という用語が印象に残った。
 これについては、リネス氏の提供資料ではよくわからなかったので、別にJAEAが配布してくれた核セキュリティ資料を基に説明する。
 核検知は、内容物を非破壊で検査する技術であり、具体例として、使用済み燃料中のプルトニウムの非破壊測定(NDA)技術、レーザー・コンプトン散乱ガンマ線非破壊測定技術等である。
 核鑑識は警察関係の鑑識で指紋等を調べるドラマ等があるが、それの原子力版である。盗まれた放射性物質等が押収された場合にその物質の同位体分析等を行って、どこにあったものか、等の履歴を分析する技術である。

 BのAbbas(アッバス)氏は欧州の状況説明であったが、仕事の都合で来日せず、ビデオメッセージの放映であった。
 印象に残ったのはITRAP(イトラップ)プロジェクトというのがあって、種々の検出器の性能評価や標準化を行っているようであった。

 Cの直井氏は日本の状況を説明した。
 この中でHe-3(ヘリウム―3、通常はHe−4が主であり、He-3はその同位体でHe-4の100万分の1しかない)代替ということが取り上げられていた。
 He-3は中性子検出器の中で使用するもので、核セキュリティの認識の高まりにより、He-3が品薄となり、その代替製品を世界各国で開発しており、B-10(ホウ素)を使った機器開発で米国のものが優れていた、との評価だった。

 DのPeräjärvi(ペラジャルビ)氏はGICNT(Global Initiative To Combat Nuclear Terrorism)の活動について紹介していた。
 これはテロ対策の世界組織のようで、米国、英仏独露中日等の86か国が加盟しており、IAEAもオブザーバーとして加わっている。
 印象に残っているのはオリンポスという訓練で、インターポール(国際刑事警察機構)との連携訓練を行ったようである。

 午前中はこの5人の講演であった。

 午後1番のセッションでは、午前の外国のゲスト3人を交えて、質疑応答等を行った。
 私は福島の風評被害を念頭において、ダーティボム(放射性物質等を爆発させてまき散らす事件)対策として、世界の主要都市の集客施設のアルファ、ベータ、ガンマ核種のバックグラウンド測定、空気中の放射能濃度等を測定しておき、いざそういう事件が発生した時の汚染度や除染の具合がわかるのではないか、欧州等ではチェルノブイリ原発事故の放射能が残存しているのではないか、と聞いた。
 しかし、そういうことは未然に防ぐことが重要、と一蹴された。
 また、核分析技術や核鑑識技術は開発段階は仕方ないが、ある程度成熟したら、国際規格はできないか、と聞いたが、回答されたかどうかはっきり覚えていない。

 午後2番目のセッションではセコムの小松崎氏、元科学警察の岸氏、京大の増田氏、JAEAの呉田氏で日本の強みと関係諸機関の協力ということが議論された。
 セコムの人が招かれていること自体がかなり面白いことである。「困った時にはセコム」だそうである。
 私は江東区で東京オリンピック2020年に向けて「江東区国民保護計画」というタイトルで、中身はテロ防止対策案であり、そのパブリックコメントを募集中である、と説明し、その中での警察や消防の連携が不安であるがどう思うか、と聞いた。
 パネラーのどなたも回答できない、と言われた。
 空気を読まない発言、質問であるが、セコムに向けたメッセージのつもりであった。

 核セキュリティという世の中にあまり知られていないもののシンポジウムということで、あまり質問も出ないようであった。
 ただ今年の4月に核セキュリティサミットもあり、このサミットは今回で終わりであり、この後の体制をどうしていくか、というようなこともあったらしい。
 私は東京等でも鉄道や港湾施設等の各施設にゲートモニタ等を設置すべきなのではないか、と少し不安になった。実際にはすでに設置されているかもしれない。
 ただ、こういうことを議論することがテロ誘発を想定させる引き金になるおそれもあり、また、テロを起こすことをあきらめさせる手段ともなりうるので、どちらが正解かは現時点では決められない。

 来月にまた、IAEAの業務のもう一つの柱である核不拡散に関するシンポジウムも同じJAEA(原子力機構)が開催する予定である。
 さて参加したものか思案中である。


<核セキュリティを支える技術開発に係る国際シンポジウム>
 1.開催日時:2016年(平成28年)10月27日(木) 9:40〜17:15
 2.開催場所:東京大学 山上会館
 3.主催:日本原子力研究開発機構(JAEA)
 4.入場料:無料(事前申込制)
 5.言語:日本語・英語(日英同時通訳有り)
 6.プログラム
  (1)開会挨拶 9:40〜10:00
    持地 敏郎 ISCN/JAEA 核不拡散・核セキュリティ総合支援センター センター長
    釜井 宏行 文部科学省 研究開発局 核不拡散科学技術推進室長
  (2)セッション1:基調講演 10:00〜12:30
    「核セキュリティ分野の技術開発」
     @規制外の物質に対する核セキュリティ検知技術:現状と将来のニーズ
       Thierry Pelletier 国際原子力機関(IAEA)
     A核テロリズムの防止のための技術力の向上
       Joel Rynes 米国国土安全保障省(US/DHS)
     BEC/JRCの取組(ビデオメッセージ:不参加)
       Kamel Abbas 欧州委員会共同研究センター(EC/JRC)
     CJAEAの取組
       直井洋介 ISCN/JAEA 
     DGICNT核検知WGの活動
       Kari Peräjärvi フィンランド放射線および核安全局(STUK)

  (3)セッション2:パネル討論1 13:30〜15:10
    「核セキュリティ分野の研究開発ニーズと成果展開」
     モデレータ 堀雅人 ISCN/JAEA 
      パネリスト Thierry Pelletier(IAEA)、Joel Rynes(US/DHS)、Kari Peräjärvi(STUK/GICNT)

  (4)セッション3:パネル討論2 15:30〜17:10
    「日本の強みと関係機関間の連携協力」
     モデレータ 上坂充 東京大学
      パネリスト 小松崎常夫(セコム)、岸徹(元科学警察研究所)、増田開(京都大学)、呉田昌俊(JAEA)

  (5)閉会挨拶 17:10〜17:15
     直井洋介 ISCN/JAEA 
                                −以上−

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